SENSA

2021.05.19

カネコアヤノ「よすが ひとりでに」──弾き語りで自分を探り、空白の時間を埋める

カネコアヤノ「よすが ひとりでに」──弾き語りで自分を探り、空白の時間を埋める

 友人と会うこともままならない2021年、音楽に何ができるのだろうと、音楽に関わる人は多かれ少なかれ考えたに違いない。音楽に関わりがなくても、以前より空白の時間が増えた日常で、その空白を少しでも埋めることができたらといろいろな音楽を聴いている人もいるだろう。カネコアヤノの曲も、そんな一つになっているのではないだろうか。
 彼女自身が自分の空白の時間を自分の音楽で埋めているのではないかと思う。音楽が第一で、少しでも空いている時間があったら音楽で埋めたい、空白の時間を音楽に変換したい。そんな風に思っているのかなと彼女の歌を聴くと想像したくなる。
 自分の身に起きたこと、身の回りの出来事を訥々と歌う彼女の歌は、切実だったり幻想的だったりしながら彼女自身に集約していく。ああそうか、こういう人なのだなと聴くうちに実像が結ばれていく。
 バンド編成でのライヴを見た。ふわりとしたドレスに素足でバンドのメンバーと共にステージに現れて、まるでリハーサルを始めるようにメンバーと気合を合わせ、楽しそうに演奏を始めた。誰かに聴かせるというより自分に聴かせているようだった。4月に出た「よすが」もそんなアルバムだった。



 「よすが」の曲を独演で録音した「よすがひとりでに」は、ますます自分に聴かせているようだ。バンドとの演奏は、バンドのパワーに張り合うために、ヴォーカルが力んでいる。そのことで生まれる力強さも彼女なのだろうが、独演は自分の声をコントロールして、よりパーソナルな歌になっている。
 どちらが、より自分らしいのか迷っているのかな、どっちも好きなんだな、などと両方を聴きながら思いを巡らす。シンガー・ソングライターは多かれ少なかれそんな逡巡を重ねているのかもしれない。そして自分のスタイルを見つけていくのだろう。カネコアヤノは、その探ってる姿が愛おしくも思える。

文:今井智子




RELEASE INFORMATION

よすがひとりでに_CD.jpg
カネコアヤノ「よすが ひとりでに」
2021年5月19日(水)
Format: CD、カセット、Digital
Label: 1994
¥2,500(税込)

Track:
01. 抱擁
02. 孤独と祈り
03. 手紙
04. 星占いと朝
05. 栄えた街の
06. 閃きは彼方
07. 春の夜へ
08. 窓辺
09. 腕の中でしか眠れない猫のように
10. 爛漫

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LINK
オフィシャルサイト
@kanekoayano
@kanekoayanodayo



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