2024.02.15
LITEにとって約4年半ぶりの新アルバム『STRATA』が完成した。彼ら自身が「全曲LITEにとって新しいことしかしてない」と評する同作を一聴してまず驚かされるのは、ボーカルの入った楽曲が多いこと。メロディのあるものからポエトリーリーディング調の歌、ラップまでも飛び出す楽曲たちは、従来のインストバンド・LITEの印象をあっさりと塗り替えるものであり、サウンドに目を向けてもシンセを多用するなど新たな音像を生み出している。それでいて根底にある4人のバンドアンサンブルの痛快さは健在かつ、よりツボを押さえ洗練されたものとなっていることもわかる。
そのリリースにあたり、SENSAではメンバー4人がそれぞれ親交の深いミュージシャンを迎え、対談形式で現在のモードと新作完成までの道のりを語ってもらった。今回は、武田信幸(G/Vo)×ストレイテナー・ホリエアツシ(Vo/G/Piano)の対談を掲載。個々のキャラクターや担当パートならではの視点から繰り広げられるトークをどうぞ。
ホリエ:1st(ミニアルバム『LITE』)の頃からでしょ?
武田:そうです。『SOUND SHOOTER』(カメラマン・橋本塁主宰の写真展&ライブイベント)が対バンとしては初だったんじゃないかなと思います。あれが2006年。
ホリエ:橋本塁くんが2005年に出たミニアルバム(『LITE』)を「ヤバい」ってみんなに布教してて。その布教されたひとりだったんですけど、ストレイテナーはみんな好きになって、ツアーの対バンにも呼んで。ツアー全部を一緒に回ったのは、過去にLITE以外ないかもしれない。
武田:めっちゃ光栄じゃないですか(笑)。
ホリエ:基本、うちのバンドはそんなにずっと一緒にいれるバンドは少ないんですけど。
ホリエ:惚れ込んだし、当時は自分たちと似たバンドよりも自分たちのできないことをやってるバンドと一緒にやりたくて、そういうバンドを知らしめたかった。今考えると、自分たちのことはわりとどうでもよかったかな(笑)。
武田:自分たちの評価とかよりも──。
ホリエ:「もっとすごい奴がいることを知ってくれ」っていうマインドでバンドやってたんですよ。いろんなバンドがいることをわかったうえで自分たちの評価も上げていきたいっていう。
武田:まさか拾ってもらえるとは思わなかったし、ライブハウスのシーンで地道にやっていくことしか頭になかったタイミングだから、Zeppでライブすることすら考えたこともなかった。あそこでストレイテナーとツアーを回ったのは、LITE史上での沿革を話すのであれば絶対に入りますね。今でも「ストレイテナーが好きです。LITEも聴いてます」っていう人が周りにたくさんいるし。
ホリエ:うれしいですね。自分たちのことを二の次にした甲斐があった(笑)。普通、売れることにハングリーだったら、もっと自分たちよりマスというか、売れてる人や先輩にもっとフックアップしてほしいというバンドの方が多いと思うんですけど......。
ホリエ:全然(笑)。自分たちよりインディのバンドの方が一緒にやりたい願望は強かったですね。
武田:そういう意味では尖ってましたよね。
ホリエ:そうだね。尖ってたというか、イキってたというかね(笑)。
ホリエ:まず、音楽のジャンルとしてポストロックがその頃のインディシーンを席巻していて、そういうバンドもいっぱいいた中で、曲のクオリティやアレンジが抜けてたんですよ。さらにライブを観たら演奏が本当にタイトすぎて。音もすごくクリアに聴こえるし、全然カオスじゃないけど高揚させられる。で、曲が展開したときに「フゥー!」とか言いたくなる(笑)。テクニックとかいうよりも、そういう展開とか転調、ビートチェンジとかで掴まれるところが魅力でしたね。
武田:ありがとうございます。僕の話をすると、結成してインストバンドになっていったわけですけど──。
ホリエ:最初は違ったの?
武田:最初はボーカルがいたんですよ。で、いなくなったけどインストとしても成り立ってたよね、っていうところからインストバンドになっていった。元々は歌ものも好きで、将来はやるだろうなと思っていたけど、転機があって「歌を忘れていった」んですよ。
ホリエ:退化していったんだ(笑)。モグラが目見えなくなるみたいな。
武田:嗅覚を尖らすみたいな(笑)。でも、テナーと対バンをして毎日聴いていたときに、根本にある歌心を思い出す瞬間が僕の中にあったというか、やっぱりメロディと声のパワーはすげえなっていうのをあらためて感じて。歌心みたいなものをギターフレーズとか曲の展開に転換しよう、みたいな気づきを得ながらのツアーでした。だからそれ以降にだんだんメロディが入ってきたのかもしれないです。
ホリエ:リフではあるけど、言われてみるとメロディでもあるという。海外に行くとお客さんがみんな歌うんでしょ?
武田:そうそう。ギターフレーズを合唱するんですよ。
武田:それも歌心ですよね。AがあってBがあってサビみたいな。僕らも曲作りしてるときに「Bメロが──」とか言いますもん。歌はないけどサビはある、そこははっきりしてます。
ホリエ:尺もちょうどいいんだよね、LITEは。インストバンドもいろいろある中で、それがLITEのスタイルというか。
武田:そういうオリジナルの型を作れたのかもしれないですね。
ホリエ:作品ごとに変わってきてるんだけど、また変わってて。最初の印象は「高い音、聴きたくなくなったのかな」って。
武田:はははは! 声も低いですからね。
ホリエ:声に合わせて重心が低くなった?
武田:そうかもしれないです。
ホリエ:やっぱり高い音を聴きたくない時期って来るんですよ、俺も来てるし(笑)。だからしっくりきました。ボーカルとかラップ、ポエトリーリーディングみたいなものも、あまり歌ものの方向には行ってないよね。
武田:そうなんですよ。歌い上げる曲はないんです、今のところ。そこはジレンマでもあるのかもしれなくて。僕はやっぱりボーカリストじゃないので、それをメインにする勇気が出ないし、それはLITEでやらなくてもいいかなって思っちゃうというか。もうちょっと楽器の中に埋める感じで考えてました。
ホリエ:統一感はすごくあるんですよね。重心が低いのと、ギターもあんまり歌ってない。
武田:そうですね。「歌に歌わせてる」。
ホリエ:......普通なんだけどね(笑)。
武田:普通じゃなく聴こえるけど、普通のことを言ってます(笑)。
ホリエ:あと、2曲目(「Deep Inside」)が昔のポストパンクみたいでめっちゃよかった。
武田:わりとオーソドックス寄りの、ちょっと既視感あるけどLITEでもやるんだな、みたいな。
ホリエ:でもLITEって言われなかったらわかんないと思う、これ。ラジオとかで聴いたら昔のポストパンクかと思って聴いちゃうかもしれない。
武田:そうですね。クリーンな感じの、ツルッとしたところはわりと少なくなったかもしれないですね。......それはなんでなんだろう?
ホリエ:自分の流行りみたいなものとか?
武田:シンセを多用してて、生楽器だけで作ってないものが前回より多いからかもしれないですね。ギターの立ち位置として、主張するよりもシンセの後ろを支えることが増えたのかもしれない。声とシンセとリズムでだいたい成り立っちゃう曲が多いなって、作っていてあらためて思ったんですよ。だからギターを入れるところがあんまりないし、今回はベースを入れるところもけっこう迷ったんですよ。
ホリエ:そうかもね。ベースがあんまり動いてない。
武田:初めからシンセがベースを兼ねてるトラックを作っちゃったから、「ゴリッとしたベースは無くていいかな」みたいになっちゃって(笑)。
ホリエ:悩みどころだよね。
武田:ホリエさんは、シンセから曲が生まれることってないんですか。
ホリエ:ないんだよ。DTMをやらない、やれないっていう(笑)。壊れかけのMacBookをずっと使ってるから、DTMやろうもんならすぐ煙出ちゃうと思う。プリプロのときもリハーサルスタジオでパラで録ってるわけじゃないので。
武田:超ロックですね。
ホリエ:超ロック。意外がられるけど。
武田:僕らは早めにDTMいっちゃいました。
ホリエ:そうだよね。コロナ禍でDTM方向にシフトしたバンドも少なからずいると思うんですよ。俺たちはコロナ禍に入った当初は曲作りしてたんだけど、スタジオが休業になって、一旦作るのをやめちゃったからね(笑)。
ホリエ:LITEの場合、かなり困ったでしょ。
武田:困りましたね。14年間連続で海外に行ってたんですよ。それがパタっと止まっちゃって。この前台湾に行きましたけど、それが3年ぶりくらいで。
ホリエ:よかった?
武田:よかったですね。やっぱりグローバルを軸足にしたいなって思いました。ダイレクトな感じが楽しいんですよ。
武田:そこは難しいところで......強いて言えば、必然的に海外を意識しなくなったのはあるかもしれないです。
ホリエ:ああー!
武田:普段なら、機材の問題で「海外のライブでやるときこれは無理だよね」みたいな話とか、「向こうはもっとフィジカルが好きだから、こういう曲の方がいいんじゃない?」みたいな話にも発展するんですけど。そこは忘れて自分たちの目に見えるところへ向けて作ったかもしれない。だからそこは挑戦でもあり、楽しみでもありますね。これを海外に持っていったときに日本語のラップとかにどういう反応するんだろう?とか、英語のポエトリーリーディングは現地からしたらどうなんだろう?とか。......ホリエさんも最近ラップ入れてる曲があるじゃないですか。
ホリエ:どれだろう、「Death Game」(2020年リリースのアルバム『Applause』収録)とかかな?
武田:あんまりラップは意識してなかったですか?
ホリエ:ラップは意識したけど、ちょっとふざけてる感じかな。
武田:僕も今回、自分たちで完結するというテーマもあったので、ラップをやってみたんですけど。元々成熟したシーンがあるところに対してやってみるのは、すごく勇気がいることで。ホリエさんもそこは感じたのかな?って。
ホリエ:チャレンジしてるというよりは、遊びでやってる感ですかね。小学生の頃に聴いてめっちゃハマった電気グルーヴとか、そういう遊び心が未だにあるから。電気グルーヴをラップと呼ぶのかどうなのか、みたいな......まあ、ラップではあるけどメインストリームではないじゃん。
武田:決してヒップホップではないですもんね。テクノの中にあるラップなのか何なのか、みたいな。
ホリエ:当時はまだポップミュージックの中でラップの認知度が低かったから、初めて聴くラップとして受け入れてたんじゃないかな。俺はその後もリスナーとしてはアングラヒップホップだったり、あまりメインどころは通ってないから。
武田:僕もそう思えばいいんだな、たしかに。ヒップホップはもちろん好きですけど、ラッパーになろうと思ったこともないし、聴くものとしてしか捉えてなかったから。今回はちょっとBUDDHA BRANDっぽくやってみようみたいな感じだったので、20年くらい戻ってるし。だからそっち側のど真ん中に向けて投げたわけじゃないんですけど、どう捉えられるのかはちょっと気にするところはあったんですよ。
武田:そうです。だから正直いうと怖いんですよ。これを出してみたときにどう受け取られるのかが。その怖さを感じることはないですか。
ホリエ:ないかなぁ。照れはあるけどね。どんな顔して歌おうかなみたいなことは考えちゃう。「Death Game」はラップで野球のことを歌ってるんだけど、ライブで何回やってもすごく照れはある(笑)。
武田:なるほど。そういう普通の路線じゃないことにトライする人って少ないじゃないですか。わりとオーソドックスな、自分たちの作り上げてきた良きスタイルを守る、踏襲していくみたいな──それはそれで正解だと思うんですけど、常にテナーはトライをしていて。
ホリエ:そこは昔からそうですね。
武田:すごいなと思うし、僕らもそうしたくてやってるわけですよ。でもそこには怖さも付き纏うなって、今回は特に思ったんです。歌をメインにすることも20年近くやってこなかったのを今回やってみたし。
ホリエ:でもストレイテナーでインストの曲を作ったときは、井澤からダメ出しされたけどね。「テナーはインストやんなくていいと思う」みたいな感じで(笑)。
武田:はっはっは!
取材・文:風間大洋
撮影:是永日和
LITE「STRATA」
2024年1月31日(水)
Format:Digital
Track:
1.Upper Mantle
2.Deep Inside
3.Crushing
4.Thread
5.Dark Ballet
6.Endless Blue
7.Breakout (Album Ver.)
8.Lower Mantle
9.Left Unsaid
試聴は こちら
2024年2月17日(土)
会場:東京・恵比寿LIQUIDROOM
時間:開場 17:00/開演 18:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)
2024年2月22日(木)
会場:大阪・梅田Shangri-La
時間:開場 18:30 / 開演 19:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)
特設サイト: https://lite-web.studio.site/
東京・渋谷 "SYNCHRONICITY'24"
2024年5月16日~18日(土)
デンマーク・コペンハーゲン "A COLOSSAL WEEKEND 2024"
2024年5月25日(土)
UK・London "Portals Festival 2024"
INFO:https://lite-web.com/shows/
@lite_jp
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FRIENDSHIP.
そのリリースにあたり、SENSAではメンバー4人がそれぞれ親交の深いミュージシャンを迎え、対談形式で現在のモードと新作完成までの道のりを語ってもらった。今回は、武田信幸(G/Vo)×ストレイテナー・ホリエアツシ(Vo/G/Piano)の対談を掲載。個々のキャラクターや担当パートならではの視点から繰り広げられるトークをどうぞ。
ツアー全部を一緒に回ったのは、過去にLITE以外ないかもしれない(ホリエ)
─お付き合いはもう長いそうですね。
ホリエ:1st(ミニアルバム『LITE』)の頃からでしょ?
武田:そうです。『SOUND SHOOTER』(カメラマン・橋本塁主宰の写真展&ライブイベント)が対バンとしては初だったんじゃないかなと思います。あれが2006年。
ホリエ:橋本塁くんが2005年に出たミニアルバム(『LITE』)を「ヤバい」ってみんなに布教してて。その布教されたひとりだったんですけど、ストレイテナーはみんな好きになって、ツアーの対バンにも呼んで。ツアー全部を一緒に回ったのは、過去にLITE以外ないかもしれない。
武田:めっちゃ光栄じゃないですか(笑)。
ホリエ:基本、うちのバンドはそんなにずっと一緒にいれるバンドは少ないんですけど。
─それだけ惚れ込んだということですよね。
ホリエ:惚れ込んだし、当時は自分たちと似たバンドよりも自分たちのできないことをやってるバンドと一緒にやりたくて、そういうバンドを知らしめたかった。今考えると、自分たちのことはわりとどうでもよかったかな(笑)。
武田:自分たちの評価とかよりも──。
ホリエ:「もっとすごい奴がいることを知ってくれ」っていうマインドでバンドやってたんですよ。いろんなバンドがいることをわかったうえで自分たちの評価も上げていきたいっていう。
武田:まさか拾ってもらえるとは思わなかったし、ライブハウスのシーンで地道にやっていくことしか頭になかったタイミングだから、Zeppでライブすることすら考えたこともなかった。あそこでストレイテナーとツアーを回ったのは、LITE史上での沿革を話すのであれば絶対に入りますね。今でも「ストレイテナーが好きです。LITEも聴いてます」っていう人が周りにたくさんいるし。
ホリエ:うれしいですね。自分たちのことを二の次にした甲斐があった(笑)。普通、売れることにハングリーだったら、もっと自分たちよりマスというか、売れてる人や先輩にもっとフックアップしてほしいというバンドの方が多いと思うんですけど......。
─当時のテナーは......。
ホリエ:全然(笑)。自分たちよりインディのバンドの方が一緒にやりたい願望は強かったですね。
武田:そういう意味では尖ってましたよね。
ホリエ:そうだね。尖ってたというか、イキってたというかね(笑)。
─LITEのどんなところがホリエさんに刺さったんですか。
ホリエ:まず、音楽のジャンルとしてポストロックがその頃のインディシーンを席巻していて、そういうバンドもいっぱいいた中で、曲のクオリティやアレンジが抜けてたんですよ。さらにライブを観たら演奏が本当にタイトすぎて。音もすごくクリアに聴こえるし、全然カオスじゃないけど高揚させられる。で、曲が展開したときに「フゥー!」とか言いたくなる(笑)。テクニックとかいうよりも、そういう展開とか転調、ビートチェンジとかで掴まれるところが魅力でしたね。
武田:ありがとうございます。僕の話をすると、結成してインストバンドになっていったわけですけど──。
ホリエ:最初は違ったの?
武田:最初はボーカルがいたんですよ。で、いなくなったけどインストとしても成り立ってたよね、っていうところからインストバンドになっていった。元々は歌ものも好きで、将来はやるだろうなと思っていたけど、転機があって「歌を忘れていった」んですよ。
ホリエ:退化していったんだ(笑)。モグラが目見えなくなるみたいな。
武田:嗅覚を尖らすみたいな(笑)。でも、テナーと対バンをして毎日聴いていたときに、根本にある歌心を思い出す瞬間が僕の中にあったというか、やっぱりメロディと声のパワーはすげえなっていうのをあらためて感じて。歌心みたいなものをギターフレーズとか曲の展開に転換しよう、みたいな気づきを得ながらのツアーでした。だからそれ以降にだんだんメロディが入ってきたのかもしれないです。
ホリエ:リフではあるけど、言われてみるとメロディでもあるという。海外に行くとお客さんがみんな歌うんでしょ?
武田:そうそう。ギターフレーズを合唱するんですよ。
─たしかに、本来ボーカルが歌っていても成立するだろうなっていうフレーズを、ふとギターが弾いていたりしますよね。曲にちゃんとサビ感があるというか。
武田:それも歌心ですよね。AがあってBがあってサビみたいな。僕らも曲作りしてるときに「Bメロが──」とか言いますもん。歌はないけどサビはある、そこははっきりしてます。
ホリエ:尺もちょうどいいんだよね、LITEは。インストバンドもいろいろある中で、それがLITEのスタイルというか。
武田:そういうオリジナルの型を作れたのかもしれないですね。
高い音を聴きたくない時期って来るんですよ、俺も来てるし(笑)(ホリエ)
─新作の『STRATA』をホリエさんはどう聴きました?
ホリエ:作品ごとに変わってきてるんだけど、また変わってて。最初の印象は「高い音、聴きたくなくなったのかな」って。
武田:はははは! 声も低いですからね。
ホリエ:声に合わせて重心が低くなった?
武田:そうかもしれないです。
ホリエ:やっぱり高い音を聴きたくない時期って来るんですよ、俺も来てるし(笑)。だからしっくりきました。ボーカルとかラップ、ポエトリーリーディングみたいなものも、あまり歌ものの方向には行ってないよね。
武田:そうなんですよ。歌い上げる曲はないんです、今のところ。そこはジレンマでもあるのかもしれなくて。僕はやっぱりボーカリストじゃないので、それをメインにする勇気が出ないし、それはLITEでやらなくてもいいかなって思っちゃうというか。もうちょっと楽器の中に埋める感じで考えてました。
ホリエ:統一感はすごくあるんですよね。重心が低いのと、ギターもあんまり歌ってない。
武田:そうですね。「歌に歌わせてる」。
ホリエ:......普通なんだけどね(笑)。
武田:普通じゃなく聴こえるけど、普通のことを言ってます(笑)。
ホリエ:あと、2曲目(「Deep Inside」)が昔のポストパンクみたいでめっちゃよかった。
武田:わりとオーソドックス寄りの、ちょっと既視感あるけどLITEでもやるんだな、みたいな。
ホリエ:でもLITEって言われなかったらわかんないと思う、これ。ラジオとかで聴いたら昔のポストパンクかと思って聴いちゃうかもしれない。
─エフェクトもちょっとザラついた感じが多いですよね。前作あたりはもう少しクリアな音が目立った印象です。
武田:そうですね。クリーンな感じの、ツルッとしたところはわりと少なくなったかもしれないですね。......それはなんでなんだろう?
ホリエ:自分の流行りみたいなものとか?
武田:シンセを多用してて、生楽器だけで作ってないものが前回より多いからかもしれないですね。ギターの立ち位置として、主張するよりもシンセの後ろを支えることが増えたのかもしれない。声とシンセとリズムでだいたい成り立っちゃう曲が多いなって、作っていてあらためて思ったんですよ。だからギターを入れるところがあんまりないし、今回はベースを入れるところもけっこう迷ったんですよ。
ホリエ:そうかもね。ベースがあんまり動いてない。
武田:初めからシンセがベースを兼ねてるトラックを作っちゃったから、「ゴリッとしたベースは無くていいかな」みたいになっちゃって(笑)。
ホリエ:悩みどころだよね。
武田:ホリエさんは、シンセから曲が生まれることってないんですか。
ホリエ:ないんだよ。DTMをやらない、やれないっていう(笑)。壊れかけのMacBookをずっと使ってるから、DTMやろうもんならすぐ煙出ちゃうと思う。プリプロのときもリハーサルスタジオでパラで録ってるわけじゃないので。
武田:超ロックですね。
ホリエ:超ロック。意外がられるけど。
武田:僕らは早めにDTMいっちゃいました。
ホリエ:そうだよね。コロナ禍でDTM方向にシフトしたバンドも少なからずいると思うんですよ。俺たちはコロナ禍に入った当初は曲作りしてたんだけど、スタジオが休業になって、一旦作るのをやめちゃったからね(笑)。
常にテナーはトライをしていて。すごいなと思うし、僕らもそうしたくてやってる(武田)
─LITEも前作と今作の間にコロナ期間が含まれますが、ライブができなくなったり、海外にも行けなかった時期でしたよね。
ホリエ:LITEの場合、かなり困ったでしょ。
武田:困りましたね。14年間連続で海外に行ってたんですよ。それがパタっと止まっちゃって。この前台湾に行きましたけど、それが3年ぶりくらいで。
ホリエ:よかった?
武田:よかったですね。やっぱりグローバルを軸足にしたいなって思いました。ダイレクトな感じが楽しいんですよ。
─活動に制約期間があったことは今作になんらかの影響を及ぼしてると思います?
武田:そこは難しいところで......強いて言えば、必然的に海外を意識しなくなったのはあるかもしれないです。
ホリエ:ああー!
武田:普段なら、機材の問題で「海外のライブでやるときこれは無理だよね」みたいな話とか、「向こうはもっとフィジカルが好きだから、こういう曲の方がいいんじゃない?」みたいな話にも発展するんですけど。そこは忘れて自分たちの目に見えるところへ向けて作ったかもしれない。だからそこは挑戦でもあり、楽しみでもありますね。これを海外に持っていったときに日本語のラップとかにどういう反応するんだろう?とか、英語のポエトリーリーディングは現地からしたらどうなんだろう?とか。......ホリエさんも最近ラップ入れてる曲があるじゃないですか。
ホリエ:どれだろう、「Death Game」(2020年リリースのアルバム『Applause』収録)とかかな?
武田:あんまりラップは意識してなかったですか?
ホリエ:ラップは意識したけど、ちょっとふざけてる感じかな。
武田:僕も今回、自分たちで完結するというテーマもあったので、ラップをやってみたんですけど。元々成熟したシーンがあるところに対してやってみるのは、すごく勇気がいることで。ホリエさんもそこは感じたのかな?って。
ホリエ:チャレンジしてるというよりは、遊びでやってる感ですかね。小学生の頃に聴いてめっちゃハマった電気グルーヴとか、そういう遊び心が未だにあるから。電気グルーヴをラップと呼ぶのかどうなのか、みたいな......まあ、ラップではあるけどメインストリームではないじゃん。
武田:決してヒップホップではないですもんね。テクノの中にあるラップなのか何なのか、みたいな。
ホリエ:当時はまだポップミュージックの中でラップの認知度が低かったから、初めて聴くラップとして受け入れてたんじゃないかな。俺はその後もリスナーとしてはアングラヒップホップだったり、あまりメインどころは通ってないから。
武田:僕もそう思えばいいんだな、たしかに。ヒップホップはもちろん好きですけど、ラッパーになろうと思ったこともないし、聴くものとしてしか捉えてなかったから。今回はちょっとBUDDHA BRANDっぽくやってみようみたいな感じだったので、20年くらい戻ってるし。だからそっち側のど真ん中に向けて投げたわけじゃないんですけど、どう捉えられるのかはちょっと気にするところはあったんですよ。
─気になりつつも「やってみよう」が勝ったと。
武田:そうです。だから正直いうと怖いんですよ。これを出してみたときにどう受け取られるのかが。その怖さを感じることはないですか。
ホリエ:ないかなぁ。照れはあるけどね。どんな顔して歌おうかなみたいなことは考えちゃう。「Death Game」はラップで野球のことを歌ってるんだけど、ライブで何回やってもすごく照れはある(笑)。
武田:なるほど。そういう普通の路線じゃないことにトライする人って少ないじゃないですか。わりとオーソドックスな、自分たちの作り上げてきた良きスタイルを守る、踏襲していくみたいな──それはそれで正解だと思うんですけど、常にテナーはトライをしていて。
ホリエ:そこは昔からそうですね。
武田:すごいなと思うし、僕らもそうしたくてやってるわけですよ。でもそこには怖さも付き纏うなって、今回は特に思ったんです。歌をメインにすることも20年近くやってこなかったのを今回やってみたし。
ホリエ:でもストレイテナーでインストの曲を作ったときは、井澤からダメ出しされたけどね。「テナーはインストやんなくていいと思う」みたいな感じで(笑)。
武田:はっはっは!
取材・文:風間大洋
撮影:是永日和
RELEASE INFORMATION
LITE「STRATA」
2024年1月31日(水)
Format:Digital
Track:
1.Upper Mantle
2.Deep Inside
3.Crushing
4.Thread
5.Dark Ballet
6.Endless Blue
7.Breakout (Album Ver.)
8.Lower Mantle
9.Left Unsaid
試聴は こちら
LIVE INFORMATION
"STRATA"
2024年2月17日(土)
会場:東京・恵比寿LIQUIDROOM
時間:開場 17:00/開演 18:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)
2024年2月22日(木)
会場:大阪・梅田Shangri-La
時間:開場 18:30 / 開演 19:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)
特設サイト: https://lite-web.studio.site/
イベント情報
2024年4月13日(土)東京・渋谷 "SYNCHRONICITY'24"
2024年5月16日~18日(土)
デンマーク・コペンハーゲン "A COLOSSAL WEEKEND 2024"
2024年5月25日(土)
UK・London "Portals Festival 2024"
INFO:https://lite-web.com/shows/
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