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2025.06.29

FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!She Her Her Hers・Rol3ert・Hammer Head Sharkほか全22作品 -2025.6.28-
New Release Digest Part 1
みさと:6月23日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全22作品の中から、まずはPart-1をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。さあ、アルバムです。綿貫雪さん。
金子:Part-1は結構混沌としたアルバムが並んでいますが、その一つが綿貫雪の『ひかりのあとに』。17曲入りという大作になっていて、セルフライナノーツによると、内省的な、沈んだ気持ちもありながら、なんとかこれを作り上げたと。実際音からしても混沌とした空気が詰まってるんですけど、その中に光を見つけようとする思いも感じられる作品になっています。
プロフィールによると2005年生まれなので、20歳くらいだと思うんですけど、七尾旅人さんがファーストアルバムの『雨に撃たえば...! Disc2』を出したのも20歳で。僕自身も20歳のときにそのアルバムを聴いたことをちょっと思い出しました。『雨に撃たえば...! disc2』も混沌とした作品で、20歳の僕は「なんじゃこりゃ!」と思ったんだけど、七尾旅人さんもいろんな変遷をたどりながら、自分の作る音楽を更新していった。そのファーストインパクトに近い感じを綿貫雪の作品からも感じて、だからこそ、この混沌の先もぜひ見てみたいと思わせてくれるような作品でした。
みさと:次の作品につながるようなアルバムタイトルだなと感じていて、『ひかりのあとに』というタイトルを一番最後につけたんじゃないかなと想像させられる。また、"もがきながら生きている日々の中で、誰かに自分の存在を知ってほしくて、1枚のアルバムを作った"とセルフライナーをいただいています。綺麗事ではない混沌感の中に、光の描写であったりだとか、シンセのキラキラ感みたいなものが見えますね。綿貫雪さんはそのキラキラをキラキラとして捉えているのか、皮肉として音を鳴らしているのか、ぜひ一人ひとりの受け取り方で味わってほしいなと思いました。そして、混沌が続きます、でいいんでしょうか?黄鶯睍睆(uguisu-naku)もアルバムリリースです。こちらもすごいことになってますよ〜。
金子:いやあ、すごかったですね。とにかくいろんなジャンルがミックスされていて、こちらもライナノーツがあって、"ロックという魔物が貧欲に飲み込み続けた様々なジャンルの音楽を、2024年〜25年の視座で組み立て直すことによって、自分たちが今どこに位置しているのかを知るためのマイルストーンとして制作したアルバム"と。もともと"音と言葉の研究と実験"をコンセプトに掲げている人たちなので、思想がめちゃめちゃ見えてくる作品になっていて。「ヒト科の研究」に関しても、かなりノイジーな音が入ってたりもするんだけど、そこから立ち上がってくる思想、哲学みたいなものを、アルバムを通して感じてほしいなと思う作品でした。
みさと:曲の順番にも彼らの哲学が込められているので、まさにアルバム1枚で完成する作品。黄鶯睍睆(uguisu-naku)が人間をどう受け止めているのか、そして人間の中にある魂をどういうふうに信じているのかというところも見えてきますね。私最近、量子力学にハマっているんですけど、ミクロとマクロの世界観であったりとか、音楽だけではない何かの扉が開けそうなアルバムになっています。そんなPart-1からどうしましょう?
金子:She Her Her Hersの新曲を紹介しようと思います。
みさと:タイトルの「Pre-logue」は造語なんですね。
金子:"Prologue"ならぬ「Pre-logue」。"Prologue"よりもさらに前、みたいなイメージがあるかなと思います。先週エスオさんがゲストで来てくれて、She Her Her Hersはイギリスでもライブをやってきたという話があり、7月にはFUJI ROCK FESTIVALも決まっているという中での新曲。
みさと:FUJI ROCKでやるのかな?
金子:やるでしょう。
みさと:この時期ならやるよね。楽しみですね。
金子:1980年代のアナログシンセをメインに使っているということで、まず音の良さが際立っているし、ミックスもすごく面白くて、FX的な、かなりパンで振られていて、サイケデリックに迫ってくる感じもすごくかっこよかったです。歌詞はとまそんくんが書いていて、「Pre-logue」というタイトル通り、"新たな始まり"という感じがすごく反映されていました。〈静かなる革命のstory〉みたいな言葉が入っていたり、ここからもう一度革命を起こしていくという彼らの野心もひっそりと感じられる一曲だったかなと思います。
みさと:〈静かなる革命のstory〉が表現する通り、秘めた熱を感じる音質だったし、その熱は先ほどの話にもあったようにアナログシンセだからこそ体現できただろうなと。まだ序章に過ぎない、これからどうとでも展開できるこの物語の深みすら味わえるような一曲になっているので、ライブでやるとしたら、もちろん1曲目でもいいんだけど、一番最後にこれで終わるのもいいですよね。まだまだ先を見据えているという演出にも使えそうだなと思って、ライブのどのタイミングで入ってくるのかなと楽しみにしたいです。
金子:最後説に一票かな。
みさと:どうかな〜。でも、こんな話して全然中盤でやったりするかも(笑)。
金子:その可能性も全然ある(笑)。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさんです。天国姑娘から今年の4月に改名したWepeg (ウィーペグ)。
金子:プロフィールを読むと、"2022年に結成された 3人組音楽グループ"という書き方をしています。去年はTENDOUJIの主催フェスでオープニングアクトに選出されたりもしているように、やっぱり海外インディ的なニュアンスが感じられて、ポストパンクとか、インディフォークとか、いろいろな側面を持っています。「Boys (don`t look back and run!)」に関しては割とポストパンクっぽいようなサウンド感なんだけど、そこにサックスが絡むのは意外とありそうでない。どの曲にもそれぞれアイデアがあって、面白かったですね。
みさと:一つひとつにこだわりがあるんだなと、前のバンド名からも感じるんですけど、急にメロディアスになったり、音の強弱であったり、音質も含めて、今までと全く違うアプローチをするバンドだなという印象があって、活動が楽しみですよね。今回はアルバムなので多面的にWepegが味わえると思いますので、ここから入るのはすごくいいと思います。ぜひ味わってください。そして、アツムワンダフルさんの一服trackシリーズ、コンスタントに出されていますが、今回はゲストを迎えていらっしゃいます。
金子:今週はアツムワンダフルさんが所属するワンダフルボーイズのリリースもあって、どっちを取り上げようかなと思ったんですけど、今回初めてボーカルをフィーチャーしているということで、一服trackの方を取り上げようかなと。
みさと:すごくよかった。
金子:フィーチャリングで参加しているアマイワナはアツムさんがサポートで参加している人で、Ginger Rootのフロントアクトを務めて、Ginger Rootのアメリカでのツアーにも帯同し、その延長で今年はコーチェラのGinger Rootのステージにゲスト出演していたり、ワールドワイドに活躍をしています。過去にはピチカート・ファイヴの野宮真貴さんとコラボしていたりもするそうで、渋谷系的な感覚・感性がすごくあって、それは「OSHARE TOKYO」というタイトルからも、この声からも感じ取れました。そんなアマイワナらしさと、一服trackとしてずっとやってきているチルなトラックの感じが組み合わさることによって、このコラボならではのものになっている感じがしました。
みさと:"take a break beat"を掲げて、ティータイム、コーヒーブレイクのムードに合う音楽をドロップするプロジェクトにはなっているんですけど、アマイワナさんが入ったことによって、コーヒーブレイクだけじゃなくて、もう少し広がりのある一曲になったなと思っていて。"所々、アツムくんをイメージした部分がある"とのことで、そういった歌詞の部分も楽しんでいただきたいし、歌詞にはSPF1000という単語が入っているんですが、これは夏、日焼け止めのイメージもあるんですけど、強いテキーラのカクテルの名前というところもあるので、ぜひ2人の化学反応を楽しんでほしいですね。そんなPart-2からどうしましょう?
みさと:Rol3ertの新曲を紹介しようと思います。
みさと:今回MONJOEくんがサウンドプロデュース。
金子:MONJOEくんはNumber_iの楽曲のプロデュースとか、幅広く活躍してますけど、さらにミックス・マスタリングが小森雅仁さん。ちょっと前にShe Her Her Hersの曲も担当されたりしましたけど、強力タッグがバックアップしている曲になっていて。資料には比較対象としてThe 1975の名前が出ていて、その感じもすごくわかるし、The 1975はそもそも1980年代の音楽が好きで、それを更新して今に鳴らしているみたいな部分もあるから、個人的にはこの曲から1980年代感も感じました。4月にリリースした「HOPE」もThe Policeっぽいみたいな話をしたと思うんですけど、やっぱり1980年代感が魅力だなと思いつつ、あとはとにかくRol3ertの歌そのものが魅力的。Rol3ertもFUJI ROCKへの出演が決まっていて、キャンプサイトの中にあるPYRAMID GARDENに出るんですけど。
みさと:ぴったり。
金子:同じ日に踊ってばかりの国の下津くんがソロで出てたり、別の日にmajikoも出てたり、歌ウマな人たちが集まっていて、その並びに入っている時点で歌に魅力があることが伝わってきます。
みさと:こうやってプロデュースが入っても、Rol3ertらしさがすごく確立されていて、完成度の高さも毎回感じているんですけど、今回の曲に関しては等身大、年齢相応の世界観が広がっている作品で、すごく好感度が高いなと思うし、深く根付いた慣習とか状況を変えられるのは大人ではなくて、こういう新しい風だよなと感じながら聴かせてもらいました。あとジャケットがすごく可愛い。ぜひジャケットも見てください。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさんです。Panさん。
金子:Panさんは映像ディレクターやYouTubeの構成作家としても活動しているということで、あまり詳細はわからないんですけど、まだ20代前半ぐらいみたい。音楽とお笑いを掛け合わせたイベントをやってたり、No Busesの近藤くんがやってるYouTubeを手伝ってたり、いろんなことをやってるみたいです。で、このプロフィールを読んだからなのか、曲を聴いてすごくコマーシャルソングっぽい感じがして。「いままでも、これからも。」というタイトルにしても、歌詞にしても、コピーライティング的な、スッと入ってくる言葉で歌われていて、「これCMソングで使われてなかったっけ?」みたいな、そんな風に思っちゃうような曲でしたね。
みさと:同感です。映像クリエイターさんらしい、どこを切り取っても曲の雰囲気が味わえるサウンドで、どこを切り取っても心に残るシンプルで印象的な言葉選び。素朴さと温もりも真似したくなるシンプルなメロだったので...どこかのCMで流れてましたよね(笑)。続いて、Aaanna Japanese Special。アルバムリリース、おめでとうございます。
金子:Aaanna Japanese Specialはまず存在自体が面白いですよね。僕はボカロのシーンを深くまではあんまりわかってないんですけど、こういう海外インディ的なサウンドと英詞でボカロってそもそもあんまり聴いたことがない。もしかしたらそういうシーンがあったりするのかもしれないけど、Jan fluで、インディバンドとしてもしっかり活動しながら、その上でこういうこともやってる人は少なくとも聞いたことがないから、その面白さがアルバム1枚で味わえるというのは、それだけでもかなり貴重なんじゃないかなと思います。
みさと:ボーカロイドって毎回ハッとして気づくんですよね。ボーカロイドって思わないぐらいのナチュラルさというか、やっぱりボカロってボーカロイドありきで音を作っているから、どのボーカロイドを使うかも一つの楽しみ方だと思うんですけど、Aaanna Japanese Specialに関しては、「あ、そうだ!ボーカロイド使ってたんだ」と思い出すような感じ。音質やサウンドのこだわりがアルバムになるとさらにより顕著に味わえるかと思いますので、通して楽しんでください。さあ、Part-3はどの曲にしましょう?
金子:Hammer Head Sharkの新曲を紹介しようと思います。
みさと:こちらもアルバムリリースでございます。
金子:Hammer Head Sharkは2018年から活動をしているバンドなわけですけど、コロナ禍を経て、ついに初めてのフルアルバムが完成したと。きのこ帝国とかの流れを受け継ぐ、オルタナ、シューゲイズ的なサウンドも印象的なんですけど、さっきのRol3ert同様、このバンドもやっぱり歌が魅力的。作詞作曲もしているながいひゆさんの存在感が抜群で、ギターの歪みとか空間系の音も気持ちいいし、アルバム全体を通して聴くとベースラインが印象的な曲も多かったりして、演奏とかアレンジもいいんだけど、でもやっぱりながいひゆさんの歌声に集約される感じはあって。アルバムの中にそのまま「うた」という短い弾き語りの曲が入ってたりもするんですけど、それ以外でもアコギを弾いてる曲が意外とあって、やっぱりこのバンドはまずながいひゆさんの弾き語りが軸にあり、そこに他のメンバーのサウンドが付け加えられていって、曲になってるんだろうなというのがわかる作品になってるかなと思います。
みさと:1回目に聴くと、歌声が生きるバンドサウンドだなという感じで、2回目に聴くと、伸びやかさとザラつきが共存できているこの声がすごくスペシャルだなと感じました。その声を持っての表現力という点で、どうやってこの言葉を伝えようかという気持ちがすごく見えてくる、そんなボーカリストでもあるなと感じました。ぜひご堪能ください。
番組の後半はゆうらん船がゲストで登場!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武の2人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10