SENSA

2022.04.21

【読むラジオ】MC:森山公稀(odol) お気に入りの新曲紹介&中村佳穂の最新アルバム『NIA』分析「Room H」 -2022.04.20-

【読むラジオ】MC:森山公稀(odol) お気に入りの新曲紹介&中村佳穂の最新アルバム『NIA』分析「Room H」 -2022.04.20-

FM福岡で毎週水曜日 26:00~26:55にオンエアしている音楽番組「Room "H"」。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本 大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。
今週のMCは、odolの森山公稀が担当。SENSAでは、オンエア内容を一部レポート!
(聴き逃した方やもう一度聴きたい方は、radiko タイムフリーをご利用下さい。)

(森山)近況報告ですが、最近は制作期間に入りまして、いっぱい(曲を)作っています。
かなり暖かくなってきて、周りでは花粉に苦しんでいる方も多いのですが、皆さんはどうですか?僕は小〜中学生ぐらいまではかなり花粉症がひどかったんですけど、治ったんですよね、いつのまにか。
だんだんと症状がなくなってきて、今年もほとんど出ておらず。ちょっと目がかゆいくらいです。だから、苦しんでいる方も希望を捨てずに過ごしていただければなと思います。ただ、なぜ治ったのかがちょっと分からないので、アドバイスはしようがないんですけどね、ごめんなさい。花粉症に苦しんでいる皆さん、今年も頑張って下さい。

Twitterをされている方は、#fmfukuoka #RoomH をつけて是非ツイートしてください。と、毎回皆さんにお伝えしていて、ツイートをいただいていたのに、全然紹介できていなかったと。確かに。番組も新年度になって、台本も少しずつリニューアル/アップデートされているようで、今回からなんと皆さんからのツイートをご紹介できるそうです。
ということで、早速、1つだけ紹介させていただこうと思います。
Eikoさん「森山さんの #RoomH のキース・ケニフ特集、とっても面白かった!〜学生になって講義を受けている気持ちでした。森山先生。」ツイートありがとうございます。楽しんでいただけたようで嬉しいです!
思い返せば僕はいろんなところで「森山先生」って呼ばれることがあって、そういうことを自分で言うと、まんざらでもないような感じに聞こえるかもしれないのですが、いや、正直に言うと確かに少しまんざらでもない感もあるんですけど、元々の始まりは中学生の時に......いや、ちょっとこの話をすると長くなるので、またいつかこの話はしますね。
ツイートありがとうございました。皆さんも気軽につぶやきをお待ちしております。

▼3/30(水)にオンエアしたキース・ケニフ特集のレポートはこちら▼



今年出会ったお気に入りの新曲を紹介!@リビングルーム

ここからは@リビングルームのコーナーです。今聴いてもらいたい音楽についてお話しするお時間なのですが、今回は4月になって最初の森山回の放送ということで、僕、森山が「今年出会ったお気に入りの新曲たち」を紹介していきたいなと思います。
今回は2022年の1月から3月の間にリリースされた作品の中からセレクトしてきました。

1曲目:宇多田ヒカル「BADモード」
まず1曲目は、宇多田ヒカルの「BADモード」です。2022年1月19日に配信リリースされた宇多田ヒカルさんの8枚目のアルバム『BADモード』の1曲目、タイトルトラックです。
こちらの曲はたしかリリース日にMVが公開されて、僕は最初MVで聴いたんですけども、ファースト・インプレッションは、なんだかすごい曲だ、と思いましたね。MV自体もかなり印象深かったです。
この曲については歌も歌詞もアレンジも演奏も、語りたいことが沢山ありますが、やっぱり何と言っても曲の構成や展開が気持ち良いなって感じています。全体的に、楽器や歌自体はテンションが一定だけれど、展開の作り方やトラックのサウンドデザインでどんどん連れて行かれる感じというか。
例えば、冒頭からの構成がイントロ→A→B→サビだとして、そのサビ的な箇所はフルのメロディーでは1度しか歌われず、2番の同じセクションのメロディーは間引かれていますよね。作る人の心情としては、いいメロディーは何回でも歌いたいし聴いて欲しいと思う気がするんですけど、その余裕がすごいなと。2回目でもう間引いちゃう。しかも、それでいて物足りなくないんですよね。
それと、中盤の2分ぐらいのところに挟まっているインターをはじめとして、サウンドデザインもすごく印象深いです。そのインターのセクション自体ももちろんですけど、その後Aに復帰したところで後半すごく近い音像で管楽器が鳴るんですよね、歌の隙間でオブリみたいに。なのですが、そこに至る前までとその直後には、逆に割とチープなトランペットが鳴らされているんですよね。そのギャップでより近さが際立って。そういった演出の具合やサウンドデザインの聴きどころもたっぷりあって、でもさりげないみたいな、わざとらしくないみたいな。
そして言うまでもなく、歌詞を含めて曲がそもそもすごくいいですしね。僕もこのアルバムの中でもとても好きな曲です。



2曲目:優河「灯火」
続いて2曲目は、優河さんの「灯火」という曲をご紹介したいなと思います。2022年3月23日にリリースされた優河さんの3枚目のアルバム『言葉のない夜に』の9曲目に収録されています。シングルとしては1月にリリースされております。TBS系金曜ドラマ『妻、小学生になる。』の主題歌ということで、皆さんはこちらのドラマご覧になりましたか?
僕は家にテレビがなくてドラマなどを観られていないのですが、タイトルから全く内容の想像がつかないというか、妻が小学生に?一体どういうことなんですか?と、興味がそそられるタイトルですね。
優河さんは前のアルバム『魔法』もすごく好きで聴いていたのですが、今回もまたまたよくて、やはり歌の力が魅力的で、あの歌声だからこそシンプルでリッチなフォーク的なサウンドにすごく合うんですよね。お互いに引き立て合っている感じというか。
そしてさすがの岡田さん(優河のバックバンドである魔法バンドのギタリスト)ということで、単に音がすごく気持ち良いですし、そういう良さもあります。ライブセッション映像も最高でしたよね。
YouTubeで公開されていますので、まだの方はぜひ観て欲しいなって思います。すごく良かったですよ、本当に。ぜひ聴いてみてください。


▼優河と魔法バンドのインタビューもぜひチェックを!▼



3曲目:AURORA「Giving In To The Love」
3曲目に聴いていただきたいのは、AURORAの「Giving In To The Love」です。2022年1月21日にリリースされたAURORAのアルバム『The Gods We Can Touch』に収録されています。この曲自体は、2021年に先行シングルとしてリリースされていたんですが、アルバムが2022年にリリースということで今回入れさせていただきました。
このアルバムも本当によく聴きました。というか、聴いています。資料によると、アルバム自体がギリシャ神話をコンセプトにしており、15曲それぞれが神話の神々をモチーフとして作られているようです。が、僕自身にはその文脈がないというか、そこを含めて作品を楽しめてはいなくて、それもあってか最初は先行でシングルリリースされていた曲を中心に単曲でばかり聴いていたんですね。ですが、次第にこの全体のアルバムの雰囲気というのを定期的に聴きたくなることがあって、だんだんと好きになってきているアルバムとも言えます。
AURORAの歌声って多面的な魅力あると思いますが、高い音域を歌う時に、分かりやすく言うと、囁くように歌う時とまっすぐ遠くに向かって歌う時があって、どちらの歌声も僕は好きなんですけども、この曲はその両方が聴けるんですよ。すごくお得ですね。
そしてAURORAの曲は、この曲に限らずですけども、歌詞が良くて、AURORAの歌詞ってメッセージ性が強いというか、思想が反映された歌詞でもあるのですが、そのメッセージ性の強さと優しさのバランスが大好きです。
普段僕は歌詞の話ってあまりしないですけど、日本語の歌だとかえって歌詞をそんなに聴かない傾向にあるというか、聴けないというか。
他の言語だったら逆に歌詞が気になってきたりするんですけど、この感覚共感できる方いらっしゃいませんかね?日本語だと意味が入って来すぎるというか、そっちに引っ張られている感じがするのですが、他の言語だとまず音として入ってくるじゃないですか?その、音として入ってきた中で、例えば英語だったら部分的にフレーズとして聴き取れたり、単語の意味だけが残ったりと、まず抽象的に残っていく感じがすごく音楽的だなというか、僕にとってはちょうどいいなと思っています。そこから、気になった曲は後から歌詞を調べて解釈してみたり、みたいな楽しみをすることがありますね。共感してもらえる方いたらすごく嬉しいなと思いますが、ちょっと話がそれました。AURORAは歌詞もいいよねという話でしたね。



今話題の作品を様々な角度から分析する新コーナー「今日の一枚(仮)」

ここからは突然ですが、新コーナーです。森山公稀の回だけ不定期でお送りすることになるであろう、新コーナー「今日の一枚(仮)」というコーナーを今回からスタートすることになりました。今話題の作品や新譜を毎回1つお題としてもらって、その作品を森山的に様々な角度から(勝手な視点で)分析してみるというお時間です。
これまでの@ベッドルームのコーナーでは、僕の趣味全開というか、好き勝手に作品を語ってきていたんですけども、このコーナーでは新譜だったり、話題作だったり、そういうものを中心に取り上げていくことになるようです。テーマとなる作品は毎回スタッフの方に一緒に選んでもらうので、皆さんも良かったら、扱ってほしい作品などあれば、「#fmfukuoka #RoomH」 をつけてTwitterなどで番組にメッセージいただければと思います。

中村佳穂の最新アルバム『NIA』を分析
それでは、本日の作品は今年3月にリリースされた中村佳穂さんの新しいアルバム『NIA』です。
中村佳穂さんは、1992年生まれ京都出身のシンガー・ソングライター。2018年11月にアルバム『AINOU』リリース。プロのミュージシャンにもファンが多いアーティスト。
ということで、みなさんもご存知かと思いますけど、そんな中村佳穂さんの『NIA』、今回は『NIA』のメロディーに着目して、その中でも特に「ファ」の音、ドレミファソラシドの「ファ」の音を軸に分析をしてみました。
どういう事?という感じだと思いますが、順を追って説明していきますのでよかったらお付き合いいただければ嬉しいです。

中村佳穂さんの楽曲の魅力って本当に様々にあると思うんですよ。サウンドデザインもそうだし、メロディーもそうだし、言葉・歌詞もそうだし。さまざまある中で、その中の一つとしてやはり、すごく歌を感じるんじゃないかなって思うんですね。中村佳穂さんの曲を聴いていて、すごく「歌だ!」って感じがあると僕は思うんです。
それはもちろん中村佳穂さんの表現力によるものではあるわけですが、それを言っていても分析になりませんので、その歌らしさみたいなものを支えるメロディーに着眼点を絞って、一体どういうことになっているんだろう?というのを探ってみました。今日はその歌の魅力の秘密みたいなもののほんの一部を、少しだけ解き明かせるかもしれないと、そういう風に思っております。

今回この『NIA』を扱うにあたってアルバムを聴いていて、メロディーに関していくつか気になったことがあったんですよ。例えば音階的なメロディーに溢れているなと感じたり、あとはメロディーに対するピッチの外し方・ずらし方というのがすごく特徴的だなとも思いました。そして、今日お話しする「ファ」の音と「シ」の音が聴こえてこないな、ということです。
本当はいろんなこと全部話したいのですが、「ファ」と「シ」の話、その中でもまずは「ファ」に絞って今日はご紹介していきます。

そういえば今更になりましたけど、番組もリニューアルということで、僕の収録システムも少し変わりましてピアノが今回から使えそうなので、音を出しながら話したいなと思っております。
まず、そもそもの話になっちゃうんですけど、音楽ってそれぞれの曲に固有の調・キーがあるじゃないですか?ハ長調/Cメジャーみたいな(ピアノを弾く音)、いろんな調・キーがあるんですね。ポップスはほとんど全て、いずれかの調のルールの中で作られています。(1曲の途中で変わることもありますけどね。)
そこで、それぞれの曲の調の4番目の音に注目してみるんですね。ハ長調の「ドレミファソラシド」だったら(ピアノを弾く音)、「ファ」。この「ファ」の音がハ長調の中でどういう意味や役割を持つのかというのも、実は音楽にはあって、それはどの調だとしても、4番目の音なら共通なんですね。
ただ、毎回「この曲のこの調の4番目の音はこれで〜」とか言っていると少し話しづらいし、皆さんもイメージしづらいと思いますので、今回は全部の曲を「ドレミファソラシド」に置き換えて話をしていきたいと思っています。つまり、全ての曲の調の4番目の音を「ファ」と呼びます。

前提の話が長くなりましたが、本題に入りますね。
『NIA』というアルバムを聴きながらそれぞれ曲のメロディーの中に「ファ」がどのくらい出てくるか、追いかけて数えてみたんですね。そしたらアルバム12曲全部を通して「ファ」がなんと30回ほどしか出てこないんです。
「なんと」と言ってもそれがどのくらいの数なのか全くイメージできないと思うので、参考までにodolのアルバム『はためき』も数えてみたのですが、『はためき』には、116回「ファ」が出てきます。ちなみに、『はためき』の曲数は9曲ですからね。『NIA』は12曲で30回なので、1曲平均で『NIA』は2.5回で、『はためき』は12.9回、約13回です。

もっと極端な例を出すと、odolの「未来」という曲は、1曲で「ファ」が40回登場するんですね。でも『NIA』はアルバム全体で30回だけ。つまり30音、30文字分しかメロディーの中に「ファ」が出てこないんですね。
さらに言うと、この『NIA』の中で「ファ」が最も多く登場する曲というのは、6曲目の「Q日」という曲で、この曲には14回登場するんです。これは曲の最後に〈瞬 瞬 瞬間移動〉というリフレインするフレーズがあって、この「瞬」のところが「ファ」で、それが何回か繰り返されて14回になるんですね。そこ以外には、この曲に「ファ」は出てこなくて、仮にこの6曲目を抜いたとしたら、残り11曲で「ファ」が16回なので、1曲につき1.5音弱とかですよね。
「ドレミファソラシ」全部使えるのに、平均すると1.5音、1.5文字しか「ファ」を使っていないと。



odolの「夜を抜ければ」という曲、すごく歌が少ない曲ですけど、あの曲でさえ「ファ」は18回出てきますから、11曲で16回というのは少なく感じてきてもらえたんじゃないかなと思うんです。
それで、「ファ」が少ないというのはわかったけれど、それが何なのか?という話をしていきたいと思います。



ここからは僕の勝手な解釈に基づいた解説なので、本当に勝手に分析していきますのでそのつもりで聞いてくださいね。
冒頭で少しだけ「ファ」と同じように、「シ」も少ないとさらっと触れたんですけど、この「ファ」と「シ」が登場しない音階というのが、「ドレミソラ」ですね。(ピアノを弾く音)
この「ドレミソラ」という音階には実は名前がついているんです。「メジャー・ペンタトニックスケール」という名前があって、もしかしたら「ヨナ抜き音階」という名前を聞いたことがある方もいるかもしれませんね。4つ目「ファ」と7つ目の「シ」が抜けているから、ヨナ抜きと呼ばれるんですね。
この名前を聞いたことがある方は「「ドレミソラ」でピアノを適当に弾いていたら、日本っぽく聴こえる」みたいな文脈で、その名前を聞いたことがあるんじゃないかなと思います。

「ドレミソラ」は確かに日本っぽくもあるのですが、その説明は実はあまり正しくなくて、どちらかというと、「歌いやすい音階」という風に呼ぶ方がまだ正しいのかなと思います。
細かい話は省略しますが、この「ドレミソラ」という音たちはこの5音のどの音からどの音にいったとしても、割とメロディーとしてうまくいくんですよ。無理がないというかね。
逆に「ファ」と「シ」には結構無理がある組み合わせというのがあって、「ファ」とか「シ」を他の音と同じくらいの頻度で使っちゃうとこんな感じになるんですね。(ピアノを弾く音)
なんかこう気持ち悪いというか、落ち着かないというのが感じられるんじゃないかと思います。

「ファ」と「シ」とはそういう風に、若干他の音と比べて、個性が強いやつでなんです。
逆にそれ以外の5音の使いやすさというのは、皆さんも例えば適当に鼻歌を歌ってみたりするとき、知らず知らずのうちにほとんど「ドレミソラ」しか使ってなかったりします。適当に歌えば歌うほど、「ファ」と「シ」というのが出てこなくて、そのくらい自然には出て来づらいというか、自由度が低いって言うといいのかな?「ファ」を歌ったら、次は「ミ」の方に行きたいよねとか、「シ」を歌ったら「ド」にいきたいよねという、ちょっとルートが限定されていたりする、そういう音なんです。

でも「じゃあみんな"ファ"と"シ"を使わないのか」と言われるとそうじゃなくて、「ファ」と「シ」にもいいところはたくさんあって、例えば情緒があるメロディーとか、他の音「ドレミソラ」に比べて色彩が見えやすいということもあります。簡単にいうと「ファ」と「シ」は、お洒落なやつ、お洒落でちょっと扱いづらいやつみたいな感じです。
これは、日本人だからとかそういうわけじゃなくて、もちろん民族や地域によっての捉え方の差はありますが少なくとも日本固有の話ではないわけですね。だから、「ファ」と「シ」いうのは多くの曲で、歌のメロディーへの登場回数というのが他の音に比べて少ない2音なんですよ。だからこそ「ファ」と「シ」が使われていない音階を呼びやすいようにメジャーペンタトニックだとかヨナ抜きだとか名前もついているわけです。

odolでも例えば、「虹の端」という曲は「ファ」も「シ」も使われていないメジャーペンタトニックスケール、「ドレミソラ」で作られているんですよ。これは、もともとこの曲の原曲はメンバーみんなで合唱をするために作ったので、結果的に歌いやすさ重視というのが反映されているメロディーになっているわけですよね。



そんなわけで「ファ」と「シ」を使わない曲ということ自体は珍しいことではないんですが、『NIA』ではアルバムを通して一貫してここまで「ドレミソラ」ばかりで作られているということ、つまりメジャーペンタトニック的であるというのは、とても特徴的だなという風に僕は思っています。

勝手な解釈をまとめていきたいと思いますが、「ドレミソラ」、「メジャーペンタトニックスケール」というのは説明した通り、とても自由な音階なんですよ。どこからどこへでも動き回れるという。
そして「ファ」と「シ」という音による情緒とか色彩の限定みたいな、メロディーによる色彩の限定みたいのが少ないメロディーとも言えるんじゃないかなと思うんですね。
だからこそ、中村佳穂さんの歌とか声の表現というのが生まれるための余地とか余白がすごく広いメロディーなのではないかなと思うんですよ。逆に言えば、その余地がたくさん残されたメロディで歌っているからこそ、より一層、その生き生きとした歌の表現というのが生まれてくるんじゃないかなと感じました。
と、本当に偉そうに勝手なことを言ってしまって申し訳ないなとは思っているんですが、あくまでも個人的な分析と解釈なのでご了承くださいね。

そして、ちなみに僕はメロディーを作る時に、今日喋ったような「メジャーペンタが」とか「ここは"ファ"で情緒出して」みたいな話とかって一切考えないんですよ。メロディーを作る際にそんなことは考えないし、そんな風に考えて作っている人に出会ったこともないです。なので、こういう話って、それぞれのアーティストの感性の元に生み出されたものを後から分析してみたということに過ぎないので、正しいか正しくないかという話でいくと、正しくはないんですね(笑)。 正しくはないですし、若干野暮でもあるかなという風には思っています。これだけ長々と喋ってきて今更言うことでもないですけどね。
それでも僕がお伝えしたいのは、こういう観点で音楽を「深読み」してみるというのも楽しみの一つというか、ちょっと面白いかなとも思うので、それが皆さんにも伝わっていたら嬉しいなと思っております。

そしてちょっと長くなってきましたが、最後にアルバム『NIA』全体の構成を「ファ」と「シ」の観点でもう1つ分析してみると少し面白かったので、ご紹介しますね。
全12曲入りのアルバムなのですが、1曲目の「KAPO」から5曲目「Hey日」までは、さらに「ファ」と「シ」の濃度が低くて、なんと「ファ」が6回、と「シ」はたったの2回しか登場しません。5曲合わせて、「ファ」が6回と「シ」2回のその8文字分以外は、全て「ドレミソラ」だけでメロディーが作られているんですね。
そこから、次の6曲目の「Q日」で「ファ」が14回、「シ」が17回出てきて、後半戦は割と満遍なく登場しています。それでも全然少ないですけれどね。

これもね、それがなんなのかと言われると難しくて、僕たちももちろんアルバムの曲順を考える時に、「"ファ"の数が少なめの曲から初めていって...」みたいなことを考える訳もないので、『NIA』もそういうことで曲順が決まっていることはないはずだとは思います。
ないとは思うんですけども、この前半1〜5曲目がかなりメジャーペンタトニック的であると、つまり歌うのに最適な自由なメロディ、歌のためのメロディであるというのは、このアルバムのカラーの一因となっているんじゃないかなという風に僕は思いました。
中村佳穂さんの他のアルバムではどうなのか。というところは今回は数えていませんので、これがそもそものスタイルなのか、この作品がそうなのか、というところまではわかりませんが、少なくともこのアルバムの「ファ」と「シ」事情はそういうことになっているようです。

すごく長々と喋ってしまいましたが、お付き合いいただいた方ありがとうございました。
当然ですが、今日話したような事というのは、アルバム『NIA』の本当にごくごく一部の要素でしかないわけで、そんなことを一切考えずに聴いていただいても素晴らしいアルバムであることに間違いありませんので、最後に、ようやく曲をオンエアしたいなと思います。
どれもすごく良い曲なのですごく悩んだんですけども、本日は3曲目の「アイミル」という曲をオンエアしたいなと思います。ギタリスト西田修大さんの素晴らしいギターソロもこの曲では聴けますのでね、そんなところもぜひ聴いてみて下さい。
ちなみに、この曲には「ファ」も「シ」も1回も登場しません。でも、そういうことを忘れて純粋に音楽を聴いていただけたらと思います。



今日は新コーナー「今日の一枚」ということで、個人的な解釈をふんだんに入れて『NIA』を語ってみたのですが、ほんの少しでも中村佳穂さんの歌の魅力のある一面が垣間見えたとしたら嬉しいなと思います。
でも、こういった分析では絶対に語り尽くせないのが音楽というものだと思いますので、純粋にアルバムを改めて楽しんでいただくきっかけになったら良いなと思います。以上「今日の一枚」のコーナーでした。


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Photo by ミゾベリョウ


4月20日(水) オンエア楽曲
odol「幸せ?」
宇多田ヒカル「BADモード」
優河「灯火」
AURORA「Giving In To The Love」
中村佳穂「アイミル」

番組へのメッセージをお待ちしています。
Twitter #fmfukuoka #RoomH をつけてツイートしてください。MC3人ともマメにメッセージをチェックしています。レポート記事の感想やリクエストなどもありましたら、#SENSA もつけてツイートしてください!


RADIO INFORMATION

FM 福岡「Room "H"」
毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"203号室(毎週水曜日の26:00~26:55)"では、音楽番組「Room "H"」をオンエア。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、本音で(Honestly)、真心を込めて(Hearty)、気楽に(Homey) 音楽愛を語る。彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。

放送時間:毎週水曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)


番組MC
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黒川侑司(ユアネス Vo.&Gt.)
福岡で結成された4人組ロックバンド。感情の揺れが溢れ出し琴線に触れる声と表現力を併せ持つヴォーカルに、変拍子を織り交ぜる複雑なバンドアンサンブルとドラマティックなアレンジで、
詞世界を含め一つの物語を織りなすような楽曲を展開。
重厚な音の渦の中でもしっかり歌を聴かせることのできるLIVEパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2021年12月1日に初のフルアルバム「6 case」をリリース。
オフィシャルサイト @yourness_on @yourness_kuro

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松本大
2006年に長崎県で結成。バンド名「LAMP IN TERREN」には「この世の微かな光」という意味が込められている。松本の描く人の内面を綴った歌詞と圧倒的な歌声、そしてその声を4人で鳴らす。聴く者の日常に彩りを与え、その背中を押す音楽を奏でる集団である。
2021年12月8日にEP「A Dream Of Dreams」を配信リリース。
オフィシャルサイト @lampinterren @pgt79 / @lampinterren

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森山公稀(odol Piano&Synth.)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に2014年東京にて結成した3人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。
2022年3月16日に「三月」を配信リリース。
オフィシャルサイト @odol_jpn @KokiMoriyama


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