SENSA

2024.02.22

LITE、当代屈指のオルタナティヴロックが鳴り響いたワンマンライブ『STRATA』東京公演

LITE、当代屈指のオルタナティヴロックが鳴り響いたワンマンライブ『STRATA』東京公演

「インストロックバンド、LITEです」

冒頭のブロックを終えた武田信幸(Gt/Vo)の挨拶に続くMCで、オルタナティヴロックバンドでもあるよね、という話をしていた。何気ない会話だったのだが、たしかにその通りである。新作で歌が入った曲が増えたからインストに括りきれないというだけでなく、歌の有無自体に意識を向わせる暇がないほど、エモーショナルでダイナミックな──すごくポップというわけでもないのでオルタナティヴという形容がちょうどいい──ロックの醍醐味に満ち溢れたライブであった。

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LITEにとって久々のワンマンライブとなった恵比寿LIQUIDROOM公演は、約4年半ぶりのアルバム『STRATA』のリリースに伴うもの。開演を告げる暗転のあと、まず楠本構造(Gt/Syn)のみが登場して打ち込みで構築された「Upper Mantle」をプレイし始め、曲中で登場した山本晃紀のドラム、井澤惇のベースを契機としてシームレスに「Deep Inside」へと繋ぐという、アルバムを踏襲したスタートだ。「今日は来てくれてありがとう」という朴訥とした調子の挨拶そのままのトーンで、武田がポエトリーリーディング調の歌を歌いはじめる。ダークで抑えの効いたアンサンブルは、同一のフレーズをループしていくうちにジワジワと熱を帯び、肉体的なグルーヴへと変貌していく。井澤のスラップと山本のスネア連打がビシッと噛み合う瞬間など、ライブでこそ体感できる有無を言わさぬ快感ポイントも満載だ。

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楠本の軽い調子のカッティングに、不釣り合いなほど重厚で叩きつけるような縦ノリが融合した「Crushing」までをアルバム収録順に演奏したあと、疾走と不規則なストップ&ゴーを繰り返す「Zone 3」でボルテージを一段階上げ、ハードロッキンな音が今となっては新鮮で痛快な初期のナンバー「Tomorrow」へ。キメやブレイクのたびに歓声を上げるオーディエンスは、LITEの楽しみ方を、本能的な音楽の楽しみ方を熟知している。

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井澤がフレットレスのアコースティックベースで繰り返すリフに武田がリーディングを乗せる「Dark Ballet」で、じっくりと腰を据えた演奏でダブ的な響きを生み出すと、「Lower Mantle」ではシンセやパッドのクールな音像に断片的でファジーなギターが絡み合い、民族音楽にも通じる脈打つビートがフロアを揺らす。楠本の鍵盤を中心としたミニマルな演奏に、他の曲よりも若干メロディアスな武田の歌とベースラインが絡み合い引き立て合ったのは「Endless Blue」。『STRATA』の曲たちは激烈な展開やスペクタクルなプレイが控えめな反面、曲全体を通して、あるいは複数の曲にまたがって起伏や緩急をつけるタイプが多く、それらが加わったことによって、ライブ全体の流れもまた巨大な上昇カーブを描くような印象となっている。

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アルバムタイトルの"STRATA"とは地層を意味する言葉である。地中奥深くに存在するマントルの上層部を意味する「Upper Mantle」、下層部を意味する「Lower Mantle」の2曲を前半のうちに終え、ライブはさらに深度を深めていく。その奥には何があるのか、それは地球でいう外核と内核──要するに核心部である。結成から20年あまり、磨き抜いてきたテクニックとグルーヴこそLITEの核心。中盤戦はその魅力を惜しみなく開放させていった。「Ghost Dance」では全員が同時にリフを弾いてるかのようなバチバチ感でロックのダイナミズムとカタルシスを荒々しく体現し、逆光に照らされシルエット状態で演奏された「Echolocation」は、ある種の"安らかさ"や"厳かさ"といった一面まで感じさせる。「Ef」のキラーチューンぶりも圧倒的で、キレキレのプレイを見せる武田に井澤が呼応し、楠本がカウンターのリフを決める。密度の高い演奏をまとめ上げ、推進させるのはもちろん山本のドラム。即座にフロアは波打ち、たくさんの手が掲げられる。

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『STRATA』収録曲の中で、最も彼らの探究心やチャレンジングな姿勢を反映し、最も驚きとともに受け止められたであろう「Thread」も、もちろん披露された。イントロの時点で上がった期待込みの歓声、その熱量とは裏腹に淡々と推移していくサウンドに、武田がギターを弾きながらラップを乗せていく。音源でのダウナーな印象と比べ、ライブバージョンは意外にも踊れるグルーヴをまとっており、場内はみな身体でリズムをとりながら楽しんでいる。途中でラップメタル調に変貌を遂げた際の高揚感は言わずもがなだ。

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さらには「Sosue」という新曲が披露される一幕もあった。この曲はなんと"アルバムの配信日にレコーディングをしたアルバム収録曲"なのだそう......書いていても意味不明なのだが、このあとリリースされるCD盤とLP盤は「Sosue」が加わった状態の『STRATA』として世に出る、ということらしい。曲調としてはシンセと変則的なリズムを基調とした、テクノ/エレクトロのニュアンスを持った曲(とはいえ井澤がひたすらスラップを続けていたりするアグレッシヴな面も)であり、アルバムにさらなる奥行きを与えることになりそうだ。

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終盤には『STRATA』随一のバンド感とトリッキーな展開を備えた「Breakout」、ダンサブルな4つ打ちのリズムながら徹底的に縦へと揺さぶってくる「Infinite Mirror」を続けて演奏して、会場のボルテージはMAXに到達。来場者へあらためて感謝を伝えたあとは、なだらかなメロディラインを武田の低音ボーカルがなぞる「Left Unsaid」。ドリームポップ的質感をまとった新機軸のサウンドをどっしりと構えながら演奏していく。ぶち上げて走り切るのではなくあえて余韻を残すかのような、静かな本編の締めくくりだ。

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そのぶんアンコールは全開モードで、激しいアクションから繰り出すゴリッとしたベースラインや、鋭く歪ませた2本のギターの応酬、整然としつつ圧倒的手数を誇るドラムプレイを存分に堪能することができた。ラストの「Contemporary Disease」で互いに向き合いながらもそれぞれの演奏に没入する姿と、それでいて一糸乱れぬアンサンブルには、LITEのロックバンドとしての魂と磨き抜いてきた流儀を見た気がした。

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この後、LITEは主戦場ともいえる海外ツアーへと赴く。『STRATA』収録曲がライブでどう作用しどう映えるのかを見せつけると同時に、インストかどうかといった定義を軽やかに超越していったこの日の姿を観る限り、海外での盛り上がりも必至だろう。ただ欲を言えば、国内でももっと彼らのライブを観たい。観てほしい。当代屈指のオルタナティヴロックがそこで鳴っているはずだ。

文:風間大洋
撮影:Mayuko Takeuchi

ワンマンライブ『STRATA』PLAYLIST





RELEASE INFORMATION

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LITE「STRATA」
2024年1月31日(水)
Format:Digital

Track:
1.Upper Mantle
2.Deep Inside
3.Crushing
4.Thread
5.Dark Ballet
6.Endless Blue
7.Breakout (Album Ver.)
8.Lower Mantle
9.Left Unsaid

試聴は こちら


LIVE INFORMATION

イベント情報
2024年4月13日(土)
東京・渋谷 "SYNCHRONICITY'24"

2024年5月16日~18日(土)
デンマーク・コペンハーゲン "A COLOSSAL WEEKEND 2024"

2024年5月25日(土)
UK・London "Portals Festival 2024"

INFO:https://lite-web.com/shows/


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オフィシャルサイト
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