2025.11.21

「ボーカルを入れないLITEの今」をちゃんと見せたかった(楠本)
─今日の取材は10月9日から始まったアメリカ・ツアーから戻ったばかりというタイミングです。6年ぶりのアメリカはいかがでしたか。
武田:本当に良かったです。これまで何度もアメリカを回ってきたけど、今回はその中でも特に手応えがありました。COVETと一緒に回ったんですけど、彼らのファンが多く来てくれて、会場の空気がすごく良かった。観客の反応も熱くて、全体を通してポジティヴなエネルギーに満ちていました。ほぼすべての物販が完売したのは初めてです。
楠本:6年というブランクが長かったぶん、「やっと帰ってきたね」と声をかけてもらえることが多かったです。しかも今回はNetflixのアニメの劇伴(『ブライト:サムライソウル』2021年)で僕らを知ったという人もいて、新しい層が確実に増えていた。SNS経由でLITEを知った人も多くて、単なる再会じゃなく"再出発"のツアーになりました。

─COVETとの相性はいかがでしたか。
楠本:すごく良かったです。彼女たちはテクニカルな印象が強いけど、実際にステージに立って一緒にやるとバンドとしてのグルーヴ感がすごくある。繊細だけど荒々しさもある。そのバランスが絶妙で、LITEとも通じる部分が多かったです。ライヴ中にも「いま呼吸が合ったな」と感じた瞬間が何度もありました。技巧的なんだけど、ちゃんと体温がある。それが嬉しかった。
武田:有機的なんですよね。テクニックを見せるんじゃなくて、人間的な揺らぎをちゃんと持っていて、感情が音になっている。僕らもそういう"生々しさ"を大事にしてきたから、彼女たちの音楽にすごく共感できたし、人間性も自然とシンクロして良いグルーブが生まれたツアーになったと思います。。
─今回はツアーに合わせてそれぞれの楽曲にお互いが参加したコラボ曲もリリースされています。COVETの「Denouement feat.LITE」と、LITEの「SUNSET feat.Yvette Young」です。イヴェット・ヤングとのコラボはどうでした?
武田:最初に送られてきたイヴェットのギターが、びっくりするほど複雑で(笑)。最初は「どこが1拍目なんだ?」って感じだったけど、ベースとドラムを重ねていくうちに構造が見えてきた。複雑だけどメロディセンスが抜群。理論より感覚でリズムを操るタイプで、その自由さに刺激を受けました。

楠本:イヴェットって、クリックに合わせるよりも、意図的にズラしてニュアンスを出す感覚が自然なんですよね。独特のタイム感がある。LITEの構築的な感覚とは反対なんだけど、それが噛み合った。彼女の柔軟さとLITEの緻密さが融合して、今のLITEを象徴する曲になったと思います。
─「SUNSET feat.Yvette Young」は今回のEP『The Beyond』にも収録されています。EPはツアー前に完成していたんですよね。制作の出発点は?
楠本:『STRATA』ツアーの流れの中で作り始めたんですけど、ツアーまで少し間が空いたんで「何か新しいアイテムを出したいよね」と話していて。そこから自然にEPの制作が動き出した感じです。
武田:最初にできたのはタイトル曲「The Beyond」。CMでパッと作ったワンフレーズを元に発展させたんですけど、そこからが大変だったんです。やりたいことを自分の中で整理して、整理していく過程で、ルーツにあるプログレッシブ・ロックに戻って。キーチェンジしたり、リズム、テンポとか気にしないプログレっぽい瞬間があってもいい。そんないろんな要素を組み合わせていくと、なかなか一つの形にできなくて、それが一番苦労したところです。でも完成したら結果的にEPの方向性を決める曲になりました。
─「方向性」とは?
武田:『STRATA』でボーカルやラップを取り入れてLITEの表現を広げたあとだったから、今回は逆に4人だけでどこまで行けるか。もう少しフィジカルで、バンドの4人だけで成立するソリッドな作品を作りたかった。歌がないぶん、音だけで感情を伝えるという。
─『STRATA』で広げきったあとに、逆にバンドの"核"へ戻ったわけですね。
武田:LITEって常に「どこまでやれるか」を探してきたけど、結局戻ってきたのは「4人で鳴らす音の強度」なんです。余計な装飾を削ぎ落としたときに、バンドとしての力が一番出る。その説得力を信じたかった。

─楽曲「The Beyond」はすごくシンプルでキャッチーに聴こえる一方で、中身はかなり複雑ですよね。
武田:そう、イントロのフレーズは耳に残るけど、実はリズムも展開もすごく入り組んでる。そこがLITEらしいと思う。キャッチーに聴こえても、中身はめちゃくちゃ作り込んである。
楠本:武田が持ってきた段階で「結構複雑になってしまった」と言ってたけど、聴くと意外とキャッチーなんですよ。でもやってみると確かにめちゃくちゃ難しい(笑)。でもその聴きやすさは、要素を選び抜いた結果だと思う。
─無駄を省いて要点だけを提示する。その「取捨選択」こそLITEの持ち味ですよね。
武田:そうですね。"何を一番聴かせたいか"が大事。全部を主張させたら何も残らない。だから足し算よりも引き算。どの音を削るかで曲の温度が決まる。強弱をつけて、要点だけ残す。削って削って残った音が、"本当に伝えたいもの"であり、一番伝わる音なんです。そこに一番時間がかかる。
─愛着のあるフレーズを削るのは辛くないですか。
武田:めちゃくちゃ辛いですよ(笑)。でもそこを冷静に判断するのがLITEの作り方。
楠本:その感覚は20年やってやっと掴めた気がします。若いころはとにかく音を詰め込みたかったけど、今は"鳴らさないこと"の方が重要だと思ってる。音が鳴らない空間があることで、次の音が際立つ。
武田:結局、伝えたいこと、音楽でこっちが演奏してわかってほしいことって、わかりやすい部分だと思っていて。僕らの中でわかりやすいと思っていることを、いかに相手にもわかりやすいと思ってもらえるかっていう話だと思ってます。ギターフレーズ、このリフがすごい自分の中で気に入ってる、これだけを聞かせたいんだけど、それだけやるんだったら1分のライブで終わっちゃう、その1分をいかにドラマチックに、感動してもらうような、刺さるような感じで聞かせるかっていうことで残りの3分があったりするわけで、そういうことを僕ら常に意識しているんですよね。複雑なことをやってるんですけど、伝えたいことは普通の歌と変わらない、みたいな。「このリフかっこいいでしょ、聴いてよ!」そういう感じを伝えたい。そのためにはこれが必要で、もっとこうしたら色濃くなるよね、という。
─そういうコンセプトがはっきり貫かれてるからか、EPなのに、アルバムみたいなまとまりを感じます。
楠本:EPって、バンド側が「ここを見てほしい」って要点だけを明確に出せるのがいいところじゃないですか。今回はまさにそれで、「ボーカルを入れないLITEの今」をちゃんと見せたかった。『STRATA』で一度外に開いたぶん、「あ、LITEってやっぱりこういうところに重心があるんだ」ってところを出しておきたかった。だから曲順もわりと考えてます

4人で音を出した瞬間に少し違うものになる。その"ズレ"が生の面白さ(武田)
─レコーディングは各パート完全にバラバラで録ったんですか。
楠本: そうですね。バンドで同時録りもいいんですけど、それよりタイトな部分を聞かせたいっていう気持ちの方が強かったので。この20年間やってきたことなのでね。結局バラバラに録ってますね。
──LITEのクリアで分離のいい音は、一斉録音では難しいかも。
武田:音源じゃないと表現できないものがある。オンラインで制作している以上、オンラインの段階で理想のイメージが出来上がっちゃうので、(ライブでは)そこに近づけていき、さらに良くするっていう過程なんで。
─LITEはバンドであって、ライブでは当然4人が集合して演奏する。そこらへんの距離感っていうか関係性っていうのは、ご自分はどう捉えているんですか。
楠本: そこが結構面白くて、音源は音源であって、ライブはそれに近づけていくんですけど、その近づけていく過程で、実際4人で集合して完成に向かっていくとこういう風になる。ライブの演奏も音源に非常に近いんですけど、やっぱりちゃんとクリック聞いて別々で録ってっていうのと、微妙にちょっと違うものな気がしてますね。
─となると、そこでライブならではのものがそこに上乗せされるんだとしたら、それは何なんですかね。
楠本: ちょっとした、スクエアじゃないグルーヴ。要するに、この16分がちょっと前とか後ろとかに行ったりする。そこが合ってる合ってないって話だと思いますね。
武田:プロダクションの段階って、ギターを例えばピックアップ変えてみたりとか、リズムを極端に落としてみたりとか、音色をそれぞれ設定していくわけですけど、それで仕上がってるのが音源だとすると、ライブはもうちょっと一色というか、一つの筆で全体を書いていく、みたいなところがある。いろんな筆を使わないで一つの筆でこの曲もあの曲も書いちゃう、みたいな、そういうニュアンスで。その時に曲の聞こえ方が変わる、みたいなところはあるかなと思います。
楠本:音源は音源で完璧に作り込む。ライブはできるだけそれに近づけるけど、やっぱり別物。4人で音を出した瞬間に少し違うものになる。その"ズレ"が生の面白さですね。ライブは音を描くというよりも、音を放つ感じです。録音ではマイクが音を記録するけど、ライブでは空間そのものが楽器になる。お客さんが体で反応することで音が循環して、また次の音に変わる。

──LITEは技術的な側面と、その裏にあるアイデアとか発想、それがすごい大事ということですね。
武田:いつも新しい試みや視点がある。その発明をすごい信じてるんですよ。自分たちの中ではいいと思ったんだから、きっとみんなもいいと思ってくれるよねとか、認めてくれるかな、みたいな、そういう気持ちで(音源を)出してる。
─そういう制約みたいなものも一切取っ払って、自分たちのやりたいことをただやると、どういう音楽になると思いますか。
武田:それが逆説的ですごい難しいんですけど、制約がないと楽しくないですよ、多分。その制約こそが、LITEのルールで、その制約の中でギリギリこういうことをやったから面白い、みたいな。ギターが2本しかない中でこういうことをやったから面白い。ギターの代わりにシンセ入れたらいくらでも違う音が出るんだけど、ギターでこれやってるからこそ面白い、みたいなところがある。そういう制限が必要なんですよね。
─全部DTMで、コンピューターの中で作ろうと思えば作れるけど、それやっちゃったら一切制限がなくなるから面白くない。
楠本:限られたツールの中で作ることが楽しいんですよね。それがバンドって感じがするっていうか。
武田:インストっていうのもある意味で制限っていうか、歌がないっていう制限の中で、いかに歌を超えていけるかとか、歌ではない魅力を伝えられるかとか。そういうゲームじゃないかと思いますね。

音楽を作りたくて作ってるんじゃなくて、LITEでやりたい曲をただ作りたいだけ(武田)
─ふむ。ご自分が実現したい音楽があるとして、それがLITEというバンドでは表現できないと感じる時ってありますか。
武田:僕は個人的にそれはないんですよね。なぜなら、音楽を作りたくて作ってるんじゃなくて、LITEでやりたい曲をただ作りたいだけなんで。音楽そのものを作りたいわけじゃない。
─へえ、それは面白い。
武田:僕はバンドをやりたいだけなんで。
─あ、そうですか。
武田:いかにバンドで表現できて、それがいかにかっこよくなるか、みたいなことだけを考えて音楽を作ってる感じです。
─へえ。じゃあ一人で作ることには興味ない。
武田:興味ないですね。今まで作品として作ったことはまずないですね。デモとして作って、これいつかLITEで使えるかな、みたいなのはありますけど、それを誰かに作品として聴かすとか、そういう機会もないし、ソロでやっていくつもりもないですし。
─根っからのバンドマンってことですね。バンドを長いことやってる人って、だんだんバンドじゃ消化しきれないものが出てきて、結局自分一人でやったりとか、よくあるパターンですけど。
武田: よくバンドのボーカルがソロ出す、みたいな話はよくありますけど、僕はないですね。バンドでやりたいことはできてるんで、別に外でやる必要ないし。バンドでやりたい。
─それはやはり今のバンドのメンバーが自分にとって魅力のある音楽家たちであるっていう意味もある。
武田:そうですね、みんな同じ方向向いていると思うし、僕が作ってくるものをみんなが必要としてくれているっていうのもわかるし、それに賛同してくれているっていうのもわかるし、そういう関係性が成り立っているので、20年できてるのかな、と。
楠本:たぶん海外ツアーとかをやってるからだと思うんです。共有していることがすごく多いんですよ。意識の共有というか、これってこうだよねみたいなことをいちいち言わなくてもわかりあえる。日本のツアーだけだと、2日間行って帰ってきて、ぐらいの短い期間だけど、海外だと何週間も一緒にいる。ある意味、家族とまでは言わないですけど、かなり深い関係になってると思うんですよね。そういうの、お互いの信頼なしではできないですよね。そういうのもすごい関係してるんじゃないかなと思います。みんなのこと信頼してますし、尊敬してますから。




─自分のやりたいことをバンドのメンバーがちゃんと支えてくれる。そういう関係性がある。
武田:そうですね。お互いに、って感じだと思いますけど。
─今回の『The Beyond』の方向性にしても、武田さんがこういう風な感じで曲を作ってきて、その方向性でみんなのコンセンサスが取れれば、その方向に行くっていう感じになるわけですね。
武田:そうですね。今回のEPはツアーをやるために作ったっていう面もありますけど、今後のLITEの方向性みたいなものも示してると思います。
─EPを作ることで今後のLITEの方向性が見えてきた。
武田:見えてきました。今回はEPなんで、完成形ではないかなと思いますけど。
─この路線をさらに突き詰めることを考えていらっしゃるんですね。
武田:そうですね、この延長線上にはあるかなと感じてますね。一回『STRATA』で一区切りみたいなところで、今ちょうど真ん中ぐらいまで来た。もう一段階、EPかアルバムを出して、形にしたいなっていう気持ちはありますね。
─今回のこの方向性は、完成されたらLITEにとって決定的なアルバムになるような気がします。
武田:そうだといいですね。気持ち的にはそうかもしれないです。一番シンプルな形というか、純粋な形になってきている気がしますね。
─じゃあバンドの向かう方向性っていうのは、かなり明確に見えてる段階ですね。
武田:次の一歩は見えてますね。その先はちょっとまた(考える)感じです。
─将来バンドをどうしたいとか、あるんですか。
武田:バンドの個人的なゴールとしては、世界の割とどこでやってもお客さんが満杯になって、サイズ感的には600〜900くらいのところが埋まって、どこ行ってもウェルカムで迎えて入れてくれるみたいなのをずっと続けていきたいなと思っています。
取材・文:小野島大
写真提供:LITE
RELEASE INFORMATION

LITE「The Beyond」
Digital:2025年10月1日(水)
CD:2025年10月29日(水)
Tracks :
1. The Beyond
2. Daydreamer
3. Plastic News
4. Low Tide
5. SUNSET feat. Yvette Young
試聴はこちら
LIVE INFORMATION
"The Beyond" in Tokyo

2026年1月8日(木)
会場: 東京・品川Club eX
時間: 開場 18:00 / 開演 19:00
出演: LITE (センターステージ形式)
料金: 前売チケット
1階指定席 ¥5,500
1階ベンチシート ¥7,700
2階席 ¥6,600
チケット詳細: https://lite-web.com/shows/
INFO:SMASH https://smash-jpn.com/
"SAPPORO SPIRITUAL LOUNGE opening celebration LITE「The Beyond」in Sappro"
2025年12月13日(土)札幌SPIRITUAL LOUNGE
OPEN 18:30 START 19:00
w/ Tattletale / テレビ大陸音頭
ADV ¥5,000(Drink代別)
チケット一般発売中!
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/lite-sp/
LINK
オフィシャルサイト@lite_jp
@lite_jp
Bandcamp




