SENSA

2024.02.16

LITEニューアルバム『STRATA』リリース記念!山本晃紀×boboスペシャル対談

LITEニューアルバム『STRATA』リリース記念!山本晃紀×boboスペシャル対談

LITEにとって約4年半ぶりの新アルバム『STRATA』が完成した。彼ら自身が「全曲LITEにとって新しいことしかしてない」と評する同作を一聴してまず驚かされるのは、ボーカルの入った楽曲が多いこと。メロディのあるものからポエトリーリーディング調の歌、ラップまでも飛び出す楽曲たちは、従来のインストバンド・LITEの印象をあっさりと塗り替えるものであり、サウンドに目を向けてもシンセを多用するなど新たな音像を生み出している。それでいて根底にある4人のバンドアンサンブルの痛快さは健在かつ、よりツボを押さえ洗練されたものとなっていることもわかる。
そのリリースにあたり、SENSAではメンバー4人がそれぞれ親交の深いミュージシャンを迎え、対談形式で現在のモードと新作完成までの道のりを語ってもらった。今回は、山本晃紀(Dr)×boboの対談を掲載。個々のキャラクターや担当パートならではの視点から繰り広げられるトークをどうぞ。


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大学時代、みんなで住んでたリビングで54をヘビーローテーションしてました(山本)

─世代としては結構離れてますよね。


bobo:いくつになったの?

山本:42になりました。

bobo:おじさんじゃん!(笑)

山本:おじさんですよ(笑)。初めて会ったのがいつかはあんまり覚えてないけど、たしかeggmanで一緒にやった気がする。(boboがやっていた54-71が)インストの時期に。

bobo:じゃあ2005~2006年くらいだから、まだLITEは組みたてくらいのときだ。

山本:前身バンドのときから54はめちゃめちゃ聴いてて。大学時代、井澤が入る前はみんなで住んでたんですけど、リビングで54をヘビーローテーションしてました。誰かが買ってきたCDをみんなで聴く感じで、選択肢もないからその一個を聴き続けるっていう。

bobo:良い時代だよな。今だったら携帯でデータやり取りしたりさ。

山本:そうですよね。その頃からboboさんのファンで......まあ今もファンなんですけど。

bobo:長くない? ファン歴(笑)。

山本:そうなんですよ(笑)。

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─出会って以降はどんな交流をしてきたんですか。


bobo:LITEがヘッドライナーのライブとかに、けっこううちのバンドを呼んでくれたりして。あといちばんの思い出があれだな、UKツアー。

山本:2008年。

bobo:あれ、濃かったなぁ。2週間くらい毎日ライブやって。記事を見てる人はピンとこないかもしれないけど、インディバンドのツアーだと呼んでくれた人の家に泊まるとかさ、なんならその日対バンしたバンドの家に泊まるとかあるじゃん。

山本:ありますねえ。

bobo:全員で泊まれるところがないから、二手に分かれてフロアに寝たり。

山本:10月末とかだったからめちゃくちゃ寒くて。だいたいboboさんと(楠本)構造(G)はいちばんに良い場所を見つけるのが上手なんですよ。あったかくて一番寝やすそうなベッドとか(笑)。

bobo:構造が「boboさんについていくと良いところで寝れるんですよー」とか言ってさ(笑)。LITEは今もそういう激烈なツアーすんの?

山本:いや、もう必ずシングルルームになりました(笑)。

bobo:あれからずっとバンドやってるんだもんな。ということで7枚目のアルバム、おめでとうございます。

山本:ありがとうございます!

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相変わらず訳のわからないパターンを延々と叩き続けてるよな、お前は(笑)(bobo)

bobo:送ってもらって聴いたんだけど......いやあ、変わったよね。

山本:変わりましたね。歌、歌いはじめてますから。

bobo:そう、プロフィール見たら「フロントマン武田」って(笑)。ラップもしてるし。

山本:そうなんですよ。びっくりしました。この間ライターの方が言ってたのが、この曲(「Thread」)は「54のエッセンスを感じる」って。たしかにLITEは全員54を通ってるし、そこは繋がるなって。

bobo:俺もちょっとそれは思った。これ一曲目でも良かったんじゃない?とも思ったね。すっごいキャッチーだし......キャッチーっていっても世間の人にどう刺さるかはわかんないけど(笑)。で、LITEも変わったなと思いながら聴いていってさ、7曲目の「Breakout (Album Ver.)」まで来たとき、あのギターリフとドラムの感じでちょっとホッとしたもん。懐かしいLITEのフィールを感じて。

山本:たしかに、それまで攻め続けてますからね。

bobo:でも無理して変わってる感じは全然しないんですよ。

山本:そうですね。ただただみんながやりたいことをやっているだけで、それを詰め込んだらこうなりましたっていう。

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bobo:20年やってれば、それだけいろんな音楽も聴くだろうし、経験もするだろうし。俺も最近音楽は聴いてますけど──。

山本:どんなの聴いてるんですか。

bobo:R&Bとかそういうのばっか聴いちゃってる。まあ、もともとロックはあんまり聴かないんだけど。予想できるものを聴いてもあんまり刺激を受けないじゃん。

山本:うんうん。

bobo:シェラックぐらい行き切ってくれればすごいけど。AC/DCとかもそうだけど「やっぱこれだな」って。でも、刺激を受けるのはどうしてもR&Bとか、アブストラクトなヒップホップとかになっちゃうね。

山本:学びがあるというか。

bobo:そう。常に自分の扉を開きっぱなしにしとかないといけない。

山本:LITEも同じことやってないし、義務でやってないから続いてるんだと思います。今回も武田が「歌いたい」って言ったのをみんなが「ああ、いいんじゃない」って言える感じ。

bobo:「歌いたい」って言うのはすごいよね。

山本:そうなんですよ。急に「歌いたい」「ボイトレ行くわ」って。

bobo:あははは!!

山本:結成20周年にしてそれが始まるんだ!?って(笑)。

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─boboさんは今作のドラムプレイはどう聴きました?


bobo:音源を聴くとき、「自分が演奏する脳」みたいなスイッチがあるんだけど、この2曲目(「Deep Inside」)を聴きはじめたとき、一瞬そのスイッチが入ったわけ。でも「いや無理無理無理」って。

山本:そうですか?

bobo:相変わらず訳のわからないパターンを延々と叩き続けてるよな、お前は(笑)。

山本:一個ずれるともうえらいことなんですよ。何回か見失ってて、初めて人前で演奏したときも崩壊しました(笑)。でもああいうフレーズはboboさん由来なんですよ、自分の中で。

bobo:けっこうリニアな感じだよね。でも細かいだろ、お前のは。

山本:それをやり続けるとああなっちゃうんです(笑)。でも今ではリニアの感じも普通になってきたけど、あの頃やってる人はいなかったから発明だし、それがスタンダードになってるのはうれしいです。

bobo:でも、希少価値イコール人気ではないよな(笑)。

山本:そうなんですよねえ! いろんなことに当てはまりますけど、後で評価されるというか。

bobo:後で評価されるか、それをぬるま湯で薄めたような奴に人は群がってくるわけじゃん。

山本:孤高のまま行っちゃうと共感できない。

bobo:そうそう。共感するのにも孤高の精神が必要になっちゃう(笑)。だからお前らも相当なイバラの道を行ってるよな。......ただ、新譜聴いて思ったけど、歌があるっていうのはやっぱり相当な間口だから。しかもドラムパターンが複雑だったりしても、のんたん(武田)のラインがわかりやすかったりするじゃない? そうすると聴いてる方は歌に耳が行くから、お前がランダムに聴こえるパターンを組んでたとしても心地よくなると思う。

山本:ありがたい感想です。

bobo:あと、ハットを32分(音符)くらいで刻み続けてる曲あったじゃん。「Left Unsaid」か。

山本:あれも大変でした。なるべくデモを再現しながら、ループさせずに人力で録りきったので。

bobo:いまはループの時代になってるから、一本通しで叩いたっていうのが光ってる気はするよ。

山本:その違いってちゃんと聴かないとわかりづらいんですけどね。わかりづらいけどやっていきたい。

bobo:キース・リチャーズ(ローリング・ストーンズ)が言ってたよ。自分にしかわからないような違いを放棄するような奴は音楽なんてしないほうがいいって。

山本:おおー。

bobo:でも俺、今かなりうろ覚えで言っちゃってるから、キースが実際に言った文章と違ったらごめん。

山本:(笑)。

お前はもう世界1位なわけよ。「LITEのドラマーランキング」はぶっちぎりで歴史上1位(bobo)

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bobo:そういえば最近、Vaundyのレコーディングをずっとしてるんだけど、ちょっとヨレちゃったりして俺は嫌だったテイクを、「いや、全然かっこいいっすよ!」って言うわけ。最初は「えー?」とか言ってたんだけど、それからあいつのデモを作る作業を見てたら、あらゆるソフトを駆使してバッと作り上げて、そのクオリティが凄まじいの。で、当たり前だけどドラムソフトは一切ヨレたりしないじゃん。そっちが当たり前になってるわけ。そうすると、俺がヨレたことが良いんだと。

山本:それはMIDIでは出せないですもんね。

bobo:そうそう。まあ、出そうと思ったらできるらしいんだけど、時間がかかるんだって。だから「できる人ほど人間を使うと思いますよ」って。最初、俺はデモを聴いてショックだったの、音も良いしナイスグルーヴだからさ。でも、作ってる奴はまったくそこに満足してない。で、「俺らの仕事はまだまだあるぞ」と思った。

山本:うんうん。あのヨレとかちょっとしたズレって、ランダムでやっちゃうと本当にランダムになっちゃうし。

bobo:心拍数が上がるから体感テンポが上がるでしょ。それは人間の特権だよね。そこで叩いたものってそれでしかないから、今回のアルバムで通して叩いたっていうのも、絶対的に価値があるし活きると思う。......50年後くらいに(笑)。

山本:92歳じゃないですか! 俺、そういう人生かぁ(笑)。

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bobo:あと思ったのは、昔のLITEはもっと圧で勝負なところあったじゃない? よりロックバンドのカタルシスというか。でも「Endless Blue」とかは今の時代のジャズ──4ビートじゃなくてもっとアブストラクトになってるものにも通じる。だからLITEはもはや、間口がロックファンだけじゃないね。

山本:だからか、「Thread」をピッチするとき、ジャンルがヒップホップになってるんですよ。

bobo:なるほどね。

山本:ロックじゃなくなってしまった(笑)。でも普通にプレイリストに入ったりしてて。

bobo:あの曲はヒップホップといっても相当アンダーグラウンドな奴だけど、アンダーグラウンドなものって国を限定しないし、市場が世界になるよね。だから俺がさっき言ったみたいに、1曲目が良かったんじゃない? 初めてLITE聴く奴がさ、「最近何聴いてんの?」「LITEっていうヒップホップグループでさ」とか(笑)。

山本:20年かけての変革(笑)。でもboboさん自身も変わってきてますよね。

bobo:変わった。昨日と今日も違う。

山本:そういうの、良いですよね。

bobo:チャップリンが最高傑作を聴かれたとき、「次の作品」って答えたって聞いて、かっこいい!って。そうやって変化し続けるのは大事だよ。

山本:去年観たVaundyのライブでもboboさんの叩き方は変わってたし。

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bobo:そこからまた変わったよ、今は。この前のツアーファイナルでWOWOWの生中継を録画しておいて、家帰ってから観たの。そうしたら激萎えしてさ。「俺こんな動きをイメージしてなかった」って恥ずかしくなっちゃって、翌々日のレコーディングから100%変えて行ったら、すげえ良くて。

山本:そういうの大事だと思います。

bobo:でも俺は今ここまでがっつりアルバムを作ることはないからさ。だって、お前の「全山本」を注ぎ込んでるわけでしょ。

山本:そうですね、4年半分の。

bobo:納得いかなかったら納得いくまでやれるわけでしょ?

山本:そうですね。それぞれがしっくりくるまでやる。

bobo:俺が今やってるドラムっていうのは、俺が納得いくまでじゃなくて、プロデューサーなりコンポーザーなりのラインを超えたらOKになるから。

山本:バンドだとジャッジするのは自分とメンバーですからね。

bobo:ハードルはめちゃめちゃ上がるよな。だから俺はよく言うけど、お前はもう世界1位なわけよ。「LITEのドラマーランキング」はぶっちぎりで歴史上1位。バンドやってる奴はその誇りを持ってやらなきゃダメだよな。

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取材・文:風間大洋
撮影:是永日和

RELEASE INFORMATION

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LITE「STRATA」
2024年1月31日(水)
Format:Digital

Track:
1.Upper Mantle
2.Deep Inside
3.Crushing
4.Thread
5.Dark Ballet
6.Endless Blue
7.Breakout (Album Ver.)
8.Lower Mantle
9.Left Unsaid

試聴は こちら


LIVE INFORMATION

"STRATA"
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2024年2月17日(土)
会場:東京・恵比寿LIQUIDROOM
時間:開場 17:00/開演 18:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)

2024年2月22日(木)
会場:大阪・梅田Shangri-La
時間:開場 18:30 / 開演 19:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)

特設サイト: https://lite-web.studio.site/

イベント情報
2024年4月13日(土)
東京・渋谷 "SYNCHRONICITY'24"

2024年5月16日~18日(土)
デンマーク・コペンハーゲン "A COLOSSAL WEEKEND 2024"

2024年5月25日(土)
UK・London "Portals Festival 2024"

INFO:https://lite-web.com/shows/


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オフィシャルサイト
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