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2025.08.02
New Release Digest Part 1
みさと:7月28日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全22作品の中からPart-1をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。はじめましてさんからです。岩手県盛岡市発、Jr.alcohol(ジュニアアルコホール)。
金子:彼らは2013年結成のスリーピースバンド。盛岡を盛り上げているバンドということで、ちょっと前に仙台のシーンの話をちらっと話しましたけど、東北を拠点に活動しているいいバンドがたくさんいて、Jr.alcoholの曲はエモいですよね。でも、明るく爽やかな方面のエモで、パワーポップにも紐づくようなサウンドになっていて、長くやってきた実力のあるバンドだと感じさせる一曲でした。
みさと:1990年代エモが好きな方にはたまらないんですけど、そのエッセンスだけではなく、何周か回ってこういうストレートなの聴きたいよねと思わせてくれるような、軸がしっかりしていて、経験値が感じられる、そんな完成度の高い一曲だったと思います。続いて、シナリオアート。
金子:シナリオアートは約1年ぶりの新曲。
みさと:1年ぶりですか。
金子:ちょっとひさしぶりですね。「アイハソーダ」というタイトルで、「アイ」は「愛」と「AI」のダブルミーニングになっているので、曲調はデジタルでハイパーポップのような印象がありつつ、ソーダのように爽やかな側面もあったり。シナリオアートらしいユーモアとちょっとシニカルなセンスが混ざっていて、新境地でありながらシナリオアートらしくもある、そんな一曲でした。
みさと:まさにそうですね。一聴して、フェス、ライブ向きで間口の広い感じに聴こえるんですけど、歌詞を紐解いていくと、やっぱりシナリオアートだなと。最高のクセ、爪痕を残してくれているような楽曲でした。そんなPart-1からどうしましょう?
金子:春ねむりさんの新曲を紹介しようと思います。
みさと:今回はアルバムリリースになります。おめでとうございます。
金子:自主レーベルを立ち上げての最初のアルバムで、最近は海外アーティストとのコラボレーションが多かったんですけど、今回に関しては完全にセルフプロデュース。一部のギターとベース、コーラスに諭吉佳作/menが参加している以外は、春ねむりさん自身がトラックを作っていると。メッセージ的にも音楽的にも濃密で、我々の生活を雁字搦めにするような世界の都市の構造・システムみたいなものと向き合い、そこからもっと可変的で流動的な共同体を目指す。そんなメッセージをポストハードコアやレイヴも内包したフィジカルなトラックに乗せて歌ったり、ラップしたりと、春ねむりの哲学が詰め込まれた作品でした。
みさと:今回"孵化過程"という意味合いの『ekkolaptómenos』というタイトルなんですけど、アルバム通して聴き手の魂に気づきを呼びかけているような、孵化を促すような作品になっていました。まさに哲学。孵化するには内的要因と外的要因がどちらも必要だと思うんですけど、孵化前、つまり魂が眠っている状態だと、外からの問題提起が必要になってくると思うんです。彼女がこの作品を世に出したこと自体がまさに外からの刺激だし、それぞれの内側を見つめなくてはいけないことが楽曲のテーマに落とし込まれていたように思います。彼女が音楽をツールに何を発信したいのか、彼女の哲学をどう表現したいのか、というのが一番に詰まっていたように思います。これは心して聴いてください!
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。こちらもはじめましてさんからです。オートコード。
金子:2022年結成、京都発の4人組。サウンド的にはこちらも1990年代感があって、実際本人はWeezerとか好きみたいなんですけど、歌詞で〈循環は無い 全ては瞬間の連続さ 壊してくれR・A・T〉とあって、その後にガツっとギターサウンドが入ってくるのがすごく印象的なんですよね。RATってディストーション系の名機と呼ばれているエフェクターで、僕のイメージだと1990年代のバンドがRATをよく使ってたイメージがあって。オートコードも多分RATを使っていて、その感じがまさに1990年代のバンド感を出してる気がして、かっこいいなと思いました。
みさと:「ライフイズサンダー」というタイトルに関しては、人生は様々なものに例えられる中で、今回は人生を雷に例えた1曲になってるんですけど、雷って怖いと思う日もあれば、綺麗だなとか、力の象徴だったりもする。刹那の一瞬の輝きであり、またその輝きが闇でもあるし光でもあるという二面性を感じさせるような、この方たちの哲学が込められてる1曲だったかなと思います。続いて、同じく京都。ときめきポメラニアン。
金子:夏らしい曲がたくさん増えてきているわけなんですけど、彼女たちの夏の描き方はちょっと他の曲と違っていて。
みさと:いいですね〜。
金子:セルフライナーノーツで"夏は1番難しい季節だ。海、花火、スイカ割りとか「夏らしさ」ってやつを求められるくせに、台風とか来るし!夏らしく過ごすことへのプレッシャーは8月の気温よりも暑苦しく、京都の湿気よりもしつこくまとわりついてくる。夏らしく過ごせなかったら私たちの夏は失敗なのかな?"と疑問を呈していて。
みさと:すごく可愛いし、言ってくれてありがとうという気持ちになれる。
金子:でも最終的には季節云々は関係なく、「私たちバンドをやっていて、自分たちの歌を歌ってるんだ」というところに辿り着く。それが結構感動的だったりもして、すごく良かったです。
みさと:バンドの活動って24時間365日で、夏だからこうしようというわけでもないじゃないですか。どういうふうに過ごしてもいいという自由さと自分たちらしさ(が伝わってきました)。歌唱方法もオリジナリティあふれていて、パッケージとして素晴らしかったです。そんなPart-2からどうしましょう?
金子:メガネブラザースの新曲を紹介しようと思います。「ズ」じゃなくて「ス」。5年ぶりのアルバムです。
みさと:おめでとうございます!
金子:2011年結成のバンドなんですけど、FRIENDSHIP.からソロ作品も出している高木大丈夫さん、そしてもう一人のボーカル・さとうひろゆきさん、ベースは遠藤定さん、そしてドラム・伊吹文裕さんの4人。伊吹さんはあいみょん、星野源さん、KIRINJI、中村佳穂さんから角松敏生さんまで幅広くサポートドラマーとして活躍してらっしゃる超売れっ子ドラマー。4人それぞれがキャリアを築いている人たちで、そういう人たちが楽しく遊んでバンドをやったらこうなりました、という感じがめちゃめちゃいいですね。
みさと:クオリティが高すぎます(笑)。
金子:今回『新しいCD』というアルバムタイトル。前作が『いいCD』というタイトルで、前作には「いい曲」という曲が入ってたんですけど、今回は「新しいメガネ」がリードトラック。
みさと:いいな〜。
金子:歌詞では「新しいメガネを買いに行こう」と歌っているだけなんだけど、アレンジはブラジル音楽、ボサノバ的な感じで、彼らの持っている音楽力の高さが感じられました。いい意味でのアンバランスが最高です。
みさと:本当ですね。素朴なのに上質、シンプルなようですごく技巧派という、このメンバーだからこそのサウンド感もありつつ、メガネは顔の一部だからこそ、新しいメガネを探しに行こうというこの切り取りが素晴らしいなと思っていて、新しいメガネを買うことによって、自分の精神性にも変化が表れるような切り取り、なかなかできないですよね。
金子:まあ、何と言ってもバンド名がメガネブラザースですからね(笑)。メガネには哲学がありますよね。
みさと:メガネをかけている方はもちろんのこと、何か自分の新しい一歩を踏み出したい方に聴いていただきたい曲です。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。まずはポニーのヒサミツ。
金子:今回の曲はポニーのヒサミツとしては珍しくエレキギターを前面に出した曲になっていると。普段はアコースティックなイメージがあるから、ちょっと新鮮味ありましたね。で、歌詞で描かれているのは「スーパーマン」。"みんなを救ってくれるスーパーマンだけど、でもスーパーマンのことは誰が救うのか?"というのがテーマで、このスーパーマンはそれぞれにとってのヒーロー、それぞれにとっての救ってくれる人の比喩にもなっていて、そこからいろんなことを考えさせられる曲にもなっています。そんな描き方も含めて、この飄々とした雰囲気はメガネブラザースともちょっと通じるような部分もあるので、一緒に聴いてもいいかもしれないですね。
みさと:良さそうですね。"現実にスーパーマンはいませんが、私からすればスーパーマンといえる人たちはたくさんいます。しかし、果たしてそんな彼らがみんな救われているのか、というと、救われていなそうな人もたくさんいて、果たしてそういう人たちのことは誰が救ってくれるのだろうか、救わるような世の中でなきゃいけないんじゃないか、みたいなことをよく考えます"という内容でセルフライナーいただいています。今週は社会に対しての問題提起から生まれた楽曲がちらほらあるなという印象で、ただ説教臭く語るのではなく、ユーモアや愛情を持って高い完成度で作られている方たちが多いですね。
金子:ちなみに7月から『スーパーマン』の新作映画が公開されていますけど、タイミングが被ったのはたまたまだそうです(笑)。
みさと:引きがありますよね(笑)。こういうのも才能の一つです。続いて、終日柄。
金子:もともと終日柄はコロナ禍でアートプロジェクト的に始まっているわけですけど、今年の4月からは、ギターボーカルの淡甘(アイ)さん、ベーシストの岩瀬涼介さん、そして映像クリエイター・デザイナーのe:宇宙旅行(イーウチュウリョコウ)さんの3人体制になっています。今回の曲はピアノを軸にビートメイクがされている曲になっていて、この感じも終日柄としては割と新鮮。3人編成になったことで音楽的に自由度が上がって、いろんなことが試せるし、いろんなことをできるスキルも身についてきている感じがしました。
みさと:タイトルは「synopsis」。"あらすじ"という意味になっていて、"本のあらすじの部分を人間の人生に当てて書き下ろされた"といただいているんですけど、あらすじって本編の前に読むものだと思うんですが、走馬灯のような楽曲だなと感じていて、ドラマのエンディングで流れていそう。そんな映像が見える一曲だったかと思います。そんなPart-3からどうしましょう?
金子:RiE MORRiSの新曲を紹介しようと思います。
みさと:金曜日の夜はもうこの曲ですね!
金子:今は土曜日ですけどね(笑)!
みさと:あはは(笑)。金曜日と土曜日の夜も聴きましょう!
金子:今年後半にアルバムリリースを予定しているそうで、そこからの先行シングル。RiE MORRiSさんはこれまでもいろんな人とコラボレーションしながら曲をリリースしてますけど、今回プロデューサーはVictor Newman(ヴィクター・ニューマン)。1980年代から活動してて、Janet Jackson、Snoop Dogg、Jay-Z、2Pacなど数多くのアーティストのレコーディングに、ボーカルプロデューサー、エンジニアとして参加している人物だと。
みさと:どういうことなの?どういうつながりなの(笑)?
金子:さらに楽曲に参加しているのがSkip Martinで、元Kool & The Gangのメンバー。
みさと:どういうこと(笑)?
金子:Kool & The Gangも1980年代から活躍するレジェンド的なファンクバンドですけど、RiE MORRiSさんの繋がりはすごいですよね。
みさと:すごいわ。
金子:こういう人たちが参加しているだけあって、クオリティは保証済み。そこにRiE MORRiSさんが持っているスムースなボーカル力が合わさって、まさに金曜の夜に聴きたいようなファンキーでかっこいい曲になっていました。
みさと:サビの歌詞とサウンドのシンプルさが強烈に脳内をループする曲になっていまして、金曜日の夜と、あと土曜日の夜も!その没入感と開放感が音だけで表現されている今夜にぴったりないい曲だと思います。
番組の後半はWAZGOGGこと、Wataru Fujiwaraがゲストで登場!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武の2人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10