SENSA

2020.12.07

VivaOla、いろんな意味の「寂しい」を追求した1stミニアルバム「STRANDED」。自身のヴィジョンを語る

VivaOla、いろんな意味の「寂しい」を追求した1stミニアルバム「STRANDED」。自身のヴィジョンを語る

VivaOlaが、アルバム『STRANDED』を初のCD&アナログにてリリースした。
名門バークリー音楽院から一時帰国し、日本で音楽活動を本格的にスタートしたR&Bシンガーソングライター/プロデューサーの彼。ジャズやネオ・ソウルをバックグラウンドに多彩な音楽の素養を持ちつつ、その芯の部分に伸びやかな歌心を感じさせるアーティストだ。
2019年5月にリリースしたEP『Bloom』とこの『STRANDED』でVivaOlaの"第一期"を終了、12月16日にはEP『nocturnalis』を発表しさらに次のステップに進むという。
そのヴィジョンについて、自身が所属するアートコレクティブ〈Solgasa〉について、語ってもらった。


VivaOlaではシンガーとしてなるべくシンプルなものを目指している

─VivaOlaとしての音楽活動はどういうところからスタートしたんでしょうか。


そもそも始めたのが2018年の冬なんですけど、その前は本名で、音楽性も違うことをやっていたんです。ヒップホップのビートメイカーみたいなことをしてSoundCloudにアップしたりもしていて。趣味レベルで、金銭とかも考えず、生活を立てようというのもなく、いろんなものを糧にしながら成長しようという意味で、自分でリリースしたり、音楽業界の権利の勉強をしたりしていた。
そこから、アーティストとしてやるなら目標が必要だし、まずは名前を変えようということを思ったんですね。というのも、僕は日本の音楽のチャートのあり方、同じものが何度も流行っちゃうような単一的な状態が好きじゃないんです。で、自分はアメリカの音楽が好きだけど、それをアメリカでやったらただのアメリカ人アーティストと変わらないから、アメリカで最初に音楽活動を始めて、日本に帰ってくるということを考えていた。
それで、自分は英語も話せるし、まずは向こうの人たちに知られやすい名前ということで何がいいかなって考えてVivaOlaという名前で始めました。

─時期としては、バークリーに留学していた頃ですか?


そうですね。留学して半年くらい経った頃です。

─バークリーではどういうことを学んでいたんですか?


僕は作曲をやっていたんですけど、作曲科が4つあって。クラシックとジャズとEDMやフューチャーベースを作るようなコンピューターミュージックの学科があるんですけど、僕が入ったのはそれではなくて、まさにソングライティングのコースですね。
楽器と歌で曲を作る、そのために歌詞の書き方も勉強する。それこそジョン・メイヤーが在籍していたり、チャーリー・プースが卒業した学科です。

─曲を聴かせてもらってすごく印象的だったのが、VivaOlaさんの中にあるいろんな音楽的な素養がミックスされているように思ったんですね。まずはシンガーソングライターとして歌を大事にしている部分。そしてトラックメイカーとして先鋭的なビートやサウンドを作ろうとしている部分。もうひとつは、ジャズやブラック・ミュージックでの分野で起こっているグルーヴの革新に刺激を受けているミュージシャンとしての部分。その3つがあるように思うんですが、そういう実感はありますか。


ありますね。バークリーに行く前はずっとジャズギターを練習していたりしたんで、まずはミュージシャンとしての自分がいて。そういうバックグラウンドの自分は、音楽を聴くときにも、2コードでずっと同じビートを繰り返すヒップホップみたいな音楽は嫌いなんですよ。でも、高校3年生くらいからGarageBandとかLogicを使ってトラックメイクを始めたんで、まさにその反復する感じがいいし、そのスペースがあるからこそラッパーが遊べるという考え方になってきた。
で、バークリーに行った理由っていうのは、もともとシンガーをやりたかったからなんです。どういうメロディや詞を書いたら気持ちいいか、相手が聴いてどう気持ちいいかを学びたかった。ある意味、複雑なものを作るのが好きだった元々のミュージシャンの自分をどんどん追いやっているようなところはありますね。VivaOlaではシンガーとしてなるべくシンプルなものを目指していると思います。最近May'nさんに「Living My Life」という曲を提供したんですけど、そういう時はもっとプロデューサーっぽい考え方です。でも、自分が歌うときはもっとワガママになっている感じがします。



─考えてみれば、Bruno MarsだってSiaだって、プロデューサーとしての自分とシンガーとしての自分という、両方のペルソナを持っていますよね。そういうアーティストへの憧れはありますか?


それはめちゃめちゃありますね。Jay-ZにしてもDr.Dreにしてもそうだし、Anderson .Paakもすごく好きです。たとえばジャズはインストゥルメンタルが主流だったりもしますが、やっぱり今のポップミュージックのシーンは歌が主流で、プロデューサーもトラックメイカーもミュージシャンも歌に尽くすべきという音楽ですよね。たとえばライブでギターを弾いているときもシンガーが何をしているかに反応するわけで。一方でシンガーってワガママじゃないですか。たとえばAnderson .PaakにしてもBruno Marsにしても、自分の曲はシンガーとしてのワガママというか、自分が歌ってみての気持ちよさを押し出しているけど、他の人に提供した曲は技能的でワガママが少ない。自分でもVivaOlaをやっているときはそういうのが近いのかなって思います。

─ということは、いろんなアウトプットがあるなかで、シンガーとしてのエゴを強く押し出すのが、VivaOlaのプロジェクトである、と。


そうですね。バークリーに行ったのもそれが理由でした。向こうでは他のみんながどうしているかも吸収できたし、アメリカの音楽を現地で聴くだけでも初めて気付くことは沢山あったと思います。


R&Bのヴォーカル・スタイルが一番好きで、そこにこだわりがある

─リスナーとしてのVivaOlaさんについてはどうでしょうか?振り返ってどんな音楽に刺激を受けてきましたか。


リスナーとしては、意外とロックが好きで。特に一番好きなのがONE OK ROCKで、今でもずっとファンです。ファンクとかロックが好きだったんですけど、シンガーとしては、自分の声があまり強い声じゃなくて。いろいろ模索した中で自分の声に合うと思ったのがR&Bでした。

─R&Bにもいろんなアーティストがいますが、どんな人が憧れでしたか。


僕が最初に聴いていたのは、ブライアン・マックナイトですね。やっぱり基礎から、っていうイメージもあったので。楽器をやっていたけど、シンガーの友達に「歌をやりたい」という話をしたときに「この人がいいよ」という話になるのが、やっぱりブライアン・マックナイトが多かった。あとはディアンジェロも大きいですね。自分が元々好きだったジャズから好きになったネオ・ソウルとかR&Bがディアンジェロでした。昔から女性の曲が好きで子供のときから裏声で歌っていたんですけど、ディアンジェロも裏声の歌が多くて。そこにも影響を受けていますね。最近の『Black Messiah』もロック調の曲が入ってたりして、好きですね。

─VivaOlaとして活動するときには、R&Bというくくりは意識していますか?


意識してますね。そうじゃないと何でもありになっちゃう。アルバムでもレゲトンが入っていたりするし、ニュー・ジャック・スイングが好きで入れていたりもするし、何がR&Bで何がそうじゃないかとか、言い出したらきりがないんですけどね。ソングライティングとしては何でもありになっている。向こうの人もそうだし、僕が好きな人とかもみんなそうしてるし。その一方で、ヴォーカリストとしては基本忠実でいたいと思います。R&Bのヴォーカル・スタイルが一番好きで、そこにこだわりがあるのかもしれないです。The Weekndにしても、80年代のシンセ・ポップみたいな曲調でも歌の質感とか声の出し方がR&Bになっていて、彼そのもののような音楽になっている。ああいうのが好きですね。

─ヴォーカル・スタイルの話で言うと、VivaOlaさんは先ほど自分を「強い声ではない」と言いましたよね。Bruno MarsとかThe Weekndはどちらかと言うとこってりとした、喉の張りを感じさせるような声だと思うんです。VivaOlaさん自身の性質はちょっと違うところにある。


そうですね。もっとあっさりめというか。最初はそれがコンプレックスだったんです。それこそロックが好きだったから、学生時代にカラオケ行ったときに声を張り上げたり強く歌ったりするんですけど、声が持たない。自然と息が入っちゃうような感じもあって。自分ではそれが嫌いだったけど、曲を作ったときに友達から「この声よくない?」って言われて。それがもしかしたら個性なのかなって思ったんですね。それで、この声を活かしたことをやろうと思ったんですね。


いろんな意味の「寂しい」を追求したアルバム

─この『STRANDED』という作品は、どういうイメージから発想して作っていったものなんでしょうか。


タイトルとしては、最初に出した『Bloom』というEPと繋がってるんですね。「Bloom」というのは「咲く」という意味なので、それをコンセプトにしていて。自分にとっても「こんな自分がいたんだ」というような作品ですね。音楽性もネオ・ソウルやジャズの感じに統一して作った。で、今回はもっとヴォーカリスト的な視点を考えて作った感じで、初めてVivaOlaっぽいアルバムを作れたという感じです。『STRANDED』って「漂流する」とか「孤立する」って意味で。コロナ前から僕は家にずっと引きこもるタイプで。『Bloom』のときは気付かなかったけど、単純に「俺めっちゃひとりぼっちで寂しいな」って気付いて。



─孤独感がひとつのキーになった。


今まで作ったのは、それぞれ自分の音楽人生を振り返ったもので。『Bloom』は何かを絞り出そうとしてる自分がいて、『STRANDED』は出せる自信がついたから、改めて振り返ったら「自分の音楽人生って孤独だな」って。ずっと部屋で曲を作って、見えない誰かにずっと曲を投げかけようとしている。でも、そういうちょっと寂しい感じがいいんですよね。華やかなスタジオに入って作ることもしたいけど、そうなってもこの時を思い出すと思う。自分の家でひたすら好きなものを作って、それがいつか会ったことのない人にも届く。元々引っ込み思案なほうだったから、コロナの前からずっとそう思っていて、そういう意味で、『STRANDED』はそういうものを歌う作品にしたかった。いろんな意味の「寂しい」を追求したアルバムです。



─曲を聴いて感じるのは、ネガティブなマイナスイメージの孤独だけじゃなくて、どこか温かくて心地よい、寒い家の暖炉の前の孤独のようなイメージもあるなと思ったんですが。


そういうイメージはありますね。悪いことが起こっても思い返して「いい思い出だったな」って思える程度の温かさというか。「One of these nights (feat. Jua)」は惨めな歌詞なんですけど、曲はすごく温かくて、逆に「Smile (feat. Ⅲ-doo)」は誰かが悩んでいるのをひたすら慰めているような悲しい歌詞を、楽しいメジャーキーの曲に乗せている。嬉しい曲調に悲しい歌詞を置いたり、悲しい曲調に嬉しい歌詞を書いたり、そういうのが好きですね。

─曲でいうと「Even After All」はストレートにエモーショナルですね。


直球でわかりやすいですね。これがアルバムで最初に書いた曲なんですよ。方向性がまだわからない中で書いた曲で、3回くらい書き直しました。

─それこそONE OK ROCKにも通じるような、ロックの曲としても成立するタイプのメロディだと思うんです。それがこのアレンジとヴォーカルスタイルによって、R&Bとして成立している。そういうところは、『Bloom』と違う扉を開けた感はあるなと思いました。


そうですね。ジャズとかネオ・ソウルみたいなジャンルにとらわれないで、それを道具として使って曲を作っていくというか。そういうところは確かに意識しましたね。

─「Tokyo Syndrome」についてはどうでしょうか? J-WAVEの「TOKIO HOT 100」でTOP10にランクインしたり、この曲が今までVivaOlaを知らない人に届くきっかけになったと思うんですが。この反響はどう捉えていましたか。


ちょっと意外っていうか。僕のなかで「Tokyo Syndrome」と「Superficial」って、けっこう遊んだ曲っていうか、挑戦的な曲なんです。個人的に考えていたのは「Tokyo Syndrome」はWez Atlasとのダブルネームで出した曲だったんで、Wezはやっぱりヒップホップ、それもトラップじゃなくてブーンパップがバックグラウンドにあるから、そういうトラックを作ったんですね。そこからキーボードの音色を試行錯誤したり、ベースの音色をお互いのパートで変えたりして作っていった。こういうものが受けるんだって思った。そういう感じでした。

─Wez Atlasさんとは、高校時代からの友達なんですよね。彼と気が合う理由はどういうところにありました?


そもそも入学が同じだったんです。僕たちはどっちも9月入学の枠で入ったので。ただ、最初はお互い知ってたけど、全然話さなくて。あっちはサッカー部、僕はジャズ部で、同じクラスでもなかったし。でも、高校3年生になってあいつが文化祭でラップするようになって。自分でトラックを作り始めたときに「そういえばラップするやつ、うちの高校にいるじゃん」って。「ビート作ってるから、ラップ乗せてくれない?」みたいな感じで、そこから仲良くなっていきましたね。


補い合うというよりも、積み重ねあう関係

─VivaOlaさんとWez Atlasは、〈Solgasa〉という音楽/アートコレクティブのメンバーでもありますよね。michel koさん、Tommi Craneさんも含めた4人はどういう風に集まったんでしょうか。


Wezと2人が大学の友達で、僕はバークリーに行ってVivaOlaを始めて日本に帰ってきて、後から入ったみたいな感じですね。

─すごく風通しのいい仲間のような感じがするんですが、どんな関係性なんでしょうか。


やっぱり普段から友達みたいな感じですね。音楽の話をするにしても、たとえばみんなでトラヴィス・スコットのライブを観たりするような、そういう仲で。実際に曲を作るとなると、みんな個性を出しまくるんですけど、やっぱり友達ノリはあって。それこそTommi Craneと「The Artist」っていう曲を作ったときも、ZOOMで話したときにTommiが絵具の筆を2本持って「これをカンカンやったら、ドラムスティックっぽくない?」って話したとこからイントロのカウントの音を作ったりしました。

─コレクティブというのは、バンドとは違った関係性ですよね。それぞれが一人のアーティストとして活動しながらも、チームであることでプラスがある。このあたりはどういう感じなんでしょうか。


補い合うというよりも、積み重ねあう関係かなって思います。例えばWezはビートは作れないけどラップはできるし、ビジュアルとか映像に対してのこだわりが強い。michelはシンガーでいいメロディを書くんですけど、音楽理論はあまり知らなくて、ダンスに興味があって、ダンサーを集めて動画を撮りたかったりする。Tommiはプロデューサータイプで一人で黙々とやってる。みんなが曲を書けるわけじゃないし、みんなが踊れるわけじゃないし、お互いできることとできないことがあって、それがいい意味で混じり合う。ベーシストがずっとベースを弾くみたいな、決まった役割はなくて。お互いが一人で立って、たまに路線が重なって、同じ目標になったら一緒に進む。そういう関係ですね。

─12月には「nocturnalis」というEPがリリースされる予定ですが、これはどういうものを意図して作ってるものなんですか。


まず、『Bloom』『STRANDED』という最初の2作は自分にとっての第一期だと思っているんですね。で、ここから第二期の始まりを予感させるみたいなものにしたいと思ってます。最初の2作は自分を表現するというか、自分のバックグラウンドを示したアルバム。それを作った次は、物語を書いて曲にしたいと思っているんです。ストーリーがあって、それをもとにしたコンセプトを何曲かで表現するということをやろうと思っています。

─VivaOlaの第一期というのはどういうものだったという感じでしょうか?


自己実現だったと思いますね。もちろん当時からそう考えていたわけではないし、『Bloom』の時はひたすら自分がどういう音楽性をやっていこうかを模索していて、あれができた。『STRANDED』はそれをもっとスマートにヴォーカリストとして昇華できるように頑張った。ひたすらに、なりたい自分を探していた結果だと思います。

─最後にもうひとつ。自分が辿り着きたい場所、目指している理想像はどんなものがありますか?


始めたときから思っているのは、いつかグラミー賞をとりたいということですね。そこをひたすら考えています。


取材・文:柴 那典


RELEASE INFORMATION

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VivaOla「STRANDED」
2020年12月2日(水)
Format: CD / アナログ / デジタル
Label: HIP LAND MUSIC

Track:
●CD
1.Superficial
2.Tokyo Syndrome(with Wez Atlas)
3.Runway
4.On My Side (feat. Thomas Ng)
5.Even After All
6.Smile (feat. Ill-doo)
7.One of these nights (feat. Jua)
8.Vise le haut(starRo Remix)
9.Runway(ZIN Remix)

●アナログ / デジタル
1.Superficial
2.Tokyo Syndrome(with Wez Atlas)
3.Runway
4.On My Side (feat. Thomas Ng)
5.Even After All
6.Smile (feat. Ill-doo)
7.One of these nights (feat. Jua)

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VivaOla - Runway [Official Video]





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VivaOla,Wez Atlas,Jua「 Vise le haut(starRo Remix) 」
2020年12月2日(水)
Format: デジタル
Label: HIP LAND MUSIC

Track:
1. Vise le haut(starRo Remix)

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オフィシャルサイト
@viva0la
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