SENSA

2024.02.16

LITEニューアルバム『STRATA』リリース記念!井澤惇×JIRO(GLAY / THE PREDATORS)スペシャル対談

LITEニューアルバム『STRATA』リリース記念!井澤惇×JIRO(GLAY / THE PREDATORS)スペシャル対談

LITEにとって約4年半ぶりの新アルバム『STRATA』が完成した。彼ら自身が「全曲LITEにとって新しいことしかしてない」と評する同作を一聴してまず驚かされるのは、ボーカルの入った楽曲が多いこと。メロディのあるものからポエトリーリーディング調の歌、ラップまでも飛び出す楽曲たちは、従来のインストバンド・LITEの印象をあっさりと塗り替えるものであり、サウンドに目を向けてもシンセを多用するなど新たな音像を生み出している。それでいて根底にある4人のバンドアンサンブルの痛快さは健在かつ、よりツボを押さえ洗練されたものとなっていることもわかる。
そのリリースにあたり、SENSAではメンバー4人がそれぞれ親交の深いミュージシャンを迎え、対談形式で現在のモードと新作完成までの道のりを語ってもらった。今回は、井澤惇(B)×GLAY / THE PREDATORS・JIRO(B)の対談を掲載。個々のキャラクターや担当パートならではの視点から繰り広げられるトークをどうぞ。


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いちばん最初にピックを始めたこと自体がもう、JIROさんの影響(井澤)

─僕もそうなんですが、井澤さんの世代だとほぼ間違いなく学生時代にGLAYに触れてますよね。


井澤:一家に一枚『REVIEW-BEST OF GLAY』がある感じですよね。

─まさに。それがどう出会い、交流するようになったんですか。


井澤:実はけっこう長くて、1st『filmlets』(2006)を出した頃にカメラマンの橋本塁さんの写真展(『SOUND SHOOTER』)でライブをしたとき、控え室にJIROさんがいらっしゃって。でも、僕らはいるはずないと思ってるので、気づかずに着替えたりしてるところに塁さんから「紹介するね、JIROさん」ってすごくフランクに言われて。「すいませんでした......!」みたいな感じで(笑)、ビシッと挨拶したのが始まりですね。

JIRO:あのときはたしかライブは観てないはずなんだよな。

井澤:そのあとにたしか、塁さんの『SOUND SHOOTER』にTHE PREDATORSが出たときに観にいって、打ち上げで話をして。会話する中でJIROさんも気になったのか音楽を聴いて気に入ってくれて、そこから交流が始まりました。

JIRO:それまでインストの音楽ってそんなに触れてきたわけではなかったので、井澤くんの懐っこいキャラとは全然違う音楽でビックリしました。僕からしたらサーカスみたいな感じというか、自分の思い描いてる音楽とは全然別物なので、とにかくすごいなっていう。でも、LITEを知ったことによってその周辺の音楽を聴いてるかっていったら、全然聴いてないから、やっぱりLITEのパフォーマンスとか音楽にハマったんですよね。......井澤くんとは趣味も合ったりするんですよ。

井澤:途中から僕がベース弾いてるの忘れてるんですもん。

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─どういうことですか(笑)。


JIRO:コロナ禍で活動がない時期があったので、お互い遊びの方に集中したというか。そうするうちに井澤くんがベース弾いてたこと忘れてて(笑)。

井澤:遊びで会うことが多いし、やっている音楽も全然違うので、仕事で一緒になることは基本ないですからね。

─ちなみにどんなことをして遊んでるんですか。


JIRO:まずキャンプから始まって、釣りとか。

井澤:コーヒーもそうだし、スパイスカレーを作り始めた時期も一緒だったんですよ。

JIRO:何も話してないのに一緒だったね。

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─プレイの面の特徴とか魅力でいうと、お互いをどう見てるんですか。


井澤:いちばん最初にピックを始めたこと自体がもう、JIROさんの影響です。JIROさんからピックのかっこよさを知ったので、指とピックの違いをプレイに反映するLITEのスタイルのいちばん元、もう血とか骨の部分なんですよね。今、近くで話すことができるようになって感じるのは、プレイ面でも趣味でも、未だに自分がやってないことに興味を持ってたり、新しいことに対して先に進む力、真っ直ぐ進む力みたいなものがめちゃめちゃ強い。そのアティチュードの背中を見てる感じです。

JIRO:僕らはデビューしてからずっと、音楽をやる以外のところで忙しかったのもあって、自分の向上心みたいな部分が疎かだった時期が長くて。それが今50くらいになって新しい友達や新しい音楽に出会って、「なるほど、こういう方向もあるんだ。ちょっとやってみようかな」みたいな感覚になっている。前に進む力が強いふうに見えるのはそういうところなのかなと思います。でもそれで言ったら、僕の方が井澤くんをすごいと思いますね。自分の音に全責任を持ってるし、音作りにもすごくこだわってるから。僕もこの2~3年でちゃんと自分の中で責任を持って音を出していかなきゃいけないという意識になったのは、井澤くんの影響です。この前、Elephant Gymのライブを一緒に観に行ったときも、KT Changがタッピングのベースを弾いていて、僕はもう「すげえな!」で終わっちゃうのに、それをすぐに習得したりもしてたし。

今回は「どうやって弾いてるんだろうな」ってコピーが始まったりもして(JIRO)

─今回の新作についてはどんな印象でしたか。


JIRO:マジでめちゃくちゃ変わっていて。ここ何作かも毎回それまでとは変わっていて、より大人になったというか、研ぎ澄まされていってましたけど、今回はさらに音が洗練されてクリアで、単純に好きでした。

井澤:一曲できたらリリースするのを繰り返して、形になったらアルバムっていう流れだったから、今回は逆にコンセプトがないことをコンセプトにしよう、みたいな話を武田(信幸・G/Vo)としたんですよ。だから今まででいちばんバラエティ豊かなのかなという気がします。自分たちがやったことのないことをしたくて4人が集まっているバンドなので、JIROさんに毎回違って聴こえるって言っていただいたのは「してやったり」な気持ちはあるし、それがプレイスタイルだけではなく楽曲全体で感じられるとしたら、いちばんの褒め言葉かなと思いますね。

JIRO:今までは聴いても「うわ、すげえな」っていうだけで、そこで「どれどれ、弾いてみようかな」っていう感じにはならなかったんですけど、今回は「どうやって弾いてるんだろうな」ってコピーが始まったりもして。

井澤:あ、マジですか!

JIRO:そのぐらいフレーズ自体がキャッチーになったのかな。シンプルかつキャッチーで強いものになった印象はありました。

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─歌が入っている割合が多いのも影響してるんですかね。


井澤:それはあると思います。海外ツアーで久々に海外にも行けるし、自分たちで4人だけで収まれる限界ってこんなもんじゃなくない?みたいな話から、ラップも歌も「じゃあ、やっちゃう?」ということになって。そうしたら武田が自分からボイトレに行って、カラオケでずっとボン・ジョヴィ歌って、みたいな。

─そこはボン・ジョヴィなんですね(笑)。


井澤:「Livin' on a Prayer」をずっと歌ってたらしいです。絶対そんな高い声いらないのに(笑)。

─ベースの面ではどうでした?


井澤:僕的には、本当に今までやったことないことばっかりやってます。わかりづらくはあるし、細かいことなんですけど、音色作りにはすごくこだわったし、演奏自体もミニマルなんだけど人間的というか、そこは自分の中でテーマになっていた気はしますね。

JIRO:「Theread」の下がっていくところとか超かっこいいね。

井澤:あ、本当ですか! あそこも普通だったら拍子の頭から始めるフィルをわざと遅らせて入ったりとか、変なこだわりは細かくたくさんあるんですけど、テクニカルな部分ではなく色気とか味付けにこだわっていて、あまり上手く聴こえることを目指してはいないかもしれないです。基本的に僕はあんまり弾かないでいいと思ってるタイプなので──。

JIRO:そうなの!? 嘘でしょ(笑)。

井澤:実は(笑)。昔からセッションしてると「ここはベース要らなくない?」って僕が提案することも多かったんですけど、今回は良い位置を自ずと見つけられたのかもしれないです。シンセの低音が大きいことでベースの比重はそこまで大事じゃないから、だったら自分のやりたいもので自由にシンセとかギターに絡むっていう、低音を支えるんじゃない位置で遊びたくて。

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新しい世代の音楽とこれからエンカウントできることも視野に入れて作った(井澤)

─他にJIROさんがベースの部分で印象的だった曲はありますか。


JIRO:「Endless Blue」ですね。音色もなんかヌメッとしてて、ノリも独特だし。さっき言ったみたいに「何これ、かっけえ!」ってすぐコピーしました。

井澤:あれ、今までLITEにはなかったハネのリズムですもんね。

JIRO:フレーズ的にはすごくシンプルじゃない? なんだけどすごくキャッチーで強いなって。

─今作はわりと淡々とした流れの中で、明確にブレイクしたりしてバンッと行くようなものじゃない動きの付け方が多いですよね。


井澤:ああ、そうかもしれない。山なりになってる感じで、たしかに今回キメは一切ないですね。言われて気づきました。それは聴いてる音楽が違ってきた影響だったり、新しい世代の音楽とこれからエンカウントできることも視野に入れて作ったからかもしれないですね。たとえばロンドンの、今ポストパンクとかポストハードコアをやってる人たちと海外ツアーで対バンしたいなっていうコンセプトもちょっとあったりするので。

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─JIROさんも聴く音楽が変わってきたことが、プレイに変化をもたらしてますか?


JIRO:変わってきたんじゃないかなとは思うけど、僕は井澤くんほどすぐは反映できないので、ある程度時間が必要だと思います。だからその自分の中で解釈して答えを出せる瞬発力はすごいと思いますね。飄々とやってるけど影の努力は相当してるんだなって。

井澤:でもGLAYの「THE GHOST」(2023年リリースのシングル『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』収録)とか、僕の中では今までと全然違うプレイだけど、めちゃめちゃかっこいいなと思いました。

JIRO:あの曲は作るときからR&BみたいなコンセプトをGLAY流にした感じだったので、けっこう答えが見つかるのが早かった。でも、たとえば今、僕が聴いているものをすぐGLAYに反映できるか?って言ったら、ジャンルとかも全然違うのでなかなか難しくて、そういった曲が出てきたときに落とし込める感じですね。

─今年でLITEは20周年、GLAYは30周年の節目ですが、それぞれの活動に期待することはありますか。


井澤:GLAYの周年ライブとかではいつも、「また先にこういうことやっちゃうの!?」みたいなことをやってくれるんですよ。何をしてくれるかが楽しみなので、「こういうことをやってほしい」とかは言えないかも。普通にファンとして楽しみたいです。

JIRO:LITEは海外を主戦場に置いてたのがコロナの影響でかなり制限されたと思うので、今まで通りの活動に戻ってまた海外に行ったときに、そこでもらった刺激でどう活動が変わっていくか楽しみです。

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─たしかにここ数年海外に行けなかったのは大きいですよね。


井澤:相当大きかったですね。半分以上活動の場が減ったので、絶望でした。でもまた海外に行ける状況になって、新曲もガラッと変わったし、海外の人も一新してると思うんですよ。今までダイブしてたようなロンドンのキッズたちも年をとっているはずだから、次の世代にも伝えていかなきゃいけない。すごくかっこいいなっていう若いバンドもたくさんいるので、そういう人たちと対話して新しいシーンが増えていけばなって思います。僕らは海外に行ったときのメタルとかマスロックレジェンドみたいな扱いから脱出するのを目論んではいるんですよ。それだけだとプログレ爺さんになっていきそうじゃないですか(笑)。

─先鋭化しちゃうというか。


井澤:そうそう。だからもうちょっと第一線でいたいのは目標だし、新しいエンカウントが欲しいなって。

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─新たな出会いで言えば、この記事でLITEを知るGLAYファンもいると思います。


JIRO:それでいうと、僕が大阪でやらせてもらってるラジオ(FM802「BUGGY CRASH NIGHT」)で今までもLITEの曲をかけてたんですけど、最近歌入りの曲も多いので、より流しやすくなったかな。

井澤:もっと歌わせます!(笑)

JIRO:でも本当、「Deep Inside」を初めて聴いたときに、「このボーカル、なんかデーモン・アルバーン(ブラー)みたいだね」って感想を送ったくらい、めちゃくちゃかっこいいじゃんっていう話をしたんですよ。

井澤:次の日に武田に「JIROさんがデーモン・アルバーンみたいって言ってくれたよ」って伝えたんですよ。そしたらめっちゃ恥ずかしそうでした。

JIRO:(ジョン・)ボン・ジョヴィって言ってほしかったのかな?(笑)

井澤:そうしたらうれしそうだったかもしれないです(笑)。

取材・文:風間大洋
撮影:Mayuko Takeuchi(井澤惇)
Yusuke Okada、Keiko Tanabe(JIRO)


RELEASE INFORMATION

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LITE「STRATA」
2024年1月31日(水)
Format:Digital

Track:
1.Upper Mantle
2.Deep Inside
3.Crushing
4.Thread
5.Dark Ballet
6.Endless Blue
7.Breakout (Album Ver.)
8.Lower Mantle
9.Left Unsaid

試聴は こちら


LIVE INFORMATION

"STRATA"
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2024年2月17日(土)
会場:東京・恵比寿LIQUIDROOM
時間:開場 17:00/開演 18:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)

2024年2月22日(木)
会場:大阪・梅田Shangri-La
時間:開場 18:30 / 開演 19:00
出演:LITE
料金:前売チケット ¥4,500/当日チケット ¥5,000(D代別)

特設サイト: https://lite-web.studio.site/

イベント情報
2024年4月13日(土)
東京・渋谷 "SYNCHRONICITY'24"

2024年5月16日~18日(土)
デンマーク・コペンハーゲン "A COLOSSAL WEEKEND 2024"

2024年5月25日(土)
UK・London "Portals Festival 2024"

INFO:https://lite-web.com/shows/


LINK
オフィシャルサイト
@lite_jp
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