SENSA

2022.06.10

オカモトコウキが穏やかに語る〈喪失と時間の関係〉──ブラジル音楽を起点に芳醇な音世界が広がる新作『時のぬけがら』

オカモトコウキが穏やかに語る〈喪失と時間の関係〉──ブラジル音楽を起点に芳醇な音世界が広がる新作『時のぬけがら』

音楽を再生する。そのときに"再生"されるものは、空気の振動だけではないのかもしれない――そんなことを考えるのは、オカモトコウキの2ndソロアルバム『時のぬけがら』を聴いたからだ。OKAMOTO'Sのギタリスト/コンポーザーというフィルターを抜きにして見ても、この『時のぬけがら』は、ひとりのシンガーソングライターが作り上げた作品として、あまりにも素晴らしい。私はこの作品の隣に、曽我部恵一や七尾旅人といった人たちが作り上げてきた素晴らしい作品たちを並べたい衝動に駆られている。

多くの曲を共作した大林亮三(SANABAGUN./Ryozo Band)をはじめとする同世代のミュージシャンたちとオカモトコウキが作り上げた、豊潤な音楽世界。ここには、ブラジル音楽を媒介に意気投合したという、オカモトコウキと大林が生み出した色とりどりのリズムの躍動があり、甘いメロディがあり、有機的な楽器の重なりと深いエレクトロニクスの響きがあり、そして、内省的で、聴き手にそっと寄り添うような穏やかなフィーリングがある。すべての楽器をひとりで演奏した前作『GIRL』(2019年)とはある意味、対照的な作品と言えるが、アノラックサウンド的な魅力を持っていた『GIRL』と本作が通じているのは、やはりその"繊細さ"であり、ここにオカモトコウキというソングライターのチャームがあるのだと思う。

この傑作が如何にして生まれたのか、オカモトコウキに話を聞いた。彼は本作を、"喪失と時間にまつわる作品"であると語っている。


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大林亮三に感じたシンパシー

─ソロ2作目となるフルアルバム『時のぬけがら』、音楽的な豊かさと同時に内省的な深さも感じさせる、本当に素晴らしいアルバムだと思いました。前作『GIRL』から2年半ぶりとなりますが、『GIRL』と今作は同じソロ作とは言え、まったく別のベクトルから生まれているものなんじゃないかという印象もあって。


オカモトコウキ:そうですね、僕自身、全然別物として捉えているかもしれない。

─コウキさんにとって、『GIRL』と『時のぬけがら』はそれぞれ、どういった位置づけの作品ですか?


コウキ:『GIRL』はOKMOATO'S10周年のなかで「初めてのことに挑戦しよう」ということで作り始めた、あくまでもバンド発信のものだったんです。なので楽曲に関してもOKAMOTO'S用に作ったけど使われなかったものが入っていたりするんですけど、今回の『時のぬけがら』に関しては100%ソロのために作った楽曲たちだし、よりソロアルバム然としたものだと思います。



─『時のぬけがら』の出発点はどういったものだったんですか?


コウキ:音楽的には、大林亮三くん(SANABAGUN./Ryozo Band)と出会ったことが大きいですね。2019年にOKAMOTO'S主催のイベントが新木場STUDIO COASTであったんですけど、そこにSANABAGUN.が出てくれて、そのときに亮三くんが『GIRL』のことを「良かった」と言ってくれていたんです。僕もSANABAGUN.やRyozo Bandで亮三くんがやっていることをすげえいいなと思っていたから、そこから「共作してみようか」という話が進んで。僕は僕で、これまでブラックミュージックやリズム&ブルース、ファンク的な要素を取り入れたいと思いつつ、特にリズムの面で上手く表現しきれていないなっていう意識がずっとあったんですけど、逆に亮三くんは、僕のメロディ重視な部分を気に入ってくれていたみたいで。

─お互い、自分が持っていないものを相手が持っているという意識があったんですね。


コウキ:そう、共作することで補い合えるものがあるんじゃないかって。それで最初に作った曲が「WORLD SONG」だったんですけど、この曲はいろんな音楽的な要素がクロスオーバーしているし、お互いの嗜好が上手く混ざり合っているし、「自分が今まで作ってきたものにはない、新しいものだな」と思って。「これで1枚アルバム作れるんじゃないか」と思ったことが音楽的には出発点でした。

─それぞれ別々のバンドで活動しているもの同士がアルバムを作れるほどに共振し合えるというのは、すごく貴重なことですよね。


コウキ:うん、一緒にやれるって実は珍しいことなんですよね。ミュージシャン同士で「今度一緒にやろうよ」なんて言うことはよくありますけど、それが実際に上手くいくかどうかは別の話で。僕と亮三くんの共通点は、何だろう......ひとつは、ふたりともブラジルの音楽がすごく好きだったんです。このアルバムを作っている際中にふたりの間でよく名前が挙がったのがAzymuthっていうブラジルのフュージョンファンクバンドなんですけど、「ああいう感じのサウンドをやりたいね」みたいな話をよくしていて。あと、お互いにバンドではコンポーザーであるっていうのも大きいかな。楽曲を作るし、立ち位置的にはバランスを取る場面も多いだろうし、そういうバンド内での役割的な面でもシンパシーを感じることは多かったような気がします。

─なるほど。


コウキ:ちょうどコロナ禍に入ったのもあって、直接会ったりはできなかったんですけど、リモートでキャッチボールしたりしながら、今までにないくらい時間をかけて1曲1曲を制作していきました。

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─今作は澤竜次さん(黒猫チェルシー)、TAIKINGさん(Suchmos)、マスダミズキさん(miida)、渡辺シュンスケさん(Schroeder-Headz)など、大林さん以外にも様々な方が参加されていますよね。


コウキ:言ってしまえば、ここ2~3年で出会ったベスト友達たちですね(笑)。コロナ禍でも新たに仲良くなったミュージシャンたちが意外と大勢いて。例えばavengers in sci-fiのふたりも、Studio KiKiっていう僕のスタジオで配信をやり始めたり(木幡太郎と稲見喜彦によるユニット、The Departmentが本作に参加している)。シンパシーを覚えるミュージシャンがここ2年くらいですごく増えたんです。

─『GIRL』は演奏もすべてコウキさんがおひとりでやられていたじゃないですか。あの方向性でもう1作、ということは考えてはいなかったですか?


コウキ:単純な話、あれはめっちゃ大変で(笑)。演奏時間も4倍かかるし。あと、『GIRL』は内容的にめちゃくちゃ気に入っているんですけど、「このアルバム、演奏がめっちゃいいんですよ」と言いづらいっていうのはあったんですよね。あのアルバムはギターもベースもドラムも全部自分ひとりでやっているから、「ここのグルーヴがいいよね」っていう観点ではない。そこが今回と大きく違う部分かもしれないです。「演奏がとにかくいいんだよ」とか、「ここは自分で思ってもみなかったものが出てきたんだよ」とか、そういうことを『GIRL』では語れなかったけど、今作は語れる。それは人と一緒にやる良さですよね。OKAMOTO'Sもそういうものだと思うし。

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どこか幽体離脱でもしているような

─今作のテーマとして、"喪失と時間"という言葉をご自身のコメントのなかで綴られていましたが、このテーマはどういったところから生まれたのでしょう?


コウキ:亮三くんと一緒に作っていくことで、言わばロックの形式美みたいなものとは違う、ファンクやR&Bの要素があり、かつサイケデリックな曲ができ上がっていって。この楽曲たちの掴みどころのなさに合うのは、『GIRL』で書いたような歌詞じゃないなってまず思ったんです。『GIRL』はどちらかというとスウィートな方向だったじゃないですか。ノスタルジックな部分は通じているかもしれないけど、ああいう感じとは今回はちょっと違うなと思って。で、その頃はコロナ禍で、ずっと家にいながらいろんな音楽を聴き直している時期だったんですけど、年代や国もバラバラの音楽が、自分の部屋でレコードをかければ再生されて、でも外には誰もいなくて......っていうその時の状況が、すごく特殊な状況だなと思って。ずっと家にいるんだけど、音楽ではいろんな年代や世界を飛び回るし、ましてや自分が聴いている音楽のなかには作った人がもう亡くなっているものもある。そういう状況にある自分が、なんとも言い表せない......幽体離脱でもしているような感じだなって。

─なるほど。


コウキ:最初、アルバムのタイトルは"幽霊気分"にしようかと思っていたくらい、自分の心やメンタリティも特殊になっていった。それと同時に、音楽だったら、このコロナ禍の気分を込められるなと思ったんです。今回、歌詞を書いていて面白かったのが、これまで僕は歌詞を書くときに、自分の出来事や、そのなかでも人に共感されそうなことを書いてきたけど、今回は自分の出来事のようでもありつつ、もっと客観的で、国や時世もわからないような歌詞を書いているような感覚があって。ちょっと物語っぽくもあるし、こういう歌詞の書き方をしたのが初めてだったんです。コロナの時期に井上陽水さんをよく聴いたんですけど、あの人の歌詞も、散文的なんだけど、そこから浮かび上がってくるものを聴く人それぞれが想像していくじゃないですか。今回のアルバムの歌詞の書き方はそういう感じに近かったのかなと思う。結構、今までとは歌詞の書き方が違うんです。

─その書き方の変化によって、作詞に今までと違う難しさが生まれたりしましたか?


コウキ:いや、むしろ今回は、歌詞を書いていて引っ掛かることが何もなかったんですよね。不思議だったのは、歌詞を書いていて、「あ、この曲はここまで書いたら完成だ」というのが初めてわかったんです。逆に「この曲はまだ言い足りていないな」っていうのもわかったし。今までは、歌詞を書いて時間が経つと「書き変えたいな」と思うこともあったし、時間の制約的に「ここまでにしておきましょう」って終わらせることもあったけど、今回は「ここまで書けたら、この曲で言わなきゃいけないことは全部言えたな」っていうのがはっきりわかった。それは1曲1曲、歌詞のなかで伝えたいことが明確だったからかもしれないです。

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音楽を媒介にして存在し続けるもの

─結果的にアルバムタイトルになった『時のぬけがら』は、曲が出揃った段階で付けられたんですか?


コウキ:そうですね。曲順も決まったあとに付けました。しっくりくる感じがしたんですよね、"音楽"って時間の抜け殻のようでもあるし、今回のアルバムの曲たちは、ここ2~3年の僕自身の抜け殻のようでもあるし。

─初めてタイトルを見たとき、真島昌利さんの『夏のぬけがら』を思い出したんですよね。


コウキ:ああ、『夏のぬけがら』は大好きなアルバムなんですけど、ギタリストのソロアルバムとして、あれはマスターピースじゃないですか。そこと被るのはちょっと気になったんですけど、まあいいかなと思って(笑)。とにかく自分にとって、『時のぬけがら』以上に今回のアルバムにしっくりくる言葉は見つからなかったんです。

─音楽は"時間の芸術"なんだということは、僕もこのコロナ禍以降、すごく意識するようになっていた気がするんです。それは長さや速度的な意味での"時間"もそうだし、自分の記憶と音楽との関わり方とか、もう既に亡くなった人や、既に解散したバンドの音楽を当たり前のように聴いていることの特殊さに改めて思い至ったり。


コウキ:そうなんですよね。シンプルに、もうこの世にいない人の音楽を聴いているのって、すごい体験だと思うんです。

─わかります。


コウキ:いない人の音楽を聴いたあとに友達の音楽を聴いて、次にポール・マッカートニーを聴いてとか、すごいことだと思う。「幽霊気分」に〈天国ではクラウド方式で音楽が手に入る〉っていう歌詞を書きましたけど、これは実際に、こんなことを言っていたDJの友達がいたんですよね。

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─1曲目はまさに「Time」というタイトルですね。この曲では〈時間はそう 常に同時並行で/それでもただ ここにいると感じてる〉と歌われていて。このアルバムは全体を通して随所にコウキさんの"時間"に対する捉え方が見えてくる気がするのですが、そのなかのひとつがここにあるのかなと思いました。


コウキ:僕、めちゃくちゃ細かいことを覚えているんですよ。歴史を記憶するのが得意みたいな話ではないんですけど、「あのとき、あの人があんなこと言ってたな」っていうことを覚えていたり、言われてムカついたことを寝る前に思い出して寝れなくなる、みたいなことがよくある。音楽もそうで。未だにすごくフレッシュな感覚で中学生の頃にイギー・ポップのアルバムを聴いて興奮した瞬間とか、THE BLUE HEARTSを聴いてめちゃくちゃグッときた瞬間を思い出せるんです。それってつまり、その瞬間がずっと続いているというか、今と同時に存在しているっていうことなんじゃないかと思って。「folk」もそれと通じることを書こうとした歌詞だと思います。この曲は前半を僕が書いて、後半を(藤原)ヒロシさんが書いたんですけど、この後半の歌詞、すげえいいなと思って。自分が言いたかったことを言い当てられている感じがしました。

─コウキさん自身のコメントのなかにも「音楽というのはある意味タイムマシンであり、永遠である。」と書かれていますけど、音楽にそうした意味合いを見出したことは、コウキさんにとってどんな体験だったのだと思いますか?


コウキ:30代にもなって、こうやっていろんなことがあると、宗教じゃないけど、何か理由や頼るものが欲しかったりするもなんだなと思って。それが自分にとっては音楽だったということだと思います。自分が音楽を通して何かを思い出せるということは、やっぱり「そこに存在している」っていうことというか。物事が消失したとしても、自分のなかで生き続けるものはあるし、音楽を聴くことでそれを思い出せるし。思い出せるということは、消失してはいない。「まだ自分のなかにあるんだ」って思うことができているということだと思うので。

─コウキさんの作品を聴いた人にとってもまた、コウキさんの音楽はタイムマシンであり得る、とも言えますよね。


コウキ:そういうことなのかもしれないですね。作品を作るってどういうことなのかずっと向き合ってきたけど、何をもって達成とするのかわからないんですよ。「意味なんてないんじゃないか」と思うこともあって。でも、今言ってもらったようなことがあるのであれば、意味があるんでしょうね。今、20代のときとは違った形で、音楽が自分にとって意味合いを持ってきているような気がします。20代の頃は憧れが強かったけど、それとは違ったベクトルで、自分のなかで音楽が重要な意味を持ってきているような気がする。

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原風景に繋がる"どこにもない場所"

─アルバムの最後を飾る「いつかの絵」は、アルバムの着地点として、すごく穏やかで普遍的な場所に聴き手を導く1曲だと思うのですが、この曲はコウキさんにとってどんな曲ですか?


コウキ:自分が人生の最後に何を思うかって、さすがに30代に入ったばかりの男が想像するのはいくらなんでも時期尚早だと思うんですけど。でも、今の時点でもいいから、「自分にとって一番いい思い出ってなんなんだろう?」とか、「どんなことを最後に思うんだろう?」とか、そういうことを思いながら書いた曲ですね。

─"絵"というのは、コウキさんのなかで具体的なモチーフがあるんですか?


コウキ:ヨーロッパ旅行に行ったときに、オランダのゴッホ美術館でゴッホの絵を観たことがあったんです。そのときに、不思議と"懐かしさ"を感じたんですよね。ゴッホの絵を見て、「ここに行ったことがある」と思ったんです。子供の頃、夏休み行っていたお婆ちゃんちの周りの風景みたいだなって。そういう原風景みたいなものって、案外、他の国や場所にいる人たちでも共通しているんじゃないかと思ったんです。ゴッホさんはきっと、「自分にとっての美しい風景ってどういうものなんだろう?」っていうことを自分のなかで突き詰めて、それを絵のなかで表現したんだと思うんですけど、それが、僕のなかにある景色と似通っているような気がした。そういう原風景的な場所に行きたいというか、そういう場所のことを最後には思い出すんじゃないかなと思って。だから、この曲のタイトルは「いつかの絵」なんです。

─今作はジャケットが少し不思議なのですが、これはどういったコンセプトで作られたんですか?


コウキ:それこそ「いつかの絵」じゃないですけど、「見たことはあるけど、行ったことはない」みたいな場所がいいなと思って。細野晴臣さんの『はらいそ』のジャケットがコラージュでできているじゃないですか。イメージはあれに近くて、「ここ、どこなんだろう?」と思うような場所をジャケットにしたいなって。しかも、アルバムタイトルの『時のぬけがら』に合わせて、時間が止まっちゃっているような場所がいいなと思ったんです。デザインしてくれたのはずっと一緒にやってくれている友達のデザイナーなんですけど、「廃墟がいいんじゃない?」という話になって、まずは廃墟で撮影して。ただ、窓の後ろに見えている海は合成なんですよ。それによって、"ない"場所を作り上げている。すげえいいジャケットになったなと思います。

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自動筆記的に"作らされた"ようなアルバム

─"WORLD SONG"の歌詞に〈僕らの10年代は転んでつまずいて/本当に伝えたい言葉は/どこにもない だから〉という一節がありますよね。2010年代はまさに、コウキさんがOKAMOTO'Sとしてデビューし、活動されてきた期間ですが、ご自身ではこの一節にはどんなことを感じますか?


コウキ:音楽史を語るときに1960年代、1970年代っていう言い方をしますけど、2010年代っていう年代をまるまるOKAMOTO'Sとして活動したんだなと思って。じゃあ、その10年間を通して何を伝えられたんだろうと思ったときに、何も伝えられていないような気もするし、いろんなことを伝えられたような気もするし......すごく不思議な感覚なんです。「まだまだ言いたいことがある」という感じもあるけど、こういう感覚が10年経ってもあり続けているというのが意外でもあって。バンドを始めた頃って、10年間やっている先輩ミュージシャンはみんな確信をもって音楽をやっているんだろうと思っていたけど、自分が実際に10年間活動してみると、10年前と今とでは、全然変わってねえなって思うこともあるんです。ひとつ言えるのは、"満たされる"っていうことはないんだなって。

─そのうえで、今作『時のぬけがら』を作り上げたことで、コウキさんは、どんなものを得たと思いますか?


コウキ:今回のアルバムって、自分の経験ややってきたことの先で、「ついにこんな作品ができたんです!」というものではなくて、自動筆記的に、必然的に"作らされた"ような感覚もあるんです。自分で聴いてみても、「これ、本当に自分で作ったのか?」と思うくらい、まさに幽体離脱でもしたかのように、「どこから出てきたんだろう?」と思う曲ばかりで。きっと今このアルバムを出さなきゃいけなかった理由があったんだと思うし、それはこれから何年もかけて「そういうことだったのか」ってわかることもあると思う。「自分のものじゃないんじゃないか?」と思うくらい夢中になって作り続けて、気が付いたらアルバムができていた。こういう感覚には、いつかまた出会ってみたいです。



─ソロ活動に関して、今後また作品を作ることは考えられているんですか?


コウキ:現時点では、自分の言いたいことはこのアルバムで言い切ったので、「バンド頑張ります」っていうモードなんです。でも、いろんな人に「ソロも続けたほうがいいよ」と言ってもらっていて。今回、マスタリングをユニコーンのABEDONさんがやってくれたんですけど、マスタリングが終わってご飯を食べに行ったときに、ABEDONさんが「もっとやったほうがいいよ」と言ってくださったのも大きくて。そんなふうに言ってもらえるのなら、「もっとやってみようかな」って思ったり、思わなかったり......っていう感じです、今は(笑)。

─こうしてソロを2作品作られたうえで、ソングライティングやギターという面はもちろんなんですが、人間的な面でも、自分はOKAMOTO'Sというバンドにどんなものを持ち込んでいるのか、改めて見えたことはありますか?


コウキ:そうですね......最近思うことをまず言うと、もっと僕が私小説的な曲をOKAMOTO'Sのなかで出していくことも重要なんだなと思っていて。そうすることによって、バンドとしての奥行きも増すのかなって。なので、今後はソロとOKAMOTO'Sをそこまで分けずに、ソロでやるような楽曲をバンドでやるのもいいのかなって思ってます。このアルバムのフィーリングをOKAMOTO'Sの音楽で表現するのが次の目標かもしれない。

─確かに、今作のようなタイプのコウキさんの曲が、OKAMOTO'Sのレパートリーになったのも聴いてみたいです。


コウキ:あと、OKAMOTO'Sの4人のなかで、僕はある意味、"欠点"のような存在でいたいとは思っていて。

─欠点ですか。


コウキ:僕からすると、OKAMOTO'Sの他の3人って隙がなさ過ぎるんですよ。シンパシーを感じられないというか......言ってること、わかります(笑)?

─まあ、わかります(笑)。OKAMOTO'Sというのはやはり、超人集団というか。


コウキ:僕から見てもそうなんです。ハマ・オカモトなんて隙がなさ過ぎる。そのなかで、僕は"ほころび"でありたいというか。「ここ愛せるな」っていうポイントでありたいし、僕が他の3人のそういうポイントを引き出してあげられたらいいんじゃないかなって思うんです。だって、ハマ・オカモトが休日にズルズルのスウェット姿でコンビニに行っている姿が見えたほうが愛せるじゃないですか(笑)。そういう感じをOKAMOTO'Sのなかで担えるのは、自分だよなと思う。だからこそ、「普通の人はこういうふうに思うんじゃないの?」っていう感覚を大事にしたいと思って曲作りをしているし、そういう感覚をOKAMOTO'Sに入れ込んでいけたらなと思ってますね。

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取材・文:天野史彬
撮影:林直幸



RELEASE INFORMATION

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オカモトコウキ(OKAMOTO'S)2nd Solo Album 「時のぬけがら」
2022年4月27日(水)
Format:CD/Digital
品番:SLRL-10087
Label:Sony Music Artists Inc.
3,300 円+税

Track:
1. Time
2. 君は幻
3. 惑わせて
4. WORLD SONG
5. SMOKE
6. 幽霊気分
7. プール
8. 蜃気楼
9. folk
10. Thousand Nights
11. いつかの絵

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PROFILE

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オカモトコウキ(OKAMOTO'S)
1990年11月5日東京都練馬生まれ。中学在学時、同級生とともに現在のOKAMOTO'Sの原型となるバンドを結成。
2010年、OKAMOTO'Sのギタリストとしてデビューし、アメリカSXSWやイギリス、アジア各国などでもライブを成功させ、日本国内では日比谷野外音楽堂、中野サンプラザなどでもライブを開催。10周年となった2019年には初めて日本武道館で単独ワンマンライブを成功させ、初ソロアルバム「GIRL」をリリース。アグレッシブなギタープレイとソングライティング力は評価が高く、菅田将暉、関ジャニ∞、PUFFY、Negicco、小池美由など多くのアーティストに楽曲を提供。またPUFFY、YO-KING、ドレスコーズ、TAIKING(Suchmos)、トミタ栞、堂島孝平、ナナヲアカリなどのライブでのギターサポートも務める。ソングライティング力を生かしバンドの中心的なコンポーザーとしても活躍している。


LINK
オフィシャルサイト
@Okamotokouki
@okamotokouki

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