2021.10.07
バンドの音楽をまだ信じてやまない人たちへ。BROTHER SUN SISTER MOON、No Buses、Newdumsによる3マンツアー鼎談
インディーミュージックという言葉は形骸化したかもしれないが、たったいまもバンドというロマン発生装置を駆動させるミュージシャンは実際、インディペンデントな音楽を作り続けているのだ。今回、10月から「FAR FROM HOME」と銘打ったスプリットツアーを東名阪で行うBROTHER SUN SISTER MOONの惠翔兵(Vo/Gt)と惠愛由(Vo/Ba)、No Busesの近藤大彗(Vo/Gt)と和田晴貴(Gt)、Newdumsの伊井祥悟(Vo/Gt)と林幸次郎(Gt)をリモートで召喚。バンドの音楽を愛し、信じる人たちに贈るレアな鼎談になったはずだ。
林幸次郎(Gt/Newdums)、中段左から近藤大彗(Vo/Gt/No Buses)、伊井祥悟(Vo/Gt/Newdums)
下段 和田晴貴(Gt/No Buses)
3組の出会い。お互いに「喰らってます」
―まずお互いの存在を認識したのはどういうタイミングでしたか?
惠翔兵(Vo/Gt/BROTHER SUN SISTER MOON):この中でたぶん親交がいちばん長いのは僕とNewdumsじゃないかなと思いますね。もう6〜7年前、BROTHER SUN SISTER MOONを始める前にやってた、お客さんが全然いないようなバンドの時からなんで。
―その頃の印象はどうだったんですか?
翔兵:「いいヤツら」って感じで(笑)。音楽ももちろん最高で。なんて言うか、遊び仲間というか、音楽以外の部分でも神戸で飲み歩いたりもしてるような感じやったんで。
伊井祥悟(Vo/Gt/Newdums):こっちは印象が違くて(笑)。彼らは正直、俺からすると「うわ、やってんな」って感じやったんですよ、ちゃんとしてて。僕、Newdumsしかやったことないんですけど、惠は神戸のライブハウスにずっとおって、で、BROTHER SUN〜を組んでたんで。僕からすると、「わ、すげえな」みたいな感じで見てたし、もっと先に行っちゃう存在かなと思ってて。
―音楽についてどんな話で盛り上がってたんですか?
翔兵:20代前半の頃、ちょうどTame Impalaとかサイケデリックのリバイバルがきてて、僕がその時やってたバンドもすごい影響受けてて。ま、サイケデリック・リバイバルの話をしてたかもしれない。
―その頃の神戸とか関西のシーンはどんな感じだったんですか?
翔兵:HAPPYとかThe fin.とかが、「売れていきますよ」みたいな時期でしたね。ことあるごとに「ポストThe fin.」みたいなことを言われてて(笑)。関西ではその言葉が流行ってました。
―No Busesとの関わりはどうなんですか?
惠愛由(Vo/Ba/BROTHER SUN SISTER MOON):最初のコンタクトだったのは私たちも結成してまだ3ヶ月ぐらいのライブの時に、かたしょさん(片山翔太/下北沢BASEMENTBAR ブッカー)がNo Busesを初めて大阪に連れてきた対バンで。その何ヶ月後かにNo Busesが自分たちの企画に呼んでくれて、みたいなところから仲良くなって。私たちもBROTHER SUN〜を始めたてぐらいの時から知り合ってたっていう感じです。
―それはかたしょさん企画で大阪のイベントだったんですか?
近藤大彗(Vo/Gt/No Buses):かたしょさん企画ではなくて、DJをしてましたね。その時、メンバー全員でBROTHER SUN〜のリハを見て、「やば!やば!」みたいな。「何、このバンド?」みたいになって、ちょっと怖くなってきたというか(笑)、喰らっちゃって。その時、良かったんで、3ヶ月後ぐらいに初めての自分たちのイベントに呼んだって感じです。
―近藤さんは何に衝撃を受けたんでしょうか。
近藤:その時期から現在に至るまで、音源にも通じるところなんですけど、ライブを見てても、無駄のない音があるべき場所にあるみたいな。音楽性的にはサイケとかインディーだったんで、そのせいじゃないんですけど、ほんとになんか音でストイックさを感じるというか。結構ゆったりめの曲なんで、そういうのをヒシヒシ感じて「あ、すごいな」と思って。で、聞いたらめちゃめちゃスタジオに入ってるって(笑)。
―(笑)。惠兄妹のNo Busesの印象は?
翔兵:最初、僕もNo Busesがやってるようなガレージのサウンド----そんな平たく言っていいのかわからないけど。結構、初期のNo Busesみたいなガレージのサウンドがすごい好きで。BROTHER SUN〜ではやってないですけど、僕もそういうNo Busesに似てるようなバンドをやってたかもしれないようなタイプの人間なんで。でも、結局はこっちを選択したんです。近藤くんがライブでやってるみたいなラフさを隠さないプレイが自分でできる自信がなくて。だから固めきった音楽をやってるんですけど、僕的には逆にラフさを隠さずにやる感じがすごくいいし、簡単にできることじゃないと思ってて。すごい魅力的だなと思いました。
―愛由さんはいかがですか?
愛由:私も似たような思いだったけど、なんかファーストインプレッションというより、その後、企画に呼んでもらった時、改めてしっかりNo Busesの音楽を認識したイメージがありますね。なんて言ったらいいのかわからない新しさみたいなものは感じたかも。コンちゃん(近藤)の聴いてきた音楽が伝わってくるんだけど、「これに似てるね」みたいに一言では言えない感じ。J-POP的な要素も混じってるけど、すごくインディーロックが好きなんだろうな、色々混じってるな、みたいに、そのバランスが新しい感じは最初からあったなと思います。
近藤:ありがとうございます(笑)。
愛由:(笑)。あと、みんなのキャラクターが良くて。コンちゃんもそうだし、他のメンバーのキャラクターも愛せる。
翔兵:たしかに。アイコニックやな。No Busesは漫画にできる(笑)。ゴリラズ的な。
―和田さんは今年No Busesの正式メンバーになったわけですけど、BROTHER SUN〜に出会った時の印象は?
和田晴貴(Gt/No Buses):BROTHER SUN〜と対バンした時、メンバーから「今日、仲いいバンドがくるから」って聞いてて、その時、名前を伺ってなくて。いざライブを観た時に、すごいかっこいいバンドいるなと思って。で、そのバンドがBROTHER SUN〜だったんですよ。もうライブがすごいかっこよかったっていうことなんですけども、特有の世界観みたいなものに惹かれた気がします。
―林さんは?
林幸次郎(Gt/Newdums):僕、Newdums、途中から入ってるんですけど、僕が入ってちゃんとやりだしたみたいな雰囲気が出てきて。で、1st EP(『Daydreaming』)を作って、そのツアーで東京に初めて行くみたいな時に、下北沢BASEMENTBARに「東京行きたいです」って言ったら、「No Busesってかっこいいバンドあてたるからがんばりや」って言ってもらって(笑)。
―特別待遇みたいな感じですね(笑)。
林:僕らずっと特別待遇してもらってて。僕、しかもBROTHER SUN〜のサポート、1年半〜2年ぐらいしてて。それでもうNo Busesずっと観てたんで、たぶん人の倍ぐらい観てて、ずっとかっこいいなと思っていて。「Yellow Card」って曲が新しいアルバムに入ってるんですけど、その曲、BROTHER SUN〜の1st(『Some Same Soul』)が出たタイミングぐらいからやってて。で、「あれがすごくかっこいい、あれがいちばんかっこいい」って言ってて。で、今回音源になって、みんな「あの曲がかっこいい」って言ってるから俺が誇らしい気持ちになりましたね。
―ファンじゃないですか。
林:そうですね。ちょっと喰らってますね、No Busesには。ライブも急に「今日から5人なんですよ」みたいな。「え? 何弾くん?」みたいな感じでしたね(笑)。
―今日から5人です、と。なかなかいないですよね。
林:ステージがやけに左に寄ってて(笑)、リハでめっちゃ空いてて、「どしたん?」って言ったら「今日から5人なんすよ」、「3曲ぐらい5人になるんですよ」って。あんまりそんなね? 聞いたことない。「今日から5人です」はいちばん喰らったすかね(笑)。
近藤:ははは!
―しかも3曲だけっていう。
林:なんか、途中から出てくるんですよ。紹介とかもなく急に出てきて(笑)。
伊井:ニルヴァーナのギターの人みたいな、あの感じで出てきてたよな(笑)。
林:みんなストラトを持ってね。びっくりしたっす。
それぞれバラバラの感覚で何かを感じてもらえたら
―じゃあそれぞれの新作について。BROTHER SUN〜は10月リリースの『Holden』を聴かせていただいたんですけど、すごい地平に行きましたね。
林:聴いてきました! 知ってる曲がたくさん入ってるというか。
愛由:そうだね。一緒に作ってくれたようなところもあるし。
林:もうBROTHER SUN〜ってスタジオの空気、最悪なんですけど。
翔兵・愛由:ははは!
林:永遠に最悪なんですけど、あの環境からあんなポップで可愛い曲とかができるんやなと思って。
―それは緊張感があるということですか?
林:こう、なんか荒波にもまれすぎて逆に丸いみたいな。
―それはストイックにやってるってことなんですか?
林:そうですね。それに尽きると思います。
―皆さん聴かれましたか?『Holden』。
近藤:はい、聴きました。SoundCloudに上げてた頃から、リリースがあるたびに聴いてたんですけど、よりアルバムになった感じと、より荘厳な印象を受けました。さっきも言ってたストイックな感じとか受けるんですけど......でもなんかポップセンスというか、どのメロディも耳に残るし、聴いてて「あ、この感じの音きてほしい」っていうとこにパッ!てくる感じがあるんです。リラックスもできるし、気持ちよくもなるし、ずっと好きです。
―伊井さんも聴かれたんですか?
伊井:ちらっと。今朝もらったんで、仕事の休憩中にざざっと聴いたんですけど。僕、「All I Want」が前から好きで。結構、アルバムはズシッとくるグルーヴが多いから、その中でもいいスパイスになってて、入ってるのが良かったなというふうに思ったし。
―当事者にお聞ききするんですが、BROTHER SUN〜は自分の気持ちの中に浮かんでいる感情を、新しい古い関係なしに、いかにバンドに落とし込むかを考えていて、しかもバンドっていう形態に拘らずにやってらっしゃるのかなと思って。ほんとびっくりしました。
翔兵:嬉しいです。
愛由:ありがとうございます。
―もともと独特なタイム感のあるバンドだと思うんですけど、今回の『Holden』はどんなビジョンがあったんですか?
翔兵:今回というか、作ってきた曲はどれもパーソナルなことから発想することが多いんです。結局はそれをそのまま聴く人に知ってほしいという気持ちじゃなくて、勝手に想像してくれたらいいっていうのが僕のスタンスとしてずっとあって。だから、自分の経験をパラレル的に俯瞰して、そこに没頭して世界観は作られてると思いますね。最終的には僕が作る世界観というよりは聴いた人が作る世界観やと思うんで。今回もそれに尽きますね。
―なるほど。思ったのがオールディーズ的なものや昔のポップスに感じられるような名曲感を再構成するというか、皆さんのセンスで落とし込んでいる。例えば美しいものも手垢がついていくけど、美しい元の感じのままというか、そういう印象が強かったんですよね。
翔兵:確かにポップネスっていうキーワードは僕らよく使うんですけど、アートに寄り過ぎないというか、俗物としての音楽の特徴を活かすというか、それは意識はしてました。
―タイトルの「Holden」って、Holdの過去分詞? それとも名詞?
翔兵:明確に説明するのがちょっと難しいんですけど、「Holden」っていうのはいちばん最初の発想は僕の昔の友達が服のブランドを始めるので、そのブランド名を考えてる時に「Holden」って案が出てて。「Holdenって何? そんな言葉あったかな?」と思って、その友達が「この言葉はいろんな解釈ができるんだよ」みたいに言ってて。なんか、一つの意味じゃないみたいなことだけ覚えてて。アルバムのタイトルを考える時にその話が蘇ってきて。で、今回のアルバムは、最初はパラレルの自分を救済するみたいな、そういうのが根底にあったんです、赦してあげるみたいな。そういう印象があって、「Embrace」、抱擁ってタイトルにしようかと思ったんですけど、それこそ直接的過ぎて自分の思ってることそのまま過ぎるなと思って。
―確かに。
翔兵:「Holden」って聞いたら、だいたいHoldingとか、過去分詞やとHeld、そういうニュアンスを受けるんですけど、ニュアンスだけの言葉っていいなと思って。で、調べてみるといろんな意味があるんです。まぁそこは僕がネタバレしてもあれなんで(笑)、結構、いろんな人名だったり、「深い谷」っていうニュアンスが古英語であったり。100年以上前はHold過去分詞形やったり、限定されない意味があるんで、さっきお話したような僕らの今の状態に合ってるかなと思ってつけました。
―あとはついウィリアム・ホールデンとか人名が浮かんだり。
愛由:『キャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑でつかまえて)』のホールデンとか、それぞれ喚起されるものはある。
翔兵:そうです。なんで、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』のことを想像して何か感動したりする人がいるかもしれないですけど、それは僕のいちばん望むところです。
愛由:バラバラのね。
翔兵:バラバラの感覚で何かを感じてもらえたらいいと思うので。限定せずに。
ちゃんとアップデートされている作品
―想像が広がります。No BusesもNewdumsも6月に新譜を出していて。No Busesはライブも今は新譜(『No Buses』)からの曲が多いですね。
近藤:そうですね。自分たち的には2枚目のアルバムってことなんですけど、なんか1枚目のアルバム(『Boys Loved Her』)以前の楽曲に対してのコンプレックスみたいなのが若干あったりして。ま、今聴いても悪くないかなと思ったりする曲もあるんですけど、なんかでも......「全然よくない」みたいな曲も(笑)中にはあったり。
―どんどん過去になりますからね。
近藤:1st以前は編成自体がギター・ギター・ドラム・ベースで、ボーカルで、その編成に縛られて作ってるというか、それに固執しすぎてた部分があったと思ってて。その中でどうしようかみたいなのをずっとやってたんですけど、それももったいないし。作ってる過程で、ギターがもう一本欲しかったりっていうのもありますし、他の音も欲しいなっていうことで、和田くんに入ってもらってっていうのはありまして。
―メンバーが増えるといってもトリプルギターになるって珍しいことじゃないですか。ライブで観たら現実に3本のギターがどういうアンサンブルになってるのかわかるので、結構、驚愕なんですよ(笑)。
近藤:あ、ありがとうございます(笑)。
―担当するギターのパートが曲によって固定されてないし、楽器もしかりだし。
近藤:確かに。和田くんに関してもギターをやってもらいたいという意味で増やしたというよりは別にいろんな楽器をやってもいいなって感覚でいるので。ギターがいちばん多いからギターって名乗ってるだけだったみたいな感覚です、メンバーの立ち位置としては。だからそういうのもあって、ギターのフレージングの割り振りとかもフレキシブルになっていってる感覚はあります。
―こういうパターンで加入するのは珍しいと思うんですけど。
和田:確かに。自分がそもそもサポートで入ってたときも、さっき幸次郎さんにも言っていただいたんですけど、1曲だけ入って捌けたりして、ほんとにサポートに徹したというのもあるんです。で、そこからメンバーになって、ライブだとシンセベースとかも一瞬だけ弾いたり、いろいろやらせていただいてるので、そういう面では珍しいのかなとも思います。
―はい。ではBROTHER SUN〜とNewdumsの2組からいまのNo Busesの音楽の感想を聞いてもいいですか?
伊井:前のアルバムはそれこそたぶんロックっていうのが、近藤くんの言ってたギター・ギター・ベース・ドラムっていう編成で音源に入ってた感じやったんですけど、それの印象が今回はもうなくて。さらにクール感が出てるなと思ってて。
近藤:クール感(笑)?
伊井:打ち込みの感じとか、打ち込みっぽいリズムの感じとか、そういうのも関連してるのかなとか。それが近藤くんのソロの影響もあるんかな?と聴いてて思ったんです(笑)。だからすごい良かったんですけど。僕なんか初めて聴いたんが遠征の時のカーステで、ドラムのやつが運転してて、俺が助手席にいて。それで、「わ〜、いいな」みたいな、一1枚ザザッと聴けて。で、さっき幸次郎が言ってた曲なんやっけ?
林:「Yellow Card」。
伊井:そう。俺はNo Busesで印象的なんが、ギターリフとか裏で鳴ってるギターメロが強くて。その曲ではそのNo Buses節がちょっとアップデートされた感じで出てるし。なんかマッシュアップされたみたいな。
―林さんは?
林:最初、「またあの曲(「Yellow Card」)入ってないやんけ」と思ってたら(笑)、始まり方がシンセでバーン!ってアンダーワールドみたいな始まり方をしててっていうのとか、「Having a Headache」とかも結構やられた感というか。全体的にやられた感があったっすねぇ。ギターに関しても3本の合わせ方とか結構普通に聴いてびっくりするというか、天才やなと思ったっすね(笑)。
一同:(笑)。
―じゃあNewdumsの『N.N.N.』について。BROTHER SUN〜に感じたようなことをこのアルバムにも感じたんですよ。
林:ルーツ感的な? そうですね。
―も、ありながらサウンドでアップデートされてるなと。いかがですか? 印象に残ったところとか面白かったところはありますか?
近藤:Newdumsはそのアルバムが出る以前の曲とかの印象としては、結構ロックンロールの印象が強かったんですけど、今回のアルバムはなんて言うんですかね、ロックンロールっぽいハネ感とかを感じつつ、ふわっとした浮遊感もあって。伊井さんのボーカルの渋みとか結構いろんな要素が掛け合わさってて、Newdumsっぽい感覚がマッシュアップされてたり。あと、「Mist」と「Stand by me」って曲、すごい好きですね。主にこの2つ。「Mist」はドラムの丹埜(由一郎)さんも歌ってますね。このボーカルの感じも新しかったし。山場もあって、すごい楽しいアルバム。
翔兵:「Newdumsってアルバムまだなかったんや? あんな曲あるのに」と思ってたんですよ。で、改めて『N.N.N.』を聴いて、アルバム全体というか、結構小出しに聴いちゃってるんで、ピンポイントな感想になるんですけど、「Fool」とかはもう、それこそ幸次郎もおらへん時からやってる曲で。この曲、僕、もう最高の曲やと思ってて。めっちゃいい曲なんですよね。これがアルバムに入ってくれて良かったなって感じですね。あと、近藤くんとおんなじなんですけど、アルバムをもらった時に曲名見て、知ってる曲が多いなと思って。でも「Stand by me」って知らんなぁ、「Stand by me」ってタイトルで最後か、どんな曲かな?と思って聴いてちょっと泣きました(笑)。
伊井・林:ははは!
新しさって懐かしさに似てる
―オールディーズ的なものの再解釈というか、エバーグリーンなものを自分たちの曲でどうするのか?みたいな感じがBROTHER MOON〜にもNewdumsにもあるなと思って。上の世代だとceroの高城(晶平)さんのソロとか、あとは坂本慎太郎さんがやってるような"架空の昔"というか、架空のデヴィッド・リンチ感というか(笑)。
林:うん(笑)。BROTHER SUN〜はデヴィッド・リンチ感、あるっすね。あるあるある。"架空の昔"っていい表現ですね。BROTHER SUN〜の曲からはそういうのを弾いてても感じてたんで。僕、自分のアルバムを作ったときも言ったんですけど、新しさって懐かしさに似てるような気がして。昔のことを思うと、いまのことが見えてくるというか、BROTHER SUN〜のアルバム聴いて、使ってるものとか音とか、古い雰囲気がするのに、「でもない」みたいな。遡ってもない、そこにあったかのような存在感があるのに、なんかないっていう。それがすごい。なんでこれがいままでなかったんや?ぐらいの良さというか。逆にNo Busesは最先端感というか。
―表面的な音楽性は違ってるけど、いま、林さんがおっしゃったことで、なぜこの3バンドが仲がいいのか、スプリットツアーをやるのかっていう理由がわかった気がします。
林:ありがとうございます(笑)。
翔兵:幸次郎の言ったこと、いますごい刺さってる(笑)。
―No Busesの最先端感も音楽的なことだけじゃないんですよね。
林:そうですね、なんか抜け感ですよね。
翔兵:僕はNo Busesのメロディセンスがすごい好きで、「Cut My Nails」に対して、「好き」しか言えないんですよね(笑)。いちばん最初にライブを見た時はいい感じのガレージ系のバンドかなって表面的にしか見てなかった、お酒も飲んでたし。でも、イベントに呼んでもらった時に「メロディがいいバンドと思ったけど、なんかすごい棘を隠し持ってるな」と思って(笑)。ある時、どっかのライブで逆に「棘でしかなくなったやん」みたいな、近藤くんのパーソナリティだけが立ってるみたいなすごい衝撃的なライブがあったんですよね。それに興奮して、これからどんな音楽ができていくんやろと思ってたら、今回の1曲目の「Preparing」からめちゃくちゃかっこいいと思って、最高でした。NEW MUSICやと思う。
愛由:これまでよりもコンちゃんの頭の中、あるいはNo Busesのみんなの頭の中にあったもっと緻密なイメージが具現化されてる感じがすごいあって。どの楽器でそれを出すか、みたいなところのチョイスにめっちゃ出てる感じがして、それが気持ちよかったし、デジタル感みたいなものも組み合わさってるバランス感覚が良かったです。あと、「Surprised」とか「Alpena」辺のメロウな感じが好きでした。初めてNo Busesでこういうの聴いたな、みたいな。
―ツアータイトルがいいですね、おうちから遠く離れてっていうニュアンスなんでしょうか。
愛由:私が出したんだ(笑)。いつもタイトルとかにできそうなものをメモしてて、その中にあって。なんとなく、あ、「FAR FROM HOME」だなって。なんで合うと思ったんかな? コロナのこの感じ...どこにいても、"AWAY FROM HOME"な(=家を遠く離れている)感じが合うと思ったんですよね、たぶん。
―この対バン、大げさに言うと、バンドで音楽をやることを信じたい人に見に行ってほしいです。
林:まず、BROTHER SUN〜もNo Busesも僕は好きやし。好きな上に仲良くしてくれるっていう、いちばん最高な関係やなと思ってるんで。ビジネスライクな対バンみたいなものも、それはまぁ多いというか、お客さんが入るからとかお金がいっぱいもらえるからとか、そういうのはありふれてると思うんですけど。そうじゃない関係性での対バンというか、一緒にやることでなんかいいなって思える。まぁ自己満足の世界です(笑)。
取材・文:石角友香
LIVE INFORMATION
BROTHER SUN SISTER MOON、Newdums、No Buses
3BAND TOUR "FAR FROM HOME"
2021年10月16日(土) 東京 FEVER
2021年11月20日(土) 大阪 SOCORE FACTORY
2021年11月21日(日) 名古屋 HUCK FINN
チケットはこちら
RELEASE INFORMATION
BROTHER SUN SISTER MOON「Holden」
2021年10月27日(水)
Format:Didital/CD ¥2,800 (税抜価格2,545円)
Label:Bigfish Sounds
Track:
1. Time
2. Escapade
3. A Whale Song
4. Heartbreak
5. Days Gone
6. Try
7. I Said
8. In Front of Me
9. All I Want
10. Last Moment
11. Cactus
12. Painted Memories
BROTHER SUN SISTER MOON「Holden」
2021年10月27日(水)
Format:LP ¥3.500 (税抜価格3,182円)
Label:Bigfish Sounds
Track:
A1. Time
A2. Escapade
A3. A Whale Song
A4. Heartbreak
A5. Days Gone
A6. Try
A7. I Said
B1. In Front of Me
B2. All I Want
B3. Last Moment
B4. Cactus
B5. Painted Memories
No Buses 2nd Album「No Buses」
2021年06月23日
Format:Didital/CD ¥2,800 (税抜価格2,545円)
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No Buses 2nd Album「No Buses」
2021年10月13日(水)
Format:LP ¥3,700+消費税
収録曲
A1. Preparing
A2. Number Four or Five
A3. Very Lucky
A4. Alpena
A5. Surprised
A6. Not Healthy
B1. Mate
B2. Having a Headache
B3. Yellow Card
B4. Biomega
B5. Playground
B6. Imagine Siblings
Newdums「N.N.N.」
2021年06月23日
Format:Didital/CD ¥2,800 (税抜価格2,545円)
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PROFILE
BROTHER SUN SISTER MOON
2017年8月、大阪にて結成。
惠 翔兵 (Vo, Gt)、岡田 優佑 (Drums)、惠 愛由 (Vo, Syn, Ba) からなるインディペンデントポップバンド。 海外インディーミュージックからの影響に留まらないそのサウンドはメンバー3人によるプロデュース。曲毎に兄妹によるリードボーカルが展開される。
2020年7月にBigfish Soundsから1st EP「Some Same Soul」を発表。その後もシングル曲のリリースをつづけ、2021年には2nd EP「Homesick」、「Numb (Kareem Ali Remix)」「Try (Funny Factures Remix)」をリリースした。
No Buses
2016年10月結成。
2019年には1st album 『Boys Loved Her』をリリース。
2020年にはバンドとしては初のフィーチャリングとなるBIM「Non Fiction feat.No Buses」に参加。
2021年6月セルフタイトルを冠したセカンドアルバム「No Buses」リリース。
ダウナーながらも煌びやかにサウンドを彩るメロディやストイックなビートのバンドサウンドを武器とする日本のバンド。
Newdums
2015年に結成された神戸出身の4人組。
クールな佇まいに、ブルージーでフックのあるメロディはどこか懐かしさを感じさせる楽曲ながら、現代的に再構築されている。
結成6年の時を経てリリースした1st アルバム『N.N.N』は早熟な彼らのベストアルバムである。
LINK
BROTHER SUN SISTER MOON オフィシャルサイト@bssm_is
No Buses オフィシャルサイト
@no_buses_band
Newdums オフィシャルサイト
@Newdums