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2024.03.03
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:2月26日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全24作品の中からPart-1をご紹介しました。リリースおめでとうございます。さて、suLがEPリリースです。
金子:初めてのEPということで、ついに完成しました。
みさと:おめでとうございます。福岡生まれなんですよね。
金子:これは紹介しないとね。今日、収録をしている日がBAD HOPが東京ドームでラストライブをやる日でして。日本のヒップホップ、ラップっていうのは、またひとつカルチャーとして更新されて、今はだいぶ浸透してるわけですけど、その中でもまだこのsuLくんみたいな立ち位置、ビートメーカーであり、ラッパーであり、シンガーソングライター的な感じもあるっていう人はまだ多くはなくて、ここには可能性があるなと感じます。作風的にも曲を重ねるごとに良い意味で開かれてきていて、本人のコメントでも"僕の過去作品である「shoegaze」や「friendzone」とは違う方向性で、リード曲らしいポップに仕上げられたと思ってます"とあって、実際「ivy」はラップというかインディポップぐらいの感じになっていて。suLくんらしい陰りや孤独感みたいな部分もちゃんとありつつ、曲としては開かれていて、すごくいいバランスになってるなと感じしました。
みさと:ボーカルはすごく平熱感あるんですけど、その中に音楽オタクなんだなって感じられる情熱が見え隠れしているのが、彼のアイデンティティなんだなって思うし、だからこそ人を選ばないし、シチュエーションも選ばない楽曲作りっていうのは、なかなか横に並べる人がいないような、そんなアーティストになっていきそうですね。そして、Otomodatchiがリリースです。
金子:Otomodatchiは毎月シングルをリリースしていく予定だそうで、先月に続いてのリリースなんですけど、2月にmabanuaさんとのコラボ曲「On Everything」って曲が出てて。これはもともとmabanuaさんがInstagramにインストのトラックを上げて、それにOtomodatchiが歌とラップをのっけて、それをmabanuaさんが気に入って、本格的なコラボに繋がったという経緯のある曲で。
みさと:SNSドリームですね。
金子:いいですよね。mabanuaさんがもともとCIRRRCLEを知ってたかは......たぶん知ってはいた気がするけど、ここに来て繋がったのはすごくいい話だなと。で、そうやってまた改めて注目を集めている中での今回のリリースということで、タイミング的にもすごくいいし、かっこいい曲でしたね。
みさと:この曲は今はなき渋谷のクラブ、VISIONでのシチュエーションを元に書いたということで、私もよく行ってたんですけど、朝までクラブで踊り明かしてそのまま仕事に行ったりとか、あと"なんであの日、あんなに飲んだんだろう"とか、一夜明けるとそこに対して後悔をしたり、失敗したな、反省しなきゃなって思うその気持ちをすごく思い出させてくれたっていうか。タイトル通り、偽りのグッドタイムを経験した人には刺さるし、それでもこの音を聴くと、またクラブに行きたくなるっていう、結局やめないんだけどねっていうところも含めて大共感の楽曲になってます。ぜひ、聴いてほしいです。さあ、そんなPart-1からどうしましょう。
金子:水中スピカを紹介しようと思います。
みさと:良かったですね!かっこよかった。
金子:水中スピカは2018年に京都で結成されたバンドで、FRIENDSHIP.からのリリースは初なんですけど ボーカルの千愛さんがLITEの井澤さんの曲にフィーチャリングで参加したことがあります。改めて紹介すると、千愛さんはボーカルでありギターも弾く方で、タッピングをしながら歌うのが特徴で、ポストロック、マスロック的な感性がある。だからもちろんLITEもルーツにあるだろうし、ちょっと前に残響レコードの話をしましたけど、そういうところからの影響も感じる。でもそこから2010年代に入ると、台湾のElephant Gymとか、アメリカのCovetとか、女性がフロントに立つバンドがいろんなところから出てきて、水中スピカもそういう流れを感じさせる。90年代からのポストロック、マスロックがちゃんと更新されての今っていう感じがして、今回の曲ものっけからタッピングによるかっこいいフレージングがありつつ、さらにどんどん変化していって、1曲の中でいろんな音楽性を見せていて、やっぱりかっこいいなと思わせる曲でした。
みさと:そのルーツも含めてセルフライナーノーツを読むと、"自分自身が自分の想像を超えていくことで新たな景色が見えてくるという前向きな気持ちを、様々な音色を駆使することやリフ、メロディーで表現しています"というこの一文が納得できますね。曲を聴かせてもらって、ゆっくり階段を登っていくような、確実に前進している姿が聴こえてきたので、ご自身が得意とするタッピングしながらのスタイルもありつつ、でも前を向いているっていうのがルーツと未来が見える一曲になってるんですね。
金子:去年の11月に東京に出てきて、そういう意味でもbeyondしてるし、それこそもっと世界にも発信していけるバンドだと思うので、これからさらにbeyondしていくっていう、そんな意志も込めた曲なんじゃないかなと思います。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは、新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。アルバムリリース続いてますね。カブトムシもアルバムリリースです。おめでとうございます。
金子:アルバムが出ましたが......でもね、まだ掴めないんですよね。
みさと:本当、その一言ですよね。
金子:プロフィール文にも"一言では捉えきれない表現活動を展開している"と書いてますけど、本当にそうで、今回リード曲になってる「やまびこ」にしてもかなり破れかぶれなロックンロール、ガレージ・ロックみたいな感じで、またこれまでのどの曲とも違って......まだ掴めてない。
みさと:今って音楽性のクロスオーバーは当たり前ですけど、このバンドはミックスされてるっていうよりは全ジャンル網羅っていう、一曲一曲に初めましてが詰まってるカメレオンバンドだなーみたいな。なんでカブトムシにしたんだろう?みたいな(笑)。アルバムタイトルは『飛来者』で、飛んでるからかなー?とか、どういう繋がりなのか考察するのが楽しいバンドですね。
金子:改めてプロフィールを見ても、美術作家、ピアニスト、作曲家、打楽器奏者だから......。
みさと:ほら、おかしいもん。
金子:いわゆるバンドマンっていないっちゃいないわけですよね。そういう人たちがこの音楽性をやってる面白さがまずあって。しかもさらに曲調が幅広くて......これはもうちょっと深掘りたいですね。
みさと:もうちょっと時間をください(笑)。 そして、はじめましてになるんですね、ラックライフがリリースになります。
金子:名前はご存知の方も多いのかなというバンドですけど、もともと2008年に結成されて、これまでアニメの主題歌をたくさんやっていて、特に『文豪ストレイドックス』のシリーズをたくさんやっていたりします。去年が結成15周年で、初のベストアルバムをリリースしてるので、一つの区切りを終えて、ここから新しいスタートを切る、それをFRIENDSHIP.とお供させてもらうと、そういう形になっている感じですよね。
みさと:光栄ですねー。やはり今までの経歴から感じられるアニメの主題歌にぴったりな圧倒的主人公ソングというか。弱さも見せつつでもそれに味方したくなるような、人を巻き込みたくなるような、そんな人物像を描くのがとっても上手だなっていうのと、そこにサウンドもあいまって、かっこいい曲作りが素晴らしいですね。
金子:バンドを続けていくことの哲学が歌詞に全部込められた曲って感じしましたね。
みさと:きっとやめてしまいたくなるような、逃げ出したくなるような、そのシチュエーションも経験したからゆえ、書けることでもあるし、それでも続けていく覚悟と勇気というか、これはいろんな大切なものを持ってる人に届く1曲になってそうですね。さあ、そんな中お送りするのはどうしましょう。
金子:pollyの新曲を紹介しようと思います。
みさと:打って変わってまた音楽性は違いますが。
金子:pollyと言えばファルセットも駆使した高音のボーカルとシューゲイズな、どちらかと言うとキラキラとした美しいサウンドのイメージがあるかと思いますが、この曲はちょっと違って、ボーカルのキーだいぶ低いぞって感じだし、サウンドもかなりダークで、暴力的な感じのギターが鳴っていて、驚いたわけなんですけど。でもご本人のコメントを読むと納得で、"最近の音楽マーケティングは15秒の世界だと言われていて、そんなの音楽じゃねえと苛立っていましたが、短い中に自分たちの美学を詰め込むことが自分の中で大喜利になり、1分台の曲を作ってみようと思い制作した"と。
みさと:素晴らしいね。
金子:っていうところが最初からあったわけですね。だからこそ、これまでとは違うトライアルが詰め込まれていて、実際1分45秒で完結しているという曲になっております。
みさと:アンチテーゼが逆に湧き立つ闘志になったっていうのがすごくかっこいいし、pollyの中でこういった曲があることで、人間には二面性あるよねっていうような、そういった哲学にも繋がっていくっていう。pollyの歴史を通してもいい曲だなっていうのも感じましたし、「kodoku gokko」 のその"gokko"と名付けた意味を自分とリンクさせて掘り下げたくなる曲だなと思って聴いてました。
金子:曲調は違っても、歌詞の世界観には一貫性がありますよね。さらに言うと、さっき読んだコメントの一番最後では、"この曲が完成した後、来年は30分ぐらいの曲を書こうと思いました"と言っていて。思想的にはパンキッシュなところがあるのがやっぱりいいですよね。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは、新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさんがいらっしゃって、Naomi Eno。
金子:いわゆるLo-fi Hip Hop的なテイストの楽曲で、ひとつ前にShimon Hoshinoさんがかかって、FRIENDSHIP.的Lo-fi系のアーティストといえばやっぱりShimonさんなわけですけど、Shimonさんがピアノが軸なのに対して、Naomi Enoはギターが軸になっていて、この路線で作品を続けていったらどうなっていくんだろうっていうのは気になりますね。
みさと:Shimonさんが世界中で爆発的に受け入れられているっていう姿を見ると、Naomi Enoさんもそうなっていく可能性ありますよね。こんな曲が似合うような余裕のある休日を過ごしたいなっていう、すごくリラックスにぴったりな1曲でした。そして同じく、はじめましてになります。家畜。
金子:こちらはちょっとリラックスできないですね(笑)。
みさと:リラックスどころじゃないですね。
金子:最後のShimonさんNaomi Enoさんでリラックスできましたけど、その前にオルタナゾーンがね。
みさと:SOM4LIもだいぶダークでしたね。
金子:最近よく言ってるオルタナ・エモ系のJ-POP寄りな人たちがいる一方で、よりアンダーグラウンドなかっこいいバンドもどんどん出てきてて、SOM4LIにしても、さらに前のForbearとかもそっちに近い感じもしましたけど、この家畜はまさにって感じで。すでにFRIENDSHIP.からリリースがあるTexas3000のドラマーでもある崎山さんがボーカルを務めていて、昔から活動してたバンドみたいで、この家畜というバンド名からも連想できますけど、ジャパニーズ・ハードコアな感じのかなり強烈な音、言葉が炸裂している曲でしたね。
みさと:"泥酔に合う音楽"をコンセプトにしているということなんですけど、泥酔状態って半分意識網羅としてるから、イコール瞑想状態でもあるっていうところでいくと、波は荒立っているんだけど言葉が飛び込んでくる、クリアになってくる感覚というか、まさにあなたの脳内に語りかけています、みたいなそういう距離感、説得力のある、強さのある一曲でした。
金子:ちなみにbutohesのメンバーがレコーディングとミックスを担当しているらしく、崎山さんと同じレコーディングスタジオで働いているそうで、butohesも違うベクトルで酩酊感あるっていうか。
みさと:確かに、酩酊感ありますね。
金子:音圧はちょっと違いますけど。
みさと:没入感ありますね。どっちも。
金子:そういう意味では通じる部分もあるかもしれない。
みさと:そんなPart-3からお送りするのは?
金子:Merchantを紹介しようと思います。
みさと:Merchant、1stアルバム『Dolphin Sane』リリースです。
金子:Merchantは栗田将治さんのソロプロジェクトですけど、2月にはHedigan'sが、SuchmosのYONCEの新バンドが新作を出していて、栗田さんはそこにも参加しています。 Hedigan'sはゆうらん船の本村くんも参加してたりするので、FRIENDSHIP.とも縁があるバンドですけど、そうやって栗田くんにも注目が集まっている中で今回アルバムのリリースとなりました。ほぼ全ての楽器演奏を自分自身で多重録音で制作していて、録音は埼玉県本庄市、僕の地元のすぐ近くなんですけど、そこにある老舗のレコーディングスタジオでベーシックを録音して、それを持って帰って宅録でいろんな音を加え、それをもう一回またレコーディングスタジオに持っていってという作業をしていて。
みさと:大掛かりですね。
金子:ヴィンテージ感がありつつ、でも温故知新な、ちゃんと今のものとして再現するという、そんな作品になっていて、とても良いなと思いました。
みさと:まさに手塩にかけて可愛がって作ったっていうのが、1年ほどかけて作られたそうなので、ようやく出たというアルバムになってますし、すごくフルートが印象的な曲でしたね。
金子:歌詞はこちらもHedigan'sのメンバーでもあり、もともとずっとやってるGliderというバンドでも一緒の兄弟である栗田祐輔さんが書いていて、そういう意味ではGliderと制作チームはほぼ一緒。The Cigavettesの山本兄弟が一緒にやってて、The Cigavettes という名前は使わずにソロ名義だけど、ほぼThe Cigavettesやん!みたいなのもあるように、これもある意味Gliderの発展形というか、そういう風にも受け取れるので、長く一緒にやってきたからこそのよさもあるし、でもMerchant名義でやってるからこそのフレッシュさもあるしっていう、どっちの要素もある作品だなと思います。
みさと:地元でお友達や旧知の知り合いたちに頼んで一緒に作ったっていう、そういった栗田さんの人生の一端、この期間の人生をここに詰め込んだようなアルバムになっているのではないでしょうか。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武 1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。 @a2take / @a2take3 奥宮みさと ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。 @_M1110_ / @11misato10 Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar) 神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。 The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。 オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin