SENSA

2025.08.12

【MAP OF FRIENDSHIP. 】Vol.04 片山翔太(下北沢BASEMENTBAR)

【MAP OF FRIENDSHIP. 】Vol.04 片山翔太(下北沢BASEMENTBAR)

FRIENDSHIP.に関わる様々な人物の証言を基に、FRIENDSHIP.の意義と現代の音楽シーンを立体化していく連載「MAP OF FRIENDSHIP.」。第4回はFRIENDSHIP.のキュレーターであり、今年30周年を迎えた下北沢BASEMENTBARでブッキングを担当する片山翔太。群馬県の大学在学中からイベントの企画とDJをはじめ、高崎と新宿を中心にイベントを続けてきたなか、2016年に下北沢BASEMENTABARの誘いを受けて上京。現在は群馬の野外フェス「MACHIFES.」や、毎月開催されている入場無料のイベント「exPoP!!!!!」にも関わるなど、幅広く活動を行っている。ライブハウス全体が大きなダメージを受けたコロナ禍を経て、駅前の風景が大きく変わり、新たなライブハウスも増えている現在の下北沢では、どんなことが起こっているのか。現場からのリアルな目線で語ってもらった。

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─下北沢BASEMENTBARで働くことになったきっかけを教えてください。


片山:僕はもともと大学のあった群馬と東京でずっとイベントをやってて、それを見てくれた前の副店長、今調布Crossで店長をやってる高木(敬介)さんに誘っていただきました。前からベースメントで働きたいと思っていたわけでは正直なくて、「何か音楽の仕事をしたい」とずっと思いながら、誰かに声をかけてもらえるのをずっと待ってたんです。「自分でかっこいいイベントをやってたら、誰か誘ってくれるかな?」みたいな感じで、イベントを続けてたら、ようやく誘ってもらえたのが2016年の11月。もう9年前ですね。

─「ライブハウスで働きたい」ではなかった?


片山:ではなかったですね。自分の中でタイムリミットを決めてて、25~26歳になるまでに先が見えなかったら、普通に就職を考えようと思ってたんですけど、その最後のタイミングぐらいで、やっと誘ってもらえて。最初からブッキングになりたかったわけではないんですけど、でもやってたのがイベントだったから、自然とそうなった感じですかね。

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─ベースメントにはどんな印象を持っていましたか?


片山:結構遊びには来てて、スタイリッシュな箱だなと思ってました。その頃もうTHREEにはスガナミ(ユウ)さんがいて、「Bloc Party」とか、新しいことを考えてやってるなっていう印象がずっとあって。ベースメントに入るちょっと前に「Bloc Party」に遊びに行ったときに、スガナミさんに「一緒に面白いことやりたいと思ってるからさ」みたいなことを言われたりして、あそこで働けるんだったらいいなと思いました。

─誘われて入って、そこから長く続いているのは、ライブハウスの仕事が自分に合っていた?


片山:思ってた以上に楽しかったですね。それまで自分でお金を払ってイベントをやってたので、仕事としてイベントができるんだっていう、入った頃はまずそれに感動しました(笑)。それにこれまでずっと伸び伸びやらせてもらってたんですよね。例えば、No Busesに初期出てもらったときとか、月に4回ぐらい出てて、もうお客さんも誘えない、みたいな状態が結構あったんですけど(笑)。

─月4も出てたんだ(笑)。


片山:そういう時期もありました。でも「将来的にかっこよくなると思うんで」みたいなことを上の人たちが信じてくれて、伸び伸びやらせてもらったので、苦しかったことはそんなにないと思います。あと前はイベントをずっとやってましたけど、自分は思ったよりブッキングに向いてる人間なんだなと思いました。いろんな話を聞いたり、「こういう音作りの方がいいんじゃない?」とか「こういう活動を一緒にしていこうよ」みたいなのを相談しながら、若手を育てていくことが自分には向いてるかもっていうのは思いましたね。

─さっきのNo Busesみたいに、ベースメントに入って、初期から関係性の深かったバンドをいくつか挙げてもらえますか?


片山:Laura day romance、Cody・Lee(李)、goetheやS.A.R.もかなり初期の方からずっと出てもらってますね。


─活動の初期から見ていて、今ではメジャーに進んだバンドも多いと思いますが、ライブハウスのブッキングとしてどう感じていますか?


片山:もちろん嬉しいですよ。嬉しいけど、たまにはやっぱり一緒にやりたいな、みたいな気持ちもあって。本当はもう1個ぐらいでっかいキャパシティの会場で、簡単にイベントが打てるようなシステムがうちの中にあったらいいなっていうのは思いますね。今年は30周年なので、ローラズともコーディとも一緒にやりますけど、「デカくなったらもうさよなら」みたいなのはちょっと寂しいので。だからFRIENDSHIP.とかexPoP!!!!!とかMACHIFES.とかでまた交われたり、そういうのも大事にしてますね。

─ベースメントはバンドとの結びつきが強い印象があります。箱に対する思い入れもあるし、かたしょ君との個人的なつながりもあるだろうし、いろんな要素が加味されて、そうなってるんだと思うんですけど、だから周年になるとちゃんと出てくれるのかなって。


片山:今回周年イベントを組んだときも、みんなすごく前向きに考えてくれて、「この案件進んでねえな」みたいなときも、向こうから「やっぱりやりたいんで、この辺の日程だとどうですか?」みたいな連絡をくれたり、そういうのはすごくありがたいなと思います。周年っていいですね(笑)。

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─コロナ禍を経てのライブハウスの変化をどのように感じていますか?


片山:深夜イベントは確実に減りましたね。あとコロナ禍中に3〜4バンドのイベントが増えたときに、「これでも案外いいな」みたいな、それまでは一日5バンドが当たり前だったんですけど、今はあんまり無理しないスケジュールをみんな組むようになった気がします。「ガツガツ詰め込まなくても、もっと楽にやれるよね」って、いい意味で力が抜けたのかな。ただDJとバンドがしっかり交わって遊べるパーティーみたいなのは、僕の周りではかなり減った気がしますね。そういうお客さんの感覚が乖離してるというか、バンドを見る人はバンド、DJを見る人はDJみたいな...ちょっと愚痴になっちゃうんですけど、みんなの知ってる選曲ばっかりがいいって言われちゃう感じ。フラットにいろんな音楽を楽しめるお客さんよりも、知ってるものを楽しむお客さんが増えて、イベントの中でも乖離があって、そういうのは寂しいなと思います。まあ、一回そういう文化が途切れてしまったのは仕方がないし、もう一回1から作り直さないとそれはできないのかなって。

─お客さんの層に変化はありますか?


片山:外国の方は明らかに増えましたね。むちゃくちゃ多いです。去年の大みそかとか、多分200人ぐらい海外の人が来たのかな。全部で400〜500人ぐらい来て、その中の200人ぐらいが海外の人だった気がします。それはどこかのいい感じのメディアが「日本で年を越すならここ」みたいな感じで載せてくれたのが大きかったんですけど、でも普段から来てくれる人すごく多いです。最近は一日10人ぐらいは当たり前に海外の方が来る気がしますね。めっちゃ助かってます(笑)。

─海外の方に対する情報伝達は箱の側からも打ち出しをしてるんですか?


片山:やってはいるんですけど、一番でかいのは「Gigs in Tokyo」っていうInstagramのアカウントがあって、よく遊びに来るハリーっていう友達がいるんですけど、彼がその日のおすすめのライブをそのアカウントで告知してくれて、そのフォロワーが1万人ぐらいいて。それはすごく大きいなと思います。あと近所のレコード屋さんがうちのこと好きで、「日本でライブ行くならここだよ」みたいなことを言ってくれたり、ショップカードを置かせてもらったりして、それで遊びに来る人も結構多いです。レコードショップに寄って、ベースメントに来て、1〜2杯飲んで帰る、みたいな。


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─出演者の変化はどうでしょう?一時期はバンドが活動できなくなって、宅録をする人が増えましたが、現在はいかがですか?


片山:正直大きくは変わってない気がします。選ぶのはこっちで、僕らは基本的に自分たちの好きなものしかブッキングしてないので、僕らの趣味が変わってないから、そんなに大きくは変わってないですけど...でもまたバンドが増えてきた感覚はありますね。コロナで一回ぶつっと切れちゃったけど、最近また大学生のバンドマンとかものすごく多いです。あとはバンドの活動がいろんな方法でできるようになってきた感覚がありますね。ライブをあんまりしなくても、TikTokで伸びてからライブをして、最初からソールドアウトさせて、みたいな人も昔より多いと思う。そうやっていろんな方法で活動できるようにはなったけど、ここに出てもらってるのはやっぱり自分たちの好きな音楽をやってる人たちなので、そんなに大きな変化がある感覚はないです。あ、でもシンガーソングライターは多くなった気がします。シンガーソングライターとバックバンドみたいな、誰か1人前に立って、後はサポート、みたいな形態の人はすごく増えた気がする。

─音源は個人で作るけど、ライブだとバックバンドをつけて、みたいな。


片山:そういう人はすごく多いです。でもやっぱりそこまで変化は意識してないかな。

─急にアイドルの出演が増えたり、みたいなこともベースメントはないですもんね。


片山:アイドルもそうかもしれないし、あとはサークルのライブみたいな身内ものっぽいイベントだと、いつでも誰にでも開けてる感じではないじゃないですか。ふらっと遊びに来た人が楽しんでもらえる保証がこっち側にない。海外の人がいつ来ても楽しんでもらえてるのは、自分たちの好きなものをちゃんと発信できてるからだとは思ってます。いつ来ても、「今日はよくわかんないことをやってるな」みたいにはしたくない。月に一回くらいはバー営業して遊んでたりしますけど(笑)、基本的にはいつ誰が来ても楽しんでもらえる場所でありたいから、それを保証できるのが自分たちにとってはバンドだったりする。そういうことなんだと思います。

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─では下北沢のライブハウスシーンの変化はどう感じていますか?コロナ禍以降に新しいライブハウスも増えて、また少し雰囲気が変わってきたのかなと。


片山:どうなんですかね...他のライブハウスのことはあんまり興味がなくて、気にしてないっていうのが正直なところなんですよね。

─この前かたしょ君に教えてもらったレトロ(Retronym)はちょっと気になってます。外国の方が始めたお店なんですよね?


片山:そうです。もともとうちによく来てくれるお客さんだったシンクレアが始めて、昼は喫茶営業してたり、スペースとしてめっちゃ面白いんです。ライブスペースよりもラウンジスペースの方が2〜3倍ぐらい広くて、箱としての機能性は他の日本のライブハウスにはないので、めっちゃ面白い。まだブッキングとかは全然やってないから、これからの箱ではあると思うんですけど。

─「Gigs in Tokyo」もそうですけど、下北で遊んでいた海外の方がこの場所で何かをやり始めているのは面白いですね。


片山:僕らより下北沢に魅力を感じてるんじゃないですかね(笑)。でも他のライブハウスからはベースメントがどう見えてるんですかね?僕ら場所的にも一番端っこなので、なかなか他の人たちと交わる機会もないし、あと僕に関しては、駅の方まで行きたくないから、下北沢の南側に住んでるし。あっちに行くとイライラしちゃうんですよ。バンドマンが駅で弾き語りしてるのとか嫌なんです。(サカナクションの)一郎さんがやったやつはユーモアがあってよかったですけど(笑)。

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─それこそ駅前の風景もだいぶ変わりましたよね。


片山:そうですね。駅前に座り込んで酒飲んでるみたいなのは本当に嫌で、イライラしちゃうんですよね。渋谷とか新宿に近くなってる感覚はすごいあります。観光客というか、「遊びに来てる」みたいな人がすごく増えましたよね。

─ちなみに海外の話で言うと、「ぼっち・ざ・ろっく!」の人気で日本人はもちろん、海外の人にとっても下北沢が人気になって、シェルターが聖地化した、みたいな話があるじゃないですか。ベースメントもその影響は感じてますか?


片山:うちは「ぼっち・ざ・ろっく!」の影響は多分なかったと思うので、何がきっかけでいろんな人が来てくれるようになったのかは...やっぱりハリーが一番でかい気がしますね。「日本で一番好きなベニューはベースメントとスリーだ」って、ずっと言ってくれてるので、そういうのがでかかったと思います。

─つい「下北沢のライブハウスシーン」と一括りにしちゃうけど、それぞれの場所で面白いことが起きている、という感じかもしれないですね。


片山:そうな気がしますし、よくも悪くも分断されているような気がします。前まではいろんなライブハウスのブッキング同士で平日にサーキットイベントをやってたんです。でもそれがコロナでなくなって、みんなもうちょっと若手にフォーカスしていきたい年齢にもなってきた気がする。でも今度またライブハウスの若い子たちが平日に一緒にサーキットイベントをやるみたいで(「NEW LINK!」から「STEP OUT!」に名前を変えて、下北沢5会場往来イベントを開催)、そういうことはみんなどんどんやったらいいと思う。「箱としての信念はどこにあるんだ?」みたいに思っちゃう箱もありますけど、もっと評価されるべき場所もいっぱいあると思いますからね。

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─2019年からFRIENDSHIP.のキュレーターをやるようになって、そこからの変化をどう感じていますか?


片山:FRIENDSHIP.に限らずですけど、新しいことをやるのは全然違いますね。ブッキングだとブッキングのノウハウしかつかないけど、FRIENDSHIP.に関わることで視野はだいぶ広くなった気がします。いろんな人とも触れ合えるし、「こういう人はこういうことを考えてるんだ」みたいなことが見えたり、やっぱり普段いる場所じゃなくて、外で活動することでかなりいい経験をさせてもらってるなと思います。ブッキングをやる上でも、「配信はこういうふうに手伝える」とか「こういうプロモーションも相談できると思う」とか、自分がバンドマンに対してできるアプローチの手段が明らかに増えたので、それはすごくありがたいです。

─リアルな現場でのブッキングの仕事と、デジタルでの配信やプロモーションをトータルでサポートできるFRIENDSHIP.はきっと相性がいいですよね。


片山:そうですね。自分の軸から大きくずれてないというか、むしろ延長線上にあるぐらいの感覚なので、本当に視野が広がったし、自分のやれることが増えたなって。あとはラジオコメントがちょっと慣れて、iPhoneに話すのがうまくなりました(笑)。

─現在FRIENDSHIP.から配信しているアーティストで、特に関係性が深かったり、個人的に応援しているアーティストはいますか?


片山:これは本当にただ俺が好きなだけになるんですけど、志摩(陽立)くんとtheトラウツは自分にとって大きくて、去年も誕生日にツーマンをしてもらったし、やっぱり好きですね。単純に音楽が好きで、応援したい。あとはその日にオープニングで出てもらったマジカルチョコミントクラブも最近頑張ってほしいなと思って、応援してますね。

─志摩くんはもともとどうやって知り合ったんですか?


片山:志摩くんはそれこそさっき言った「NEW LINK!」にオーディション枠で応募してきたんですよ。それを聴いて、「むちゃくちゃいいやん」と思って、そのオーディションは通らなかったんですけど、僕が個人的に気に入ったので、「ライブしてもらえますか?」って伝えて、他の曲を聴いてもどれもめちゃくちゃ好きだし、サポートしたいなって。

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─志摩くんのどんな部分に魅力を感じましたか?


片山:theトラウツもそうですけど、言葉がスッと頭の中に入ってきて、すぐ歌えるんです。僕の中で日常的に口ずさみたくなるとか、歌えるみたいなことがすごく大事というか、自分の好きなものは日常的に聴ける音楽なんですよね。ライブが魅力のバンドもいっぱいいて、そういうのも好きですけど、自分が本当に好きなのは日常の中で聴いてると楽しかったり、口ずさみたくなることが多いもので、志摩くんはめっちゃそれ。しかも、アレンジがありきたりじゃない。すごく変。めちゃくちゃポップなんだけど、でもひねくれてて、そういうのが聴いてて楽しいです。

─志摩くんの音楽にはどんなルーツがあるんですか?


片山:一緒にカラオケに行ったことがあって、そのときに質問攻めしたんですけど(笑)、とりあえずスティービー・ワンダーは大好きですね。あとはミスチルとか奥田民生も好きみたい。



─なるほど。僕はラジオでよくKANと比較してたんだけど、KANもスティービー・ワンダーが大好きだから、ルーツが共通してるんですね。


片山:でも知り合った頃は音楽を全然知らないみたいな感じで、スキマスイッチが好きっていうのは知ってたんですけど、スカートの話をしても知らなかったり、日本の新しいのはそんなに知らない。そういう人からああいう曲がポンポン生まれてくるのも面白いなって。僕的にはDEENみたいな曲にも通じるっていうか(笑)。

─わかります(笑)。インディ的な感じじゃなくて、J-POP的なプロダクションで一回聴いてみたい気もする。


片山:それが若い人にどう受けるかが正直僕の中でわからないので、だからこそなんとかしてあげたいというか、どうやったらもっといろんな人に聴いてもらえるのかな?みたいなことは一緒に考えたりしてます。

─theトラウツともいろいろ話をしてるんですか?


片山:theトラウツはもう言うことないですけどね。好きすぎて。最近すごくライブもノっていて、もうちょっとでいろんな人に届きそうだなっていう感覚があるので、今はそのまま頑張ってほしいという感じ。距離感は志摩くんの方が近くて、theトラウツはもうちょっと一歩引いてる感じかも。あの子たちは自分らの中で考えがはっきりしてる部分もあって、アイデアがあったりするので、それを伸び伸びやってる中、もうちょっとで何かをつかみそうな感じがあるので、今はそんなにタッチしなくてもいいのかなって。



─マジカルチョコミントクラブに関してはどうですか?


片山:彼らはまだ20歳とか21歳で、始まったばっかりなので、音作りの面とか、ライブハウスでどうやったらうまく軌道に乗るか、みたいな部分を話したり。もともと音源を送ってくれたのかな。で、聴いてみたらすごいよくて、ライブを見たらギターもめちゃくちゃうまくて。でももうちょっとバシッとした音出せるのになぁみたいなのがあったので、ちょっとサポートしてあげたいなって。自分たちでプロデュースしきっちゃってる人だと、ブッキングとしてそんなに手伝わなくていいというか、どっちかというと、曲はいいのにライブが下手とか、コミュニケーションを取るのが苦手とか、曲もライブもいいけど何も考えてないとか(笑)、そういう人をサポートしたい。だからブッキングが向いてるなと思います。イベンターの感覚だとそうはならないと思うから。



─完成されてるものよりも、可能性のある人と一緒に成長していきたい。


片山:そもそも店でガツガツソールドアウトのイベントをやりたい、みたいなタイプじゃないんですよね。今は30周年なので、そういうイベントもやってますけど、どっちかっていうと、一緒にやってきたバンドが自分たちで企画を打ってくれて、それがソールドアウトする方が嬉しい。先輩のバンドと若手をうまく組み合わせて、「ソールドアウトだぜ!」みたいなのはそんなに重視してないんです。もちろん、そういうフォローの仕方もあると思うんですけど、僕は若手と一緒に考えることが楽しいので、合いそうな先輩がいたら教えるから、自分たちでやった方がいいっていう感覚ですね。

─そういう考えの人がブッキングにいてくれるのはめちゃめちゃいいなと思います。


片山:それこそFRIENDSHIP.もあるし、今はバンドも自分たちでできることがいっぱいあると思うので、できるところまでは自分たちでやってほしい。そうやって一緒に成長したいし、その中で「こういう要素が足りません」ってなったら、僕がサポートしてあげたり、他の人を紹介してサポートしてもらったり。できるところまでは自分たちで、やれる限りやって、それで自力がつくことが一番いいなと思いますね。

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─最後に、8月13日にベースメントとスリーの往来型で開催されるかたしょ君主催のイベント「TRANSITION」について話してもらえますか?


片山:今ってR&Bとかジャズに反応してる20代前半の子たちがものすごく多いなっていうのが、僕のここにいる感覚でまず1つあって、例えば、プレイヤーで見てるお客さんもいっぱいいるし、ジャズのセッションを見に行く子も今すごく多い。それと途中で話したような「海外のお客さんすごく多いよね」っていう、その2つが僕の今思う、ベースメントとスリーの一番エネルギーあふれる界隈なんです。ここに今ものすごいエネルギーがあるので、それが交わったらめちゃくちゃなことになるんじゃないか、みたいなことを考えて組んだイベントなんですよね。

─2010年代のいわゆるシティポップのブームと比べて、ここに来てまた変化を感じる?


片山:KroiとかBREIMENの影響もでかいし、それぞれがプレイヤーとして、すごく名前を伸ばしてる人が多いですよね。バンドマンっていうよりは、ドラマーとしてとかトランペッターとしてとか。そういう人たちの音楽を聴くのって、すごいライブハウスっぽい体験なのかなと思うんですよ。かっこいい音楽をやってて、うわーってなって、酒飲んで、みたいな。そういう子たちに話を聞くと、もともと好きだったのがヨギーとかネバヤンとかで、やっぱでかいんだなと思うんですけど、そういうのをバックボーンにポップスをやるんじゃなくて、ちゃんとR&Bやヒップホップをやってる人がすごく多くて、そういう人たちの勢いがすごい。今回出てくれるバンドはもちろんみんな大好きなんですけど、それ以上にシーンとしての魅力を感じていると言ってもいいかもしれないです。

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─「今一番盛り上がってるのはここ」という提示をするような意識?


片山:そっちの方が強いかもしれない。この場所でこういうことをやれたら面白いよね、今こういうものがあったら面白いよねっていうのを、みんなに確認してる感じです。

─FRIENDSHIP.関連で言うと、Geloomyとaldo van eyckの出演が決まっていて、Geloomyはまさにさっき言ってくれた流れを体現する一組ですよね。


片山:彼らだけでもないですけど、やっぱりすごく音楽が好きなのはよくわかりますよね。プレイヤーとしての魅力もそうですけど、フロアにいるときも含めて、すげえミュージックラバーで、だからこういうことやってるんだなって、めちゃくちゃ伝わってくる。



─aldo van eyckは最近の楽曲はジャズ、R&B、ヒップホップの感じがありつつ、もともとノーウェーブやポストパンクの色も濃いので、少し異色ではありますよね。


片山:彼らは海外の人にもヒットしそうだし、日本のシーンが好きな人にもヒットしそうで、うまく両者をつなぎ止めてくれそうだなって。それでいったらQPLOとかもそうなんですけど。海外の人たちが好きなものと、日本のR&Bとかが好きな子たちって、実際は好きな音楽がちょっとずつ乖離してると思うので、ちょうど中間ぐらいの感覚で、ここにアルドいたらめっちゃ面白いじゃんって。なので、流れからはちょっと外れてるけど、でも絶対面白いよねっていう感じの立ち位置で考えてます。



─まさに今のベースメントを象徴する1日になりそうですね。


片山:今回最初にオファーをして、一バンドも断られてなくて、みんなそのまま決まってるんですよ。「海外の人が多い」とか「R&Bが盛り上がってる」とかはあったけど、そこをバコッと1つにするのは案外なかった。ふとそう思って声をかけたら、みんなオーケーしてくれた。「これ今やったら面白いよね」みたいなことにみんな賛同してくれてる感じがあって、それはすごく嬉しかったし、当日が楽しみですね。

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取材・文:金子厚武
撮影:Pale Fruit

LIVE INFORMATION

TRANSITION
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2025年8月13日(水)
OPEN&START 16:30
TICKET:¥4,000-/U22¥3,000-(+1Drink ¥600-)

LIVE:
aldo van eyck / Cosmic Mauve / Doona / Geloomy / HALLEY / Johnnivan / QPLO / S.A.R. / Wang Dang Doodle

DJ:
Fumiya Kawase , judgeman , kuniii , SHiN , 星原喜一郎

FOOD:
zyypsshy

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PROFILE

kanekoatsutake_20210528.jpg金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3

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