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2022.07.03
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!井戸健人・downy・NIKO NIKO TAN TAN ほか全18作品 -2022.07.02-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。
キュレーターの金子厚武とラジオDJ MISATOによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
MISATO:6月27日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全18作品の中から、まずはPart 1、6作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!APOGEE、ご機嫌でしたね。そして、はじめましてがいらっしゃいます、kunmohile。
金子:kunmohile(クンモハイル)という、不思議な語感ですね。
MISATO:私も最初は読めませんでした。
金子:彼らは2020年4月に結成されたバンドで、"あらゆる時代や場所で燦然としているポップスがkunmohileという目線を通して昇華され、懐かしさを感じさせつつも2020年代のスイート&メロウな音楽を演っているバンド"とプロフィールにあります。
MISATO:わかりやすい、いいプロフィールですね。
金子:"スイート&メロウ"、たしかにという感じですね。レコーディングが伊豆スタジオ、そしてエンジニアが濱野泰政さんということで、この番組をよく聞いていらっしゃればピンとくる方もいるかなと思うんですけど......。
MISATO:私も思いました!
金子:カネコアヤノさんと同じ布陣というか、同じスタジオでありエンジニアさんなので、やはり通じるものはありますよね。アメリカのインディー的なカッコよさと、日本のフォーク的な曲の良さを兼ね備えている感じで、同時代性を感じさせるバンド。すごくいいですね。
MISATO:そしておひさしぶりなのが、壱タカシさん!
金子:新曲良かったですね!
MISATO:良かった〜。またきっとこれは歌詞の生み出しが大変だったんだろうなと思うところもありつつ、素敵な曲ですね。
金子:壱さんはご自身のセクシャリティーの部分を出しつつ、そこと向き合いながらこれまでも作品を発表されています。6月はプライド月間というLGBTQに関わる活動が世界各国で行われる月間だったこともあって、そのタイミングで月末にこの曲が出るというのは、そこの意味合いもあるのかなと思ったりします。
MISATO:そうですよね。
金子:FRIENDSHIP.はAmiideさんとかもリリースしてたり、クィアであることに向き合いながら活動している方がいらっしゃって、いい音楽を作っているのは素晴らしいことだなと思います。この曲も実際そういう部分が歌詞のテーマになっているらしく、ご本人の「歌詞のテーマが"居場所について"で、東京という街で生きていく自身の変容について。上京したばかりの自分を懐古しながらセクシャルな体験を基に書き上げました」というコメントがあります。実際歌詞を聴くと生々しい部分があったりもするのですが、曲自体は昨年のアルバムと比べるとポップで外向きな感じに変わっていて。音楽シーン的にも、インディーR&B的な音響センスみたいなものが、よりオーバーグラウンドのポップシーンにも採用されるというか、広がりが生まれていると思うんですけど、壱さんの音楽性もそういうところとも連なる音響的なセンスの良さがありつつ、よりポップスとして開かれている感じがします。同じ日にアツキタケトモさんの新作も出るのですが、彼の最近の作品とかも開かれた方向性になってきていて。そういうところに音楽シーンのトレンドを感じたりもしました。
MISATO:きっとやりたいことや伝えたいことというのは、彼の中で変わってはいないと思うんですけど、でもそこにトラップ要素が入ってきたりとか、世界の音をしっかり入れて、いまの時代にどういう風にアレンジをしたら自分の曲が届くのかと試行錯誤されてきたひとつの結果なんだというのが、ちゃんと見える作品になっていますね。
金子:メッセージ性も音楽性もどっちも高くて、すごく良い曲でした。
MISATO:ではこのPart 1から1曲をお届けするのはどちらにしましょうか?
金子:井戸健人さんのアルバムから1曲紹介しようかなと思います。
MISATO:井戸健人さんの待望のアルバムがリリースされましたね!
金子:井戸健人さんは2020年の3月に『Song of the swamp』という作品をリリースしていて、そこから2年ちょっとぶりの新作です。もともと作詞作曲・演奏・録音・ミックスまで全部ご自身でやっちゃう人なんですけど、前作は客演陣もそこに複数参加していたのに対して、今回に関しては完全に1人で完結させているみたいで。やっぱりコロナ禍というところもあったりするのかなと思うんですけど、その分"井戸健人"という作家性がより色濃く出ている作品になっている感じがします。特に、やっぱり面白いのは音響センスかなあ。
MISATO:そうですね。面白かったです。
金子:もともとSufjan Stevensとかも好きみたいな話があって、シンガー・ソングライター的な要素と、音響的な面白さの要素をどっちも兼ね備えている人ではあるんですけど、1人で作り込むことによって、音響的なセンスが次の段階に行っているなという感じがすごくして、特に音が消える瞬間がいろんなところにあって、それが面白いんですよね。前にも紹介しているアルバムの1曲目の「Overload」はその象徴で、曲の中で音が一切鳴らない時間があったり、そういう時間を作ることによって、より空間的な広がりを見せたりというのが、結構いろんな曲に散りばめられていて、そこがすごく面白いなと思いました。
MISATO:余韻の残し方とかも、「あ、こうやって音って作れるんだ」という新しい発見があったり、音の抜き差しで人の気持ちの機微を表現できる人というか。言葉と声だけじゃないところからも、情緒みたいなものを感じさせてくれますよね。
金子:そうですね。ミックスも音の強弱を維持するために、音量をあえて少し控えめにしているらしくて、ボリュームを自ら上げることによって、より音の広がりを感じられるという。最近Apple Musicがドルビーアトモスという空間オーディオに力を入れている印象がありますけど、井戸健人さんの曲もドルビーアトモスみたいな立体的な音響で聴いたら絶対いいだろうなって。
MISATO:良さそう!いいですね。バイノーラルとかね!ぜひいまイヤホンで聴いていらっしゃる方は少しボリュームを上げてみてください。
MISATO:オーガニックなんだけど、実験的だからデジタルっぽさもあって、面白いバランス感ですよね。
金子:昨年デジタルで出しているシングルもアルバムに入ってるんですけど、結構リアレンジされていて、その面白さもあるので、ぜひアルバム通して聴いてほしいなと思います。
MISATO:6月27日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全18作品の中から、Part 2の6作品をダイジェストでご紹介しました。Part 2にもはじめましてさんが、℃-want you!。
金子:元住所不定無職で、現在はMagic, Drums & Loveというバンドのキーボーディストであり、ソロでも活動している℃-want youさん。この曲は雷音レコードという、イラストレーターで漫画家の本秀康さんのレーベルから出しているものをデジタルではFRIENDSHIP.から配信ということになります。雷音レコードはもともと大森靖子さんだったり、前野健太さんだったり、それこそカネコアヤノさんも出していたり、FRIENDSHIP.絡みだとポニーのヒサミツとかキイチビールとかも出していたり。
MISATO:あー!お馴染みですね、
金子:非常に良質な、センスのいい人たちをずっとリリースしていて、今回デジタルをFRIENDSHIP.からということで、すごく嬉しいなと思っています。住所不定無職やMagic, Drums & Loveも個人的にすごく好きで、℃-want you!はソロになるとアイドルポップス的な可愛らしさもありつつ、"広末涼子ってフィル・スペクターだよね"みたいな、そういう楽しみ方も出来るタイプのポップスというか。
MISATO:なるほど(笑)!
金子:シンプルに"可愛い"というのもあるし、音楽的でもあるという、すごく良いところに行っているなという感じがしますね。
MISATO:そしてdownyもかっこいいです。
金子:℃-want you!さんからdownyはちょっと極端ですけどね(笑)。
MISATO:極端です、180度で紹介していきます(笑)。
金子:downyは今回EPで、ここ最近リミックスと新曲を連続で出していたんですけど、それをまとめてリリースということになります。7月の前半に東名阪でツアーがあるので、そこに向けてということだと思うんですが。
MISATO:7月3日からですね。
金子:最近はちょこちょこ春フェスとかにも出ていて、出演した時間帯はその会場が入場規制によくなっているということで、今のdownyのかっこよさがそのまま詰め込まれているEPになっているかなと。特に「喘鳴」というタイトルトラックは割とギターの要素が強めで、もともとのdownyのかっこよさというか。
MISATO:原点回帰ですね。
金子:個人的にはその感じがしましたね。
MISATO:そして1曲お送りするのは?
金子:Osteoleucoのアルバムからかけようかなと思います。
MISATO:アルバム良かったですね。
金子:こちらも良かったですね。ここ何年かはUSのラップ/トラップ以降みたいなものが直輸入された日本のヒップホップも盛り上がってはいるけど、Osteoleucoを聴くと、日本のポップスとしてのヒップホップの最新型みたいな、そのかっこよさをすごく感じて、ラップもいいし、歌もいいし、トータリティーの高いアルバムだなと思いました。
MISATO:ラップだけ聴くと90年代感あるんだけど、「このトラックに、このラップ乗るんだ」という感じでした。さすがShimonさんという。
金子:組み合わせが面白いですよね。そしてアルバムタイトルが、『いっそ死のうか、いや創ろう。』という。
MISATO:個性的で良いですね〜。
金子:リリックはコロナに関係あると思うんですけど、この2年ぐらいの中で自分がどう生きていくかを考えたときに、「やっぱり表現していこう」とか「音楽を作っていこう」みたいなところがテーマとしてあって、熱く煮えたぎるものを感じさせる部分がありつつ、でもShimon Hoshinoさんのトラックってすごく端正で。
MISATO:そうですよね。
金子:ジャズの要素が強かったり、ピアノの要素が強かったり、バラエティーに富んだトラックではあるんだけど、基本的にはすごく端正な感じがして、その端正なトラックと熱いリリックのバランスがすごく面白くて、オリジナリティに繋がっているなと思いました。
MISATO:「NERO」と言いつつ、「寝ろ」ということについて書いていますね。
金子:深夜に曲を作っているときの流れが曲になっています。
MISATO:そのときの苦悩が描かれていますね。
金子:しかもこの曲、ちょうど深夜2時から始まるんですよ。この番組にピッタリですね。
MISATO:そうそう!でも番組が終わってから寝てください(笑)。
MISATO:ラストはPart 3から6作品をダイジェストでご紹介しました。APOGEEもそうでしたけど、kiss the gamblerも結構少年感がありますね。
金子:声質がそうですね。kiss the gamblerもPart 2で出てきた℃-want you!と一緒で、雷音レコードからのリリースなので、 「台風のあとで (RHION Ver.)」となっています。
MISATO:なるほど!はじめましてさんですね。
金子:2018年から東京を拠点に活動しているシンガーソングライターの方で、kiss the gamblerって名前だけ聞くと、ドリーム・ポップとかそういう海外インディーの感じをちょっと連想しますけど。
MISATO:私もしました。
金子:曲を聴いたら、ノスタルジックでフォーキーな音で、「なるほど、雷音レコードだな」という感じがして、良かったですね。
MISATO:そしてThe Cheseraseraの宍戸翼さん。ソロという形ではじめましてです。宍戸さんも声に特徴ありますね。
金子:バンドが休止してからすぐに自主企画を行ったり、最近では自分でMVも作ったり、グッズやCDのジャケットデザインもプロデュースしたりとか、ご自身でいろいろやられているみたいですね。先週グッドモーニングアメリカのShingo Kanehiroさんもソロを出していましたけど、2010年代に活躍していたバンドマンたちがいろんな転機を経て、ソロで活躍していっているという、そういうのも時代性を感じさせますね。
MISATO:そうですよね。そしてアルバムが出ております、YMB!またアルバムが良いんだわ〜。
金子:今週はアルバムが多いですね。
MISATO:多いんですよ〜。
金子:YMBは昨年もアルバムを出しているんですけど、今年もアルバムリリースということで。
MISATO:精力的ですね。
金子:YMBも良いバンドですね。特別ギミック的な派手さがあるバンドではないんですけど、良質な歌と良質なアレンジというところで、非常にクオリティの高いポップスを作っています。今回のアルバムタイトルが『Tender』で、確かに"テンダーな"音色のイメージもありつつ、歌詞とかを読むと鬱々とした部分だったりとか、抱えているものがあることを感じさせます。もともとYMBって、ボーカルの宮本さんが1人で音楽を作っていたところから、外に引っ張り出されてバンドを始めたみたいな所があったりするから、その宮本さん自身が抱えている葛藤みたいなところは曲の核としてありつつ、でもそれが4人で鳴らされたときに"テンダーな音"になるというか。その感じも改めて感じました。
MISATO:無理してない感じなんだけど、真実を詰め込んでくれているというか、過剰に何か付け加えられたものではないからこそ、まさにそういう"テンダーな"、優しさだったり、温もりだったり、スムースな感じで入ってくるのが昇華できているなという印象ですね。
金子:「fall」は他の曲ともまたちょっと違うループの気持ちよさがあったり、フルートが入ってきたりとか、音楽的な挑戦もすごくあって、良い作品だなと思いました。
MISATO:ということは、Part 3でかけるのはこのバンドでしょうか!?
金子:NIKO NIKO TAN TANをかけましょうかね。NIKO NIKO TAN TANのEPがついに到着しました。
MISATO:おめでとうございます!待っていました。
金子:NIKO NIKO TAN TANもリリースのたびに着実にリスナーを増やしている印象です。
MISATO:本当に!すごいな〜。
金子:ライブも結構いろんなところに出たりして、どんどんリスナーを広げていますね。今回のEPはこれまで出してきた曲が詰め込まれた作品になっていて、そこにプラス新曲「胸騒ぎ」も入っている作品になっています。改めてクレジット見ていて思ったのが、彼らって音楽担当2人と映像担当2人の4人組ですけど、作詞をしているのが映像を担当しているSamson Leeさんなんですよね。それによるリリックとサウンドと映像のシンクロ。そこがやっぱり鍵なんだなというのを、今回のEPのクレジットを見ながら改めて思いました。それって珍しいことじゃないですか?
MISATO:珍しいと思います。音楽を作る人が歌詞も一緒にというイメージですよね。
金子:もちろん第三者が違うイマジネーションを加えることで広がる面白さもあると思うんだけど、NIKO NIKO TAN TANの場合は全部自分たちで完結しているからこその整合性というか。トータリティーというか。
MISATO:映像と歌詞世界のシンクロ率の高さって、そういうところにも出るんでしょうね。面白いよな〜。
金子:今回の「胸騒ぎ」という曲には、カメレオンライムウーピーパイのChi-さんが参加していて。音楽担当が2人だからこそ、そこにいろんな人が加われる面白さもあって、ボーカルで作曲担当のOCHANは最近Tempalayのサポートとかもやってますけど、たぶん2年ぐらい前だったら、ここでフィーチャリングをやっているのはAAAMYYYだった気がするんですよ。でも、この2年ぐらいで女性の新しいクリエイターってどんどん増えてきて、カメレオンライムウーピーパイみたいな人たちも出てきて、そこが一緒にやっているというのも新世代感を感じさせるというか。これからの音楽シーンを担っていく人たちがどんどん出てきているなと、この組み合わせから強く感じました。
MISATO:たしかにAAAMYYYが歌っても絶対ハマるんだけど、でも新しいことをしているNIKO NIKO TAN TANが次誰と一緒にするのかというワクワク感もあるし、どんどん下の世代が出てきていますもんね。ちょっとスピード感が怖いぐらい。
金子:EPのタイトルも『?』で、まだまだここから何があるかわからないですよという、そんな感じがしますね。
MISATO:クリエイティヴの面白さをきっと世に広めてくれる感じがしますね。
金子:まだまだこれからもっとリスナーを増やしていくでしょうからね。
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
MISATO
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。
TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。
安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
FRIENDSHIP.
キュレーターの金子厚武とラジオDJ MISATOによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
MISATO:6月27日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全18作品の中から、まずはPart 1、6作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!APOGEE、ご機嫌でしたね。そして、はじめましてがいらっしゃいます、kunmohile。
金子:kunmohile(クンモハイル)という、不思議な語感ですね。
MISATO:私も最初は読めませんでした。
金子:彼らは2020年4月に結成されたバンドで、"あらゆる時代や場所で燦然としているポップスがkunmohileという目線を通して昇華され、懐かしさを感じさせつつも2020年代のスイート&メロウな音楽を演っているバンド"とプロフィールにあります。
MISATO:わかりやすい、いいプロフィールですね。
金子:"スイート&メロウ"、たしかにという感じですね。レコーディングが伊豆スタジオ、そしてエンジニアが濱野泰政さんということで、この番組をよく聞いていらっしゃればピンとくる方もいるかなと思うんですけど......。
MISATO:私も思いました!
金子:カネコアヤノさんと同じ布陣というか、同じスタジオでありエンジニアさんなので、やはり通じるものはありますよね。アメリカのインディー的なカッコよさと、日本のフォーク的な曲の良さを兼ね備えている感じで、同時代性を感じさせるバンド。すごくいいですね。
MISATO:そしておひさしぶりなのが、壱タカシさん!
金子:新曲良かったですね!
MISATO:良かった〜。またきっとこれは歌詞の生み出しが大変だったんだろうなと思うところもありつつ、素敵な曲ですね。
金子:壱さんはご自身のセクシャリティーの部分を出しつつ、そこと向き合いながらこれまでも作品を発表されています。6月はプライド月間というLGBTQに関わる活動が世界各国で行われる月間だったこともあって、そのタイミングで月末にこの曲が出るというのは、そこの意味合いもあるのかなと思ったりします。
MISATO:そうですよね。
金子:FRIENDSHIP.はAmiideさんとかもリリースしてたり、クィアであることに向き合いながら活動している方がいらっしゃって、いい音楽を作っているのは素晴らしいことだなと思います。この曲も実際そういう部分が歌詞のテーマになっているらしく、ご本人の「歌詞のテーマが"居場所について"で、東京という街で生きていく自身の変容について。上京したばかりの自分を懐古しながらセクシャルな体験を基に書き上げました」というコメントがあります。実際歌詞を聴くと生々しい部分があったりもするのですが、曲自体は昨年のアルバムと比べるとポップで外向きな感じに変わっていて。音楽シーン的にも、インディーR&B的な音響センスみたいなものが、よりオーバーグラウンドのポップシーンにも採用されるというか、広がりが生まれていると思うんですけど、壱さんの音楽性もそういうところとも連なる音響的なセンスの良さがありつつ、よりポップスとして開かれている感じがします。同じ日にアツキタケトモさんの新作も出るのですが、彼の最近の作品とかも開かれた方向性になってきていて。そういうところに音楽シーンのトレンドを感じたりもしました。
MISATO:きっとやりたいことや伝えたいことというのは、彼の中で変わってはいないと思うんですけど、でもそこにトラップ要素が入ってきたりとか、世界の音をしっかり入れて、いまの時代にどういう風にアレンジをしたら自分の曲が届くのかと試行錯誤されてきたひとつの結果なんだというのが、ちゃんと見える作品になっていますね。
金子:メッセージ性も音楽性もどっちも高くて、すごく良い曲でした。
MISATO:ではこのPart 1から1曲をお届けするのはどちらにしましょうか?
金子:井戸健人さんのアルバムから1曲紹介しようかなと思います。
MISATO:井戸健人さんの待望のアルバムがリリースされましたね!
金子:井戸健人さんは2020年の3月に『Song of the swamp』という作品をリリースしていて、そこから2年ちょっとぶりの新作です。もともと作詞作曲・演奏・録音・ミックスまで全部ご自身でやっちゃう人なんですけど、前作は客演陣もそこに複数参加していたのに対して、今回に関しては完全に1人で完結させているみたいで。やっぱりコロナ禍というところもあったりするのかなと思うんですけど、その分"井戸健人"という作家性がより色濃く出ている作品になっている感じがします。特に、やっぱり面白いのは音響センスかなあ。
MISATO:そうですね。面白かったです。
金子:もともとSufjan Stevensとかも好きみたいな話があって、シンガー・ソングライター的な要素と、音響的な面白さの要素をどっちも兼ね備えている人ではあるんですけど、1人で作り込むことによって、音響的なセンスが次の段階に行っているなという感じがすごくして、特に音が消える瞬間がいろんなところにあって、それが面白いんですよね。前にも紹介しているアルバムの1曲目の「Overload」はその象徴で、曲の中で音が一切鳴らない時間があったり、そういう時間を作ることによって、より空間的な広がりを見せたりというのが、結構いろんな曲に散りばめられていて、そこがすごく面白いなと思いました。
MISATO:余韻の残し方とかも、「あ、こうやって音って作れるんだ」という新しい発見があったり、音の抜き差しで人の気持ちの機微を表現できる人というか。言葉と声だけじゃないところからも、情緒みたいなものを感じさせてくれますよね。
金子:そうですね。ミックスも音の強弱を維持するために、音量をあえて少し控えめにしているらしくて、ボリュームを自ら上げることによって、より音の広がりを感じられるという。最近Apple Musicがドルビーアトモスという空間オーディオに力を入れている印象がありますけど、井戸健人さんの曲もドルビーアトモスみたいな立体的な音響で聴いたら絶対いいだろうなって。
MISATO:良さそう!いいですね。バイノーラルとかね!ぜひいまイヤホンで聴いていらっしゃる方は少しボリュームを上げてみてください。
MISATO:オーガニックなんだけど、実験的だからデジタルっぽさもあって、面白いバランス感ですよね。
金子:昨年デジタルで出しているシングルもアルバムに入ってるんですけど、結構リアレンジされていて、その面白さもあるので、ぜひアルバム通して聴いてほしいなと思います。
New Release Digest Part 2
MISATO:6月27日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全18作品の中から、Part 2の6作品をダイジェストでご紹介しました。Part 2にもはじめましてさんが、℃-want you!。
金子:元住所不定無職で、現在はMagic, Drums & Loveというバンドのキーボーディストであり、ソロでも活動している℃-want youさん。この曲は雷音レコードという、イラストレーターで漫画家の本秀康さんのレーベルから出しているものをデジタルではFRIENDSHIP.から配信ということになります。雷音レコードはもともと大森靖子さんだったり、前野健太さんだったり、それこそカネコアヤノさんも出していたり、FRIENDSHIP.絡みだとポニーのヒサミツとかキイチビールとかも出していたり。
MISATO:あー!お馴染みですね、
金子:非常に良質な、センスのいい人たちをずっとリリースしていて、今回デジタルをFRIENDSHIP.からということで、すごく嬉しいなと思っています。住所不定無職やMagic, Drums & Loveも個人的にすごく好きで、℃-want you!はソロになるとアイドルポップス的な可愛らしさもありつつ、"広末涼子ってフィル・スペクターだよね"みたいな、そういう楽しみ方も出来るタイプのポップスというか。
MISATO:なるほど(笑)!
金子:シンプルに"可愛い"というのもあるし、音楽的でもあるという、すごく良いところに行っているなという感じがしますね。
MISATO:そしてdownyもかっこいいです。
金子:℃-want you!さんからdownyはちょっと極端ですけどね(笑)。
MISATO:極端です、180度で紹介していきます(笑)。
金子:downyは今回EPで、ここ最近リミックスと新曲を連続で出していたんですけど、それをまとめてリリースということになります。7月の前半に東名阪でツアーがあるので、そこに向けてということだと思うんですが。
MISATO:7月3日からですね。
金子:最近はちょこちょこ春フェスとかにも出ていて、出演した時間帯はその会場が入場規制によくなっているということで、今のdownyのかっこよさがそのまま詰め込まれているEPになっているかなと。特に「喘鳴」というタイトルトラックは割とギターの要素が強めで、もともとのdownyのかっこよさというか。
MISATO:原点回帰ですね。
金子:個人的にはその感じがしましたね。
MISATO:そして1曲お送りするのは?
金子:Osteoleucoのアルバムからかけようかなと思います。
MISATO:アルバム良かったですね。
金子:こちらも良かったですね。ここ何年かはUSのラップ/トラップ以降みたいなものが直輸入された日本のヒップホップも盛り上がってはいるけど、Osteoleucoを聴くと、日本のポップスとしてのヒップホップの最新型みたいな、そのかっこよさをすごく感じて、ラップもいいし、歌もいいし、トータリティーの高いアルバムだなと思いました。
MISATO:ラップだけ聴くと90年代感あるんだけど、「このトラックに、このラップ乗るんだ」という感じでした。さすがShimonさんという。
金子:組み合わせが面白いですよね。そしてアルバムタイトルが、『いっそ死のうか、いや創ろう。』という。
MISATO:個性的で良いですね〜。
金子:リリックはコロナに関係あると思うんですけど、この2年ぐらいの中で自分がどう生きていくかを考えたときに、「やっぱり表現していこう」とか「音楽を作っていこう」みたいなところがテーマとしてあって、熱く煮えたぎるものを感じさせる部分がありつつ、でもShimon Hoshinoさんのトラックってすごく端正で。
MISATO:そうですよね。
金子:ジャズの要素が強かったり、ピアノの要素が強かったり、バラエティーに富んだトラックではあるんだけど、基本的にはすごく端正な感じがして、その端正なトラックと熱いリリックのバランスがすごく面白くて、オリジナリティに繋がっているなと思いました。
MISATO:「NERO」と言いつつ、「寝ろ」ということについて書いていますね。
金子:深夜に曲を作っているときの流れが曲になっています。
MISATO:そのときの苦悩が描かれていますね。
金子:しかもこの曲、ちょうど深夜2時から始まるんですよ。この番組にピッタリですね。
MISATO:そうそう!でも番組が終わってから寝てください(笑)。
New Release Digest Part 3
MISATO:ラストはPart 3から6作品をダイジェストでご紹介しました。APOGEEもそうでしたけど、kiss the gamblerも結構少年感がありますね。
金子:声質がそうですね。kiss the gamblerもPart 2で出てきた℃-want you!と一緒で、雷音レコードからのリリースなので、 「台風のあとで (RHION Ver.)」となっています。
MISATO:なるほど!はじめましてさんですね。
金子:2018年から東京を拠点に活動しているシンガーソングライターの方で、kiss the gamblerって名前だけ聞くと、ドリーム・ポップとかそういう海外インディーの感じをちょっと連想しますけど。
MISATO:私もしました。
金子:曲を聴いたら、ノスタルジックでフォーキーな音で、「なるほど、雷音レコードだな」という感じがして、良かったですね。
MISATO:そしてThe Cheseraseraの宍戸翼さん。ソロという形ではじめましてです。宍戸さんも声に特徴ありますね。
金子:バンドが休止してからすぐに自主企画を行ったり、最近では自分でMVも作ったり、グッズやCDのジャケットデザインもプロデュースしたりとか、ご自身でいろいろやられているみたいですね。先週グッドモーニングアメリカのShingo Kanehiroさんもソロを出していましたけど、2010年代に活躍していたバンドマンたちがいろんな転機を経て、ソロで活躍していっているという、そういうのも時代性を感じさせますね。
MISATO:そうですよね。そしてアルバムが出ております、YMB!またアルバムが良いんだわ〜。
金子:今週はアルバムが多いですね。
MISATO:多いんですよ〜。
金子:YMBは昨年もアルバムを出しているんですけど、今年もアルバムリリースということで。
MISATO:精力的ですね。
金子:YMBも良いバンドですね。特別ギミック的な派手さがあるバンドではないんですけど、良質な歌と良質なアレンジというところで、非常にクオリティの高いポップスを作っています。今回のアルバムタイトルが『Tender』で、確かに"テンダーな"音色のイメージもありつつ、歌詞とかを読むと鬱々とした部分だったりとか、抱えているものがあることを感じさせます。もともとYMBって、ボーカルの宮本さんが1人で音楽を作っていたところから、外に引っ張り出されてバンドを始めたみたいな所があったりするから、その宮本さん自身が抱えている葛藤みたいなところは曲の核としてありつつ、でもそれが4人で鳴らされたときに"テンダーな音"になるというか。その感じも改めて感じました。
MISATO:無理してない感じなんだけど、真実を詰め込んでくれているというか、過剰に何か付け加えられたものではないからこそ、まさにそういう"テンダーな"、優しさだったり、温もりだったり、スムースな感じで入ってくるのが昇華できているなという印象ですね。
金子:「fall」は他の曲ともまたちょっと違うループの気持ちよさがあったり、フルートが入ってきたりとか、音楽的な挑戦もすごくあって、良い作品だなと思いました。
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MISATO:ということは、Part 3でかけるのはこのバンドでしょうか!?
金子:NIKO NIKO TAN TANをかけましょうかね。NIKO NIKO TAN TANのEPがついに到着しました。
MISATO:おめでとうございます!待っていました。
金子:NIKO NIKO TAN TANもリリースのたびに着実にリスナーを増やしている印象です。
MISATO:本当に!すごいな〜。
金子:ライブも結構いろんなところに出たりして、どんどんリスナーを広げていますね。今回のEPはこれまで出してきた曲が詰め込まれた作品になっていて、そこにプラス新曲「胸騒ぎ」も入っている作品になっています。改めてクレジット見ていて思ったのが、彼らって音楽担当2人と映像担当2人の4人組ですけど、作詞をしているのが映像を担当しているSamson Leeさんなんですよね。それによるリリックとサウンドと映像のシンクロ。そこがやっぱり鍵なんだなというのを、今回のEPのクレジットを見ながら改めて思いました。それって珍しいことじゃないですか?
MISATO:珍しいと思います。音楽を作る人が歌詞も一緒にというイメージですよね。
金子:もちろん第三者が違うイマジネーションを加えることで広がる面白さもあると思うんだけど、NIKO NIKO TAN TANの場合は全部自分たちで完結しているからこその整合性というか。トータリティーというか。
MISATO:映像と歌詞世界のシンクロ率の高さって、そういうところにも出るんでしょうね。面白いよな〜。
金子:今回の「胸騒ぎ」という曲には、カメレオンライムウーピーパイのChi-さんが参加していて。音楽担当が2人だからこそ、そこにいろんな人が加われる面白さもあって、ボーカルで作曲担当のOCHANは最近Tempalayのサポートとかもやってますけど、たぶん2年ぐらい前だったら、ここでフィーチャリングをやっているのはAAAMYYYだった気がするんですよ。でも、この2年ぐらいで女性の新しいクリエイターってどんどん増えてきて、カメレオンライムウーピーパイみたいな人たちも出てきて、そこが一緒にやっているというのも新世代感を感じさせるというか。これからの音楽シーンを担っていく人たちがどんどん出てきているなと、この組み合わせから強く感じました。
MISATO:たしかにAAAMYYYが歌っても絶対ハマるんだけど、でも新しいことをしているNIKO NIKO TAN TANが次誰と一緒にするのかというワクワク感もあるし、どんどん下の世代が出てきていますもんね。ちょっとスピード感が怖いぐらい。
金子:EPのタイトルも『?』で、まだまだここから何があるかわからないですよという、そんな感じがしますね。
MISATO:クリエイティヴの面白さをきっと世に広めてくれる感じがしますね。
金子:まだまだこれからもっとリスナーを増やしていくでしょうからね。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
MISATO
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。
TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。
安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
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