2025.08.05

せっかくだったらインディペンデントで、ガッツリDIYでやって、どれぐらいできるかをやってみようかなって。
─まずは独立の経緯について話していただけますか?
前の事務所との契約が満了して、「他のレーベルや事務所を紹介しましょうか?」と言われたんですけど、もういいかなと思って。最近コラボをめっちゃしてて、結構疲れてたのもあって、次は1人でやりたいと思ってたんですよね。自分の蓄積してきたDAWの技術でどれくらいできるか知りたかったし、自分の純度が高い音を聴きたくて。それで今回のアルバムはセルフプロデュースにしたので、せっかくだったらインディペンデントで、ガッツリDIYでやって、どれぐらいできるかをやってみようかなって。
─いつ頃からセルフプロデュースで作りたいモードになっていたのでしょうか?
2年ぐらいずっと思ってはいて。自分が考えていることをコラボ相手に共有するのが本当に難しいというか、どうしても喫茶店の会話みたいな感じになっちゃう。それはそれでいいと思うんですけど、私はもうちょっと抽象的で、複雑で、いろんな要素が体系的に絡み合っているものが好きだし、そういう方が作ってても楽しいんですよね。なので、それをやるならコラボは現実的じゃないから、アルバムは1人で作ろう、みたいな感じでした。
─実際今回のアルバムは作品を通して複雑な社会の構造がその歴史も含めて描かれていて、その中でいかに自由でいられるか、あるがままでいられるかに向き合った作品になっているのがまず印象的でした。『春火燎原』でも曲単位でそういうテーマがあったとは思うけど、アルバム全体でそのテーマと向き合うことは今までなかったなって。
そうですね。『春火燎原』みたいにその場その場で考えていることを曲にしても、自分が一貫して生きていれば、一貫したテーマにはなると思うけど、もうちょっとそこの部分をクリアにしてというか、常に何と向き合っているのか、その一貫した思想の部分をもろに出して、集めて、作品にしたいと思いました。おっしゃったように、やっぱり構造というものと向き合うことをやらなきゃなって。

─ここ数年はワールドツアーでいろんな国に行って、いろんな経験をしてきた中で、もちろん国によって違いはあるんだけど、世界には共通する構造・システムがある、ということを体感したからこそ、改めて今回みたいなテーマに向かった部分もありますか?
そうかもしれないですね。女の子はみんな同じことで怒ってるし、クィアな子はいつも同じことで傷つけられてる。そう思うと、やっぱり同様の社会構造がどの国にもありますよね。ニューヨークやロンドンに行くとすごく思うし、もちろん東京もそうなんですけど、どの街も人間を家から職場に向かわせて、労働させて、帰すために作られていて、その気持ち悪さは共通してる。東京は特に構造が見えるというか、動線が見えるといいますか、そうやっていかに人間を資本家が合理的に使い捨てるかが見えてきて、でもそれを打破する術があることを人の意識にもたらしたい、みたいなことを思ってました。
─打破する術というと?
すごくシンプルに言うと、「人がめっちゃ流れているところで急に止まってもいい」みたいなことが言いたかったんですよね。ぶつかられると思うし、邪魔だと思われると思うけど、別に止まってもいいってことを、もうちょっとみんなに思ってほしい。止まってもいいと思ってたら、止まってる人がいても、「ちょっと邪魔だな」ぐらいにしか思わないと思うんです。でも新宿駅とか、止まったらとんでもない顔で見られたりするじゃないですか。動線からはみ出た人とか逸脱する行為をみんな嫌いすぎる。
─特に日本はそうかもしれない。
都市の構造はやっぱりそういうものを排除するように作られてると思う。権力にとって合理的に作るとそうなるんでしょうけど、でもそれは嫌だなと思ってて、急に変なことをする可能性があることを思い出してほしい。それが著しく人の権利を侵害してない場合は、許されていいだろうと思いたいし、思ってほしい。そうじゃないと、さすがに生きづらすぎるなって。
─アルバムタイトルの『ekkolaptómenos』が、レーベルの名前にもなっているわけですけど、この言葉はいつぐらいのタイミングで、キーワードとして出てきてたんですか?
おそらく曲が全部できたあたりぐらいだと思うんですよね。「terrain vague」を書くにあたって、「テラン・ヴァーグ」の概念を説明してる雑誌の論文を見つけて、それを書いてる東大の先生が磯崎新太という建築家を研究してて、興味が出て、読んでみたら、その人は建築家なんですけど、「孵化過程」っていうタイトルの美術作品を作っていて。その人はもうちょっと都市が能動的に孵化するイメージを持ってたのかもしれないですけど、変容することと変容させられることは同時に起こるから、そのイメージがめっちゃしっくりくるなと思って。孵化することと孵化させることが同時に起こってることが自分の中ではすごく大事で、構造に影響されながら、構造自体を突き破るみたいなイメージがあったんです。でもそのまま「孵化過程」だとちょっと重たいから、それをうまく表せる単語がないかなと思って調べてたら、ギリシャ語には「中動態」っていう概念があるのを見つけて、これにしよう!と思いました。
─「ekkolapto」が「孵化する」、「-menos」が中動態を表す接尾語なんですよね。
なので、それをくっつけちゃおうと思って。その営みをすることによって、常に生まれ続けたり、新しい自分になったりする。この状態が停止していないことが、最も生きているという状態なんだと思う、みたいなことを考えていました。
─これまでも一貫してテーマだった「破壊と創造」を言い換えた言葉のようにも受け取れるなと。
前はループだったイメージが、螺旋を書いて、つながり続けるイメージに変わりました。「何を起点にこのループを考えたらいいのかな?」っていうときに、過去に戻ることとか、未来に進むことじゃなくて、今この瞬間に自分がどう感じているか、自分はどういう立場にいるのか、それを確かめ続けることなんじゃないかと思って。それが歌詞にも書いた「〈いま・ここ〉へ還りつづける」っていう、わけのわからないパラドックスみたいなことなんですけど、でもその状態が時間の感覚としては一番正しいのかなって。進むとか戻るじゃなくて、ここにあるという状態を確かめ続ける。それが結果的に時間の連続になる。それが最も生に近い状態なんじゃないかと。
─まさに「terrain vague」で歌われていることですね。
構造化されるっていうことは停止させられるってことで、低い解像度で切り取られて、自分らしさのディテールをそぎ落とされるってことだから、それは死に近い状態なんじゃないかと思う。それに抗うことを考えると、生きるということは動いている状態で、<いま・ここ>という時間を起点に動き続ける、〈いま・ここ〉を積み重ね続ける、そして振り返ると歴史がある、そうやって人間の存在がもっと流動的で可変性のあるものだと認識することが、革命の第一歩なのではないかと。自分が流動的であると思うと、反乱の機運が生まれるから、権力の磁場における強者はそう思ってほしくないし、納得した状態でなんとなく過ごしてほしいんだと思うけど、そうではないということを言いたかったんです。

曲のテーマとサウンドが重い分、思わず爆笑しちゃう展開みたいなのは入れたかったんですよね。
─セルフプロデュースで制作するにあたって、音楽的な方向性はどんなアイデアがありましたか?
ホーリーなサウンドをいっぱい使いたいと思ったんですけど、それはなんでなのかを考えました。1曲目の「anointment」のトラックは5年ぐらい前にワンループだけできてて、でもこの上で何を言うべきなのかがわからなくて、そのワンループをずっと聴いてたんです。で、呪術的な要素とか、神秘を感じさせるサウンド、教会音楽っぽいサウンドをなんで使いたいのかな?と考えると、やっぱり名付けがたい神聖なものがあると信じたい気持ちがあるんですけど、じゃあそれはどこに宿れば倫理的でいられるんだろうかと思ったんですよね。
─春ねむりさんはかつてクリスチャンスクールに通っていたから、教会音楽にはそもそも親しみがあるわけですよね。
そうですね。でも宗教もシステムになってしまうと全然倫理的でなくなってしまうし、神聖なものが陰謀論的なものに絡め取られる場面もよく見ますし、私はこの神聖なものをそういうものに絡め取らせたくなくて。じゃあ自分が何をもって神聖だと感じているのかというと、やっぱり人間の存在が持つ尊厳を神聖だと感じてるんだと思うんです。踏み込まれ得ないはずの心の領域とか、まだ名付けがたい感情が人間にはあって、それが美しいということだと思うし、それを神聖だと言いたい。だから私が神聖だと感じるサウンドを入れたい。それがスピリチュアルでもなく、陰謀論でもなく、システムでもないところ、人間の存在にあることを言いたいなと思ったら、「構造とは欺瞞である」と言わざるを得ない。神聖なものが本当は神聖でないもののために使われることが多いと思ったんですよね。

─「anointment」では「油を塗る」という儀礼的・権威的な行為をあえてモチーフとして用いながら、その逆を表現しようとしていますよね。
ヨーロッパで宗教と権力が結びついて、権力の作用を強めるために宗教的な儀式が用いられるようになり、その宗教的な儀式によって、国体としての王が発生して、それが国家というものにつながる。そういう歴史を見ていて、権力の作用を強化するために用いられてきた伝統的な儀式を、国家とはそもそも政治的・概念的な身体であることを暴くために用いたい、と思ったんです。作用を強化するために用いられてる儀式なら、逆にも使えるということが面白いなと思ったんですよね。
─今回のアルバムはそういう表現が多いですよね。構造を強化するための概念や思想を逆の意味で使うことによって、構造から逃れようとするアプローチというか。
それは結構意識してたかもしれないです。用意されたものを利用してやる。アナーキストの伝統にのっとってそうしてみようかな、みたいな(笑)。笑ってやれバカにしてやれ利用してやれじゃないけど、それは私もそうしたいなって思う態度というか。まあ、私は圧倒的にユーモアが足りてなくて、まっすぐ打ち返す!みたいな、真面目なノリになっちゃうんですけど。
─でも今回の楽曲からはユーモアも感じます。唐突な、変な展開をする曲が多かったり。
曲のテーマとサウンドが重い分、思わず爆笑しちゃう展開みたいなのは入れたかったんですよね。思わず笑っちゃう、みたいなポイントがなさすぎるなと思って、それは結構サウンドの方で思い切りやったような気がする。ギョッとしてほしいし、笑ってほしいです。

─そこが流動的・可変的という作品のテーマにも繋がっているように思います。前の取材ではJPEGMAFIAとダニー・ブラウンのコラボ作が好きという話をしていて、その要素も感じられるし、他にも今作のリファレンスになったアーティストや作品はありましたか?
Dos Monosは対バンしたときも面白かったですし、今年出た新譜もいい意味でバカだなって思いました(笑)。Model/Actrizとかdownyのアルバムも、なんで?みたいな展開をすることがあって、そういうポストハードコアみたいなのを結構聴いてましたね。あとはFKA twigsの新譜も好きでした。
─一部のギターとベース以外は全部打ち込みなんですよね。
基本全部打ち込んで、ベースは結構自由にやってもらったんですけど、ギターは指定が厳しくて、「この通りに弾いてほしい」ってリクエストして、音もドライでもらって、エフェクトとかはこっちでやって、みたいな感じでしたね。エンジニアさんが前からずっと一緒にやってる人で、意思疎通が結構できるので、エンジニアさんがその人なら、多分私の打ち込みでも、ちゃんとミックスすればいけるはずと思いました。
─コーラスでは諭吉佳作/menが参加しています。
単純にコーラスのパートが多すぎて、明らかに自分の声じゃねえなっていうパートがいくつかあったので、誰かにやってもらいたいと思って、諭吉さんがいいなって。文脈をちゃんと理解してやってくれる人がいいなと思ってたので、文章とか読むの好きそうだなと思ったし、あのなんとも言えない、あんまり規範化されてない声というか、どんな人が歌ってるのかよくわからない声がいいなと思いました。
「踊るってことは逸脱することで、都市に規定される私の体から私を解き放つことだ」
─諭吉さんが参加している「panopticon」もやはりホーリーな雰囲気がありますね。
前のレーベルにいたときに、アニメソングのコンペに出した曲なんですけど、そのアニメがすごく構造的な作品だなと思って。結局ダメで戻ってきたんですけど、アルバムを作るってなったときに、これは構造についての曲だから入れたいなと思いました。まだ神秘の解体と構造が結びついてない段階で作ったんですけど、「このアルバムは構造についての作品なんです」っていうことを示すには、頭の方にそういう曲を入れた方がいいなって。2曲目の「haven」も同じコンペに出したので、違うアプローチで構造について話してるんです。

─「haven」は箱庭、「panopticon」は監視塔がテーマなので、まさに構造的ですね。
「panopticon」に関しては、自分にこの振る舞いをさせている場のルール、自分にこの感情を抱かせている場のルール、それは法律からその集団が持ってる暗黙の了解まで含む、っていうものについて問う意識があって、そうなるとフーコーとかを読まざるを得ないというか、「パノプティコンについて書くしかないか」みたいな感じで書きました(笑)。
─もともと慶應の文学部・倫理学科で、哲学や思想、歴史の本を読むのはお好きだったかと思いますが、今回のタームではこれまで以上にいろいろな文献を読み込んだのかなと。
結構読みました。アルバムを作るにあたって、あまりにも知識の総量が少なすぎるから、本を読んでるだけじゃ追いつかないと思って、通信大学に入り直したんです。
─そこで学んだ知識が歌詞や曲のテーマになっていると。
政治神学や社会学の授業をとったりして、人間を規定するいろんなルールについて考えていくと、最大の暴力装置としての国家みたいなことを考えざるを得ないなと思っていて。家庭で起こる暴力も小さな国家なのだとしたら...私は過激だから、国家を解体する方法について考えてしまうけど(笑)、少なくとも国家というものがもっと可変性がある共同体になるべきだっていうことを考えざるを得ない。国家の暴力をいかにして最小化するかを考えることって、その国家を模倣して、あらゆる場で起こっている暴力を最小化することにつながると思うんですね。企業とか家庭とか、場と言われるものがあまりにも国家を模倣して作られ過ぎてきた。今はすごい変化してると思うときもあって、そうじゃない場作りをみんなしようとしてると思うんですけど、まだまだマジョリティなのは国家の模倣だと思うから、最もでかいところから狙っていくというか、そこが変えられると思えたら、いろんなことを変えられる気持ちになりそうだなって。それでじゃあ、そもそも国家ってどうやってできたんだろう、みたいなことを調べたりして。
─「symposium」では偏向的な歴史観について書かれていますが、音楽的にはレイヴがテーマになっていて、後半から完全にダンストラックになるのが非常に新鮮でした。
最初に曲の前半だけバーって書いて、ここからどうしよう?と思ったときに、そこまでで言ってることが正論パンチすぎるから、あそこからサビに行くとしたら「FUCK!」以外言うことなくて(笑)、言うことないんだったら踊るしかないか、みたいな。 レイヴ的な要素を入れる思考があったのは、プロテスト・レイヴをやってる方々がいらっしゃると思うんですけど、それを見てて、こういうふうに人に踊ってもらえる音楽が、その場を作るのに寄与するんだとしたら、それはやりたいなと思いました。

─春ねむりさんは根本的には言葉の人で、いかに言葉で書き連ねるかということをずっとやってきた人だと思うんですね。でも「symposium」のあのパートに関しては言葉を捨てて、フィジカルに委ねた。それは結構大きな決断だったのではないかなと。
ライブ中も何していいかわからなくなっちゃうから、そういうパートを作る勇気が昔はなかったんですけど、でも最近は何でもいいかなって。することがなかったら立ってればいいし、踊ることもできるし、最近はあそこでシンセを弾いてます。つまみをめちゃくちゃいじって、最終的にノイズを作ったり、演奏するのってこんな楽しいだって(笑)。
─レイヴカルチャー自体が構造からの逸脱・解放を目指しているわけで、このアルバムで鳴らされているのは必然だなとも感じました。
「踊るってことは逸脱することで、都市に規定される私の体から私を解き放つことだ」みたいなことをMCでポロって言ったことがあって、それを友達が「すごくいい言葉だった」って言ってくれて、メモってたから、「indulgentia」の歌詞に入れて、それはこのアルバムですごく肝になってると思います。肉体から始まって、最終的に言うことがなくなれば、また肉体に戻ってくる。それは必然的なことかなって。
─4つ打ちを使った「excivitas」とか、全体的にフィジカルに作用する曲が多いですよね。
ライブで踊ってきたことはすごく関係してると思いますね。踊ることによって、自分の体ってこんなふうに動けたんだ、みたいな気持ちになって、お客さんにも踊ってほしいのは、そう感じる瞬間があってほしいからだなって。予想だにしない動きをする自分に寛容であってほしいし、そうすると他者にも寛容になると思う。だからライブは大切だし、ライブの空間をそのように作ることが大事なんだなって。
─ラストを締めくくる「iconoclasm」は歌詞的にも今回のアルバムを総括する曲になっていますね。
リフができたときに、これは総集編みたいなリフだと思ったので、ちゃんとした曲にしたいと思ったんですけど、最後の方までできてなくて、途中のポエトリーは録音する3日ぐらい前にようやく書きました。歌が以前に比べると普通くらいにはなってきたと思うから、今回はメロがある歌をどれくらい歌えるかに興味があって、途中までポエトリーを封印して、メロディーのある曲か、やるとしてもラップっぽくしようと思ってたんです。だから「iconoclasm」もポエトリーを入れるかどうか結構悩んで、入れなくても普通にいいミドルバラードになると思ったんですけど...最後の最後に入れちゃいましたね。
─まさにそのポエトリーの部分がアルバムの総集編のようになっています。
私が構造的なもの、規定的なもの、法的なものを破壊しなければいけないと思ってるのは、人間の存在に宿る神聖さをもっと信じたいし、信じてる世の中になってほしいからなんだけど、その「神聖さ」ってどういうことなのかを考えると、傷ついたという経験を持っていても、傷つけていいとはならないということ、奪われてもなお、私は奪わないということだと思ったんですよね。人間なので、奪ってしまうときもあるんですけど、でも奪わないという意志を持つことが、人間の存在を神聖たらしめる要素なのではないかと思ったんです。「奪われたくない」っていう気持ちもすごく大事だとは思うんですよ。それで正当な怒りを持つこともすごく大事で、私は「正当な怒りを持て」っていうこともすごく言ってきたと思うんですけど、じゃあその怒りをどのように用いるべきなのかというときに、「私は人からは奪わない」というエネルギーにしてあげることなのかなって。
─そこに人の神聖さであり、尊厳が宿る。
そう考えると、聖なる像みたいな、固定化された神聖さは本当に神聖なのか?と思う。コロンブスの銅像がぶち倒されたりしましたけど、そういうことなんじゃないかなって。固定化された端からぶち壊していくことでしか、本当の神聖さというか、人間の尊厳について語れないんじゃないかと思って、このテーマになりました。この世は人から奪わざるを得ない構造になっていて、傷ついたら傷ついた自分のことを守るために、より弱い立場に置かれている人から搾取せざるを得ない。それでもあなたはもう奪いたくないと言うことができると信じたい。それは自分に対してもすごく思っていて、そう思うのは能動的な意志じゃないですか。それを繰り返し続けることが、気高く生きるってことなのかなと思うので、飲み込まれそうになったときに、自分が聴いた方がいい曲を書いておきたいなって。
─生きていると自分が奪う側に回ってしまう瞬間が避けられなかったりすると思うけど、それを認識できているかどうかで大きく違うように思います。
これはめっちゃ歌ってほしいですね。〈もうなにも奪いたくない〉と口に出してもらいたい。それを口に出す人が増えたら、すごく変わるんじゃないかなと思ってます。奪ってしまっている現実があるから、〈奪いたくない〉と口にすることって、余計傷つくし、「ああ、やってしまっている」って気持ちになると思うんですけど、それでもそう思う人が多い世界の方に進みたいというか、「もう奪われたくないから私も奪う」っていう世界はみんなしんどいと思う。これはでも本当に、祈りでしかないですね。

─ただ祈りだけがある。そこも非常に春ねむりさんらしいと思いました。最後に、9月からは北米ツアーがあって、その後に10月からは日本ツアーも始まりますが、東名阪以外をツアーで回るのは初めてだそうですね。何か意識の変化があったのでしょうか?
前にアメリカをツアーで回った時に、一緒に回ってたChanpanってバンドがライブの翌日にコミュニティハウスとかで演奏をしてて。アジア系アメリカ人3人組のバンドなんですけど、アメリカでアジア人であることはマイノリティだから、コミュニティを作って、みんなで連帯して、世界を変えていかないといけない、みたいな話をしてて。ミュージシャンのツアーはそういうことと相性がいいというか、同様の方向に世界が良くなってほしいと思う人が集まれる場を作れることはすごく大きいことだなって。私は超でかいところでやりたいとかあんまりなくて、どっちかというと、セーファーなスペースを作って、一緒に楽しみたいので、そういう意味でもツアーをやるのはいいなって。
─日本の各地にそういう場所を作って、それがネットワーク的に繋がって、コミュニティ化していけば、何かをひっくり返す力になっていくかもしれない。
こういうことを考えてる人って、東京にはいっぱいいると思うけど、地方とかに行くと、すごい孤独だったりするじゃないですか。でも同じようなことを考えてる人もきっといると思うから、それをお互い確かめられる場になったらいいなと思うし、そういう人に出会えたらいいなと思っています。
取材・文:金子厚武
撮影:エドソウタ
RELEASE INFORMATION

春ねむり「ekkolaptómenos」
2025年8月1日(金)
Track:
1. anointment
2. haven
3. panopticon
4. supernova
5. terrain vague
6. excivitas
7. cosmic egg
8. indulgentia
9. symposium
10. angelus novus
11. iconoclasm
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LIVE INFORMATION
春ねむり "ekkolaptómenos" TOUR FINAL単独公演『孵化過程』

2025年12月10日(水)
東京・渋谷 WWW
開場 18:30 / 開演 19:30
出演:春ねむり(HARU NEMURI)
チケット
・前売:¥4,000(+1ドリンク)
・学割/U22:¥2,500(+1ドリンク)
・U18:無料(+1ドリンク) ・Patreon 先行チケット / Pre-sale
受付日時: 2025/8/1(金) 12:00 ~ 2025/8/7(木) 23:59 Patreon : https://patreon.com/harunemuri
・ 前売り / General Admission
受付日時: 2025/8/8(金) 22:00 ~
Event : https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_final
春ねむり『ekkolaptómenos』Release Party
2025年8月8日(金)日本・東京 新代田FEVER
OPEN 18:30 / START 19:15
春ねむり
没 a.k.a NGS
e5
Young Kee
校庭カメラガールフィーア
ADV ¥3,800 (+1drink) 学割 ¥2,800 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_00
春ねむり "ekkolaptómenos" JAPAN TOUR 2025
2025年10月7日(火)
神奈川 横浜 B.B.STREET
OPEN 18:30 / START 19:15
春ねむり、あっこゴリラ、THEティバ、DJ: HARINEZUMI (ANGURA)
ADV ¥3,500 (+1drink) 学割 ¥2,500 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_bb
2025年10月12日(日)
茨城 勝田 Stormy Monday
OPEN 17:00 / START 17:30
春ねむり、Cwondo、Ghostleg、ロマネスク実験、DJ: ゆの、yusk
ADV ¥3,000 (+1drink) 学割 ¥2,500 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_katsuta
2025年10月18日(土)
長野 松本 club SONIC
OPEN / START 17:00
春ねむり、神々のゴライコーズ、雲のすみか、DARUMAHEADz、Momose、DJ: masato、テンション花車
ADV ¥3,000 (+1drink) 学割 ¥2,500 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_haven
2025年10月26日(日)
福島 いわき Music Bar burrows
OPEN 16:00 / START 16:30
春ねむり、Seth、三ヶ田とくにお
ADV ¥2,900 (+1drink) 学割 ¥2,400 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_iwaki
2025年11月15日(土)
愛知 名古屋 K.Dハポン
OPEN 19:00 / START 19:45
春ねむり
ADV ¥2,500 (+1drink) U18 ¥0 (+1drink) ※18歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_kdjapon
2025年11月16日(日)
京都 METRO
OPEN 17:00 / START 17:30
春ねむり、七尾旅人
ADV ¥4,000 (+1drink) 学割 ¥2,500 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/haru_to_tavito
2025年11月18日(火)
大阪 CONPASS
OPEN 18:30 / START 19:00
春ねむり、Dos Monos
ADV ¥4,000 (+1drink) 学割 ¥2,500 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/haru_to_dos
2025年11月23日(日)
北海道 札幌 KLUB COUNTER ACTION
OPEN 16:00 / START 16:30
春ねむり、Discharming man、THE人生ズ
ADV ¥2,900 (+1drink) 学割 ¥2,400 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_sapporo
2025年11月26日(水)
福岡 graf
OPEN / START TBA
春ねむり、うみのて、and more
ADV ¥3,000 (+1drink) 学割 ¥2,500 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_graf
2025年11月27日(木)
広島 AGIT
OPEN 19:30 / START 20:00
春ねむり
ADV ¥2,500 (+1drink) U18 ¥0 (+1drink) ※18歳以下
TICKET: https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_agit
2025年11月29日(土)
沖縄 コザ 騒音舎
OPEN 19:00 / START 19:30
春ねむり、アルカシルカ、ワンチャイコネクション
ADV ¥2,500 (+1drink) 学割 ¥2,000 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/harunemuri_ekko-tour_snafu
2025年11月30日(日)
沖縄 那覇 fanfare
OPEN 18:30 / START 19:00
春ねむり、HOME、ワンチャイコネクション
ADV ¥2,000 (+1drink) 学割 ¥1,500 (+1drink) ※学生もしくは22歳以下 U18 ¥0 (+1drink) ※18歳以下
TICKET:https://t.livepocket.jp/e/ekko-anti_subculture_club
HARU NEMURI "ekkolaptómenos" NORTH AMERICAN TOUR 2025
2025年9月12日 (金)アメリカ・カリフォルニア州 ロサンゼルス - The Roxy
2025年9月15日 (月)
アメリカ・カリフォルニア州 オークランド - Crybaby
2025年9月18日 (木)
カナダ・ブリティッシュコロンビア州 バンクーバー - Fox Cabaret
2025年9月19日 (金)
アメリカ・ワシントン州 シアトル - Madame Lou's
2025年9月21日 (日)
アメリカ・イリノイ州 シカゴ - Chop Shop
2025年9月23日 (火)
アメリカ・ニューヨーク州 ブルックリン - Elsewhere
2025年9月25日 (木)
カナダ・オンタリオ州 トロント - Horseshoe Tavern
2025年9月27日 (土)
アメリカ・マサチューセッツ州 ボストン - Middle East - Upstairs
2025年9月29日 (月)
アメリカ・ワシントン D.C. - Black Cat
TICKETS:https://bnds.us/b60l7n
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