SENSA

2021.10.24

gato「U+H」──広がる音楽性と深まる愛、新たなフェーズに踏み込んだ傑作

gato「U+H」──広がる音楽性と深まる愛、新たなフェーズに踏み込んだ傑作

 〈日々変化はしてたい/いらんものは捨てな/飛び道具で行こうか/各々、型破ってなんぼじゃない?〉。アルバム2曲目「××(check,check)」に綴られたそんな言葉が、今作を象徴しているような気がした。少し乱暴にいえば、これまでのgatoとは別のバンドのようだ。
 昨年のファーストアルバム『BAECUL』以来、約1年ぶりとなるセカンドアルバム。ハウスやテクノからヒップホップにパンクロックまで、ジャンルという意味ではおよそ規定不能なサウンドを構築するこのバンドらしく、スタイルも時代も国境も人種も無用とばかりに越境していくハードコアでディープな音楽性は今回も健在、どころか、ゲストのフィーチャリング(先行配信もされた「high range」ではWho28とさらさを迎えている)などもありさらにそのレンジは広がっている。ピアノのリフと抑制されたスネアドラムがどこかジャジーなムードを醸し出す「noname」やシューゲイザーとオリエンタリズムの融合とでもいうべき「teenage club」など、トラックが切り替わるごとにその世界観は移り変わり、めくるめく風景を浮かび上がらせていく。
 だが、そうやって音楽的に拡張する一方で、そこで歌われるストーリー、そこに込められた「思い」のようなものは、より研ぎ澄まされている。前作も中心人物であるageが自身の内面と深く向き合うことで生まれた内省的で自己言及的なアルバムだったが、今作においてはそこに明確に「他者」というファクターが入り込み、そして「愛」が生まれている。死を思いながら〈生活から逃れるための快楽/家族、恋人、友達、音楽/人を救う、救われる〉と歌う「27's club」、〈不安が泳いでる たまに/I want it 君の曖昧さ〉という吐露から始まる「21」。〈you never look ma eyes/your hair blew in the wind〉というフレーズが登場するアルバム最後の曲「no local」もまた、ラブソングだと僕は思う。
 全体としてよりキャッチーになった──つまり誰かに「届く」ことを希求しているようなメロディも、『U+H』、すなわち「Youth」という青臭い言葉を選んだアルバムタイトルも、gatoと我々リスナーの新たなコミュニケーションがここから始まるのではないかと予感させる。尖ったバンドであることは確かだが、その尖りかたはとても優しく、言い方を換えればとてもポップだ。

文:小川智宏




RELEASE INFORMATION
gato_jk_1200_20211013.jpg
gato「U+H」
2021年10月13日(水)
Format: Digital / CD(タワーレコード限定特典:secret link card)
Label:gato

Track:
1. intro
2. 月兎
3. ××(check,check)
4. high range(feat. who28,さらさ) 5. interlude #1
6. noname
7. teenage club
8. 27's club
9. 21
10. no local

試聴はこちら
gato「××(check,check)」Music Video



LINK
オフィシャルサイト
FRIENDSHIP.

気になるタグをCHECK!