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2024.02.26
知らせは突然だった。2024年1月10日、THE 2の公式ウェブサイトに掲載された「お知らせ」には、同年2月をもってバンドが解散することが記されていた。バンドの解散や活動休止を経験したメンバーが集い、「セカンドキャリア」として始まった2、そしてTHE 2の物語。その7年間は、もしかしたら彼らにとって第一章以上に波瀾万丈で曲がりくねったものだったかもしれない。大阪でのワンマンライブを経てそのラストを飾った、2月22日「THE 2の日」・Spotify O-EASTのステージ。古舘佑太郎は紆余曲折という一言で片付けるのが惜しいほどの、濃密でドラマティックなバンドストーリーを振り返って、こう総括した。「めちゃくちゃ悩んだ。めちゃくちゃ迷子になった。めちゃくちゃみんなを振り回した。ときには傷つけたこともあった。でも、やっぱりめちゃくちゃ楽しかった。めちゃくちゃ青春でした」。そう、結局はTHE 2もまた「青春」だったのだ。アンコール最後の――つまりTHE 2最後の1曲となった「フォーピース」は、まるでその「結論」を象徴するかのように、清々しく、そして青々と輝いていた。
開演時刻となり、SEとともに古舘、加藤綾太、森夏彦、そしてサポートドラマーとして彼らを支え続けてきたホリエが登場すると、待ち侘びていた観客から拍手と歓声が上がる。昨年8月に加藤が療養のため活動休止をして以来、久しぶりの3人揃ってのTHE 2。加藤はトレードマークのロン毛をさっぱり刈り上げた坊主頭だ。ドラの音を合図に始まった1曲目「Anthem Song」から高々とジャンプを決める加藤の姿に、早くも感慨が込み上げてくる。しかしそんな感慨を置き去りにするように、ライブはガンガン前のめりで進んでいった。「PSYCHOLOGIST」を経て披露された「土砂降りの雨が降った街」では古舘のヴォーカルと加藤のコーラスが美しいハーモニーを描き出し、「ああ、これがTHE 2だよな」と思わず頷いてしまった。「どうも、THE 2です。今日はよろしく!」。そんな古舘の挨拶もそこそこに、ホリエのドラムから「急行電車」に突入。森のベースラインが力強く楽曲をドライヴさせる。気持ちのいいリフを弾いていた加藤が最後にギターを高く掲げると、フロアからまたしても大歓声が巻き起こった。
ラストライブ、ということで会場に集まったファンの中にはきっと感傷的な気分もあったはずだが、当のバンドは少しも後ろを振り返ったりしない。思えば2が始まったときも、そしてメンバーチェンジを経てTHE 2として再出発を果たしたときも、このバンドは、そして古舘はそうだった。いつだって前のめりに、少し先にある未来に思いっきり手を伸ばすように、ライブを重ね、楽曲を生み出してきた。その姿勢は今日も変わらない。肩を揺らしながらギターをかき鳴らして歌う「DEAD HEAT」での彼の姿は、これまで積み重ねてきたこんがらがった日々のありのままだった。イントロからフロアが沸いた名曲「ケプラー」では手拍子がバンドを後押し。バンドにとって過去最大のステージがそう感じさせるのか、歌詞の内容にふさわしいスケール感で鳴り渡る「ケプラー」が、なんだかとても新鮮だった。
「Family」まで7曲、すべてファーストアルバム『VIRGIN』からの楽曲で構成された序盤を駆け抜けると、ようやくこの日最初のMC。古舘は笑顔を浮かべて改めて挨拶すると、「これだけは先に言っておいていいですか? Pちゃん(加藤)、おかえり!」とこの場に集まった全員の気持ちを代弁する。照れくさそうに笑い、両手を広げて拍手に応える加藤。きっと彼は、この2公演のために必死に戻ってきたはず。こうしてフルメンバーでステージに立てたことがすでに奇跡のようなもので、その状況自体がこの「最後」に懸けるバンドの思いを物語っている。「本当に、一瞬で過ぎちゃうから。1個1個、がっつり気持ち込めてやりたいと思ってるんで、みんなも後悔ないように最後まで楽しんでいってくれ」と古舘が告げ、「SONG FOR YOU」からライブを再開。「SAME AGE」、「GO 2 THE NEW WORLD」、そして「UFO CATCHER」。ここで披露されたのはセカンドアルバム『GO 2 THE NEW WORLD』の楽曲たちだ。古舘の言葉どおりまさに「一瞬」のようなスピード感。まるで走馬灯のようにバンドのこれまでの歩みが示されていく。「GO 2 THE NEW WORLD」での「ラララ」のシンガロング、ひときわポップに響いた「UFO CATCHER」のサウンド。これまで積み重ねてきたすべてに改めて意味を与えていくように、楽曲が畳みかけられる。
そして「バンドを組もうってなったときにPちゃんが送ってきた曲」として披露されたのは「LONLINESS BOY」。2本のギターによるハーモニーがシンプルなバンドサウンドに展開していくこの曲には、変わり続けてきたTHE 2の変わらない部分を改めて見るような思いがした。加藤のギターと古舘の歌だけで1コーラスを歌い切る「FALL FALL FALL」もそう。かつてインタビューした際に古舘が自身と加藤をポール・マッカートニーとジョン・レノンにたとえたことがあったが、この2人の単なる友情を超えた関係性がバンドをここまで走らせてきたのだなと思うと、このライブで加藤が戻ってきたことも、そしてそうやってバンドが終わっていくことも、すべてが必然のように感じられる。「東狂」を終えて「Pちゃんのコーラス、いいわ」「本当楽しいわ、今日」と漏らした古舘の言葉は本音だったろう。
ここでラストライブの生配信(この日のライブはYouTubeで無料配信されていた)や映像作品化に向けたクラウドファンディングが目標額を達成したことを告げファンに感謝を伝えると、ライブはいよいよ最後に向かっていく。2ビートの性急なリズムが高揚感を煽る「ホメオパシー」、フロアもステージ上もひときわ高いテンションで繰り広げた「ニヒリズム」と、ここに来てさらに一段ギアを上げたパフォーマンスでO-EASTにさらなる熱狂を生み出すと、古舘がハンドマイクで歌う「ナイトウォーク」へ......と、ここで予期せぬトラブルが起きる。加藤のギターが突然鳴らなくなってしまったのだ。すると古舘がとっさにギターを手に取り、加藤のパートを弾き始める。加藤は鳴らないギターをお客さんに預け、踊ったりポーズを決めたりしている。最後には「サンキュー!」と叫んでノリノリだ。加藤不在の間、スリーピースでライブをすることもあった経験値が生きたわけだが、こんなふうになんだかんだ乗り越えて前に進んでしまう感じがとてもTHE 2らしい。だが、この日は正真正銘のラストライブ。不完全な形で終わらせるわけにはいかないと、加藤の機材が復旧するのを待って再度「ナイトウォーク」を演奏。今度は完全体のフォーピースでかましてみせた。「ヤケのダンス」では森のファンキーなベースソロが歓声を集め、「やり直す準備はできてるか!」と突入した「SとF」では古舘と加藤が額を合わせてギターを弾く。苦楽を共にしてきた3人の阿吽の呼吸と絶妙なバランスで成立しているアンサンブルが、会場のヴォルテージをますます高めていった。
「DAY BY DAY」を経て、「みんな、何かひとり忘れてない? 俺、Pちゃん、もっくん、THE 2ってそれだけだっけ?」と古舘がこの日の「スペシャルゲスト」を呼び込む。登場したのはTHE 2とともに全国を渡り歩いてきた「メガフルタチ」だ。歴戦のライブで髪の毛はヨレヨレになり、全体に疲れた表情にも見える「彼」とともに鳴らされるのはもちろん「恋のジャーナル」。いつもより広いステージでのびのびと踊るメガフルタチが水を得た魚のよう。これまでの努力が報われたようで目頭が熱くなる。
そんな「恋のジャーナル」を終えると、本編は残り1曲。その前に、古舘がバンドのこれまでを振り返り始める。The SALOVERSがストップした後、「一生バンドなんてやらない」と言っていた古舘が、いつの間にか再びバンドを始めたこと。最初は「自分たちの中で完結するバンドをやろう」と思っていたのに、いろいろな出会いがあって、気づいたらガチになっていたこと。「あの『バンドやらねえ』って言っていた男がこうしてO-EASTでパンパンのお客さんの前でやれてる。すげえ特別なことだなって実感しました」。もちろん、バンドを続けることは簡単ではなかった。でも「しんどいことも、悔しいことも、なりたかった自分に追いつけないことも、それを超えるほどの楽しいことがあったし、全部足して、めちゃくちゃ青春でした」。2、そしてTHE 2の物語は、古舘にとって、変わろうと思っても変われない歴史だったし、でもそのぶん、どうしようもなくバンドしかできないという自分を発見する日々だったように思う。そしてこの曲は、そんな日々を肯定するような1曲だったのではないか。本編最後、THE 2が鳴らしたのは「THE 2のすべてが詰まった曲だと思う」という「スプートニク」だった。悩んで、考えて、考えすぎてぐっちゃぐちゃになった自分すらも未来にぶん投げるようなこの曲をもって、THE 2のラストライブはいったんの終幕を迎えたのだった。
しかしもちろん、それだけで終わるはずがない。アンコールの手拍子に呼び戻されたバンドは、THE 2最後の新曲となった「蛙鳴蝉噪」を披露する。〈ねぇどうしても愛せなかったこの世界でも/あなたが今日もまた伝えようともがいてる/繋がろうと願ってる〉と歌うこの曲は、世界から逃げようという歌でも、世界に中指を突き立てる歌でもない。そんな世界でももがき続けている誰かを肯定する歌だ。そしてその「誰か」は古舘自身でもあると思う。さらに「ルシファー」ではすっかり恒例となった「ルシファー漫談」もきっちり挟みつつ「最後だからさ、頭から一緒に歌ってくれます?」と大合唱を巻き起こす。それで大団円......かと思いきや、再びインターバルを挟んで2度目のアンコール。ここでは森と加藤からも観客に言葉が伝えられた。森は10代から知っている仲間と一緒にバンドをやれたことを「本当に誇りに思う」と胸を張り、「THE 2、終わりますけど、これからもずっと聴いてください」とメッセージ。加藤は「佑太郎くんから『バンド組もうよ』って言われたのも渋谷だった」と7年前を回顧。10代から切磋琢磨してきたライバルとバンドを組むことに最初は消極的だったそうだが、「でもあのときOKしてよかった」と感慨深げに語る。「自分が書いた曲がこんなたくさんの人に愛していただけることを幸せに思います。悔しい気持ちもめちゃくちゃありますけど、でも、いい決断だなって思ってます」という言葉には、会場中から大きな拍手が送られた。
そして「How many people did you say "GoodBye"」の歌を再びみんなで分かち合うと、3度目のアンコールで本当に本当のフィナーレへ。THE 2、最後の曲として選ばれたのは冒頭に記したとおり、「フォーピース」だった。酸いも甘いも含めてすべてを肯定するバンド讃歌。まとめるなら、きっとこの曲に込めたような思いのまま、彼らは7年という月日を駆け抜けてきたんだろう。周りまわってそんなシンプルな答えに辿り着き、THE 2のキャリアは幕を下ろした。古舘がこれからどんな道を歩むのかは知らないが、なんだかんだ、いずれまたバンドをやる気がする。そうなればきっとどこかでまた彼の歌に会えるだろう。今はその日を楽しみに待っていたいと思う。
文:小川智宏
撮影:(C)サマーエンドブルーリオ
THE 2「THE 2」
2024年2月22日(木)
Format:Digital
Label:NF Records / FRIENDSHIP.
Track:
1.蛙鳴蝉噪
2.恋のジャーナル
3.夏がしつこくインターフォンを鳴らしているが、僕はいないふりをしている
4.ミスサンシャイン
5.スプートニク
試聴はこちら
CD
¥2,000(税込)品番:THE-2
2024年2月2日(金)大阪umeda TRAD、2月22日(木)渋谷Spotify O-EAST
ワンマンライブ会場で限定販売
※通信販売未定
※生配信アーカイブは3月3日(日)までとなります
解散する THE 2 のラストライブを無料生配信
バンド史唯一のライブ映像作品化プロジェクト
https://ubgoe.com/projects/682
募集期間:2024年2月1日(木)18:00~2024年3月3日(日)23:59
@the2_band
@the2_band
@the2bandofficial
開演時刻となり、SEとともに古舘、加藤綾太、森夏彦、そしてサポートドラマーとして彼らを支え続けてきたホリエが登場すると、待ち侘びていた観客から拍手と歓声が上がる。昨年8月に加藤が療養のため活動休止をして以来、久しぶりの3人揃ってのTHE 2。加藤はトレードマークのロン毛をさっぱり刈り上げた坊主頭だ。ドラの音を合図に始まった1曲目「Anthem Song」から高々とジャンプを決める加藤の姿に、早くも感慨が込み上げてくる。しかしそんな感慨を置き去りにするように、ライブはガンガン前のめりで進んでいった。「PSYCHOLOGIST」を経て披露された「土砂降りの雨が降った街」では古舘のヴォーカルと加藤のコーラスが美しいハーモニーを描き出し、「ああ、これがTHE 2だよな」と思わず頷いてしまった。「どうも、THE 2です。今日はよろしく!」。そんな古舘の挨拶もそこそこに、ホリエのドラムから「急行電車」に突入。森のベースラインが力強く楽曲をドライヴさせる。気持ちのいいリフを弾いていた加藤が最後にギターを高く掲げると、フロアからまたしても大歓声が巻き起こった。
ラストライブ、ということで会場に集まったファンの中にはきっと感傷的な気分もあったはずだが、当のバンドは少しも後ろを振り返ったりしない。思えば2が始まったときも、そしてメンバーチェンジを経てTHE 2として再出発を果たしたときも、このバンドは、そして古舘はそうだった。いつだって前のめりに、少し先にある未来に思いっきり手を伸ばすように、ライブを重ね、楽曲を生み出してきた。その姿勢は今日も変わらない。肩を揺らしながらギターをかき鳴らして歌う「DEAD HEAT」での彼の姿は、これまで積み重ねてきたこんがらがった日々のありのままだった。イントロからフロアが沸いた名曲「ケプラー」では手拍子がバンドを後押し。バンドにとって過去最大のステージがそう感じさせるのか、歌詞の内容にふさわしいスケール感で鳴り渡る「ケプラー」が、なんだかとても新鮮だった。
「Family」まで7曲、すべてファーストアルバム『VIRGIN』からの楽曲で構成された序盤を駆け抜けると、ようやくこの日最初のMC。古舘は笑顔を浮かべて改めて挨拶すると、「これだけは先に言っておいていいですか? Pちゃん(加藤)、おかえり!」とこの場に集まった全員の気持ちを代弁する。照れくさそうに笑い、両手を広げて拍手に応える加藤。きっと彼は、この2公演のために必死に戻ってきたはず。こうしてフルメンバーでステージに立てたことがすでに奇跡のようなもので、その状況自体がこの「最後」に懸けるバンドの思いを物語っている。「本当に、一瞬で過ぎちゃうから。1個1個、がっつり気持ち込めてやりたいと思ってるんで、みんなも後悔ないように最後まで楽しんでいってくれ」と古舘が告げ、「SONG FOR YOU」からライブを再開。「SAME AGE」、「GO 2 THE NEW WORLD」、そして「UFO CATCHER」。ここで披露されたのはセカンドアルバム『GO 2 THE NEW WORLD』の楽曲たちだ。古舘の言葉どおりまさに「一瞬」のようなスピード感。まるで走馬灯のようにバンドのこれまでの歩みが示されていく。「GO 2 THE NEW WORLD」での「ラララ」のシンガロング、ひときわポップに響いた「UFO CATCHER」のサウンド。これまで積み重ねてきたすべてに改めて意味を与えていくように、楽曲が畳みかけられる。
そして「バンドを組もうってなったときにPちゃんが送ってきた曲」として披露されたのは「LONLINESS BOY」。2本のギターによるハーモニーがシンプルなバンドサウンドに展開していくこの曲には、変わり続けてきたTHE 2の変わらない部分を改めて見るような思いがした。加藤のギターと古舘の歌だけで1コーラスを歌い切る「FALL FALL FALL」もそう。かつてインタビューした際に古舘が自身と加藤をポール・マッカートニーとジョン・レノンにたとえたことがあったが、この2人の単なる友情を超えた関係性がバンドをここまで走らせてきたのだなと思うと、このライブで加藤が戻ってきたことも、そしてそうやってバンドが終わっていくことも、すべてが必然のように感じられる。「東狂」を終えて「Pちゃんのコーラス、いいわ」「本当楽しいわ、今日」と漏らした古舘の言葉は本音だったろう。
ここでラストライブの生配信(この日のライブはYouTubeで無料配信されていた)や映像作品化に向けたクラウドファンディングが目標額を達成したことを告げファンに感謝を伝えると、ライブはいよいよ最後に向かっていく。2ビートの性急なリズムが高揚感を煽る「ホメオパシー」、フロアもステージ上もひときわ高いテンションで繰り広げた「ニヒリズム」と、ここに来てさらに一段ギアを上げたパフォーマンスでO-EASTにさらなる熱狂を生み出すと、古舘がハンドマイクで歌う「ナイトウォーク」へ......と、ここで予期せぬトラブルが起きる。加藤のギターが突然鳴らなくなってしまったのだ。すると古舘がとっさにギターを手に取り、加藤のパートを弾き始める。加藤は鳴らないギターをお客さんに預け、踊ったりポーズを決めたりしている。最後には「サンキュー!」と叫んでノリノリだ。加藤不在の間、スリーピースでライブをすることもあった経験値が生きたわけだが、こんなふうになんだかんだ乗り越えて前に進んでしまう感じがとてもTHE 2らしい。だが、この日は正真正銘のラストライブ。不完全な形で終わらせるわけにはいかないと、加藤の機材が復旧するのを待って再度「ナイトウォーク」を演奏。今度は完全体のフォーピースでかましてみせた。「ヤケのダンス」では森のファンキーなベースソロが歓声を集め、「やり直す準備はできてるか!」と突入した「SとF」では古舘と加藤が額を合わせてギターを弾く。苦楽を共にしてきた3人の阿吽の呼吸と絶妙なバランスで成立しているアンサンブルが、会場のヴォルテージをますます高めていった。
「DAY BY DAY」を経て、「みんな、何かひとり忘れてない? 俺、Pちゃん、もっくん、THE 2ってそれだけだっけ?」と古舘がこの日の「スペシャルゲスト」を呼び込む。登場したのはTHE 2とともに全国を渡り歩いてきた「メガフルタチ」だ。歴戦のライブで髪の毛はヨレヨレになり、全体に疲れた表情にも見える「彼」とともに鳴らされるのはもちろん「恋のジャーナル」。いつもより広いステージでのびのびと踊るメガフルタチが水を得た魚のよう。これまでの努力が報われたようで目頭が熱くなる。
そんな「恋のジャーナル」を終えると、本編は残り1曲。その前に、古舘がバンドのこれまでを振り返り始める。The SALOVERSがストップした後、「一生バンドなんてやらない」と言っていた古舘が、いつの間にか再びバンドを始めたこと。最初は「自分たちの中で完結するバンドをやろう」と思っていたのに、いろいろな出会いがあって、気づいたらガチになっていたこと。「あの『バンドやらねえ』って言っていた男がこうしてO-EASTでパンパンのお客さんの前でやれてる。すげえ特別なことだなって実感しました」。もちろん、バンドを続けることは簡単ではなかった。でも「しんどいことも、悔しいことも、なりたかった自分に追いつけないことも、それを超えるほどの楽しいことがあったし、全部足して、めちゃくちゃ青春でした」。2、そしてTHE 2の物語は、古舘にとって、変わろうと思っても変われない歴史だったし、でもそのぶん、どうしようもなくバンドしかできないという自分を発見する日々だったように思う。そしてこの曲は、そんな日々を肯定するような1曲だったのではないか。本編最後、THE 2が鳴らしたのは「THE 2のすべてが詰まった曲だと思う」という「スプートニク」だった。悩んで、考えて、考えすぎてぐっちゃぐちゃになった自分すらも未来にぶん投げるようなこの曲をもって、THE 2のラストライブはいったんの終幕を迎えたのだった。
しかしもちろん、それだけで終わるはずがない。アンコールの手拍子に呼び戻されたバンドは、THE 2最後の新曲となった「蛙鳴蝉噪」を披露する。〈ねぇどうしても愛せなかったこの世界でも/あなたが今日もまた伝えようともがいてる/繋がろうと願ってる〉と歌うこの曲は、世界から逃げようという歌でも、世界に中指を突き立てる歌でもない。そんな世界でももがき続けている誰かを肯定する歌だ。そしてその「誰か」は古舘自身でもあると思う。さらに「ルシファー」ではすっかり恒例となった「ルシファー漫談」もきっちり挟みつつ「最後だからさ、頭から一緒に歌ってくれます?」と大合唱を巻き起こす。それで大団円......かと思いきや、再びインターバルを挟んで2度目のアンコール。ここでは森と加藤からも観客に言葉が伝えられた。森は10代から知っている仲間と一緒にバンドをやれたことを「本当に誇りに思う」と胸を張り、「THE 2、終わりますけど、これからもずっと聴いてください」とメッセージ。加藤は「佑太郎くんから『バンド組もうよ』って言われたのも渋谷だった」と7年前を回顧。10代から切磋琢磨してきたライバルとバンドを組むことに最初は消極的だったそうだが、「でもあのときOKしてよかった」と感慨深げに語る。「自分が書いた曲がこんなたくさんの人に愛していただけることを幸せに思います。悔しい気持ちもめちゃくちゃありますけど、でも、いい決断だなって思ってます」という言葉には、会場中から大きな拍手が送られた。
そして「How many people did you say "GoodBye"」の歌を再びみんなで分かち合うと、3度目のアンコールで本当に本当のフィナーレへ。THE 2、最後の曲として選ばれたのは冒頭に記したとおり、「フォーピース」だった。酸いも甘いも含めてすべてを肯定するバンド讃歌。まとめるなら、きっとこの曲に込めたような思いのまま、彼らは7年という月日を駆け抜けてきたんだろう。周りまわってそんなシンプルな答えに辿り着き、THE 2のキャリアは幕を下ろした。古舘がこれからどんな道を歩むのかは知らないが、なんだかんだ、いずれまたバンドをやる気がする。そうなればきっとどこかでまた彼の歌に会えるだろう。今はその日を楽しみに待っていたいと思う。
文:小川智宏
撮影:(C)サマーエンドブルーリオ
RELEASE INFORMATION
THE 2「THE 2」
2024年2月22日(木)
Format:Digital
Label:NF Records / FRIENDSHIP.
Track:
1.蛙鳴蝉噪
2.恋のジャーナル
3.夏がしつこくインターフォンを鳴らしているが、僕はいないふりをしている
4.ミスサンシャイン
5.スプートニク
試聴はこちら
CD
¥2,000(税込)品番:THE-2
2024年2月2日(金)大阪umeda TRAD、2月22日(木)渋谷Spotify O-EAST
ワンマンライブ会場で限定販売
※通信販売未定
LIVE INFORMATION
THE 2 ワンマンライブ 2024「THE 2」
※生配信アーカイブは3月3日(日)までとなります
クラウドファンディング情報
解散する THE 2 のラストライブを無料生配信
バンド史唯一のライブ映像作品化プロジェクト
https://ubgoe.com/projects/682
募集期間:2024年2月1日(木)18:00~2024年3月3日(日)23:59
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オフィシャルサイト@the2_band
@the2_band
@the2bandofficial