SENSA

2025.06.25

Hammer Head Shark「27℃」──侵されない約束と私たちの国で

Hammer Head Shark「27℃」──侵されない約束と私たちの国で

あなたがくれた侵されない記憶を永遠になった君へ送る

今作は踏切であり、広大な川であり、銀河鉄道である。彼岸と此岸の狭間で、2つの世界の境界線で鳴っている音楽。2018年に結成された4ピースバンド・Hammer Head Sharkがそんな12曲を詰め込んだ待望の1st full albumは、死の気配を纏いながら、こちらの世界を去ったあの人へと花を手向けていく。

〈しんだことになりたい しんだふりして生きていきたい〉と幾度も言い放つ「しんだことになりたい」を筆頭に、窓ガラスから注ぐ光を彷彿とさせるギターやコーラスワーク、ゴスペル的な荘厳さと曇りない眼でこちらへ語りかけてくる無邪気を織り込んだ彼らの歌は、強烈な希死念慮を孕んでいるように思える。しかし、2024年9月のインタビューにてながいひゆ(Vo,Gt)が消失を美しい出来事だと捉えていること、「自らにとっての優しさが消滅になった」という旨を語ってくれた通り、Hammer Head Sharkが真に手にしたいものとは死そのものではなく、消失によってもたらされる一種の不変であり、誰にも傷つけられない永遠のものへ昇華された魂のしなやかな強さであろう。〈これじゃあまるで 消滅こそが正義だと思ったんだ〉と叫ぶ「Gummi」はそんな4人の生への視線が濃く照射されているし、それは「名前を呼んで」や「Daisy」に登場する〈出来るだけ綺麗なもの〉〈この世界で一番綺麗な景色〉というワードや「透明な骨」の〈ビー玉のなかには海があって そこへ君を連れて行きたいよ〉の一行からも伺える。

1つの正しさへ到達してしまった彼、彼女への羨望と取り残された寂寥、「私はまだそちらに行けないのだ」という諦観を含んだ小さな絶望を身体に抱えながらも、少しでも現世に美しい世界を築き上げようと格闘する姿は、音楽で向こうの世界と対話を試みているよう。と同時に、我々へ花束を捧げるみたいだ。痛々しくもしゃんと地を踏みしめているからこそ、震えるながいの歌声がダイレクトに飛び込んでくる「うた」からのクライマックスは圧巻。〈誰にも分からないでいて それはいつまで経っても僕の国〉〈僕らが欲しいものは誰も奪えない これ以上の意味は、物語のなかで〉と確かにここに存在していた記憶を大切に囲い込み、約束を、物語を続けていく覚悟が宿っている。

文:横堀つばさ



RELEASE INFORMATION

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Hammer Head Shark「27℃」
2025年6月25日(水)
Format:Digital

Track:
1.名前を呼んで
2.Blurred Summer
3.アトゥダラル僻地
4.Dummy Flower
5.レイクサイドグッドバイ
6.Daisy
7.Gummi
8.しんだことになりたい
9.綺麗な骨
10.うた
11.園
12.たからもの

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LIVE INFORMATION

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LINK
オフィシャルサイト
@h_h_s_band
@hammerheadshark_band
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