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2021.11.03
BROTHER SUN SISTER MOON「Holden」──〈万有引力とは ひき合う孤独の力である〉求め合う小宇宙たちの声
惠翔兵 (Gt&Vo)、岡田優佑 (Dr)、惠愛由 (Ba&Vo) による大阪の3ピースバンド、BROTHER SUN SISTER MOON（以下、BSSM）。2017年に結成し、今作が待望のデビュー・アルバムだ。バンドの中心人物であり愛由の実兄でもある翔兵は、数年前に別バンドのメンバーだった頃からThe BeatlesやTame Impalaの影響を公言するなど、新旧問わずサイケデリック・サウンドをルーツとしているようで、BSSMの音楽、ならびに今作は、その志向をより深化・拡張させたものと言えそうだ。M4「Heartbreak」ではThe Beatlesの「Strawberry Fields Forever」を思わせる調子っぱずれのブラスやメロトロンのような音に始まり、The Beach Boysを彷彿ともさせるスライド・ギターを聴かせるなど、"サイケデリック"と呼ばれてきた音楽の歴史にきちんと敬意を払ったアレンジングが好感触だ。
彼らのサイケデリアを支えているのはもうひとつ。ミニマムなバンド編成ながら、シンセやサウンド・エフェクトなどを纏わせた、夢見心地な音空間づくりだ。KIRINJIなどの作品も手がけるエンジニア・柏井日向のレーベル所属ということもあり、そのクオリティは折り紙つき。「A Whale Song」でのウォール・オブ・サウンドのような処理にも度肝を抜かれたが、いずれの曲でも、揺らぐギターと無機質なシンセの音がそれぞれクリアに存在しながらリヴァーブのなかで程よく溶け合い、没入感のある立体的な音像を作り上げていることに圧倒される。「Cactus」のような内省的なサウンドとともに心の深みに潜り込んでいくような楽曲には、Beach Houseの『Bloom』（2012年）からCocteau Twinsの『Heaven Or Las Vegas』（1990年）まで、ドリーム・ポップの金字塔と呼べる作品が頭をよぎる。シューゲイザーと呼ばれる中でも特に音響効果の追究に重きを置いたSlowdiveに今作を並べてみてもいいだろう。
サイケデリアに満ちた、完結した小宇宙のような今作の世界観。そこでは、まるで1曲1曲が誰かの心象風景のようにも思えてくる。英詞のリリックは兄妹の共作だそうだが、〈I count my breath / Are we alone?（「Last Moment」）〉というように、男女のヴォーカルが曲ごとに"寂しさ"を交互に歌う様はまるで、今作のアートワークさながらに人間が互いを求め呼び合う声のようにも感じられはしないだろうか。ただ、その彼らの孤独の捉え方というのは、シンプルでピアノのみでほぼ構成されたこの「Last Moment」という曲がそうであるように、なんというか、とてもフラットでピュアなものにも思えるのだ。この広い宇宙に生まれた我々人間は、生まれながらに皆平等に"ひとり"ではないか、だからこそ人は求め合うのではないか、とでも言うように。そう、〈万有引力とは / ひき合う孤独の力である（谷川俊太郎「二十億光年の孤独」）〉なのだった。誰もが心のうちに仕舞ってある孤独、それはきっと悪いものじゃない。それを他人と共鳴させることが多分、人生の喜びのひとつなのだから。
文：井草七海
BROTHER SUN SISTER MOON「Holden」
2021年10月27日（水）
Format:Didital/CD ¥2,800 (税抜価格2,545円)
Label:Bigfish Sounds
Track:
1. Time
2. Escapade
3. A Whale Song
4. Heartbreak
5. Days Gone
6. Try
7. I Said
8. In Front of Me
9. All I Want
10. Last Moment
11. Cactus
12. Painted Memories
試聴はこちら
BROTHER SUN SISTER MOON
2017年8月、大阪にて結成。
惠 翔兵 (Vo, Gt)、岡田 優佑 (Drums)、惠 愛由 (Vo, Syn, Ba) からなるインディペンデントポップバンド。 海外インディーミュージックからの影響に留まらないそのサウンドはメンバー3人によるプロデュース。曲毎に兄妹によるリードボーカルが展開される。
2020年7月にBigfish Soundsから1st EP「Some Same Soul」を発表。その後もシングル曲のリリースをつづけ、2021年には2nd EP「Homesick」、「Numb (Kareem Ali Remix)」「Try (Funny Factures Remix)」をリリースした。
@bssm_is
FRIENDSHIP.
彼らのサイケデリアを支えているのはもうひとつ。ミニマムなバンド編成ながら、シンセやサウンド・エフェクトなどを纏わせた、夢見心地な音空間づくりだ。KIRINJIなどの作品も手がけるエンジニア・柏井日向のレーベル所属ということもあり、そのクオリティは折り紙つき。「A Whale Song」でのウォール・オブ・サウンドのような処理にも度肝を抜かれたが、いずれの曲でも、揺らぐギターと無機質なシンセの音がそれぞれクリアに存在しながらリヴァーブのなかで程よく溶け合い、没入感のある立体的な音像を作り上げていることに圧倒される。「Cactus」のような内省的なサウンドとともに心の深みに潜り込んでいくような楽曲には、Beach Houseの『Bloom』（2012年）からCocteau Twinsの『Heaven Or Las Vegas』（1990年）まで、ドリーム・ポップの金字塔と呼べる作品が頭をよぎる。シューゲイザーと呼ばれる中でも特に音響効果の追究に重きを置いたSlowdiveに今作を並べてみてもいいだろう。
サイケデリアに満ちた、完結した小宇宙のような今作の世界観。そこでは、まるで1曲1曲が誰かの心象風景のようにも思えてくる。英詞のリリックは兄妹の共作だそうだが、〈I count my breath / Are we alone?（「Last Moment」）〉というように、男女のヴォーカルが曲ごとに"寂しさ"を交互に歌う様はまるで、今作のアートワークさながらに人間が互いを求め呼び合う声のようにも感じられはしないだろうか。ただ、その彼らの孤独の捉え方というのは、シンプルでピアノのみでほぼ構成されたこの「Last Moment」という曲がそうであるように、なんというか、とてもフラットでピュアなものにも思えるのだ。この広い宇宙に生まれた我々人間は、生まれながらに皆平等に"ひとり"ではないか、だからこそ人は求め合うのではないか、とでも言うように。そう、〈万有引力とは / ひき合う孤独の力である（谷川俊太郎「二十億光年の孤独」）〉なのだった。誰もが心のうちに仕舞ってある孤独、それはきっと悪いものじゃない。それを他人と共鳴させることが多分、人生の喜びのひとつなのだから。
文：井草七海
RELEASE INFORMATION
BROTHER SUN SISTER MOON「Holden」
2021年10月27日（水）
Format:Didital/CD ¥2,800 (税抜価格2,545円)
Label:Bigfish Sounds
Track:
1. Time
2. Escapade
3. A Whale Song
4. Heartbreak
5. Days Gone
6. Try
7. I Said
8. In Front of Me
9. All I Want
10. Last Moment
11. Cactus
12. Painted Memories
試聴はこちら
PROFILE
BROTHER SUN SISTER MOON
2017年8月、大阪にて結成。
惠 翔兵 (Vo, Gt)、岡田 優佑 (Drums)、惠 愛由 (Vo, Syn, Ba) からなるインディペンデントポップバンド。 海外インディーミュージックからの影響に留まらないそのサウンドはメンバー3人によるプロデュース。曲毎に兄妹によるリードボーカルが展開される。
2020年7月にBigfish Soundsから1st EP「Some Same Soul」を発表。その後もシングル曲のリリースをつづけ、2021年には2nd EP「Homesick」、「Numb (Kareem Ali Remix)」「Try (Funny Factures Remix)」をリリースした。
LINK
BROTHER SUN SISTER MOON オフィシャルサイト@bssm_is
FRIENDSHIP.
