SENSA

2022.03.31

【読むラジオ】MC:森山公稀(odol) アメリカの音楽家キース・ケニフ特集「Room H」 -2022.03.30-

【読むラジオ】MC:森山公稀(odol) アメリカの音楽家キース・ケニフ特集「Room H」 -2022.03.30-

FM福岡で毎週水曜日 26:00~26:55にオンエアしている音楽番組「Room "H"」。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本 大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。
今週のMCは、odolの森山公稀が担当。SENSAでは、オンエア内容を一部レポート!
(聴き逃した方やもう一度聴きたい方は、radiko タイムフリーをご利用下さい。)

(森山)3月の始めにodolのワンマンライブ "individuals"をやったんですけども、すごく良いライブになったなと思います。2日目が終わって、スタッフやメンバーみんなで「良いライブが出来たな」と盛り上がって、「今年もう一回やろう」みたいな、テンション上がっている最近です。
今年もう一度"individuals 2022"をやれるんじゃないかと淡い期待をしながら、皆さんも楽しみにしていてくれたら嬉しいなと思っております。
そしてなんと、本日のオンエア日は3月30日の深夜、日付的には3月31日ということで今年度最後の放送ですね。番組自体は昨年2月ぐらいから始まってたので、1周年というのはいつのまにか過ぎ去っていたということにはなってるんですけど、でも本当に1年間早かったなと思います。皆さん本当にありがとうございました。聞いてくださっている皆さんのお陰で、僕も拙いながらもとても楽しい1年間だったなと思っております。
そして来年度もありがたいことに続けさせてもらえるということで、より良くリニューアルしながらも変わらず頑張っていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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Photo by Shaikh Sofian



アメリカの音楽家 キース・ケニフを特集@リビングルーム

それではここからは@リビングルームの選曲のコーナーです。本日もまた、ある1人のアーティストに注目して、1時間深堀りしていく特集をお送りしたいなと思っております。
本日特集させていただくのはキース・ケニフ(Keith Kenniff)です。まずはキース・ケニフがどんな人物なのかというプロフィールをご紹介したいと思います。
キース・ケニフはアメリカのペンシルバニア州出身のエレクトロニカやアンビエント、ポストクラシカルといったジャンルの中心的なミュージシャンの1人です。自身のリリース作品だけではなくて、映画や広告の音楽もたくさん作っています。広告の音楽というのは、例えば AppleのiPhoneのテレビCMだったり、Google、ホンダ、キャノン、リーバイスなどの超有名企業のCMで使われているので、キース・ケニフをご存じない方も、彼の音楽は知らないうちに耳にしているという方が多いんじゃないかなと思います。
そんなキース・ケニフなのですが、10歳の頃からドラムやギター、ベースの演奏を始めて、最初はパンクバンドを組んでいたんですけども、バンド活動をしている中で様々なジャンルに触れていって、バークリー音楽大学に入学します。2006年にバークリーを卒業するんですけども、その在学中の2004年にはもうすでに複数の名義でアルバムをリリースしています。そこからこれまで数多く作品をリリースしてきているという感じですね。
キース・ケニフはかなり多作なのですけども、作品数と同時に、とても多くの名義とプロジェクトを持っているというのが彼の活動の特徴的なところです。
ソロプロジェクトとしては、GoldmundやHeliosという名前で、映画や広告の音楽はKeith Kenniffという本名の名義を使っていたりします。
奥さんのホリーさんという方がいるんですけど、ホリーさんと一緒にMint Julepというユニットをやっていて、2人の間に生まれた我が子のためには、Meadowsというまた別の名前つけて夫婦で音楽を作っていたりもしました。あとは双子の兄弟と一緒にSONOというモダンジャズグループを組んでいたりして、そこではドラムを演奏していたり。
そんなふうに本当に様々な活動をしていますね。

このコーナーでは、数多くのプロジェクトの中からGoldmund、Heliosという2つのソロプロジェクト、そしてMint Julepという妻ホリーさんと一緒にやっているユニットという3つのプロジェクトに絞って音楽を聴きながら、なんでこんなにたくさん名義があるんだろうかとか、それぞれの名義やプロジェクトがどういったものなのかというのを含めてお伝えしていければいいなという風に思っております。
それぞれの名義・プロジェクトというのは、単純に音楽ジャンルの違いというだけではなくて、キース・ケニフの向き合い方にも明確な違いがあったりするので、そういうところも一緒にご紹介していきたいと思います。

ピアノを中心としたプロジェクト「Goldmund」
それではまずご紹介するのはGoldmundです。ここまで、全体像というか、たくさん喋ってきたので、詳しい紹介よりも先にまずは音楽を聴いていただきたいなと思います。
お送りするのはGoldmundで「Sometimes」という曲なのですが、こちらの曲が収録されている『Sometimes』というアルバムは、インプロビゼーションを軸としたアルバムになっていまして、つまり即興での録音というのをもとに制作されています。



美しいですよね。Goldmund名義の作品というのは一貫してピアノを中心としています。シンセとかテクスチャーが添えられていることもよくあるんですけども、ピアノという楽器がこのGoldmund のコンセプトの中心になっています。キース・ケニフというミュージシャンは、演奏や、いわゆる作曲と言われる音符を並べていく作業よりも、サウンドやテクスチャーにすごく重点を置いていて、そこから制作を始めていくスタイルの人なんですね。
例えば弾き語りの人とかを思い浮かべてみると、コードとメロディーというのが、音楽の最小限の構成要素なのかなという風にイメージしてもらえると思うんですけど、それはキース・ケニフにとっては二の次のことというか、まずサウンドとかテクスチャーというのがあって、そういう土台の上でメロディーとかハーモニーという要素を構成していくというミュージシャンなんですね。
さらに、先ほど聴いていただいたインプロの『Sometimes』というアルバムに限らず、そういったメロディやハーモニーという要素の多くは即興的らしいんですね。練りに練ってメロディーを作っていくとか、和声進行を考えていくということよりも、インプロだったり、完全にインプロで録音をするということではないにせよ、例えば演奏の間違いとか、ブレとかヨレとかそういうものを無理に修正することなく、意図的に残していることもあると。そういった一見間違いみたいなところも愛して、音源に残しているという美学があるようです。
そういったキース・ケニフの美学とか、クリエーションの独自性というのがよく表れているのがこの『Sometimes』というアルバムかなと個人的には感じているので、ぜひ1枚通して聴いてみてほしいなと思います。すごく名盤だと思ってます。



ジャンルの制限がない自由なプロジェクト「Helios」
続いてはHeliosをご紹介いたします。こちらもGoldmundと同じくキース・ケニフのソロプロジェクトです。
音楽的な違いとしてはGoldmundは先ほどご紹介したようにピアノ主体としてモダンクラシカル的でミニマルなサウンドを中心としていたと思うんですけども、Helios名義では、そういったジャンルの制限みたいなものはなくて、トーンは一貫していながらも、音楽性としては様々な作品をリリースしてきています。
そして簡単に言うと、このHeliosというのがキース・ケニフにとってはホームみたいな場所なんです。好きな時に好きなように好きなものを作るというような、最も個人的な、自由なプロジェクトという感じなんですよね。
Goldmundをはじめ他のユニットやプロジェクト、映画や広告の仕事など、いろいろ多岐にわたって制作している中で、それぞれで得たインスピレーションを全部このHeliosに戻す、というようなプロジェクトです。
そんなHeliosは2015年にアルバム『Yume』をリリースしています。この『Yume』に収録されている「It Was Warmer Then」という曲を今日はオンエアしたいなと思っています。
先ほど説明したようにアルバムごとに違ったサウンドなので、1曲を選んでHeliosをご紹介するのはすごく難しいんですけども、この曲はキース・ケニフの多様性というか、様々な音楽的要素が聴こえてくる感じがしていて、少しイメージが掴めるんじゃないかなと思いますので選んでみました。ちなみに『Yume』というアルバムタイトルですが、これは日本語の"夢"です。実は日本とも近しい存在のキース・ケニフなのですが、Heliosという名義で『Yume』というアルバムを作っております。



妻ホリー・ケニフとのユニット「Mint Julep」
最後は、Mint Julepというユニットを紹介したいなと思います。Mint Julepは彼の奥さんのホリー・ケニフ(Hollie Kenniff)とのユニットになっております。音楽性としては、ドリーミーなシューゲイズ的な音楽性で、ホリーさんがボーカルとして歌っています。
Mint Julepというプロジェクト自体が、キース・ケニフがホリーさんの歌うための場所としてスタートさせたものなので、ホリーさんの声や歌というのにフォーカスしていて、先ほどの2つのプロジェクトには無かった歌があります。
"シューゲイズ・インスパイアード・ポップス・デュオ"と、オフィシャルでは表現されていたんですけど。90年代初頭とかのシューゲイザーとかからの影響を受けながら始まっていて、最近は結構もっとポップ寄りだったり、エレクトロっぽかったり、いろんなジャンルを吸収しながら変化しながらリリースをしてきているユニットになります。



お送りしたのはMint Julepで「Black Maps」。こちらは『In A Deep And Dreamless Sleep』というアルバムに収録されております。

キース・ケニフが、音楽を作ることの喜びの1つに、例えばリリースした数年後にその曲を聴いた時作った当時何があったか、どういうことを考えて感じていたのかを音楽が教えてくれるということをあげていました。これは僕としてもすごく納得感があるというか共感しますし、みなさんも音楽を聴いてそんな風に感じることがあるんじゃないかなと思います。
その上で、Mint Julepというプロジェクトは、夫婦2人で過ごしている日々に起こる存在する、さまざまな瞬間を記録していくもので、例えば写真や映像を撮ったり、日記をつけたりするのと同じように様々な瞬間を記録していくための、すごくクールなやり方なんだという風に言っていて、そういう音楽との自然な関係性がすごく羨ましいなと感じましたね。
今日は時間の関係上、紹介はできないんですけども、冒頭で少し触れたように、2人の間にお子さんが生まれた時にMeadowsという名前をつけて、夫婦2人でその子に捧げる音楽を作っていたりします。その他にも双子の兄弟と一緒にやっているSONOもご紹介しましたが、そういう風に自分の近くの人たちと多岐に渡った活動をしております。
彼は家族とか、レーベルメイトとか、そういった身の回りのコミュニティを重んじるというか、周りの人や家族と過ごす時間がまずあって、その中に音楽があるみたいな、そういう活動の仕方から人柄や考え方まで感じられるような気がするような、そんな人です。

そして最後に日本との関係性というか、日本でのファンもすごく多いキース・ケニフなのですが、2011年東日本大震災の時に、翌日の3月12日に「Nihon」(Goldmund名義)という曲を発表していて、その後ケニフ夫妻が周りのアーティスト集めて、『For Nihon』というチャリティーを目的としたコンピレーション・アルバムを企画していたりして。
実は僕はその時に彼の存在を知ったんです。その曲もすごく良くて、いまもYouTubeで聴けると思いますので、ぜひ気になった方は聴いてみてほしいなと思います。



Goldmund「Threnody」紹介@ベッドルーム

ここからはRoom "H"の住人がプライベートで大事にしているディープな偏愛ソングを毎週1曲ご紹介、@ベッドルームのコーナーです。
本日は引き続きキース・ケニフ特集をお送りしていきますが、このコーナーでは多作な彼の音楽たちの中から1曲選んで、深く語ってみたいなという風に思います。
前半でたくさん紹介したプロジェクトの中でも僕が普段1番聴いているのは、Goldmundの作品なんですが、その中から1曲を選んできました。
2008年リリースのアルバム『The Malady of Elegance』というアルバムから、「Threnody」という曲です。
2015年ぐらいの少し古いインタビューではあるのですが、本人もキース・ケニフというアーティストの表現・クリエイションを象徴するような曲だということでこの曲をあげていました。いろいろと語っていきたいなと思うのですが、まずは先入観なしに聴いていただいた方が良いかなと思いますので、先に曲をお送りします。



最高ですね。ほとんどがピアノだけで、とても静かでシンプルな構成ですが、非常に豊かな作品だと思います。曲を流す前にキース・ケニフの表現を象徴するような1曲だと言いましたが、どういうところが象徴的なのかと言いますと、キース・ケニフは、音楽を作る上でできるだけ少しの要素で多くのことを伝えるという美学があるんですね。その美学をこの曲はとても自然に達成できているんじゃないかということだと思います。
先ほど聴いてもらって、そう感じたんじゃないでしょうか。

この作品は録音も素晴らしくて、圧倒的なノイズの量に気がついたかなと思うんですけど、普段聴いているような音楽と比べてみると、その定義も曖昧ではありますけど、ノイズのような音がすごく多いですよね。
空間のノイズだったり、ピアノを演奏する時に発生する、打鍵した音とか、ペダルのノイズだったり、それを収録したり処理する機材にもノイズが実はあるんですけども、そういった機材のノイズとか、たくさん聴こえてきますよね。
僕たちが現在普段一番よく耳にする録音というのは、なるべく静かなスタジオで、楽器の近くにマイクを置いて、なるべくノイズの少ない機材というのを使って、いかにクリアに綺麗に収録して聴かせるかという発想が中心にあるものが多いと思うんですね。でも少なくともこの作品はそういう発想ではなくて。
別の考え方で、例えばクラシックやジャズの作品とか、ポップスでもライブ盤とかだと多いと思うんですけども、楽器や音楽が演奏されているその空間の響きというのもそのまま収録しようという考え方があります。例えばホールだったり部屋だったり、その音楽がその場で鳴っているままに聴かせるために、そういう空間の音を丸ごと収録するという考え方もあって、でも個人的にはこの作品はそれともまた違う思想だなというふうに感じているんですね。
ちょっとうまく説明できているかわからないですが、空間や機材のノイズって、どうしても存在しているもので、多くの録音作品ではそれをあとから消したりなるべく収録されないようにしているわけです。でもこの作品では、そういった、自分の空間や自分が使っている機材にどうしても存在しているノイズ的なものにも、すごく愛情深く耳を傾けながら、制作されていたんじゃないかなという風に僕は感じるんですね。
それはノイズを、演出としてのノイズとして使うということではなくて、もっと自然に空間とか楽器とか機材に存在するノイズを、自分が弾いてるピアノやシンセサイザーの音と同じように、自分の音の一部、キース・ケニフが大切にしているテクスチャやサウンドの一部として愛しているんじゃないかなと、感じているんですね。
これは感覚的なものだし、本人が言っていた話ではないので、僕はそう感じたということに過ぎないんですけども、このアルバムや作品、活動のスタイルから、すごく愛情深い人なのかなという風にキース・ケニフのことを勝手にイメージしております。
ちょっと話が長くなってしまいましたが、もし今回の放送でGoldmundとかキース・ケニフのことを気になった方はぜひそういったところも考えてみながら、感じてみながら聴いてくれたら嬉しいなと思っております。

3月30日(水) オンエア楽曲
odol「眺め」
Goldmund「Sometimes」
Helios「It Was Warmer Then」
Mint Julep「Black Maps」
Goldmund「Threnody」
odol「三月」

番組へのメッセージをお待ちしています。
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RADIO INFORMATION

FM 福岡「Room "H"」
毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"203号室(毎週水曜日の26:00~26:55)"では、音楽番組「Room "H"」をオンエア。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、本音で(Honestly)、真心を込めて(Hearty)、気楽に(Homey) 音楽愛を語る。彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。

放送時間:毎週水曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)


番組MC
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黒川侑司(ユアネス Vo.&Gt.)
福岡で結成された4人組ロックバンド。感情の揺れが溢れ出し琴線に触れる声と表現力を併せ持つヴォーカルに、変拍子を織り交ぜる複雑なバンドアンサンブルとドラマティックなアレンジで、
詞世界を含め一つの物語を織りなすような楽曲を展開。
重厚な音の渦の中でもしっかり歌を聴かせることのできるLIVEパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2021年12月1日に初のフルアルバム「6 case」をリリース。
オフィシャルサイト @yourness_on @yourness_kuro

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松本大
2006年に長崎県で結成。バンド名「LAMP IN TERREN」には「この世の微かな光」という意味が込められている。松本の描く人の内面を綴った歌詞と圧倒的な歌声、そしてその声を4人で鳴らす。聴く者の日常に彩りを与え、その背中を押す音楽を奏でる集団である。
2021年12月8日にEP「A Dream Of Dreams」を配信リリース。
オフィシャルサイト @lampinterren @pgt79 / @lampinterren

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森山公稀(odol Piano&Synth.)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に2014年東京にて結成した3人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。
2022年3月16日に「三月」を配信リリース。
オフィシャルサイト @odol_jpn @KokiMoriyama


LINK
FM福岡「Room "H"」

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