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2022.01.25

カネコアヤノ×eastern youth、1/17 USEN STUDIOコーストのファイナル・シリーズで実現した「この2組である必然」に満ちた一夜

カネコアヤノ×eastern youth、1/17 USEN STUDIOコーストのファイナル・シリーズで実現した「この2組である必然」に満ちた一夜

 2022年1月いっぱいで、約19年の歴史を終える新木場USEN STUDIO COAST。その最後の月である1月は、ファイナル・イベントとして、連日、様々なイベントが行われている。
その中の1本として実現したのが、1月17日(月)の、カネコアヤノ × eastern youthの対バン。キャリアもジャンルも異なるし、これまで接点のなかった両者だが、終わってみると、なぜこの2組だったのかがよくわかる2時間強だった。

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 まずeastern youth。「夜明けの歌」でスタートし、「街の底」に続き、吉野寿の「我々、eastern youthという、長くうだつの上がらないバンドですけど、どうぞ、時間いっぱいお付き合いいただければと思います」という挨拶をはさんで「今日も続いてゆく」──と、頭3曲は、2001年・2015年・2020年のアルバムのオープニング曲を並べていく。

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「ここの会場、新木場コースト、我々にはちょっと大きな会場すぎて、たくさんの縁はありませんけれども、それでも何度かやったことがあります。あれもこれも、いい思い出でしたし、今日も呼んでいただいて、カネコさん、ありがとうございます」と、吉野寿、ギターを爪弾きながら礼を言う。
「こんないいステージに立てるような身分じゃないんですよ、僕ら」と言って、ちょっと間を置いてから、「なーんつって。どこでも一緒」。さっきから、1曲終わるごとに、オーディエンスの拍手がだんだん大きくなってきていたが、この言葉でさらに大きくなる。

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 ギターに合わせて口笛を吹き始めるイントロから「夏の日の午後」、さらに「青すぎる空」と、1998年のメジャー・ファースト・アルバム『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』から2曲。フロアのあちこちで拳が突き上げられる。次は「浮き雲」、そして森田童子「たとえばぼくが死んだら」のカバー。メジャー移籍前のアルバム『口笛、夜更けに響く』(1995年)に収録されている、初期イースタンの代表曲である。

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「どんな人生でもですよ、どんな人間でもですよ、どんなちっぽけでもですよ、一回しかない、人生は。選べない」で始まり、「そう言いてえだろ? 50すぎてんだぜ? 俺」で終わる語り (また大拍手)を経てからのラストは「ソンゲントジユウ」。「生きてることに遠慮なんてしねえよ/遠慮なんてしねえ/そうさ どう転んだって俺は俺/生まれ持った生存の実感を 誰かの手に委ねちゃいけねえんだ」と、叫ぶように歌う吉野を、じいいっと見つめ続けるオーディエンスの真剣さが、印象的だった。

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 そして、カネコアヤノ。まず、林宏敏がギターを鳴らし出し始め、そこにBobのドラムと本村拓磨のベースとカネコアヤノのギターが控えめに加わり、Bobが「1,2,1,2,3,4」とカウントの声を発して本村が「ギャーッ!」とシャウトし、それを上回る声量でカネコアヤノが歌い始める「アーケード」でスタート。

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以降、カントリー・テイストな「カウボーイ」、アウトロのBobの口笛が印象的な「ごあいさつ」、カネコアヤノのボーカルがレッドゾーンに入りっぱなしの「セゾン」、2021年リリースの最新アルバム『よすが』からの「抱擁」、次は同じく『よすが』の曲で、「わかってたまるか わかってたまるか わかってたまるか」のリフレインが聴き手の耳に突き刺さる「爛漫」──と、極力曲間を空けず、次から次へと曲がプレイされていく。

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己にとってかけがえのないものを歌にした「エメラルド」(曲終わりの拍手が一段と大きくなった気がした)、コロナ禍で書かれたことがうかがえる「閃きは彼方」、「幸せのためなら いくらでもずる賢くいようよ」等々、歌詞が必殺の一行だらけの「祝日」を経て、「光の方へ」で、また歌がトップギアに入る。自在にきらめきを増す林宏敏のギターに、他の3人のハーモニーが絡んでいく。

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カネコアヤノの歌いっぷりの自由さに合わせて、リズムも展開もどんどん形を変える「愛のままを」で、本編が終了。その後、止まらないフロアからの手拍子に応えて再登場。「ありがとうございます、すいません。じゃあ、あの、やっちゃいます、お言葉に甘えて」と、追加されたアンコールは「さよーならあなた」。「愛のままを」と並ぶ、カネコアヤノの歌に自在にバンドが合わせていくこの曲のアウトロは、林宏敏の長尺ギター・ソロで締められた。

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以上の12曲の間、歌以外でカネコアヤノが発した言葉は、本編終わりとアンコール終わりの「ありがとうー!」と、前述の「じゃあ、あの、やっちゃいます、お言葉に甘えて」だけだった。今月でクローズするスタジオコーストへの言葉も、対バンのeastern youthへの言葉も、特になかった。
そもそもそんなにライブでいっぱいしゃべる方ではないが、もうちょっとMCをはさんだりする時もある。でもこの日は、その「しゃべらない感じ」が、何か、とてもわかった。
必要ない、と判断したのだと思う。この日プレイした12曲に関しても、このタイミングで、スタジオコーストのファイナル・イベントで、eastern youthと共演したことについても、歌って演奏すれば伝わる。そこに言葉を足さなくていい、いや、足さない方がいい、という。
今、自分たちがやっていることに、自信があるんだと思う。で、それは確かに、まっすぐに、スタジオコーストを埋めたオーディエンスに届いていた、とも思う。

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文:兵庫慎司
写真:Ray Otabe

カネコアヤノ×eastern youth「THE FINAL DAYS OF STUDIO COAST」
2022年1月17日(月) 新木場 USEN STUDIO COAST SET LIST
eastern youth
1. 夜明けの歌
2. 街の底
3. 今日も続いてゆく
4. 夏の日の午後
5. 青すぎる空
6. 浮き雲
7. たとえばぼくが死んだら
8. ソンゲントジユウ

カネコアヤノ
1. アーケード
2. カウボーイ
3. ごあいさつ
4. セゾン
5. 抱擁
6. 爛漫
7. エメラルド
8. 閃きは彼方
9. 祝日
10. 光の方へ
11.愛のままを
EN. さよーならあなた

LINK
カネコアヤノ オフィシャルサイト
eastern youth オフィシャルサイト


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