SENSA

2022.11.10

踊ってばかりの国、天にも昇るようなサイケデリアとロックンロールの熱狂「俺たちに明日はない」Tour中野サンプラザ公演

踊ってばかりの国、天にも昇るようなサイケデリアとロックンロールの熱狂「俺たちに明日はない」Tour中野サンプラザ公演

現在全国12カ所を回る『「Paradise review」release tour「俺たちに明日はない」』を開催中の踊ってばかりの国。11月4日の仙台CLUB JUNK BOX公演で前半戦の4本(10月24日の神戸公演は下津光史の体調不良により開催見合わせ)を終えたところだが、現在の彼らを見逃す手はない。これまでも、そしておそらくこれからも、いつだって彼らは最高なのだけど、「第二期」と言うべき現在の5人編成がいよいよ極まってきたと感じる。

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僕が観に行ったのは初日の中野サンプラザ公演。途中のMCで「ここでNIRVANAもライブをした」という話もしていたように、約50年の歴史を持つ日本の音楽史における重要なホールであり、個人的にも好きなアーティストのツアーにこの会場が入っていると必ず観に行ったりしたものだが、残念ながら来年7月での閉館が発表されている。

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踊ってばかりの国の2022年は1月5日の新木場STUDIO COAST公演からスタートしているが、同会場は1月30日で閉館。もちろん、閉館の理由は様々で、コロナ禍によって閉店を余儀なくされたライブハウスと同列で語ることはできないが、時代の変化を否応なく感じさせる事例であり、中野サンプラザで「俺たちに明日はない」というタイトルを冠したツアーがスタートするというのは、強いリアリティを感じさせる。

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とはいえ、バンド自体は絶好調だと言っていい。9月にリリースされた最新作『Paradise review』は近年アルバムのレコーディングでよく使っていた伊豆スタジオ(カネコアヤノなども使用)ではなく、彼らが日常のリハも行っている吉祥寺のGOK SOUNDで、オープンリールのテープを使ったアナログレコーディングを敢行。デジタルのように修正が利かないので、バンドの基礎体力が問われるわけだが、その録音方法を選んだという時点で、現在のバンドに対するメンバーの自信が伺えるというものだ。

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彼らは現在の編成になってから最初にリリースした『君のために生きていくね』以降、毎年アルバムをリリースし、曲作りとライブを繰り返すことで新たなアンサンブルを構築。その上で、コロナ禍に制作された『moana』でもう一度楽曲とじっくり向き合い、これまで表立って反映されていなかった丸山康太のジャズ由来のコードワークやアレンジメントも加わることによって、さらなる進化を見せた。

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そんな『moana』以降、現在の踊ってばかりの国のライブにおけるキーパーソンとなっているのもやはり丸山な印象で、彼がレスポールやフルアコを経て、最近エレガット(エレクトリックガットギター)を使い始めたのが非常に興味深い。これによって大久保仁のストラト、下津のセミアコと、それぞれ特徴の異なる3本のギターが独自のアンサンブルを生み出している。国内外のサイケデリックロックの系譜に連なりつつ、他の誰もやっていない境地を目指す高いミュージシャンシップが、ここに端的に表されていると言えよう。

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丸山と大久保はリードとバッキングのようにわかりやすく役割分担されているわけではないので、それぞれのプレイがすごく目立つというわけではない。林宏敏を含む4ピース時代は林がギターヒーローのように音的にもステージング的にも前に出て、下津と2トップを形成するような瞬間があり、ときに強烈に歪ませるギターが「シューゲイザー」的な側面を担ってもいた。しかし、今の踊ってばかりの国は土台をしっかり支えつつもときに手数の多いトリッキーなプレイで魅せる坂本タイキのドラムと、多彩なグルーヴを担う谷山竜志のベースも含め、一人ひとりの個性は前提としつつ、あくまでチームプレイな印象だ。

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最近は一定以上の規模感のバンドはイヤモニを使うことが普通になって、それがパフォーマンスの精度や演出面も含めたクオリティの向上に寄与している面ももちろんあるが、踊ってばかりの国はあくまで生もの。5人が有機的に奏でるアンサンブルに乗っかって、下津がこれまで以上に「生きもの」を感じさせる歌を自由に泳がせることで、天にも昇るようなサイケデリアとロックンロールの熱狂を生み出していく。「行けるところまで行こう」という言葉に始まり、『Paradise review』と『moana』からの楽曲を中心に20曲以上が演奏され、バンドとオーディエンスがラストに向けて一体となって上り詰めていった中野サンプラザでのライブは、まさに「Paradise」と呼ぶにふさわしい空間だった。

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なお、ツアー2日目の新潟CLUB RIVERST公演が行われる前日の10月20日、1994年に吉祥寺に移転してきてから約30年の歴史を築いてきたGOK SOUNDが、移転のために同所での営業を11月28日に終了することを発表した。〈血も涙もない、全部数字に置き換えられてる〉。〈どんな景色でも僕は覚えとく ずっと叫んでる〉。〈手短に言う 俺たちに明日はない〉。それでも、踊ってばかりの国のライブには未来がある。

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文:金子厚武
撮影:石毛倫太郎

RELEASE INFORMATION

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踊ってばかりの国「Paradise review」
2022年9月21日(水)
Format:Digital/CD
Label:FIVELATER

Track:
1.your song
2.Ceremony
3.待ち人
4.Amor
5.知る由もない
6.海が鳴ってる
7.Paradise review

試聴はこちら


LIVE INFORMATION

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『Paradise review』release tour 「俺たちに明日はない」
2022年11月11日(金)
沖縄県 沖縄OUT PUT

2022年11月20日(日)
北海道 札幌PENNY LANE24

2022年12月2日(金)
福岡県 福岡The Voodoo Lounge

2022年12月3日(土)
熊本県 熊本NAVARO

2022年12月8日(木)
愛知県 名古屋THE BOTTOM LINE

2022年12月10日(土)
広島県 広島4.14

2022年12月15日(木)
大阪府 味園ユニバース

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