2022.12.16
『YAJICO GIRL presents "YAJICOLABO 2023"』開催記念!YAJICO GIRL四方颯人×DATS MONJOE対談
そこでSENSAでは、前回に続いてYAJICO GIRLの四方颯人(Vo)と各バンドのフロントマンとの対談を実施。後編ではDATSのMONJOE(Vo/Syn)を迎え、ソロやプロデュース/楽曲提供など幅広く活躍しているMONJOEとサウンドメイクや歌のあり方について語り合ってもらった。
いわゆる「洋楽的」なエッセンスを取り入れてるところには、シンパシーを感じる
―まずは今回イベントにDATSを誘った理由を教えてください。
四方颯人:一リスナーとしてもともと好きで聴いていて、以前はもっとクラブミュージックっぽい印象が強かったんですけど、2020年に出た『School』を聴いたときに、バランス感がめちゃめちゃ自分の好みだったんです。僕らは2019年に『インドア』っていうアルバムを出して、ブラックミュージックとかにインスパイアされながら、オルタナティブな形でポップスをやっていこうっていう方向性だったんですけど、去年くらいからもうちょっとダンスミュージックっぽい曲が増えてきたので、このタイミングでDATSと一緒にやれたらいいんじゃないかと思って、お誘いさせてもらいました。
―「好きなバランス感」というのは?
四方:僕的には、以前よりもバンドならではのチャーミングさが『School』の楽曲から感じられて、そこがすごく好きでした。
―『School』はDATSにとってどんな時期の作品でしたか?
MONJOE:曲は2019年くらいに作りためてたんですけど、コロナ禍になっちゃって、予定してたツアーとかも全部飛んで、とりあえず配信でアルバムを出そうっていうのを決めたのは覚えてます。当時の心境としては......みんなレコーディングの環境はあったから、とにかく制作だけは進めていこうって話をしてたけど、でもメンバーとなかなか会えなくて、「バンドである意味ってなんだろう?」みたいなことを考えたり、悶々としてたのは覚えてて。そんな中で出てきた歌詞とか音も『School』の中にはあるのかなって。
―MONJOEくんはYAJICO GIRLのことをどの程度知っていましたか?
MONJOE:僕は名前の字面だけ知ってて、お誘いをいただいてから、初めて音を聴いたんですけど、「たしかに、うちのことを好きでいてくれそうなバンドだな」とは思いました(笑)。
―シンパシーを感じた?
MONJOE:そうですね。さっき言ってた通り、ブラックミュージックを基礎として、日本語でポップスをやっていて、いわゆる「洋楽的」なエッセンスを取り入れてるところには、シンパシーを感じるなと思いましたね。
四方:僕からするとシンパシーというより、もっと上にいる感じ、憧れに近いというか。シンプルに音の質感とかが好みだし、あと歌い方が好きで。
MONJOE:マジすか?俺ら歌について言及されることないんですよ。
四方:それはきっと音がめっちゃ洗練されてるから、そっちを語りたくなるってことだと思うんですけど、僕個人の意見としては、音が洗練されてるバンドって、歌もクールな方向に行く人が多いと思っていて。でもDATSはそうじゃなくて、結構ロックっぽいというか、そこがギャップ......でもないと思うんですけど、そのバランス感がすごく好きで。
MONJOE:うれしいですね。
四方:2022年は12か月連続リリースもしていましたけど、それを聴いても、曲によって歌い方が変わるじゃないですか?そのフロウの多彩さみたいなのも、すげえなって。
MONJOE:俺は他の人をプロデュースすることが多いから、引き出しはいっぱい持ってると思うんですけど、それをいざ自分がやるとなると、歌唱スキルの問題で「ホントはこれをやりたいけどできないな」と思うことも多いんです。そんな中で、ギリギリできることをかいつまんでやってる感じ。何でバンドでやってるかって、バンドだったら甘えていい部分があるというか、「自分が一番よく見えるやり方でしかやらない」みたいなことでもキャラクターになるから、それをひたすらやってる感じなんです。音は自由に作ってるけど、歌唱はコンプレックスの部分で、でもそれすらもキャラにできる。それはバンドの特権かなって。
―四方くんは音とボーカルのバランスをどう考えてますか?
四方:ちょっと前まではサウンドまで全部自分でコントロールしたい欲求が強かったんですけど、最近はもうちょっとラフというか、「このパートは任せよう」とか、ミックスもエンジニアさんに何も言わずにお願いして、「偶然を楽しむ」というか、自分のこだわりに固執するパーセンテージは減ってきました。自分が気持ちよく歌うことができるトラックであれば、YAJICO GIRLの音楽として成り立つというか、僕が歌いさえすれば、一旦ハンコを押した感じになるんじゃないかっていう気持ちでやってます。もともとそういうバンドが好きで、「この人が歌ったらどんなことをしてもこのバンドになっちゃう」っていう、自分たちもそうなれたらなって。
大事なのは、バンドとして何を表現したいのかっていう、スタンスとかステートメント
―DATSに対しても「MONJOEくんが歌えばDATSになる」みたいなイメージがある?
四方:DATSに関しては音も個性的で、「DATSの音」があると思うので、その音とボーカルを組み合わせていろんなバリエーションの曲を作ってるっていうのが、「いいバンドってそういうことやんな」っていう。
MONJOE:その話を聞いて意外なのは、自分では音のキャラクター性が他の人より欠如してると思ってて。だから、自分を「アーティスト」と語るには全然まだまだだなと思ってるんです。
四方:えー!
MONJOE:「こういう音を出してる人、他にもいるよな」とかって、自分では思っちゃったりもするんですよね。それこそさっきの「ハンコを押す」みたいなことも「声しかない」というか、バンドの個性を確保するのはそこしかないと思ってたくらいなので、音の部分を言われるのは嬉しいです。自分と受け手の感じ方はまた違うんだなって。
―いいプラグインを使えば誰でも一定のクオリティの音が作れちゃう時代だけに、サウンドで記名性を出すのはすごく難しいですよね。だからこそ、「バンド」で表現することに意味があるとも思うんですけど。
四方:ちょっと前までは、いろんな音楽をずっと聴いてきて、そういうのをリファレンスにしながら、自分が思う世界観で作っていく、みたいな形が多くて。でも同じチームでずっとやってると、どんな曲をやっても同じバグり方をするというか、真っすぐは進まないんですよ。その迷い方が似てきて、その結果なんとなくそのバンドっぽい音楽になっていく、みたいな感じかもしれない。
―迷わなくなってバンドの色が決まるんじゃなくて、その迷い方がバンドの色になっていくっていうのは面白いですね。
四方:「ここしくじってる」みたいな、見逃してる部分がいつも一緒だったりして、でもそれを積み重ねていくと、それが味になったりする。バンドの浪漫はそういうところにあると思っていて、昔はそれを自分がコントロールできないと「むかつく」と思ってたけど、最近それはなくなってきたかな。
MONJOE:そういう話で言うと......バンドに関しては恣意的に「音の記名性を出そう」みたいな感じではやってないかもしれない。「好きにやろうよ」くらいのテンションで、結局みんなで手を動かせば、自分たちっぽいものになるよねって。だから、そこはわりと近いんじゃないかと思います。結局大事なのは、バンドとして何を表現したいのかっていう、スタンスとかステートメントの部分だと思うんです。それがなくてもいいとは思うんだけど、自分はそれがある人たちの方が好きで......と言いつつ、DATSも明確なステートメントがあるわけではなくて。「活動を通して何かを変えたい」とか「こういうことを発信していきたい」とかはないんです。ただ、少なくとも一曲一曲にメッセージというか、「俺はこれを言いたい」っていうことは何かしら絶対確保する。そこだけは意識してますね。
―それで言うと、YAJICO GIRLは「Indoor Newtown Collective」がひとつのステートメントにはなってますよね。
MONJOE:「Indoor Newtown Collective」ってなんですか?
四方:昔はギターロックみたいな曲ばっかりやってたんですけど、『インドア』でかなり音楽性が変わったので、そこでそういった名前を付けることで、ブランディングというか......。
MONJOE:「そういう音楽性のバンドです」っていうのを、わかりやすく伝えるための標語みたいなもの?
四方:そうですね。メンバーみんな基本インドア派だし、大阪のニュータウンにある高校で組んだので、いわゆるシティボーイみたいな、「都会」っていう感じじゃないし、あとは「バンド」に捉われないサウンドバリエーションっていう、そこを定義した言葉です。
―「Newtown」が入ってるだけあって、YAJICO GIRLの歌詞にはよく「街/町」が出てきますよね。
MONJOE:たしかに!今日車で曲を聴きながら、「街/町」めっちゃ出てくるなと思った。「ローカルな部分にフォーカスして、伝えたいことがいっぱいあるのかな?」と思ったり。
四方:大きなメッセージというよりは、日々暮らしてることとか、小さなことの中にある美しさとかを歌ってる気がします。
MONJOE:それもひとつのメッセージになりうるというか、特別「メッセージ」として歌ってなくても、その街/町の美しさを聴いてる人に気づかせる側面はありますよね。それで言うと、自分たちがインディーズでデビューした2014年とか2015年は、「シティポップ」っていう言葉で俺らの界隈のバンドがみんなパッキングされてて。あれって「押しつけがましくない音楽」みたいなことだったと思うんだけど、その中に自分たちが括られることにめちゃめちゃ腹立ってたんです。「ユートピアで楽しくやってればいい」みたいな、俺はそんなの意味ないと思ってたから、ずっと中指を立て続けて、何としてもそこには抗ってたい思いがずっとあって。
―なるほど。
MONJOE:yayhelで「ディストピア」をテーマにしたのはそういうことだし、DATSでも全然押しつけがましいこと書きたいと思ってたし、押しつけがましいMCをしてたし(笑)。ずっとそういう感じで、それが自分としてはアイデンティティになってたと思うし、自分が昔から好きで今でも......「聴く」というより「追っちゃう」バンドはそういう何かがあるバンドで、それがある人が「アーティスト」なんだと思う。最近だとThe 1975とかがわかりやすいですよね。ああいう人たちが何かを発信すると、それがムーブメントになったりして、そういうのはすごくいいなと思いますね。
お互い踊れる音楽だと思うし、お酒を飲んで、ラフに聴いてもらえればすごく楽しいと思う
―お互いコンポーザー/トラックメーカーとして、曲作りや音作りに関して気になることはありますか?
四方:DATSは歌の処理がかっこいいですよね。エフェクトとか、重ね方とか。
MONJOE:さっきも言った通り、歌にはコンプレックスがあるから、処理で頑張らないとダメだと思ってて。エンジニアさんに関しても、歌の処理が下手な人とは絶対やらないって決めてます。逆に言うと、ポストプロダクションでかっこよくしてもらってる部分もある(笑)。
四方:ポスプロも自分ができるとこまでやってから、エンジニアさんにお願いする感じですか?
MONJOE:そういうのもあるし、お任せのときもある。例えば、「洋楽のこういうシャリシャリな感じ」って言ったときに、俺がイメージしてるのは「芯が通ったままシャリシャリ」なんだけど、ただのシャリシャリになっちゃうときもあって、そこがわからない人はずっとわからないと思うんですよ。だから、最終的にどう聴かせたいかをイメージするのはすごく大事で、そこがわかる人と出会えたらすごくいいですよね。
四方:新作のミックスエンジニアは土岐(彩香)さんとillicit tsuboiさんにお願いしてて。
MONJOE:いい面子ですね。
四方:やりとりさせてもらって、「この人にお願いすれば大丈夫だな」と思えたので、最初はこっちでできるだけ作って、「ミックスだけお願いします」だったけど、最近はアレンジも含めてお願いするようになってきてて。「美しき町」とかは、tsuboiさんのおかげでかなりいい仕上がりになりました。
―MONJOEくんは四方くんの曲作りについて気になることありますか?
MONJOE:最初に「最近クラブミュージックの要素を取り入れるようになって、だからこのタイミングでDATSとやったらいいかもと思った」と言ってたと思うんですけど、クラブは行ったりするの?
四方:めっちゃ行くわけじゃないんですけど、東京に出てきて、タイラ(ダイスケ)さん(FREETHROW)にお誘いしてもらって、自分がDJをやったのが初クラブで。そこでクラブカルチャーを感じて、その感覚を自分の曲にも取り入れるようになりました。
MONJOE:いいね。昔からずっと思ってたのが「4つ打ちロック」をやってる人は絶対クラブに行ってないし、「絶対現場でキック聴いてないでしょ?」っていうことで。本物を知らないのに、それをかいつまんでやってるから、だから隔たりができるんだろうなって。
四方:4つ打ちロック的な文脈って、それ自体がそこだけで完結したフォーマットみたいになってるから、それは音にも表れてて、「これは仲良くなれない」と思っちゃう(笑)。
MONJOE:クラブにいるかっこいいお兄さんやきれいなお姉さんはそのバンドのライブ行かないですもんね。客層が明らかに違うから、そこを繋ぐのはめちゃめちゃ難しくて。
四方:洋楽アーティストのライブに来る人とクラブの人とかは見てる感じ近いけど、日本のアーティストってなると全然違っちゃいますよね。
―もちろん、そこを上手く融合させてる人たちもいるわけで、YAJICO GIRLとDATSの対バンにはどんな人たちが集まるのかも気になりますね。
MONJOE:(YAJICO GIRLは)週一くらいでライブをやってるって聞いたんだけど。
四方:今年は結構やってて、でも月2~3くらいですね。
MONJOE:俺らコロナ以降マジでライブやらなくなっちゃって、半年に一回やるかやらないかのペースだから、オファーをもらったときに、「自分たちを呼びたいと思ってくれるバンドがいるんだ!」っていう、それだけでもう「やる!」って(笑)。
四方:うれしいなあ。
―最後に当日に向けた意気込みを聞きたいんですけど、DATSはどれくらいぶりのライブになるわけですか?
MONJOE:DATSとしては......半年ぶりですね。
四方:えー!ありがとうございます!
MONJOE:こうなると逆に何のプレッシャーもないし(笑)、自分たちが楽しめばお客さんも楽しんでくれると思うので、ステージに立つ喜びをかみしめたいと思います。
四方:一リスナーとしてDATSの貴重なライブが見れるのはうれしいし、しかも一緒にライブがやれるのは本当にうれしいです。お互い踊れる音楽だと思うし、お酒を飲んで、ラフに聴いてもらえればすごく楽しいと思うので、気持ちのいい一日にしたいと思います。
取材・文:金子厚武
撮影:RYO SATO
RELEASE INFORMATION
YAJICO GIRL「幽霊」
2022年11月9日(水)
Format:Digital
Track:
1.幽霊
2.Airride
3.寝たいんだ
4.美しき町
試聴はこちら
YAJICO GIRL「幽霊」MUSIC VIDEO
LIVE INFORMATION
YAJICOLABO 2023
2022年12月18日(日)
梅田CLUB QUATTRO
YAJICO GIRL/odol
2023年1月7日(土)
渋谷CLUB QUATTRO
YAJICO GIRL/DATS
【TICKET】
チケット:¥4,500
(税込/ドリンク代別途要)
コラボ先行受付中:http://eplus.jp/YAJICOLABO/
LINK
YAJICO GIRLオフィシャルサイト@YAJICOGIRL
@yajicogirl
Official YouTube Channel
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DATSオフィシャルサイト
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