SENSA

2022.11.13

カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。
キュレーターの金子厚武とサトーカンナによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!

New Release Digest Part 1


カンナ:11月7日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全19作品の中から、まずはPart 1の7作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!以前もご紹介したポニーテールスクライムのミニアルバムがついにリリースとなりました。おめでとうございます!

金子:復活作ですね。

カンナ:今回の曲もすごく良かったですね。

金子:やっぱり言葉が強いですね。



ポニーテールスクライムのインタビュー記事が公開されておりますので、あわせてぜひチェックしてみてください!



カンナ:そうですよね!絶対残っちゃうという。そして今回は初登場が2組いまして、最後にかかりましたDan Mitchelさん。

金子:この方はなかなか個性が強烈で、自らを"ドラマティックアーティスト"と自称しているところからしてもそれが伝わると思います。キャリアもいろいろで、高校生のときにロンドンに留学していたり、音楽だけじゃなくて舞台とかにも出ていたり、現在は日本を一周しながらストリートライブツアーをやっているという。すごいですよね。作品自体も強い世界観を持っていて、楽曲的には80年代っぽいシンセポップ的なサウンドなんですけど、この歌い方も含めて、ロマンティシズムが、ナルシシズムが溢れ出てくるような感じ。これはすごく魅力的ですよね。

カンナ:クリスマスに向けてこういうサウンドを聴きたくなる感じがしますね。こういうロマンチックな、そしてナルシスティックなキャラって、最近日本でもYouTuberの方とかで増えている気がして、そういう傾向がもしかしたらあるのかなと思って、Dan Mitchelさんも注目していきたいですね。

金子:音楽だけじゃなくて、いろんなところで活躍する可能性がありそうな方ですもんね。



カンナ:そしてこちらもはじめましての、Mikan Hayashiさん!

金子:この方は台湾出身のシンガーソングライターですが、日本語で歌う"ゲシュタルト乙女"というバンドのギターボーカルでもあると。このプロフィールだけ見ても非常に興味深いですね。

カンナ:そして「夏のせい」というタイトルも気になるといいますか。やっぱりあれに影響を受けているのかなとか思ったり...。

金子:ちょっと前にも他のバンドの曲でこんな話をしたような気がするけど、"夏のせい"というと、どうしてもスチャダラパーの「サマージャム'95」の歌詞がよぎりますよね(笑)。意識してるのかな?

カンナ:どうなんでしょうね(笑)。夏の曲ですけど、ちょっと浮遊感があって、全体的にフワッとした感じが記憶の中の夏という感じで、目の前の夏というよりも、思い出している感じがしてすごく好きでした。

金子:今回はMikan Hayashiさんだけじゃなくて、台湾のインディーシーンで活動している"我是機車少女I'mdifficult"のフロントマンのErnest Lingさんとのコラボレーションということで、そこも聴きどころですね。



カンナ:ぜひ聴いてみてください!それではPart 1からは何を流しましょうか?

金子YAJICO GIRLをかけようかなと思います。YAJICO GIRLもこの番組ではずっと追いかけているバンドのひとつで、今回が10ヶ月ぶりのEP。その名も『幽霊』というタイトルの作品です。既に先行で出ている3曲プラス、タイトルトラックの「幽霊」の4曲入りなんですけど、どの曲も良かったですね。

カンナ:よかったですね。

金子:バンドではあるんだけど、サウンドはすごく自由度が高くて、ちょっと前までは「海外のインディーのここをリファレンスにしているのかな?」みたいな、そういうのが直接的に伝わってきたりもしたんですけど、もはや"どこから持ってきた"みたいな感じじゃなくて、完全に"YAJICO GIRLらしさ"みたいなものを手に入れた気がします。今回はよりダンサブルな作風になっているところがひとつの特徴で、特に「幽霊」という曲はこれまでにないくらいアグレッシブなダンスナンバーになっていて、新境地だなと。

カンナ:なるほど。

金子:あとサウンドのかっこよさは前提として、ボーカルの四方くんの歌の個性がどんどん強まっているイメージがあります。こういう風にサウンドがどんどんアグレッシブに、躍動感のあるものになってくると、そこにどう日本語の歌を乗せるかって難しくなってくる部分もあると思うんですけど、彼は言葉使いもキャッチ―だし、なおかつフロウがすごくかっこよくて、そこに記名性が出てきたというか。サウンドは何であっても、この四方くんの歌でありフロウが乗っていればYAJICO GIRLだと思える。そういう風になってきた印象でしたね。

カンナ:たしかに歌詞もよかったです。「幽霊」という曲も「曖昧なまま踊ってる この世でまだ彷徨いたいよ」という歌詞の部分がメロディーとともに入ってくると、結構頭の中でリピートしちゃうというか、すごく頭に残りやすかったです。そこもぜひ注目してみてください。



YAJICO GIRLも出演したMASH A&R『Treasure Tour』のライブレポートが公開されておりますので、ぜひチェックしてみてください!




New Release Digest Part 2


カンナ:新譜ダイジェストPart 2でした。リリースおめでとうございます!こちらもはじめましてですが、Super VHS!めちゃくちゃかっこよかったです。

金子:かっこよかったですね。入岡佑樹さんによるニューウェーブ・ポップユニット。80年代NW/テクノポップからニューエイジ、ブラジル音楽までを取り込んだ独自の軽音楽を追求、とプロフィールに書かれておりまして、たしかにそんな感じがしますね。今回2年ぶりの新曲で、特にハードのシンセにこだわって作られているそうで、いろんなアナログシンセの機種の名前が資料に並んでいました。それによる音の深みがありつつ、曲調的には歌謡曲っぽさもあったりして、すごくポップで聴きやすさもあって、良いですよね。

カンナ:よかったです...。私は吉田美奈子さんとか、いしだあゆみさんとティン・パン・アレイが一緒にやっているユニットとかも大好きなんですけど、その辺の質感を感じて、「これは大好きなやつだ...!」と思いました(笑)。

金子:アナログシンセのリアルタイムの時代ですね。

カンナ:そうなんですよ。2曲で1年というのは、結構時間かけているなと思ったんですけど、これだけこだわっていたら納得だなという感じですね。



カンナ:続いてEPがリリースになりました、yangdoe!こちらも"ニューウェーブ歌謡"なんですね。

金子:やっぱりニューウェーブや80年代とかは、わざわざリバイバルとかそういうことを言わなくとも、ずっとあるものだなっていう感じがしますよね。

カンナ:定着していますね。

金子:yangdoeもまさにそんな感じがありつつ、今回の曲はガレージロック的なノリもあって、すごくキャッチーですね。そしてめちゃめちゃのれる。この感じがyangdoeならではなのかなと。元メンバーのバンドですけど、カンナさん的にはいかがでしょうか?

カンナ:前のバンドと比べるような曲じゃないなという感じがして、すごく進化しているというか。全然違うものになってきているなという部分もありつつ、でも曲が進んでいくとどんどん展開が少しずつマニアックになっていく部分が彼ららしいのかなと思いました。

金子:なるほど。タイトルは『We are urban』で、でも都会的でおしゃれというよりはすごくポップでキャッチーという、そのあたりのバランスも面白いですよね。

カンナ:タイトル名もあえてひねた意味で使っているのかなとか思ったりしました(笑)。



カンナ:それではPart 2からは何をお送りしましょうか?

金子:Part 2はPOOLをかけようかなと思います。10月に「Multi Station」という曲を出していて、その曲も含む4曲入りのEPとなります。僕前までちゃんと把握してなかったんですけど、POOLはもともと3人だったのが2人になって、再始動しての一発目の曲が「Multi Station」だったみたいで。なので、今回が新体制としての初めてのEPで、だから言葉にも再出発というか、改めての気持ちみたいなものが全体的に詰まっている感じがしました。

カンナ:なるほど。

金子:今回聴いてもらう「Deep Dive」という曲ですが、ユニット名が"POOL"で曲タイトルが「Deep Dive」というのは、意味を感じる曲だなと。サウンドはシンプルにかっこよくて、めちゃめちゃダンサブルでキャッチーだし、曲の中盤からガラッと曲調とリズムが変わって、そのアレンジもすごくいいなと思いました。歌詞については"大人の初恋"をテーマにしているそうなんですけど、コメントを読むともともとメタルコアバンドをやっていて、そこからときを経て、いまPOOLをやっているらしく、「自分にとっては前に活動していたメタルコアバンドが初恋で、大人の初恋がPOOL」とコメントしていて、「そうなんだ!」と思って。

カンナ:そうなんですね。

金子:もともとスクリームみたいなことをしていたところから、だんだんと自分自身を理解していく中で、やっと自由に歌えているなと感じているのがPOOLということらしくて。

カンナ:初恋って何回もできるんですね。素敵です。たしかに無機質な感じのサウンドですけど、歌詞とか歌の感じが意外と人間くさい感じがして、そこの組み合わせがすごく良かったですね。

金子:そうですよね。EPタイトルが『Non Faketion』で、"Fiction"の"Fic"を"Fake"にしているんだと思うけど、"Non Fiction"でもありのままというか、事実というか、そういう感じだけど、『Non Faketion』にすることで、より嘘ではない、本当の自分たちを表しているというか、より強くそういう意味になるような感じもして、このタイトルもいいなと思いました。



カンナ:EPがリリースになりましたので、ぜひ4曲通して聴いてみてください。

金子:やっぱりメタルコアバンドをやっていたとは思えないボーカルだな...。

カンナ:そうですね(笑)。ちょっと衝撃的でした。


New Release Digest Part 3


カンナ:新譜ダイジェストPart 3でした。リリースおめでとうございます!最後にかかりましたAmaneSuzukiさんははじめましてですね。

金子:かっこよかったですね。神奈川を拠点に活動している DJ であり、トラックメーカーで作編曲家でもあり、グラフィックデザイナーとしても活動しているということで、トラックを聴くとなんとなくわかる気がしますよね。

カンナ:わかります!

金子:ある意味すごく映像的に、デザイン的に音を組み立てているんだろうなという感じがする。でもただ緻密なだけじゃなくて大胆さもあるし、そのバランスもいいですよね。ミックス・マスタリングまで本人がやっているそうで、それだけ"自分"というものがちゃんと入っているということでもあるだろうし、かっこよかったなあ。

カンナ:アートワークも本人が実際に撮影した脳のMRI画像ということで、ちょっと衝撃でした。

金子:「さまざまな記憶の断片が脳内をめまぐるしく駆け回る、そんな様子を音楽で再現することを試みた」とコメントもあるし、まさに脳内がグワっとなる感じがしますよね。



カンナ:まさにそんな感じですね。続いて寺口宣明さん、ソロとしてははじめましてですね。

金子:さっきPOOLが3人から2人になったという話をしましたけど、Ivy to Fraudulent Gameも10月にギタリストが脱退するということが発表されました。Ivyは昨年それまで自主でやっていたところから、murffin discsと組んで自分たちのブランドを立ち上げて、今年アルバムを出して、ツアーをやってといい感じに動いていたんですけど、やっぱり環境が変わっていろんなことが転がり出すと、同時にメンバーの中のいろんな関係性にも少しずつ変化があると思うんですよね。もちろん僕らにははっきりとはわからない、いろんな理由があっての脱退ということだと思うんですけど、そんなタイミングで寺口さんの弾き語りの曲が出て、新たな道へ旅立っていく仲間に贈る曲のようにも聴こえました。実際は直接関係があるかどうかわからないんですけどね(笑)。

カンナ:でも聴き方は自由ですからね。

金子:僕はそんな風に聴いちゃいました。

カンナ:ロックバンドのフロントマンが歌うアコースティックというだけでちょっとグッとくるものありますよね。すごく良かったです。



カンナ:それではPart 3からは何を流しましょうか?

金子MisiiNをかけようかと思います。

カンナ:フルアルバムがリリースとなりました。おめでとうございます!

金子:MisiiNは公私ともにパートナーである2人組なんですけど、アルバムのタイトルは『be the you』という、"自分であれ"という意味合いのタイトルで。彼女たちはずっとこの言葉を活動のモットーにしていて、どの曲のメッセージの背景にも"自分であれ"という、自己愛・セルフラブみたいなところがテーマになっています。これってすごく今の世の中で必要とされている部分というか。ラブソングというのは世の中に溢れていて、誰かに"愛してる"を伝えるラブソングはたくさんあるけど、でも今必要なのはもう少しちゃんと自分を愛してあげることなんじゃないかっていう。

カンナ:なるほど。

金子:トラックもかっこいいし、歌も非常に繊細かつ艶があってとてもいいんですけど、MisiiNはやっぱりこのメッセージ性に貫かれているところが惹かれる部分ですね。

カンナ:ご本人のコメントでも「人生に迷うときも、上手くいっているときも、あなたがまた力強く生きていくために、このアルバムがそばにあれたら嬉しいです」とあるので、誰かにパワーを与えたいというのが、MisiiNの2人の原動力になっているのかなと思いました。エンパワーメントが活動の根本になっているのはかっこいいなと感じましたし、そういう風に標榜が出来るという、それ自体にまずパワーがいることだと思うので、素晴らしいなと思いましたね。

金子:きっと自分たちを鼓舞するような意味合いもあるだろうし、それをすることによって、聴き手もエンパワーメントできるというか。そういう感覚がこの2人にはあるような気がします。

カンナ:みなさんにも聴いてもらって、元気付けられてほしいなと思います。



MisiiNのインタビュー記事が公開されておりますので、あわせてぜひチェックしてみてください!




RADIO INFORMATION

FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
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FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。

放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)

番組MC
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金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3

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サトーカンナ
ボーカル、コーラス、作詞、ナレーション、執筆など、声と言葉にかかわる幅広い活動を続ける。
バンド(Kurhaus、グッド・ライフ・フェロウズ)ではシンセサイザーやパッドの演奏も担当。
ウェブサイト / @milkcupcakes / @kannasat

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Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin


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