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2024.02.18
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!the McFaddin・阿部芙蓉美・Newdumsほか全19作品 -2024.2.17-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:2月12日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全19作品の中からPart-1をご紹介しました。リリースおめでとうございます。さてさて、はじめましてさんです、nkn。
金子:こちらはYasei Collectiveのベーシストの中西道彦さんによるソロプロジェクト、ソロとしては初のリリースと。
みさと:かっこよかったですね。
金子:曲自体は3年ぐらい前からあって、そこからアレンジをし直したり、「ぐだぐだと引き伸ばしてしまった」そうなんですけど、でもボーカルのFiJAさんに試しに送ってみたら、その日のうちに全部歌詞を書き上げてくれて、一気に世界が広がったとのことです。
みさと:すごいな。
金子:中西さんは僕のイメージだとすごく「職人」って感じがして、Yasei Collectiveでインタビューをしたこともあるんですけど、独自の哲学を持っている印象があって。この「nkn」っていうアーティスト名もちょっと匿名性があるというか、そういう職人気質なところを感じさせるなと思ったり。楽曲自体はベーシストらしくグルーヴィーな、フューチャー・ソウル的なかっこいいトラックになっていて、もしかしたら中西さん一人だともっと通好みなものになってたかもしれないけど......。
みさと:なりそうですね。
金子:そこにFiJAさんのボーカルが加わることによって、より開けたものにもなっていて、すごくかっこいい曲でしたね。
みさと:いただいている作品紹介でもすごくFiJAさんのことを褒めちぎっているんですけど、やっぱりベースがインストバンドをやってる中西さんだからこそ、声なしでの空間構築の妙を持ってるなっていうところ、そこに最強のシンガーが参加したら、そりゃいい曲できるよなっていう、いろんな方面からの玄人の熟練の技が集まった一曲になってますね。
金子: FiJAさん、その日のうちに全部歌詞書きあげるってすごいですよね。
みさと:すごくないですか。しかもたまたま二人が思っていた世界観がリンクしたっていう、FiJAさんの実力というか、才能も垣間見える一曲になってます。そしてYAJICO GIRLです。
金子: YAJICO GIRLは年明け1月に恒例となってる「YAJICOLABO」というツーマン・イベントを大阪と東京でやってて、僕は東京編を観に行ったんですけど、ODD Foot Worksとの対バンで。最初のODD Footがめちゃめちゃいいライブをやってたんで、この後にやるYAJICO大変だなと思ったんですけど、でも最近のダンサブルなモードでお客さんを盛り上げて、ホストバンドとしての役目をしっかり果たしてて、頼もしいなと思いました。その日の一番最後にやったのがこの「MissU」っていう新曲。去年出た「APART」同様にJerseyClub的なビートを用いつつ、「APART」はもうちょっとギターロック的な側面が強かったのに対して、こっちはもうちょっとピアノでポップっていう印象で、なおかつサビが英語詞なので、これまでのYAJICOとも違った質感になっていて、また新しい側面を見せてくれたなって感じしますね。
みさと:FPM(ファンタスティック・プラスティック・マシーン) ×ギターロックみたいな、ダンスミュージックを長く愛している、そんなお兄さんお姉さんにも刺さるような曲になってるなと思って、これは年代の幅というか音楽好きを納得させられる曲ができたんじゃないかなと思って、とてもかっこいいですね。さあ、そんなPart-1ですがどの曲をかけましょう。
金子: the McFaddinをかけようと思います。
みさと:the McFaddinは活動終了のお知らせがありましたね。
金子:この番組でもコンスタントに取り上げてきたアーティストの一組ですけど、1月に行ったライブで4月末でのバンド活動終了を発表しました。寂しいなと思ったんですけど、でも彼らのSNSを覗くと終了を発表したときのライブのMCの模様が動画で貼ってあって、それを見るとどうやら非常に前向きな活動終了のようで。「また始まるために終わらせる」っていうことを言っていて、今のメンバーでアルバムを作るっていうところまで宣言してるんですよね。だから一旦、4月でthe McFaddinとしての活動は終了するんだけど、でもその先にまた新たな動きがありそうな気がして。実際、この「Talk about stars」にしても、ある種の終わりは感じさせつつ、でもここからさらに先へ進むための一曲っていう感じがしました。
みさと:「高く飛ぶためには羽がいるけれど、景色を見るにはその羽が邪魔なときもある」っていう歌詞になっていて、イントロから気持ちが良いほど清々しく大空を羽ばたいているような様子なんですけど、後半ではその羽を置いて水中に潜るような、まさに見える景色が変わるだけでそこに優劣がないっていうことを1曲の中で表現できてるなと思って。音的には3曲分ぐらいのいろんな構成があるじゃないですか。だから、今日でやめますっていうバイトが最後全部やりたい放題やって、「もう俺今日でやめるんで」みたいな。だけど側から見るとこんな風に思ってたんだな、こんなこともできちゃうんだな、あいつ仕事できるしな、って言わせるような、そういう1曲ができたなと思って。こんなにいい活動終了の報告というか、あまりこちらがざわつかない活動終了の報告ってなかなかないなと思って。
金子:清々しい活動終了の報告って感じでしたね。
みさと:なので、ここから先もみなさん要注目です。
金子:曲の後半の静かな展開はチバユウスケが亡くなった日にそのニュースから着想を得て、チバさんがやってたROSSOの「シャロン」という名曲の一節を引用するという、そんなことも注目ポイントです。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのはダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。こちらもはじめましてさんです、iiichanman。
金子:茨城県東海村出身で2023年に単身上京してきたというシンガーソングライター。最初iiichanmanっていう名前だけ見て男の人かなと思ったけど、女の人でしたね。アルファベット表記で"i"が3つのiiichanman。今回の曲はアレンジ、ミックス、マスタリングをPanorama Panama Townの浪越さんが担当していて、歌詞の中にもPanorama Panama Townの歌詞を引用したりと、リスペクトも込めた仕上がりになっています。
みさと:なかなかないですよね。
金子:彼女は今の時代のシンガーソングライターだなという感じがすごくします。「naretara...」っていうタイトル通りに、別れたあとの後悔みたいな、"何々になれてたら"、"もっと何々できたかな"っていう、そのちょっと内省的な感じが今の音楽好きにヒットする要素だなと感じました。
みさと:外に出すわけではない、頭の中の言葉が漏れて聞こえてくる、その内省的なものが漏れちゃってる感じっていうのは、彼女の歌唱方法にもフィットしててすごくいいですよね。そして、アルバムリリースになるのがpile of hexです。
金子:このアルバムは去年の12月に店舗限定でフィジカルでは出てたんですけど、それが今回サブスクで配信されると。まあ、かっこいいですね。
みさと:かっこいいわ。
金子:ベースレスでツインギターという編成がまず面白いし、非常にざらついたオルタナティヴなサウンドなんだけど、 その一方ではトリップホップっぽいような質感もあったり、あんまり他にない感じで。グランジとかそっちの方面ともまた違う、インテリジェンスを感じさせるようなアレンジになっていてかっこよかったですね。
みさと:そうなんですよね。なんかヒリヒリしてるし、ハードコアでもあるんだけど、でも美しさを感じる。
金子:ビートミュージックっぽいニュアンスもあるしね。
みさと:比べる誰かバンドであったりミュージシャンっていうのがパッと思いつかないなっていう、個性がしっかり立ってるバンドですよね。そんなPart-2からお送りするのは、どうしましょう?
金子:阿部芙蓉美さんの新曲を紹介しようかなと思います。
みさと:この方も唯一無二の天性のお声で素晴らしかったですね。
金子:新曲自体1年ぶりのリリースで、さらに今年は11年ぶりのフルアルバムのリリースを3月に予定していると。
みさと:待望の作品リリース予定です。
金子:今回の曲に関しては、もともと2017年に作曲家の東川亜希子さんと制作して、ライブで演奏していた楽曲ということで。東川さんは赤い靴というユニットを神谷洵平さんと一緒にやられてる方なので、赤い靴とも通じるようなフォーキーで歌がしっかり真ん中にある作風っていうのは感じさせつつ、さっきみさとさんも言ってくれたように、まず声の素晴らしさがあるし、メロディーの美しさもあるし、めっちゃいい曲でしたね。
みさと:歌詞で、"ここは今日も最前線 ミサイルの雨 気をつけて 本能でジャンプ 致命傷は避けなきゃ"っていう。「ミサイル」っていうパワーワードも、序盤からこの歌の核心である、この歌詞がくるのも、この声だから中和できるというか、だいぶ辛辣なパワーワードなんだけど、7年経っていてもフィットしてしまうっていう、この世界の女性に対しても、悲しみというか憂いを感じなくちゃいけないなって気がつかされるところもあるし、彼女じゃないと歌えない曲だなっていうのも改めて思うところですね。
金子:「最前線」はいろんな受け取り方ができるワードで、何かの目的や目標に向かって努力している人、戦ってる人、頑張ってる人、それぞれの最前線にいる人たちに向けた曲かな、という感じがします。
みさと:ぜひあなたの今の課題と照らし合わせながら、背中を押してくれる一曲になると思います。
New Release Digest Part 3
みさと:Part-3にもはじめましてさんです、暴動クラブ。
金子:暴動クラブ、なかなかすごい名前ですけど、彼らは2022年の5月に結成された4ピースのバンドで、まだ平均年齢が20歳。
みさと:正直50代くらいのお兄さんたちがやってるバンドかなって思いましたけど、お若いんですよね。
金子:若いですね。でもその感想も分からんではないような王道のロックンロールバンドという感じで、こうやってロックンロールは受け継がれていくんだなというのを感じさせますよね。曲もそうだし、見た目とかも含めて、僕は毛皮のマリーズが出てきたときを連想して、「毛皮のマリーズっていつ出てきたんだっけ?」と思って調べたら2003年結成で。
みさと:21年前。
金子:そう、やっぱり20年周期ぐらいで一周して、また次の世代が出てくるんだなあと。
みさと:ちょうど暴動クラブが"おぎゃー"って言ったときじゃないですか。
金子:そういうことになりますよね。
みさと:すごいなぁ。でもやっぱり音楽は時空を超えますね、面白い。ぜひ暴動クラブの今鳴らせるこの音を大人のみなさんたちにも楽しんでいただきたいですよね。そして、arneがミニアルバムをリリースです。
金子:こちらは2019年に始動したバンドで、マスロックとかポストロックのニュアンスがありつつ、でもそれをJ-POPにも通じるようなポップさを持って鳴らしてるっていう意味ではちゃんと今のバンドだなっていう感じがします。さっきの暴動クラブもそうなんだけど、長く音楽を聴いてると、リバイバルのタームをいろんなバンドから感じることがあって、彼らみたいなポストロック、マスロックも、僕の世代で振り返ると2000年代に残響レコードが盛り上がって。で、また「残響レコードっていつできたんだっけ?」って調べたら2004年で、ちょうど20年前で。ポストロックとかマスロックに影響を受けた若いバンド、今たくさん出てきてるから、そういう意味でもまた「このタームか」って思わされました。
みさと:確かに、「残響から出てるんだ」、この一言だけで何か箔というか、一つ肩書きを得たような、そんなムーブメントありましたよね。今回arneは男女のツインボーカルでやってる良さもあるし、楽曲に関してはグラミー賞受賞楽曲をマスタリングされているエンジニアのRyoji Hataさんがマスタリングを手掛けてたりとか、構築されている美しさであったり、技術に対しての裏付けみたいなところも楽曲の中に落とし込まれていて、聴き応えがあるミニアルバムになっています。
金子:「somnia」という曲は、依頼者によるオリジナルの小説をモチーフに制作した楽曲だそうで、これって今だとYOASOBIとかヨルシカとか、「物語を音楽にする」っていうところでは近いところがあって。多分ヨルシカとかもルーツにはポストロックとかがある気がするから、そういう意味でも昔から連なりつつ、ちゃんと今のものにしているバンドだなって感じすごくしますね。
みさと:そんなPart-3からお送りするのはどうしましょう?
金子: Newdumsの新曲を紹介しようと思います。
みさと:Newdumsもかっこよかった。
金子:いやー、彼らやっぱりかっこいいですね。
みさと:4曲入りのEPです。
金子:去年の5月に大阪でワンマンをして、その日にシングルも配信リリースして、その後6月に神戸から東京に上京。で、今回その2曲のシングルも含めた4曲入りのEPが完成と。去年のシングルはもうちょっとギター主体で、でも音数少なくてかっこいいプロダクションでっていうので、すごく印象的だった覚えがあるんですけど、今回の曲はまたそれともちょっと違って、ピアノが主体になった、非常にロマンチックな楽曲で。後半のストリングスも非常に印象的で、そこに関しては高野勲さん、サニーデイ・サービス、Yogee New Waves、最近だとGRAPEVINEのアルバムのプロデュースもやってたりっていう、高野さんが参加しているので、壮大なスケール感というところには大きく貢献してるんだろうなあという感じがしましたね。
みさと:コーダラインとかアイルランドのオルタナ味もあるんだけど、そこにさらに陰りと穏やかさが入ったアイルランドの空と日本の湿度みたいな、そういった音楽って国籍とかジャンルとか不要なんだよなぁっていう、そういうEPになってるなぁと。ワクワクしますねー。
金子:個人的には比較的最近のArctic Monkeysとのリンクは感じたかな。
みさと:そうですね。やっぱりかっこいいなぁ。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武 1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。 @a2take / @a2take3 奥宮みさと ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。 @_M1110_ / @11misato10 Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar) 神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。 The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。 オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin