SENSA

2022.01.22

カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。
キュレーターの金子厚武とラジオDJ MISATOによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!

New Release Digest Part 1


MISATO:1月17日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜23作品、まずはPart 1を8作品ダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!Part 1からして素晴らしい!もう大好き。

金子:お馴染みの方々から新しい方々までいろいろありましたね。

MISATO:最後のNagakumoさん、初めてですよね?声がいいですね。

金子:いいですよね。2021年1月1日から活動を開始して、約1年という関西のバンドです。自分たちのことを〈ネオネオアコ・バンド〉と名乗っているとのことで、確かにネオアコ感はありつつも、でもそれだけではない雑多な音楽性が混ざっていて、個人的にも好きでした。これからが楽しみです。



MISATO:Nagakumo、気になるな〜。そしてはじめまして、Shōtaro Aoyamaさんも好き!

金子:FRIENDSHIP.からは前にリリースがあるんですけど、この番組で紹介するのは初めてです。元々フランスのレーベル、Kitsunéで仕事をしていた人で、その後にサカナクションの山口一郎さんが声をかけ、今はサカナクション周りにも関わっていて、音楽だけじゃなくファッションも手がけたり、すごく幅広く活動をされている方です。Aoyamaさんは日本の土着的な音楽を現地の演奏家の方々と制作し、リリースするレーベルもやっていて、前回はアイヌとのコラボレーションだったんですけど、今回の作品は知床の自然をテーマに、知床の国立公園内でのフィールドレコーディングや撮影を行って、作品を完成させたとのこと。サカナクションにも通じるディープなクラブミュージックと、土着的な要素との融合という、非常に独自な音楽をやられていますね。


前作時に公開した、ルーツや人となりを探っていくINTERVIEWシリーズ「Highlighter」もぜひチェックを!


MISATO:そしてIvy to Fraudulent Gameの新曲が、ストレートにポップで、シンプルで、これはできないですよね?

金子:いま自分たちにすごく自信があるんだなって感じが伝わってきますね。昨年9月に〈murffin discs〉に移籍して、自分たちのブランド〈from ovum〉を立ち上げてからというのは本当に「俺たちはこれなんだ」というのがすごく強く出ている感じがします。〈murffin discs〉もめちゃめちゃ勢いあるし、Ivyは2022年さらにいくんじゃないかなという期待がすごくありますね。

MISATO:前回これからくるであろう「2022年期待の推しゴト」の話をしましたけど、Ivy to Fraudulent Gameも入れたかったですもんね。

金子:Ivyきそうですね〜。



MISATO:これはきそうですね!要チェックです。さあPart 1から1曲送りしましょう。

金子:もう一組、今年きてほしいと思う人たち、YAJICO GIRLを紹介しようと思います。

MISATO:YAJICO GIRLはいままでも紹介してきましたもんね。

金子:すでに注目株には間違いなくなっているんですけど、今年のさらなる飛躍をめざして、今回はEPがリリースされます。昨年からすでに新曲は配信でリリースされていて、それをまとめたEPになってるんですけど、昨年から聴いてきた通りかなり曲調の幅が広くて、クラブミュージックっぽい曲や、ハイパーポップとかを取り入れてる曲もあれば、王道感のある歌ものもあったりして、YAJICOの持っているいろんな側面が表れているEPになっています。今回『Retrospective EP』というタイトルで、「回想」みたいな意味ですけど、音楽性の幅が広いからこそ、歌詞には統一感を持たせようとしたらしく、地元の大阪に帰ったときに歌詞を書いてるそうで、だからちょっと昔を振り返るような内容になっていて。

MISATO:ノスタルジックな感じですね。

金子:あとボーカルの四方くんがいま25歳で、大学生が社会人になって2〜3年目ぐらいの大人の年齢なんだけど、でもまだちょっと子供の部分も残してるみたいな、絶妙な年齢で、子供のころを回想しつつ、でも大人になっていくみたいな、そんな心情も歌詞には表れていて。言ってみればですけど、これまでのYAJICOがある意味「子供期」だったとすれば、『Retrospective EP』をきっかけにいよいよ「大人期」に入って、さらに充実した音楽をこれ以降また作っていってくれるんじゃないかという、そんな期待もさせてくれる作品だなと思います。

MISATO:では聴いてみましょう。

金子:「VIDEO BOY」というタイトル通り、8bitサウンドとか、レトロな要素が入っている曲なので、EPを代表する曲のひとつだと思います。



MISATO:「忘れないで〜♪」

金子:あれ耳に残りますね。

MISATO:残りますね!あとおっしゃっていた8bitの電子音も、「あ!これだな」という感じで、何を使ってるのか拾いながら探していく作業もすごく面白いEPになってますね。

金子:かなりいろんな色の音が詰め込まれているので、面白いと思います。




New Release Digest Part 2


MISATO:1月17日週リリースの新譜ダイジェストPart 2をお送りしました。はじめましての方がいます。「窒息寸前ステートメント!」Limited Express (has gone?)です。

金子:あはは。思わず歌っちゃう曲が多いですよね。シーンの重鎮的な存在になっているハードコアバンドで、べースの谷ぐちさんは〈Less Than TV〉という日本のハードコアの名門を主宰している方だったり、ボーカル・ギターのJJこと飯田さんは、音楽配信サイトOTOTOYに関わってたりとか、京都のボロフェスタの主催にも関わってたり、かなり色んなところで暗躍している、アンダーグラウンドシーンのキー・パーソンだったりします。

MISATO:暗躍!すごい!そうだったんですね。

金子:Limited Express (has gone?)は、ハードコアを貫きつつも、かなりインテリジェンスもあるバンドで、ホーンが入ってたりするのも面白いし、今回の曲も同じようなフレーズを繰り返しながらも、どんどんリズムが変わっていく、面白い曲になっていて。そこにさらにボーカルのYUKARIさんの印象的な声が乗っているという。

MISATO:これYUKARIさんじゃなかったらちょっと怖すぎて、私ちょっと聴けなかったかもしれない。

金子:やっぱりこの声がポップさを引き出していますね。



MISATO:そしてthe McFaddin!嬉しいな〜。the McFaddinも本当に精力的に活動されていますね。

金子:そうですね。これまで配信でリリースしてきた曲も含めたEPのリリースで、今回のダイジェストで流した曲はタイトル曲ですけど、the McFaddinの持ってるロック色が強く出ている曲で、やっぱりこういう曲もかっこいいですね。2022年頭に「今年はこのバンドがくる!」みたいなのを、他のメディアでもいろいろやってますけど、the McFaddinが結構取り上げられていて、「おー!」って思いました。あとこのEPのレコ発を1月末に東京でやるんですけど、それgatoと2マンなんですよ。

MISATO:え!なんてこと!

金子:この前、「関ジャム」が毎年年明けに行っている年間ベスト企画で、プロデューサーのYaffleがgatoを取り上げてて、あとVivaOlaくんも取り上げていたりして。

MISATO:もうきちゃうんじゃないですか?FRIENDSHIP.の時代が。

金子:YaffleさんFRIENDSHIP.好きなのかな?と思ってしまいました(笑)。とにかく、the McFaddinしろgatoにしろ、バンドなんだけどエレクトロニックな色もあってという新世代たちが、2022年くるんじゃないかなと思いますね。



MISATO:さあPart 2からも1曲ご紹介しましょう!

金子阿佐ヶ谷ロマンティクスをご紹介しようかなと思います。

MISATO:なんという安定感なんでしょう。

金子:やっぱりいいですよね。あの、年明けにThe Weekndがアルバムを出しまして。

MISATO:出しましたね。

金子:亜蘭知子さんという日本のシティ・ポップのシンガーの曲がサンプリングされてるというのが話題になって、今年もやっぱりシティ・ポップという言葉はひとつのキーワードとしていろんなところで出てくるんだろうなという感じなんですけど、そんな中で阿佐ヶ谷ロマンティクスも改めて注目されるんじゃないかなと思っています。もともとこの人たちは2014年結成でわりと歴史があって、ロック・ステディーとかレゲエとかそっちのルーツを持ちつつも、でも歌謡曲やニュー・ミュージックみたいな音楽をずっとやってきた人たちです。今回のアルバムはそこに昨今のシティ・ポップともよりリンクが生まれて、時代性という意味でもかなりジャストになったなという感じがしています。やっぱりこの声の良さというのは、昨今ブームにのってシティ・ポップ始めました、みたいな人たちとは一線を画すというか。

MISATO:わけが違いますね。

金子:ずっとやってきた説得力があるなと感じました。今回のアルバムは『大人幻想』というタイトルで、さっきYAJICOのときも「大人と子供」みたいな話をしましたけど、ここでも「大人」というワードが出てきてるなと思って。阿佐ヶ谷ロマンティクスはもともと大学のサークルが一緒だった人たちが始めたバンドで、今回のアルバムが3年半ぶりのアルバムなんですね。やっぱり最初はある意味サークルの延長で、ノリでとは言わないまでも、楽しんでやるというところがまず第一にあったのかなという気がして。でもこの3年半というのは、社会的なことも含めていろいろあった中で、音楽をやることの意味を見直したのか、そこにも「子供から大人」みたいな視点を感じました。あとシティ・ポップという音楽も「大人びる」みたいな側面があったりするから、そういったいろいろなことが『大人幻想』というタイトルに表れている気がして、歌詞の面でも魅力的な作品だなと思います。



MISATO:阿佐ヶ谷ロマンティクスはやはり伸びのいい声が素敵ですね。

金子:憂いを帯びたいい声ですよね。

MISATO:竹内まりやさんにも歌ってほしい、この曲。すごい合いそう〜。

金子:シティ・ポップカバーとかを、阿佐ヶ谷ロマンティクスがしてもいいですね。

New Release Digest Part 3


MISATO:1月17日週リリースの新譜ダイジェストPart 3をお送りしました。「生まれてきたけれど二度死ぬ♪」

金子:ついに男性の曲も歌い始めましたね(笑)。歌というかラップというか。

MISATO鎮座DOPENESSさんかっこいいな〜。だいぶヒリヒリした曲ですね。

金子:「メメントモリ」というタイトルだから、わりと生きると死ぬということを歌っていて、ヒリヒリもしつつ、やはりグルーヴが非常にかっこいいです。GuruConnectがやっているskillkillsと鎮座さんは前にもコラボをしたことがあったんですけど、今回は単体同士のコラボレーションということで。最近のヒップホップ、トラップだとハーフテンポの中でいかに遊ぶかみたいな感じが主流だったりするんですけど、この組み合わせにはそんなこと関係ないというか、独自のグルーヴ過ぎて気持ち悪い気持ちいいですね。

MISATO:気持ち悪い気持ちいいって、本当にそうですね!

金子:非常にオリジナルですね。



MISATO:唯一無二ですね。そして揺らぎのリミックス!CAPSULEとか80KIDZとかをちょっと思い出すというか。

金子:あー、エレクトロな感じとかそうですね。今回のリミックスアルバムには国内外からいろんなリミキサーが参加していて、いま聴いてもらったのはNuumというオーストラリアのプロデューサーのリミックスです。もともとはシューゲイザーの色が濃いですけど、今回のリミックスだと結構エレクトロニックなものも多かったりして、バンドの違った側面が表れていますね。あと、マスタリングはアジカンのGotchさんだったりして。

MISATO:え!?本当だ!

金子:Gotchさんは自分のスタジオを持ってたりとか、かなり音にこだわりのある人なので、こういうリミックスアルバムのマスタリングでGotchさんというのも面白いなと思いました。

MISATO:その起用の仕方は、ちょっと想像していなかったです。


昨年公開した、ルーツや人となりを探っていくINTERVIEWシリーズ「Highlighter」もぜひチェックを!


MISATO:ではPart 3からも1曲いきましょう。

金子:FRIENDSHIP.から初めてのリリースになる、(夜と)SAMPOをご紹介しようかなと。

MISATO:とてもいいバンドですね。

金子:印象的でしたよね。令和元年から始動した新しいバンドで、もともといろんなバンドをやってた人たちが集まって始まったバンドなので、実力者揃いで、最初からクオリティーの高い音楽を作っている人たちです。音楽自体もちろんいいんですけど、あともうひとつ注目なのが、メンバー全員フルタイムで働いている会社員という。

MISATO:え、すごい。よくこんなクオリティーの高いもの作れますね。

金子:先ほどちょっと仕入れた情報によると、(夜と)SAMPOというバンド名は、昼間は社会人で働いていて、夜は音楽をやるみたいなところで、昼間あくせく働いてるのに対して、夜は散歩をするように、ある意味ゆったりと音楽をやる、みたいなところが元になっているらしいです。

MISATO:そっか、「散歩する」って「仕事」との対比になっているということですね。昼と夜の対比もですね。バンド名の「夜と」の部分は表記上ではカッコがついてますもんね。

金子:おしゃれですよね。

MISATO:すごく想像力を働かさせてくれるようなバンド名ですね。



金子:ちなみに、Penthouseという若手の注目されてるバンドがいて、昨年の後半にビクターからデビューしてるんですけど、彼らもメンバーほとんど働きながら活動しているバンドでありながら、既にV6に曲提供してたりとかして(笑)。

MISATO:すごい!

金子:いま社会人やりながらも音楽活動を結構ちゃんとした規模感でやるみたいな人って増えていて、それって兼業だったり副業だったりが普通になってきた社会の変化とも関わってる気がすごくするんですよね。

MISATO:そういうところで悩んでるミュージシャンの方がもし聴いていらっしゃったら、LITEの武田さんにご相談いただければ、一発で解決できると思いますので(笑)。

金子:あはは。でもそうやって人生の自由度が増えたからこそ、逆に言うと大人と子供の移り変わりが昔よりも曖昧になっていると感じます。昔は「大学を卒業したら大人です」みたいな、境目がはっきりしてたけど、自由になった分、そこが逆に曖昧にもなってて、だからこそ「大人と子供」みたいなことが昔以上に曲のテーマになっていて。

MISATO:そうかもしれない。

金子:いまのネット世代の人たちとか、本当にそういうテーマの曲が多いんですよね。いろんな意味で時代感を感じさせる、今週のラインナップだなと思いました。

MISATO:ちょうど成人式が終わって1週間くらい経ってますけど、考えるいい機会になるかもしれないですね。


RADIO INFORMATION

FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
curatedhour_hdr-1.jpeg
FM福岡で毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"303号室"(毎週水曜日の27:00~27:55)では、FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」をオンエア。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。

放送時間:毎週水曜日 27:00~27:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)

番組MC
kanekoatsutake_20210528.jpg
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3

misato_a_1500_20210203.jpeg
MISATO
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。
TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。
安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10

Yuto_Uchino_photo.jpg
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin


LINK
FM福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.

気になるタグをCHECK!