SENSA

2024.02.15

LITEニューアルバム『STRATA』リリース記念!楠本構造×美濃隆章(toe)スペシャル対談

LITEニューアルバム『STRATA』リリース記念!楠本構造×美濃隆章(toe)スペシャル対談

LITEにとって約4年半ぶりの新アルバム『STRATA』が完成した。彼ら自身が「全曲LITEにとって新しいことしかしてない」と評する同作を一聴してまず驚かされるのは、ボーカルの入った楽曲が多いこと。メロディのあるものからポエトリーリーディング調の歌、ラップまでも飛び出す楽曲たちは、従来のインストバンド・LITEの印象をあっさりと塗り替えるものであり、サウンドに目を向けてもシンセを多用するなど新たな音像を生み出している。それでいて根底にある4人のバンドアンサンブルの痛快さは健在かつ、よりツボを押さえ洗練されたものとなっていることもわかる。
そのリリースにあたり、SENSAではメンバー4人がそれぞれ親交の深いミュージシャンを迎え、対談形式で現在のモードと新作完成までの道のりを語ってもらった。今回は、楠本構造(Gt)×toe・美濃隆章(Gt)の対談を掲載。個々のキャラクターや担当パートならではの視点から繰り広げられるトークをどうぞ。


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初めてエンジニアをお願いしてくれたときに、上手だなぁと思いましたね(美濃)

─お付き合いはもう長いんですか。


楠本:LITEが『Phantasia』(2008)というアルバムを出したときに、エンジニアを美濃さんがやってくれたのが初めてだったと記憶してます。その前からバンドとしてはもちろん知ってましたけど、先輩ですし対バンとかはしてなくて。

美濃:初めてエンジニアをお願いしてくれたときに、クリーンともクランチとも言えないけっこう細かいリフが、張り付いた感じの音像でババババッと入っていて。これは人力で完璧に弾けるのかな?と、録る前はちょっと不安になったんですね。エディットとかもかなりあるのかと思ったけど、マイク立てたらまんまその音になってたので、上手だなぁと思いましたね。

楠本:「うめえなー」みたいな褒め言葉をいただいたの、よく覚えてます。あれが2008年だったんですけど、その頃は日本においてインストバンドってそんなにメジャーではなかった......まあ、今もメジャーではないんですけど(笑)、界隈みたいなものは特になかったので、アルバムを作ろうとなったときにそういう音楽を知っている人にやってほしくて、当時リスナーとしてよく聴いていた美濃さんしかいなくね?と。ダメ元でお願いしました。

美濃:ありがたいお言葉ですね。

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─エンジニアの視点からすると、歌ありきの作品を録るときと、インスト系の音楽を録るときって別物なんですか?


美濃:どうなんだろうなぁ。基本的には音作りはそんなに違うとは思っていないです。ただ、そういう音楽を全く知らないでポップスとかしか触ったことのない人にもできなくはないんですけど、伝えるのはいちいち大変かもしれないですね。一個一個「これは通常こうだけど、こうしてほしい」って言うのも面倒くさいじゃないですか。なのでインスト云々というよりは、ある程度「多分こうしたいんだよね?」っていうのを汲み取れるかが大事かもしれない。

楠本:たとえば「ちょっと」と言ったとして、その「ちょっと」がどれくらいかは人によって違ったりすると思うんですけど、そういう部分での共通言語というか、伝わりやすかったのが大きいと思います。その後も美濃さんにも何度かエンジニアとしてお願いしたり、LITEがテラ・メロスとかの海外バンドを招聘したときにはtoeに声をかけさせてもらったり。

美濃:あったね。思い出しました。

楠本:僕らの15周年のときにも出ていただいたし。

美濃:あれが15年で、今は?

楠本:20年。

美濃:おおー!

楠本:今回、僕がアルバムのレコーディングからミックスまで全部やったんですけど、そういう意味でも僕が美濃さんにいろいろ聞きたいなと思って対談をお願いしたんですよ。技術的なことだけじゃなくて、メンタルとかまで(笑)。

美濃:まあ、メンタルは削るよね(笑)。

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低音成分や歪みありきの曲をすっきりさせ過ぎると「ちょっと違う」ってなる(楠本)

─美濃さんが今作を聴いた印象はどうでしたか。


美濃:縦のレンジがすごく広くて、かっこいいなと思いました。中高域のサチュレーション(歪み)の使い方もギリギリのところで止まる感じで、飛び出しすぎない感じがいいなと思いました。

楠本:僕も(エンジニアを)始めてからそんなにいっぱいやっているわけではないので、意図してない部分も出てしまってるんですけど。やっぱりLITEの音楽特性として、デモで上がってくる段階から「飽和させてほしい」感じの曲だし、メンバーもそれを言うんですね。「もうちょっとグチャグチャにならない?」みたいな。それを表現するのがすごく難しくて──。

美濃:なんか反省会みたいになってるけど?(笑)

楠本:いやいや(笑)、それがあのギリギリの感じになってるのかなと思って。

美濃:ああ、なるほどね。でももっと良い意味で言っていて。トレブルとかけっこう出して攻めてるでしょ? あれをあのままクリアに出しちゃうと突き抜けてきちゃって、痛いところが来るんだけど。それを良い感じにサチュレーションで滲ませることで、高域の攻撃性は残しつつも耳に刺さってこない。スネアとかもシンプルだけど、ちょっと歪ませることで余韻が延びる。あの感じがLITEっぽくてよかったと思いますよ。

楠本:ありがとうございます。まさに今おっしゃっていただいた歪み成分については、武田も僕もギターの音が痛いので、ちょっと潰して滲ませるのを全曲通してやったかなと。最近のLITEはわりとループシンセを使っていて、その低音成分や歪みありきの曲もあったりするから、そこをすっきりさせ過ぎると「ちょっと違う」ってなるんですよ。それをグチャっと歪ませると「ああ、いいじゃん」みたいな感じになる。

美濃:でも低音成分は太い音なんだけど、ちゃんとスッキリさせようとしてるというか。いいと思うよ。

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─聴きどころが違いますね、やっぱり


楠本:美濃さんと対談となった時点で、「曲のメロディがいいね」みたいな答えが返ってくるとは思ってないです(笑)。

美濃:はははは! リフとかもやっぱりサウンド込みで気持ちいいか、来るか来ないか、そういうものだと思っているので。でもピアノの曲(「Endless Blue」)は音がというより曲が好きです(笑)。

譜面とかにも起こせない謎みたいなものの方が、人を感動させることもある(美濃)

─今回、LITEの新しい一面を感じる作品ですけど、楠本さんはできあがっていく中でどんなことを感じてましたか。


楠本:歌が入ったりラップが入ったりしてる部分が違うだけで、いつもとそんなに思いっきり作り方を変えたっていう意識はないですね。そもそも作る過程でのインプットが違うので、出てくるものも違うというか。歌に関しては最初「誰が歌う?」みたいな話になって、「Endless Blue」を作ったときも、最初は僕が適当な歌を入れたデモを持っていって、ゲストでも入れようかという話もあったんですけど、ゲストボーカルを入れるとライブでの再現性が下がるよねということになって。前々作(『Cubic』2016)で武田が軽く歌ってたし、「じゃあ歌う?」みたいな感じでした。で、彼はボイトレに通い──。

美濃:真面目! でもすごくいい声だね。

楠本:そうなんですよ。レコーディングの歌入れまで誰も歌声を聴いたことなかったから、みんなで「大丈夫かな」とドキドキしてたんですけど、いざ武田がボーカルブースに入って歌ったら「いいじゃん!」って。

美濃:うん。落ち着いたスタイルですごくいい。俺、個人的には歌い上げないタイプのほうが好きだから。

楠本:ポエトリーリーディング的なのも含めて、そういう歌い方は意図的にやってましたね。

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─ラップはどうでした?


楠本:それこそスタジオでみんなで、「さすがにラップは無理でしょ」っていう話になったんですけど(笑)。デモを送ってもらったらボソボソ言う感じのスタイルでかっこよくて。そのときちょうどイギリスのスリーフォード・モッズとかをバンド内みんなで聴いてたりもしたし、わりと適当な感じでいいんじゃないか、作り込まない方がかっこいいんじゃないかということになりました。

美濃:20年とかやってると、このメンバーでやればなんとなく良くなるでしょみたいな、そういう感覚は出てくるよね。なんというか、自信とも違うんだけど、この人たちとやれれば大丈夫みたいな。

楠本:まさにそうです。たぶん僕らがやったらLITEの音になるから、好きなようにやろうというのは話して。で、彼の中ではあのラップはBUDDHA BRANDらしくて。曲としてはBUDDHA BRANDと90年代のミクスチャーロックを足して2で割ったような気分ですかね。

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─わかる気がします。


楠本:あと、美濃さんに聴きたいんですけど、toeって制作は1曲ずつですか?

美濃:最近ちょうど山嵜(廣和・G)くんとデモを作ってるんだけど、効率とかはまったく考えないで、AメロBメロぐらいまで作ったところで「今日は一旦やめよう」って一回家に持って返って、また何日か経って「あ!」ってなったらまたその続きを進めるみたいな感じかな。どんどん進めていくと聴いたことある感じになっちゃうから、けっこう待つというか、超弱い火力で何時間も煮込むみたいな(笑)。1ヶ月くらい聴かなくて久しぶりに聴いたら「あ、いいじゃん。これで録ろう」とか、そんな感じです。今は1曲ずつ出す人が主流じゃない?

楠本:そうですよね。

美濃:それはそれでいいんだけど、でもなんかアルバムって出したいじゃない? だからLITEが今回アルバムで切ったのはすごく良いなと思いまして。

楠本:今回は1曲ずつ録って出すのを繰り返してアルバムになった感じなんですけど、そのやり方は合っているなって思いました。僕らも新曲の演奏が馴染むまで時間がかかるので、まず1曲ライブでやって80%まで来て、また次の曲が80%まで来てっていう、常にアップデートできてる感じがバンドのモチベーションにも繋がったり......なんか昔に戻ったような感じもしました。アマチュア時代に新しい曲ができたらCDとか出して、それをライブでやるときのような雰囲気があって。馴染んできたら次をまた録ろうよ、というカジュアルさはすごく良いなって。

美濃:わかるよ。僕も年だから脳細胞がもう、自分たちのライブで新曲10曲とか無理だもん(笑)そのペースでやるとコピーバンドみたいな気持ちになっちゃう。この曲はここに当てたときにグルーヴが気持ちいいとかって、ライブしたり練習していく中で「あ!」って気づくことがあるから、曲がライブ用に成長するというか、そんなニュアンスはよく感じますね。

楠本:レコーディングはスクエアな感じでもやっていくうちにノリが変わって、ちょっと揺れた方が良い感じになったりとか、そういう何回かライブでやらないとわからない気づきはありますね。

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─やっぱりそういうプレイヤーとしての脳と、曲を録ったり仕上げたりするときの脳って切り替わってるんですか。


美濃:うーん。僕は曲作りだけじゃなく技術的な部分にも同時に触ってきちゃったので、純粋に曲作りだけをできる人を見ると羨ましく思うことはあります。自分はちょっと、ミックスしやすいようにこういう音にしようとか、強弱をつけすぎても大変だしっていう意識が、自然とプレイに出ちゃうんですね。

楠本:なるほど。僕も言語化はできてなかったですけど、言われてみるとそういう気持ちで弾いてる気もします。

美濃:でも、エンジニア泣かせみたいな、譜面とかにも起こせない謎みたいなものの方が、人を感動させることもあるので。極力、弾くときはエンジニア脳を分けようとはしてます。

楠本:それって曲を作り上げる段階でも働きません? 「この音は絶対にないでしょ」「入れないでしょ」みたいなものが、やってみると意外にかっこいいとか。

美濃:ある。歪がミラクルを生むことはあるよね。

楠本:だから余計なことを考えちゃってるのはあるかもしれないですね。

美濃:それはもう、(エンジニア脳に)なっちゃってるよ(笑)。まあ、どっちも知ってるのは強いんだけどね。でも知ってるが故に、型破りみたいなことに自分でブレーキをかけちゃうというね。

楠本:ああー、今の話を聞いてすごく感銘を受けました。そこは破らないといけないんだなって。次のステップに進めるヒントになりましたね。また次のLITEの作品が出たとき、美濃さんに会ったら「良かったよ」「生意気じゃん」って言われるくらい頑張りたいです。

取材・文:風間大洋
撮影:是永日和

RELEASE INFORMATION

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LITE「STRATA」
2024年1月31日(水)
Format:Digital

Track:
1.Upper Mantle
2.Deep Inside
3.Crushing
4.Thread
5.Dark Ballet
6.Endless Blue
7.Breakout (Album Ver.)
8.Lower Mantle
9.Left Unsaid

試聴は こちら


LIVE INFORMATION

"STRATA"
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2024年2月17日(土)
会場:東京・恵比寿LIQUIDROOM
時間:開場 17:00/開演 18:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)

2024年2月22日(木)
会場:大阪・梅田Shangri-La
時間:開場 18:30 / 開演 19:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)

特設サイト: https://lite-web.studio.site/

イベント情報
2024年4月13日(土)
東京・渋谷 "SYNCHRONICITY'24"

2024年5月16日~18日(土)
デンマーク・コペンハーゲン "A COLOSSAL WEEKEND 2024"

2024年5月25日(土)
UK・London "Portals Festival 2024"

INFO:https://lite-web.com/shows/


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