2025.11.22
レコーディングはすべて一発撮り。MASAE(B)、Shiho(Dr)とともに自分たちでマイクを立て、アナログテープを回して制作された本作には、その瞬間、その場所でしか生まれない衝動、そして、緊張感と自由さに溢れたバンドサウンドが刻み込まれている。喜怒哀楽、愛と憎しみ、官能と爆発をダイレクトに反映したDURANの歌もこのアルバムの軸を担っている。
ブルース、ヘヴィーメタル、ヒップホップなどを血肉化しながら、DURANにしか体現できないロックミュージックへと結びつけた『Vornak』。本作の制作、その背景にあるものについて、DURAN自身に語ってもらった。

AIには絶対作れないアルバムです(笑)
─『Vornak』、めちゃくちゃカッコよかったです。すごく久しぶりにロックアルバムを聴いた気がしました。
嬉しいです。ロックの旨みを詰め込んだつもりなんで。
─ブルースもパンクもメタルもグランジも全部入ってますからね。
そうですね。全部トリオで一発録りしたんですけど、ギターのオーバーダブも編集も一切してなくて。ライブ録音ですね。
─すごい。スタジオはどこだったんですか?
自分の母親が山梨でライブバーを経営していて。そこに買い集めたマイクや機材を持ち込んだんですよ。エンジニアもいなくて、自分たちでマイキングして。TEACのオープンリールデッキを回して録りました。もちろんクリックも使ってないし、テイクごとにテンポも違って。誰かが間違えたらもう1回頭からやり直し(笑)。ミスがあってもカッコよければOKという感じですね。そのときにしか生まれない奇跡がありますからね、ライブテイクには。AIには絶対作れないアルバムです(笑)。
─確かに(笑)。
そういう人間味のある作品というのが、今後は大事なポイントになりそうな予感がしますけどね。逆に面白い使い方もあると思うんですよ、AIには。たとえば『Vornak』というタイトル、同じ曲名でAIにアルバムを作らせるとか(笑)。
─人力とAIの対決ですね(笑)。そもそもどうして、完全一発録りでやろうと思ったんですか?
僕らみたいなミュージシャン、こういう言い方が合ってるのかわからないけど、商業的ではないアーティストは「いかにリアルか、いかに本物か」が大事だと思ってるんですよ。僕が聴いてきたロックの作品の多くもそういう録り方をしているし、憧れもあって。ロックのアルバムを作るんだったら、こういうやり方しかないという感じなんですよね。今って、何でも簡単に出来るじゃないですか。AIもそうですけど、何もかも発展し過ぎていて。だからこそ、自分が好きなことにはとことん手間をかけたいし、それが僕にとって「音楽を作る」ということなんですよ。
─今はすべてが効率化されていますからね。手間と時間をかけた制作は、贅沢なのかも。
そうですね。メンバー(MASAE/B、Shiho/Dr)もそうですけど、自分の音を時間かけて作れるので。マイキングもちょっとズラすだけで全然音が違うんですよ。面白いっすね、そういうのは。ドラムのマイクは3〜4本くらいかな。普通は20本くらい使うんだけど、少ないマイクでキット全体を録ったほうがカッコよくて。バランスが取れてるドラマーはそのほうがいいんですよ。
─なるほど。そういうプリミティブな録音だと、出音がすごく大事ですよね。
そういう面を含めて、プレイヤーの個性だったり、その人が演奏する意味がちゃんと刻まれているというか。そんなに時間はかかってないんですよ、じつは。この前数えてみたら、トータルで12日しかやってなくて。1日1曲ペースなので、だいぶ早いほうだと思います。アレンジも凝ってるわけではなくて。僕がリフを持っていって、MASAEとShihoに好きなようにやってもらって。作りながら録っていった感じですね。
─え、曲作りもその場でやってたんですか?
そうなんですよ(笑)。あらかじめデモ音源を作って「これを演奏しましょう」ではなくて、僕がネタを持ってって、その場でセッションして。あまり考えすぎてもよくないし、一緒に鳴らしたときの衝動をそのまま残していくのがいいのかなと。11曲目の「Mondo Blues」だけは3人で一からセッションして作ったんですよ。アナログレコードを出したいと思ってたから、「分数が足りないから、あと1曲やろう」と(笑)。

─MASAEさん、Shihoさんもすごいですね。
二人も一緒にやるようになって長いですからね。ドラムのShihoは12年くらいやってるし、MASAEも2018年から加わって。ライブも数多くやっているし、お互いの理解力もだいぶ上がってるんですよ。お互いのいいところだったり、出来ないこともわかっているし、あの二人じゃないとこういうアルバムは作れないですね。
─間違いないですね。マスタリングは?
PEACE MUSICの中村宗一郎さん(ゆらゆら帝国、OGRE YOU ASSHOLE、ギターウルフ、Borisなどの作品に関わってきたことで知られるエンジニア)にお願いしました。ロックの作品に関しては日本でいちばんだと思うし、ぜひやってほしくて。このアルバムの仕上がりも素晴らしいですね。音の突っ込み具合がすごくて、背中を蹴り飛ばされるような感じというか、より突き刺さるサウンドになりました。
─DURANさんにとっての「いい音」が実現できた、と。
はい。ガレージロックなので、きれいなスタジオできれいに録っても意味がないというか。埃くさいところで録った、クソみたいな音がいいんですよね(笑)、僕は。
─歌詞もその場で書いたんですよね?
そのときに感じたことや出来事をそのまま書いてるので早いんです(笑)。戦前のブルースが好きなんですけど、ニュースや日常の出来事を歌ってることが多いんですよ。あとは自分の好きな映画のストーリーだったり、登場人物になり切って書いたり。たとえば1曲目の「Goose Egg」は、デヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』のイメージなんですよ。全編モノクロで音声がまったくない、何の映画かもよくわからないんですけど、すごく好きで。5曲目の「Chevy Malibu 1984」は『レポマン』(監督/アレックス・コックス)という映画の主人公になったつもりで書きました。B級のクソみたいなSF映画なんですけど、こっちも何だかわからないんですけど(笑)、トータルでめちゃくちゃカッコよくて。
満足したら終わるというか、つまんなくなると思う
─なるほど。3曲目の「Black Skinhead」はカニエ・ウエストの楽曲のカバー。
2013年のアルバム(『Yeezus』)に入ってる曲ですね。僕は当時高校生だったんですけど、この曲からすごいパワーを感じて。ずっと好きな曲で、いつかカバーしてみたいと思ってたんですよね。ただ、黒人としての社会に対する思いだったり、讃歌みたいなところもある曲なので、「黒人ではない自分がやるのはどうなんだろう?」と考えていて。
─当事者ではない自分がこの曲を演奏していいんだろうか、と。
ただ、差別だったり、「壁をぶっ壊していこう」というパワー、この社会に対する反骨心にやっぱり惹かれてしまって。しかもこの曲、メインのフレーズがギターっぽいんですよ。ギターで弾くのにピッタリだし、そのために作られたんじゃないか?という感じもあって。
─『Yeezus』というアルバム自体、ポストパンク的なテイストがありますからね。
だから入りやすかったというのもありますね。最近よく思うんですけど、ヒップホップのほうに僕が好きだったロックな旨みがあるような気がして。キャッチーで耳に残るフレーズをループさせるって、かつてのロックのギターリフみたいだなと。レッド・ツェッペリンもそうだし。
─確かに。ちなみにカニエは現在"Ye"を名乗ってまして、変貌ぶりがすごいですよね。
ヤバいですよね。たぶん自分の感情のままに進んじゃうんでしょうね。特に怒りに振り切っちゃうんだと思う。

─怒りのパワーは『Vornak』にも入ってるのでは?
けっこう入ってると思います。中学の頃に甲本ヒロトさんのコラムを読んでたら、「思春期の頃の怒りはすごく大事」みたいなことを書いていて。あの頃はすべてに対して怒ってたし、そういうのを全部カッサらっていくのがロックミュージックじゃないかなと。その感覚はずっと覚えているし、この年齢になっても、ムカついたことを曲にして残すのは大事だと思ってるんですよ。
─それが音楽活動のモチベーションになっている部分も......?
ずっとあると思います。満足したら終わるというか、つまんなくなると思うんですよ、自分も音楽も。「もうやんなくていいや」と思っちゃうかもしれないし、どこかにフラストレーションを溜めておかないと。まあ、不満はずっと消えないですけどね(笑)。皆さんもそうだと思いますけど。
─『Vornak』というタイトルも怒りやフラストレーションと関係あるんですか?
ごめんなさい、タイトルには全然意味がなくて。完全に造語なんですけど、「ヴォ!」とか言いたかっただけなんで(笑)。
─(笑)。ジャケットのイラストはBorisのAtsuoさんだそうですね。
世界的に人気があるバンドで、自分ももともと大ファンで。『Vornak』はアナログで出そうと思っていたし、アートワークはすごく大切じゃないですか。Atsuoさんに音源を送って、「黒のイメージがあるんですよね」とだけお伝えしたんですけど、めちゃくちゃカッコいいイラスを描いてくれて。うれしかったですね。
─マスタリング、アートワークもそうですけど、DURANさんの「これがカッコいい」という感覚を理解してくれる人がいると。
そのあたりは活動を続けてきてわかってきた部分もあって。「この人と一緒にやったら、自分が見えてないところまで行ける」という人とつながれているのはうれしいですね。
お金持ちになる、有名になるよりも、自分の芸を極めたい
─DURANさんはギタリストとして稲葉浩志さん(B'z)、スガシカオさん、清春さん、藤井風さん、Vaundyさんなどと関わっていて。超メジャーなアーティストの現場でギターを弾くことと、ロックに振り切った自分の作品とのバランスはどうやって取ってるんですか?
10代の頃にフィリピンのインターナショナルスクールに通ってたんですけど、フィリピンにはどの店にもショーバンド、いわゆる"箱バン"があるんですよ。そういうバンドはそのときに流行ってる曲もやるし、誰もが知っているような古い曲も演奏するのが当たり前で。親戚がそういうバンドをやっていたこともあって、16歳くらいのときに僕も参加していたんです。そこで「いろんな音楽、いろんなプレイスタイルで弾けるのは当然」というふうに育ったところがあるんですよね。ある程度、何でも弾ける。そのうえでパラメータを振り切って、「これが得意」と言えるものがあるのが本当のミュージシャンじゃないかなと。なのでいろんなアーティストに呼んでもらって、その人の音楽の世界に入り込むことも全然抵抗がなくて。大きい枠では全部、音楽ですからね。
─幅広いジャンルを網羅しつつ、特化した部分も持っていることが大事。
それは僕の考えなので、一概には言えないですけどね。僕、宮本武蔵が好きで。『五輪書』も読んでるんですけど、そこに「道を極めるには、広い視野を持て」みたいなことが書いてあるんですよ。まさしくその通りだし、それはミュージシャンも同じだなと。自分の真ん中は絶対ロックなんだけど、いろんな音楽を知っているけど、ある程度弾けることは必要だと思ってますね。「芸を極めたい」というのも強くて。お金持ちになる、有名になるよりも、自分の芸を極めたいとずっと思ってます。

─アルバム『Vornak』はDURANさんにとって5枚目のフルアルバム。次のビジョンもありますか?
『Vornak』は録音したのが今年の2月なので、自分のなかではもうだいぶ前で(笑)。早く次のアルバムを作りたいですね。この録り方が気に入っているし、ラクというか、いちばん自分らしいと思っていて。無理なことをやったり、背伸びするとどうしてもそれが音に出てしまうし、やっぱりナチュラルにやったほうがいいので。そのときの感じを込めれば、後になって聴いたときに「この時期はこんな感じだったな」って思うじゃないですか。そういうニュアンスの作品を残すのも、ミュージシャンにとってはすごく大切だと思ってるんですよね。
─期待してます! ちなみにDURANさん、最近はどんな音楽を聴いてます?
相変わらず昔のやつが多いですね。戦前ブルースも聴いてるし、ぜんぜん2025年に追いついてないです(笑)。リンク・レイもずっと好きで。あのギターの音は今も憧れですね。
取材・文:森朋之
撮影:Toshinari tani
RELEASE INFORMATION

DURAN「Vornak」
2025年11月21日(金)
Format:12-inch Vinyl / CD / Digital
Label:Electric Gospel Records
Track:
1. Goose Egg
2. Rusted Gears
3. Black Skinhead
4. Spit Black Blues
5. Chevy Malibu 1984
6. Feiends On My Feet
7. Fuck Love
8. Golden Boy
9. Woman
10. Lamok
11. Mondo Blues
試聴はこちら
予約サイト
12-inch Vinyl : https://www.jetsetrecords.net/i/814006456719/
CD : https://www.amazon.co.jp/dp/B0FQHZ9Z5S

DURAN「30 Scratchy Backroad Blues」(LP再発)
2025年11月21日(金)
Format:12-inch Vinyl
Label:Electric Gospel Records
予約サイト :
https://www.jetsetrecords.net/i/814006456729/




