SENSA

2024.02.22

今見ておくべきアーティストが揃った『FEAT. by FRIENDSHIP.』、WOLVEs GROOVY・アツキタケトモ・FLiNRら熱演続きの濃厚な一夜。

今見ておくべきアーティストが揃った『FEAT. by FRIENDSHIP.』、WOLVEs GROOVY・アツキタケトモ・FLiNRら熱演続きの濃厚な一夜。

2月10日、音楽ディストリビューションサービス・FRIENDSHIP.がキュレートするライブイベント『FEAT. by FRIENDSHIP.』が渋谷CLUB QUATTROで開催された。「FEAT.」はFRIENDSHIP.が今プッシュすべきアーティストをセレクトしているSpotifyのプレイリストのタイトルでもあり、まさに「今見ておくべきアーティスト」が揃った一夜となった。

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トップバッターは岡林健勝のソロプロジェクト・Ghost like girlfriend。制作のパートナーでもあるMO MOMAの土器大洋をサポートに迎え、トラックを流しながら2人編成でのライブを展開していく。前半は「Highway」、「(want )like(lover)」、「サイレント、幻」とダンサブルな楽曲をシームレスに繋げ、岡林の伸びやかなファルセットと、土器のエネルギッシュなギタープレイで徐々にフロアの温度を上げていった。

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序盤こそイベントが始まったばかりということもあり、やや様子見の雰囲気も漂っていたが、その空気を塗り替えたのが中盤に披露された「Birthday」。ミリオンセラーを連発した90年代のJ-POPを連想させるこの曲は、岡林のメロディーメーカーとしての才能を証明する名曲で、オーディエンスの多くが一気に引き込まれた感触があった。もしかしたら、この日初めてGhost like girlfriendを見た人は「2人組なのかな?」と思ったかもしれないが、今年のブレイク候補と言われる離婚伝説も2人組で、彼らが昨年発表した「萌」も90年代感のある曲調が印象的だった。80年代的なシティポップのブームが一段落し、リバイバルのタームは本格的に90年代へ。「Birthday」の熱演はそんな2024年を体現するような瞬間だったと言えるかもしれない。

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再びダンサブルな楽曲を続けた後半ではすっかりオーディエンスの心をつかみ、〈東京都渋谷区〉で歌われることに意味を見出せる人気曲「fallin'」ではオーディエンスにクラップを促して、よりフィジカルなステージングを披露。アッパーなブレイクビーツナンバー「ERAM」を経て、ラストの「光線」を終えると、フロアは大きな拍手に包まれていた。

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2番手に登場したのはシンガーソングライターでギターとキーボードを使い分けるMashinomi、ベーシストのアヤコノによって昨年3月に結成されたWOLVEs GROOVY。Mashinomiとアヤコノが向き合うように並んでツインボーカルを披露し、少ない音数でしっかりグルーヴを紡いでいくオープニングの「BUG」からして、このバンドの個性がはっきり打ち出されている。SNSでの「弾いてみた」動画が話題を呼んだアヤコノのテクニカルなプレイはもちろん、2人が息を合わせて演奏する姿もとてもいい。

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ダンスビートにキーボードとシンベのアンサンブルを組み合わせた最新曲「ANGEL BEAT!」、ミニマルな反復と転調が遊び心を感じさせる「bomb」、ラップ調の「spicy boy」など曲のバリエーションも様々で、アヤコノがハンドマイクでステージを暴れ回る「passion&groove」はまさにライブにおけるキラーチューンだ。ニューウェイヴ感とフィジカルな演奏の魅力を併せ持ち、「これまで一匹狼として音楽を紡いできた出身もルーツもバラバラな2人がグルーヴで通じ合う」という、存在そのものが今の時代に対するメッセージを内包しているWOLVEs GROOVYは、今年解散を発表したCHAIが最初に登場したときの、「こんなバンドが見たかった」という感触と通じるものを持っている。パーティー感のあるステージを続けながら、最後をメランコリックな雰囲気の「左右盲」で終わらせたことも、非常にこのバンドらしかったように思う。

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3番手に登場したのはアツキタケトモ。2020年の名義変更以降、じっくり制作と向き合ってきた彼にとってこれが4度目のライブであり、バンドセットでのライブはまだ2度目だったそう。サポートメンバーが先に登場し、強烈なサブベースがフロアを震わす中にアツキが登場すると、1曲目に披露されたのはバラードナンバーの「不純」。この編成で重要なのはマニピュレーターの存在で、音源で構築してきたサウンドデザインを再現度高くライブでも鳴らせることは彼の音楽にとってとても重要だと感じた。この後は「Outsider」、「#それな」と真骨頂のファンクナンバーを続け、堂々たるファルセットも印象的。サポートはMEMEMIONのメンバーを中心に構成されていることもあり、2度目のライブにしてしっかりバンド感を確立していることも特筆すべきだ。

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アツキタケトモの現在地を感じさせるという意味で重要だったのはこの後の2曲。「自演奴」はヒップホップを内包しつつもロックに振り切った曲調が印象的で、アニメ映画『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』の主題歌に起用されている最新曲「匿名奇謀」もやはりアップテンポなロックナンバーであり、大きなフェスなどでよりその力を発揮することだろう。現在のアツキはWurtSやPEOPLE 1、あるいは秋山黄色といったアーティストとも並走するような時代感を獲得していて、今後は楽曲の力でリスナーを増やしていくだけではなく、ライブの力でさらなるオーディエンスを巻き込んでいく可能性を感じさせた。

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「大学時代に当時クアトロの入っているビルの1Fにあったブックオフに通い、クアトロのスケジュールに昔自分が対バンしたアーティストの名前を見つけて悔しさを感じることもあったけど、今日そのステージに自分が立つことができて嬉しい」と感慨を語り、この日最後に披露されたのはその当時に作ったという「愛なんて」。美しいミドルバラードをしっとりと、ときに力強く歌い上げて、ステージを終えた。なお、この日はアツキがかねてより愛情を熱弁していたスガシカオがアツキには内緒で来場していたそうで、終演後にスガは「もっとアツキくんの音楽を浴びたいと思った夜でした」とポストしている。

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4番手は毎年Spotifyがその年に期待するアーティスト10組を発表する「RADAR:Early Noise」に前述の離婚伝説やサバシスターらとともに選出され、2024年の飛躍が期待される北海道札幌発の5人組・First Love is Never Returned。ステージに登場する前に円陣を組んでいたであろうかけ声が聴こえてきて期待が高まる中、メンバーがステージ上に登場すると、まずはボーカルのKazuki Ishidaがアカペラで歌声を聴かせる。

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ニューヨークへのボーカル留学経験があり、「この声に恋をする」というバンドのキャッチコピーを担うIshidaの歌声はやはり特別で、歌い始めると一瞬でその場の空気を変え、1曲目の「バックミラー」をしっとりと届けていく。さらにバンドが再始動を告げたナンバー「シューズは脱がないで」を続けると、「この曲を東京で歌えて嬉しいです」と言って披露されたのは、かつて東京で働いていた経験のあるIshidaが、その当時の経験を元に書いたという「OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT」。この日は彼らのステージを初めて見るオーディエンスも多かったと思うが、シンガロングできるパートも多い彼らの曲は、覚えてライブに臨むとより楽しめることは間違いない。

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ライブ中盤で披露されたのは、「リトライとコンティニューでしか繋いでこれなかった僕らが、ついてない人々へ贈るFLiNR流のポップミュージック」である最新曲「Unlucky!!」。彼らの結成は2018年だが、すぐにコロナ禍に突入してしまい、当時のメンバーが脱退したことにより活動休止状態となって、メンバーチェンジを経て2022年末にようやく再始動を果たしたというこれまでの経緯がある。そんな「ついてない」彼らだからこそ、「ここからもう一度」という想いは強く、その気持ちはコロナ禍を経験した誰しもが共有できる感覚でもあるはずだ。「プラチナ」を挟んで、この日最後に演奏されたのは、2020年の記憶を綴り、〈2020以前 巻き戻せ 隠したい僕の口元を見せて 唄歌う〉と歌う「Twenty-Twenty」。初恋は戻らなくても、青春は何度だってやり直せる。

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この日のトリを務めたのは京都から東京に活動の拠点を移し、マイペースに活動を続けるロックバンド・ベランダ。ライブハウスシーンにおいて確かな支持を集めるバンドであり、結成10周年にあたる今年の1月に6年ぶりのリリースとなる新曲「Not Bad」を発表したことが話題を呼んだ。

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メンバーがステージに登場し、1曲目に演奏されたのは「海になれたら」。First Love is Never Returnedまでの熱気を一旦クールダウンさせるかのように、淡々とじんわり演奏と歌を聴かせて、アフターアワーズの空気を作り出すと、2曲目に早速「Not Bad」を披露。ジャズやヒップホップのエッセンスを強め、少ない音数で構築的なアンサンブルを作りつつ、途中からノイジーなファズギターが暴走するこの展開は、インディロック好きにはたまらない。さらにはループするベースが引っ張るアッパーな「しあわせバタ〜」を続け、そのステージ運びの上手さは流石の10年選手だ。

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クアトロのステージに立ったのは初めてだったそうで、「音がいい」と嬉しそうに話していたが、彼らの音楽性とクアトロの音は相性もとても良かったように思う。その後もストレンジな単音フレーズの絡みやポップなメロディーが次々と飛び出し、上手に高身長のフロントマン、中央に重心低くグルーヴを担うベーシスト、下手で暴れ回るギタリストというアンバランスなバランス感も特筆すべきものがある。本編最後にプログレ感のある重厚な「in my blue」が演奏され、轟音をかき鳴らしてステージを終えると、遅い時間まで残ったオーディエンスの手拍子に応え、アンコールでは「Let's Summer」を演奏。熱演続きの濃厚なイベントが幕を閉じた。

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文:金子厚武
撮影:林直幸

Spotify PLAYLIST「FEAT.」



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