SENSA

2022.06.10

ストイックなオルタナサウンドが投げ掛ける青い揺らぎ「acd.」-Highlighter Vol.134-

ストイックなオルタナサウンドが投げ掛ける青い揺らぎ「acd.」-Highlighter Vol.134-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。 Vol.134は、大阪発の3ピースバンド、acd.を取り上げる。
ひさびさの新作『EP2』から聴こえてくるのは、生々しい揺らぎを湛えながら重心低くうねり、性急に加速するダイナミックなオルタナサウンド。3人きりのタイトなプレイで青いメランコリーを解き放つ、会心の2曲となっている。


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活動を始めたきっかけ
メグミ(Vo/Gt):東京で前にやっていたバンドが解散して、大阪に帰ってきました。1年ほどしたとき、「もう一度バンドやらないか」と二人に誘ってもらいました。温泉同好会の延長のような感じで始まったけど、やり始めるとまた楽しいと思えてきて、作曲がどんどん進んでいきました。

影響を受けたアーティスト
メグミ:どの時代に影響を受けたかでだいぶ変わってきますが、一番は高校生のときに出会ったMy Bloody Valentineです。女性でもかっこいいバンドができるんだと思ったし、メロコア/スカコア・ブームのなか、京都の路地のCDショップでたまたま見つけたピンクのジャケット(ジャケ買い)から、あんな轟音が流れてくるなんて思ってもなかった。帰ってパッケージを開けると、海賊盤でした。シューゲイザーというものに初めて触れた瞬間で、何度も何度も繰り返して聴きました。後に正規の『Loveless』(1991年)を買いました。


エリ(Ba):高校生で初めてバンドを組んだとき女3人だったんですが、そのときにコピーしていたのがSOFTBALLです。「女の子3人だけのかっこいいバンド、ああいうふうになりたい!」という憧れの存在でした。当時は、ドラマーでしたが......。その後、紆余曲折ありベーシストとしていろいろなバンドを経て、また女3人でバンドやってるのが不思議。「ギャルバンはもう絶対やらない!」と誓ったのに(笑)。


サユリ(Dr):影響を受けやすい体質のわりに、影響を受けたアーティストや音楽は何かという問いにはいつも迷走してしまいますね。「あれもかな? これもかな? あれもこれも好きだしな」って。なので、今回は今でも記憶にあるアーティストと根底にあるアーティストをふたつほど。

ひとつはMuse。2004年の〈グラストンベリー・フェスティバル〉で初めてヘッドライナーを務めたときのDVDがあるんですが(2005年リリースの『Absolution Tour』)、それをずっと観てました 。デビューアルバムから聴いてたんですが、なんか感動しちゃって。「大きくなったなぁ」って勝手に親近感湧いてました(笑)、3ピースですしね!「かっけぇー!〈グラストンベリー〉出てぇ!!」ってずっと興奮しながら観てましたね。当時、全然違うジャンルの音楽が好きな友人の前でMuseを聴いてたときに、「どういう気分のときに聴くの?」って聞かれたときがあって、「Muse聴きたい!って思うときに聴くんだよ!」って啖呵切ったの思い出しました(笑)。



ふたつ目はNine Inch Nails。年代的には少し上の方がドンピシャだとは思うのですが、知ってはいても、初めは自分のなかにそれほど入ってこなかったんですよ。それがあるとき、ライブ映像を観たのかな? 忘れちゃったんですけど、「え? 何これ? ヤバいんですけど」ってなったんですよね。完全に語彙力なくしてました、今もですけど。なので、残念ながら言葉では伝えられません(笑)。そこからはもう自分の根底って言っても過言ではないのかもしれないと思うほどです。今でも衝動が抑えられません!

ざっくり言うと、派手で衝動的でドラマチックで音がかっこいいバンドが基本好きです(笑)。



注目してほしい、自分の関わった作品
メグミ:今回のacd.『EP2』ですが、録音してから実は2年以上経っていて、お蔵入りになりかけた音源です。ちょうど録音時期にコロナの一波が始まって、その後ロックダウン。人に会えない、ライブができない状況などが重なりました。メンバーは会社員だったので、そもそも頻繁にライブをしていなかったし、そのなかでのステイホームは、私たちの動きを完全に止めました。

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宅録風景。主なベースの曲作りは宅録


ただ、音源を出すタイミングを見失いながらも、聴いてほしい気持ちもあって、そんなときにライブのお誘いがあって。それを機に配信を決めました(そのライブのお話は残念ながら流れてしまったのですが......)。

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下北沢three、ランチタイムワンマンショーでのライブ風景


〈言いたいことがちゃんと伝えられる世の中に〉という思いがあります。表面上のものだけを信じたり、それによって傷ついたり、余計な摩擦が生じたり。一歩踏み込んだ情報や、柔軟な考え方とか、個々の見極める力が大切だと強く感じました。

肩の力を抜きながら、楽しく生きたいです。「表と裏」と「まぼろし」、聴いてください!



今後挑戦してみたいこと
メグミ:自分たちのペースで、〈楽しい〉を一番に考えて活動していきたいです。

カルチャーについて

触れてきたカルチャー
メグミ:映画や漫画が好きです。映画は、親が映画好きで見ていたので、私も自ずと観るようになりました。掘り下げるとキリが無いので、最近観て感動したもので言いますと、アニメーション映画の『音楽』と、ミュージカル映画の『アメリカン・ユートピア』。

『音楽』は、右も左も分からない時の自分を見ているような感覚で、音が出るだけでかっこいいとか、誰かと演奏する感動とかを思い出して、胸が熱くなりました。


『アメリカン・ユートピア』。は、私は元々トランペット吹きなのですが、(ドラムのサユリは打楽器で、大学のオーケストラで知り合った)中学の時にはマーチングバンドをやっていたので、何かを演奏しながら動く事の難しさは知ってるつもりです。演奏だけでも凄い難しいことをしているのに、めっちゃ動くんですよ。
それでもって、David Byrneの歌が脳に突き刺さってきて、かつステージが幻想的で夢を見ているようでした。


アニメは『攻殻機動隊SAC_2045』で、アニメシリーズから映画、どれを取っても最高ですが、SAC_2045はシーズン1では一度観るのを断念しています。
アニメを見すぎて、3Dの草薙素子が一つも頭に入ってこず寝かせていました。シーズン2が始まったので固定概念を捨て見始めました。
近い将来の話かもしれない世界線と、時間軸が変わるストーリーの面白さ。公安9課かっこよすぎ。公安9課の面々が集まるだけで胸熱です。


漫画は和山やまさんの作品で、『女の園の星』はピッコマ読んでいて、たまたま辿り着いたのですが、シュールさと雰囲気が好きで、のちに全作品買いました。ずっと肩の力抜けてるのに笑えます。

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最近読んだ『女の園の星』和山やま (著)


絵は我喜屋位瑳務さん。気になったイラストレーターの方とかをフォローするのですが、関連で検索に出て来て、線とタッチと色合いが好みでフォローしたのがキッカケです。ソリッドでいて、ユーモアもあるイラストを描かれていて待ち受け画面にもさせていただいてます。

感覚的にハッとさせられて、「このまま行けー!」と言われているような、晴れた気持ちになるという共通点があって活力になります。

絵を描くことも好きです。絵は小さな頃から好きで、コンクールなどで入賞した事があって、それが自信と、活力になりました。その延長で、漫画も描いてみたいと思ったのですが、どこに送ればいいか分からず、道端に落ちていたエロ本の最後に応募先があったので送ったのを覚えています。

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2021年のFLAKE RECORDSの新年ノベルティ作成。タイトル: 上向き(自画像)



今注目しているカルチャー
メグミ:コーヒーです。バンドから一度離れたときに、私に残った好きなものがコーヒーくらいだったので、コーヒー関連の会社で働き、いろいろ勉強して試験を受けたりもしました。手間暇かけて育てられ、摘み取られたコーヒーは本当に美味しくて、心を豊かにしてくれます。

浅煎りのスペシャルティコーヒーが好きで、8月末に大阪の天神橋でお店がオープンする予定です。スペシャルティコーヒーと台湾ドーナツのお店です。楽しみです。

RELEASE INFORMATION

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acd.『EP2』
2022年6月1日(水)
試聴はこちら

PROFILE

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acd.
ex.ecosystem/ULTRAのメグミ(Gt)、ex.ハヌマーン/マイミーンズのエリ(Ba)、ORANGE STONESのサユリ(Dr)から成る大阪発の3ピースバンド。2016年に結成。
2017年夏、完全自主制作の2曲入りシングルをライブ会場とFLAKE RECORDS限定でリリースし、500枚をソールドアウト。
2019年6月、初のフルアルバム『アンネサス』を発表。Apple Musicが最も注目すべき新人アーティストを週に1組ずつ紹介する企画〈今週のNEW ARTIST〉に選出される。
2022年6月、2曲入りEP『EP2』をデジタルリリースしたばかり。

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