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2022.02.22
2月18日、The fin.が『"Outer Ego"Release Tour』の東京公演を恵比寿LIQUIDROOMで開催した。今回のツアーではYuto Uchino(ボーカル、ギター、シンセ)、Kaoru Nakazawa(ベース)、以前からサポートで参加している竹之内一彌(ギター/IKILLU)に加え、松浦大樹(ドラム/She Her Her Hers、Saccharin)、YUSUKE(キーボード/GLIDER)を迎えて、初の5人編成でのライブを敢行。昨年11月に発表した『Outer Ego』は、自身の内側の精神世界と外側の現実世界を行き来しながら進行するストーリー性の強い作品だったが、この日は旧曲を織り交ぜながら演奏することで、また新たな魅力を感じさせた。
FREE THROWのタイラダイスケによるオープニングDJに続いて、メンバーがステージに登場すると、アルバム同様に「Shine」から「Over The Hill」の流れでライブがスタート。「Shine」のドリーミーなシンセとYutoの透明感のある歌声で一気にThe fin.の世界に引き込まれるが、YutoもYUSUKEもギターを持ち、「1,2,3,4!」のカウントからトリプルギター編成(!)で披露されたポストパンク調の「Over The Hill」は早速大きなインパクトを残す。モジュレーションのかかったシンセが耳に残る「Pale Blue」に続き、松浦がパッドと生ドラムを交互にプレイする「Gravity」でもYutoはギターをかき鳴らし、アウトロではサイケデリックな盛り上がりを見せた。
The fin.の音源は基本Yuto 一人で作り上げられ、再現性は度外視されているので、これまでのライブでは同期も多用されていたが、この日は5人編成で同期の使用を抑え、メンバーそれぞれのプレイヤビリティを生かしたフィジカルな演奏を全面に押し出していたことが印象的。特に「上京してからの唯一の友達だった」といい、Yutoいわく「一緒にやれて嬉しい、エモメンバー」で、近年はTENDREやLUCKY TAPESのサポートでも活躍する松浦のパワフルなドラムが楽曲に躍動感を与えていたのは間違いない。「これまではアルバムを出したら、アジア、ヨーロッパ、アメリカと世界をツアーしてたけど、それができなくなって、ひさびさのワンマンでとにかく楽しい」というYutoの言葉にも実感がこもる。
「Melt into the Blue」では深いリヴァーブのかかったスネアとローの効いたベースがダビーな空間を作り出し、ハープのようなシーケンスが特徴の「Sapphire」では竹之内がボウイング奏法で音響的なアプローチを見せる。そんなディープな流れから少しずつ浮上すると、「Safe Place」ではYutoがハンドマイクで歌いながらループのリズムに乗って体を揺らし、打ち鳴らされるタンバリンがノスタルジックなムードを醸し出す「Without Excuse」は、The fin.のポップス的な普遍性を示していた。
ここでライブ前半が終了し、ステージにはYuto一人が残ると、これまでずっと世界を周ってきたが、一度落ち着いてじっくり制作したいと思ったタイミングでコロナ禍が始まり、自宅スタジオに籠って自分を見つめ直しながら『Outer Ego』を作ったことを語る。そして、「6年くらいやってない、めっちゃ珍しい曲」と言って、ファーストEP『Glowing Red On The Shore』に収録の「Circle On The Snows」を弾き語りで披露したのは、部屋で一人歌っているような、素のYutoが感じられる場面に。もう一度メンバーを呼び込むと、「インナーチャイルドとの対話」を描いた「At Last」、「昔の自分と今の自分の対話」を描いた「Old Canvas」というテーマの近い2曲を続けて演奏し、音源ではアコギが爪弾かれる「At Last」は、マラカスを振りながらのリラックスしたムードで届けられた。
「楽しいなあ」「イェー!」と、いつになく上機嫌なYutoを中心に、オーディエンスの高揚感も伝わってくる素晴らしい雰囲気の中、「後半はバーッと畳み掛けるんで、みんな踊ろうね」と呼びかけると、「Shedding」で体を揺らし、推進力のあるリズムが引っ張る「Night Time」では、「Are you ready, Tokyo?」と叫んで、頭を縦に振りながらロックに演奏する場面も。「Deepest Ocean」も長尺のアウトロが足され、松浦が手数多く叩きまくり、さらに竹之内がギターからアナログシンセに移って、フレーズを手弾きした「Outer Ego」は、クラウトロック的なリニアなビートに導かれ、間奏で手拍子が会場を埋め尽くす。ラストはオルガンとシューゲイズなギターがユーフォリックな空間を作り出した「Glowing Red On The Shore」によって、荘厳に締め括られた。
ライブがなかなか開催できず、制限も多い状況の中、初めての5人編成で臨み、強靭なフィジカルを示してみせたこの日のステージは、繊細な印象もあるThe fin.のイメージを大きく更新するものに。Yutoは「Outer Ego」について、「初めて自分よりも下の世代に向けて書いた曲」であり、「何かプラスになるエネルギーをあげたい」と思って書いたということを語っているが、まさにこの日のライブは先が見えない時代の中でポジティブなエネルギーを発するような、実に素晴らしいライブだった。
文:金子厚武
撮影:Yoshiaki Miura
The fin."Outer Ego" Release Tour
1. Shine
2. Over The Hil
3.Pale Blue
4.Gravity
5.Melt into the Blue
6.Sapphire
7.Safe Place
8.Without Excuse
9.Circle On The Snows
10.At Last
11.Old Canvas
12.Shedding
13.Night Time
14.Deepest Ocean
15.Outer Ego
16.Glowing Red On The Shore
The fin.「Outer Ego」
2021年11月24日(水)
Format: Digital / CD
¥2,750(税込)
Track:
1.Shine
2.Over the Hill
3.Short Paradise
4.Deepest Ocean
5.Old Canvas
6.At Last
7.Loss, Farewell
8.See You Again
9.Outer Ego
10.Sapphire
11.Safe Place
12.Edge of a Dream
試聴はこちら
The fin.「Outer Ego」
2021年11月27日(土)
Format: LP(カラー盤 / 500枚限定プレス)
¥3,960(税込)
Track:
Side-A
1.Shine
2.Over the Hill
3.Short Paradise
4.Deepest Ocean
5.Old Canvas
6.At Last
Side-B
1.Loss, Farewell
2.See You Again
3.Outer Ego
4.Sapphire
5.Safe Place
6.Edge of a Dream
試聴はこちら
@_thefin
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FRIENDSHIP.
FREE THROWのタイラダイスケによるオープニングDJに続いて、メンバーがステージに登場すると、アルバム同様に「Shine」から「Over The Hill」の流れでライブがスタート。「Shine」のドリーミーなシンセとYutoの透明感のある歌声で一気にThe fin.の世界に引き込まれるが、YutoもYUSUKEもギターを持ち、「1,2,3,4!」のカウントからトリプルギター編成(!)で披露されたポストパンク調の「Over The Hill」は早速大きなインパクトを残す。モジュレーションのかかったシンセが耳に残る「Pale Blue」に続き、松浦がパッドと生ドラムを交互にプレイする「Gravity」でもYutoはギターをかき鳴らし、アウトロではサイケデリックな盛り上がりを見せた。
The fin.の音源は基本Yuto 一人で作り上げられ、再現性は度外視されているので、これまでのライブでは同期も多用されていたが、この日は5人編成で同期の使用を抑え、メンバーそれぞれのプレイヤビリティを生かしたフィジカルな演奏を全面に押し出していたことが印象的。特に「上京してからの唯一の友達だった」といい、Yutoいわく「一緒にやれて嬉しい、エモメンバー」で、近年はTENDREやLUCKY TAPESのサポートでも活躍する松浦のパワフルなドラムが楽曲に躍動感を与えていたのは間違いない。「これまではアルバムを出したら、アジア、ヨーロッパ、アメリカと世界をツアーしてたけど、それができなくなって、ひさびさのワンマンでとにかく楽しい」というYutoの言葉にも実感がこもる。
「Melt into the Blue」では深いリヴァーブのかかったスネアとローの効いたベースがダビーな空間を作り出し、ハープのようなシーケンスが特徴の「Sapphire」では竹之内がボウイング奏法で音響的なアプローチを見せる。そんなディープな流れから少しずつ浮上すると、「Safe Place」ではYutoがハンドマイクで歌いながらループのリズムに乗って体を揺らし、打ち鳴らされるタンバリンがノスタルジックなムードを醸し出す「Without Excuse」は、The fin.のポップス的な普遍性を示していた。
ここでライブ前半が終了し、ステージにはYuto一人が残ると、これまでずっと世界を周ってきたが、一度落ち着いてじっくり制作したいと思ったタイミングでコロナ禍が始まり、自宅スタジオに籠って自分を見つめ直しながら『Outer Ego』を作ったことを語る。そして、「6年くらいやってない、めっちゃ珍しい曲」と言って、ファーストEP『Glowing Red On The Shore』に収録の「Circle On The Snows」を弾き語りで披露したのは、部屋で一人歌っているような、素のYutoが感じられる場面に。もう一度メンバーを呼び込むと、「インナーチャイルドとの対話」を描いた「At Last」、「昔の自分と今の自分の対話」を描いた「Old Canvas」というテーマの近い2曲を続けて演奏し、音源ではアコギが爪弾かれる「At Last」は、マラカスを振りながらのリラックスしたムードで届けられた。
「楽しいなあ」「イェー!」と、いつになく上機嫌なYutoを中心に、オーディエンスの高揚感も伝わってくる素晴らしい雰囲気の中、「後半はバーッと畳み掛けるんで、みんな踊ろうね」と呼びかけると、「Shedding」で体を揺らし、推進力のあるリズムが引っ張る「Night Time」では、「Are you ready, Tokyo?」と叫んで、頭を縦に振りながらロックに演奏する場面も。「Deepest Ocean」も長尺のアウトロが足され、松浦が手数多く叩きまくり、さらに竹之内がギターからアナログシンセに移って、フレーズを手弾きした「Outer Ego」は、クラウトロック的なリニアなビートに導かれ、間奏で手拍子が会場を埋め尽くす。ラストはオルガンとシューゲイズなギターがユーフォリックな空間を作り出した「Glowing Red On The Shore」によって、荘厳に締め括られた。
ライブがなかなか開催できず、制限も多い状況の中、初めての5人編成で臨み、強靭なフィジカルを示してみせたこの日のステージは、繊細な印象もあるThe fin.のイメージを大きく更新するものに。Yutoは「Outer Ego」について、「初めて自分よりも下の世代に向けて書いた曲」であり、「何かプラスになるエネルギーをあげたい」と思って書いたということを語っているが、まさにこの日のライブは先が見えない時代の中でポジティブなエネルギーを発するような、実に素晴らしいライブだった。
文:金子厚武
撮影:Yoshiaki Miura
The fin."Outer Ego" Release Tour
2022年2月18日(金)東京 恵比寿LIQUIDROOM公演 SET LIST
1. Shine 2. Over The Hil
3.Pale Blue
4.Gravity
5.Melt into the Blue
6.Sapphire
7.Safe Place
8.Without Excuse
9.Circle On The Snows
10.At Last
11.Old Canvas
12.Shedding
13.Night Time
14.Deepest Ocean
15.Outer Ego
16.Glowing Red On The Shore
RELEASE INFORMATION
The fin.「Outer Ego」
2021年11月24日(水)
Format: Digital / CD
¥2,750(税込)
Track:
1.Shine
2.Over the Hill
3.Short Paradise
4.Deepest Ocean
5.Old Canvas
6.At Last
7.Loss, Farewell
8.See You Again
9.Outer Ego
10.Sapphire
11.Safe Place
12.Edge of a Dream
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The fin.「Outer Ego」
2021年11月27日(土)
Format: LP(カラー盤 / 500枚限定プレス)
¥3,960(税込)
Track:
Side-A
1.Shine
2.Over the Hill
3.Short Paradise
4.Deepest Ocean
5.Old Canvas
6.At Last
Side-B
1.Loss, Farewell
2.See You Again
3.Outer Ego
4.Sapphire
5.Safe Place
6.Edge of a Dream
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