2021.04.26
カネコアヤノ、初めてバンドメンバー全員で語り合う、4人の出会いから最新アルバム『よすが』まで
初めて現在のメンバーが参加した『祝祭』、初めて全曲バンド録音となった『燦々』に続く『よすが』は、長い時間をともに過ごしてきたバンドとしての「カネコアヤノ」の最初の到達点と言っても過言ではない。そこで今回SENSAでは、初めてのメンバー全員インタビューを行った。どんな風に4人が集まり、惹かれ合い、時間を共有し、いかにして『よすが』という傑作を作り上げたのか。日々の生活の中から生まれるカネコアヤノの楽曲が、このメンバーだからこそ輝く理由が、言葉の端々から感じられるインタビューとなった。
ライブが決め手になった本村拓磨との出会い
―今日は初めてのメンバー全員インタビューということで、まずは改めて4人の出会いを振り返ってもらいたいと思います。本村くんはライブハウスでカネコさんのライブを観て、バンドに参加することになったそうですが、当時のことを話してもらえますか?
カネコアヤノ(Vo/Gt):細かいことまで覚えてる?
本村拓磨(Ba):細かいことは......2013年8月、下北沢GARAGE。
―めっちゃ覚えてる(笑)。
カネコ:私がまだよくわかんない編成でやってた頃(笑)。
本村:ベースがいない編成のバンドセットだったんですよ。もともと普通に友達だったので、「友達のカネコさんがライブをやるらしいから、観に行ってみるか」くらいの感じで、音源も何も聴かずに行ったんですけど。
カネコ:そうだったんだ。
本村:「何かの前座でZeppでやったらしい」とかは聞いてたから、「へー、じゃあ、いい感じなんだろうな」って、ボケーッと、アホな顔して観に行って(笑)。
―そのライブを観て、一緒にやりたいと思ったわけですか?
本村:そのときから今でもライブで演奏してる「退屈な日々にさようならを」をやっていて、それを聴いたときに電流が走ったというか、スピーカーから歌詞が出てきたんですよ。
カネコ:見えちゃった?
本村:お酒も飲まずにボケーッと観てただけなんだけど、歌詞がスピーカーから飛び出してきて、「えー! 何これ!」みたいな。30分のライブだったと思うけど、自分の中では3年くらい経過した感じっていうか。
カネコ:10秒とかじゃなくて、逆にめっちゃ長く感じたんだ。
―それだけ濃い体験だったっていうことですよね。
本村:はい、ライブを一回観ただけで自分が違う人間になっちゃったというか、「今の時間何?」みたいになって。で、ライブが終わって、『印税生活』を買って、ベースがいないなら、弾かせてくれって。
カネコ:その話をされたのはめっちゃ覚えてる。すごく嬉しかった。そのとき、私まだ自分のギターも持ってなくて、人に借りてライブしてた頃で。だから、ホントに何もなかったっていうか。
―本村くんがバンドに加わったことによって、どんな変化がありましたか?
カネコ:今でもですけど、本村くんには一番何でも話すから、「正してくれる」っていうか。私がウニャウニャ言ってても、「大丈夫!」って言ってくれる。それは当時から今もずっとそうで、めちゃくちゃ救われてます。あと、最初から「ホントにずっとやってくれるんだな」っていうのもわかったから、「寄りかからせていただきます」みたいな感じもめちゃくちゃあって......ありがとうございます。
本村:こちらこそ、ありがとうございます。
最初は「怖い人」だと思っていた林宏敏
―林くんに関しては、もともとカネコさんが踊ってばかりの国のライブをよく観ていて、ギタリストを探すってなったときに、当時のマネージャーさんに希望したとか。
カネコ:そうです。踊ってばかりの国は高校生くらいから観に行ってたから、新しくギターを入れようってなったときに、当時のマネージャーに「林くんが一番かっこいいと思います。でも、踊ってばかりの国の人全員怖いから、やってくれないと思う」とか言ってて(笑)。でも、マネージャーがダメ元で声をかけたら、「やる」って言ってくれました。最初は「さよーならあなた」を1曲レコーディングするだけの予定だったんだけど、「ライブも一緒にやりたいです」って言って。
林宏敏(Gt):そのタイミングもすごくて、俺が踊ってをやめようと思って、バンドメンバーと話をして、それからみんなに発表するまでに2週間くらいあったんですけど、その間にカネコさんからオファーがあって。要は、やめるっていうのを知らずに連絡をくれたわけで、運命的なものを感じたし、曲も良かったから、「ぜひお願いします」って。
―カネコさんの楽曲のどんな部分に特に惹かれましたか?
林:やっぱり歌詞がすごく好きだなって思ったし、メロディーの当て方とか、コードの使い方も面白くて、今まで聴いてた音楽ともまた違うなって。同じ「フォーク」でも、「カネコの歌だな」って感じがして、この人にしかできない音楽をやってると思いました。
カネコ:(パチパチパチパチ)
林:すごい覚えてるのが、初めて一緒にスタジオに入ったときに、LINEを交換して、スタンプを送ったら、「絶対スタンプなんて使わないと思ってた」って言われて(笑)。
本村:当時踊ってばかりの国はめちゃめちゃ怖いバンドだと思ってたからね。
カネコ:全員携帯持ってない、みたいな(笑)。
本村:全員バイトもしてなくて、ヒモだろうって。でも林くんは普通にiPhone持ってて、LINEもやってて、『おしゃれ手帖』のスタンプを送ってきて。
カネコ:そう、「『おしゃれ手帖』って、近いじゃないか!」って(笑)。
―踊ってに対する偏見がすごい(笑)。
カネコ・本村:すいませーん。
楽曲の空気感を大きく変えたBobのドラム
―そして、新しいドラムを探すにあたって、3人で相談したときに名前が挙がったのがBobくんだったと。
本村:それまでドラムだったヤスさん(濱野泰政)はそもそも専業ドラマーじゃないしね。
カネコ:エンジニアさんで、毎回リハやライブのために伊豆から来てもらってたし、その頃いろいろ変わる時期かなと思って。で、2人に相談したら、「HAPPYのBobなら、たぶんカネコとも合うよ」って言ってくれたんだけど、HAPPYって全員怖いと思ってて...(笑)
―そんなんばっかり(笑)。
本村:でも、ドラムのプレイスタイルもそうだし、人間がカネコに合うんじゃないかと思って。
林:そう、選ぶ基準が「ドラムがすごく上手い」っていうより、「一緒に遊んでて楽な人がいいね」って言ってたんで、それで考えるとBobがいいんじゃないかって。
カネコ:あとは、歌に寄り添ってくれる、音楽に寄り添ってくれる人がいいって話もして、2人が「Bobがいい」って言ってくれたけど、でもHAPPY怖いから......とりあえず、一回リハに入ってみましょうってなったんだっけ?
Bob(Dr):ライブを観たのが先だった。
カネコ:そうだ、渋谷のWWWにビールを持ってきてくれて、「いい人じゃーん!」みたいな(笑)。
本村:Bobはライブに来ると絶対差し入れをくれるんですよ。しかも、メンバーの中に飲めない子がいると、ちゃんと1本コーラにしてくれたりして。
―めっちゃ優しい(笑)!
カネコ:それで話をして、大丈夫そうだなって。
Bob:初めてライブを観たときにボイスメモで勝手に録音をしてて、それをずっと聴いてました。
カネコ:で、スタジオに入って、「退屈な日々にさようならを」を合わせたんだよね。
本村:「グレープフルーツ」もやって、曲の世界観がめちゃめちゃデカくなったのを覚えてる。ドラムがリズムを刻む曲っていうよりは、歌が主軸にあった上で、ドラムがキャンバスをワーッて広げてくれて、大宇宙にいる感じっていうか、空気変わったなって。
カネコ:わかる。空気変わったよね。それ超覚えてる。だから、「一緒にやりたいです」って。
Bob:で、その日そのまま飲みに行って。
カネコ:行った! めっちゃ酔っ払った!
本村:もともと俺とカネコが近所で、カネコは普通に帰って......。
カネコ:でも私普通に帰れなくて、神社で座ってた。
本村:それ初めて聞いた(笑)。
カネコ:途中まで歩いたんだけど、酔いすぎて無理になっちゃって。
本村:で、林くんとBobは俺んちのクソ狭い部屋で寝て。
林・Bob:お邪魔しました。
―そうやって、この4人が揃ったと。
本村:必要な人を一人一人集めていった感じなのかな?
林:ドラクエ的な。
本村:導かれるかのようにね。
人見知りの4人が共有してきた日々
―カネコさんは基本人見知りで、初めての人と何かをするのは得意じゃないと過去のインタビューで話してると思うんですけど......。
カネコ:無理です。
―でも、この4人の波長が合ったのは、どこが共通してたんだと思いますか?
カネコ:みんな人見知りだと思う。
本村:確かに、対バンの人とかとしゃべんないもんね。
カネコ:少しずつ変わってきてるとは思うけど、人見知りっていうのは大きな共通点な気がします。
―もちろん、初めから今とまったく同じ空気感ではなかったと思うんですけど、これまでを振り返ると、よりバンドになっていく上で、どんな経験が大きかったと言えますか?
カネコ:レコーディングは節々で大きい気がします。合宿っていうのもあるし。
本村:一緒に生活をするので、ご飯も一緒に食べるし、洗い物もみんなで分担してやるし。
カネコ:嫌なとこも見えるしね。でも、向かうところは一緒だから、嫌なところが見えても大丈夫。
本村:あとはライブも数多くやってきて、週3~4で24時間一緒にいるみたいな、そんなのを数年やってるからね。
カネコ:そんなの仲悪くなるか仲良くなるかしかないよね。
―林くんはどんなことが記憶に残ってますか?
林:『祝祭』のツアーで名古屋の(ライブハウス)得三でやったときは、ライブ自体すげえ楽しかったし、打ち上げも楽しくて......友達とかいても、結局この4人で一緒のテーブルで飲んでる、みたいな(笑)。
―バンドによっては打ち上げだとバラバラになるけど。
林:基本ずっと一緒にいますね。ライブとかリハじゃないときも、4人で遊ぶことが結構多い。
―Bobくんはどんなことを覚えてますか?
カネコ:思い出振り返り大会(笑)。
―このバンドはそういう部分が大切な気がする。
カネコ:確かに!
Bob:札幌行ったときは12時間くらい遊んだよね。朝一で出番が終わって、12時間くらい飲んで騒いで。
カネコ:4人で観覧車乗った。で、ドンキ行ったらお客さんに会って。
本村:「さっきライブしてた人たちドンキおる」って。
カネコ:「てへ」っつってね。あれ楽しかった。ずっと遊んでる。
―今も変わらず?
カネコ:うん、この間もBobん家でみんなで遊んだ。未だに楽しいのが結構ウケる。
第5のメンバー、濱野泰政の存在
―曲作りはカネコさんの弾き語りを元にして、みんなでスタジオで音を鳴らしながらイメージを共有していくわけですか?
本村:基本的にはそうなんですけど、そこにはエンジニアのヤスさんもプロデューサーとかアレンジャーみたいな立ち位置でいて、ヤスさんが大元のイメージを考えて、それをみんなで広げて具現化する感じです。「そうやろう」ってかっちり決めたわけじゃないから、曲によってはメンバーのアイディアを優先したりするけど、ヤスさんがいるのはすごく大きいと思います。
―単純にエンジニアというより、クリエイティブにも関わる第5のメンバーのような存在なんだ。
カネコ:そういう感じですね。
本村:キャリアも長くて、クラシカルなアレンジから打ち込みまで全部吸収してる人なので、アレンジの幅もすごく広くて、助かってます。
林:アレンジ思いつくのも速いしね。だから、プリプロのときも無駄な時間がない。
本村:それでいてみんなの個をつぶすことなく、林くんにしか弾けないギターを弾かせるし、Bobにしか叩けないドラムを叩かせる。それを無理せず、自然にできてる感じ。
カネコ:しかもヤスさんは景色とかで説明してくれるから、私にはすごくわかりやすくて、そこも好き。だから私も景色で共有したりして。
本村:で、その景色を作るためにはどういうビートがいいかをBobとすり合わせたり。抽象と具体の使い分けがくっきりしてるから、めちゃくちゃいい。
カネコ:それがホントにいいです。
本村:具体的なことばっかり言われても嫌だもんね。
カネコ:やだ。できない。
―Bobくんや林くんはどうですか? ヤスさんとの作業について。
Bob:毎回ヤスさんが自分のやったことないことも提案してくれて、それによって自分も広がるというか、成長できるので、毎回楽しみです。
林:レコーディングのときは、「これ入れたいです」って言うと、「好きだねえ」みたいな(笑)。自由にやらせてくれて、よければそれでいいし、よくなければ違うってちゃんと言ってくれて、ホントにやりやすいです。4人だけだと見えないことも、ヤスさんが中心にいてくれることで、ちゃんと拾ってくれるし。
―ベタな例えだけど、ビートルズで言うジョージ・マーティン的な存在だと。
本村:うん、ホントにそういう立ち位置。こうやって楽曲の可能性を広げていたのがジョージ・マーティンのやっていたことだったんだろうなって、ヤスさんと仕事をしてると感じますね。
丁寧な曲作りで完成させた新作『よすが』
―では、そろそろ新作の話に行きましょう。今回も伊豆スタジオに行って、合宿でレコーディングをしたそうですが、去年はコロナ禍の影響もあって、一時活動がストップしていたと思うんですね。その頃の心境を話してもらえますか?
カネコ:私にとっては(去年の4月に予定されていた)中野サンプラザが飛んじゃったのが大きくて。早い段階からそうなるだろうとは思いつつ、ギリギリまで粘って、でも結局飛んじゃったときはホント虚無になっちゃって、結構きつかったですね。ライブとかリハも一回どうでもよくなっちゃった。
―逆に、そこからどうレコーディングに向けて立て直していったのでしょうか?
カネコ:レコーディングをすることは前から決まってたから、それをやりたいっていう微かな気持ちを信じて、何とか作ったら全然作れた、みたいな感じ。気持ちは終わってたけど、何とか作ったら作れたから、「私、大丈夫かも」って、自分で安心したというか。だから、レコーディングが決まってたことが大きかったです。
―向かう先があったことが大きかったと。
カネコ:そうですね。救われました、すごく。それがなかったらって思うと......結構怖い。
―本村くんとしては、どう合宿に向かっていったのでしょうか?
本村:今までは過密なスケジュールの中で、瞬間的な判断でどんどん作っていってたけど、今回はプリプロもがっつり2週間設けていただいて。カネコからデモが送られてきた時点で、直感的に、これは勢いでレコーディングを進めないほうがいいなっていうのは思いました。なので、音数は極限まで減らしつつ、でも景色は広げたい。徹底的に詰めて作ったほうがいいだろうと思ってましたね。
―『燦々』も、『祝祭』の頃に比べると丁寧に作られた作品だったと思うけど、より丁寧に、突き詰めて作っていったと。
カネコ:曲のイメージとか歌の持ってる人格みたいなものをできるだけみんなと共有して、それぞれがちゃんと理解した上で録音に挑もうねって話をした気がする。
林:そこが理解できてれば、いっぱい音を詰め込まなくても、例えば、キランって音一個だけだったとしても、そこに意味があれば、それが正解になる、みたいなことを考えてギターは弾きました。フレーズを細かく考えるというよりは、曲の言う通りにギターを弾けばそれが正解になるはずだって。あとは、鳴ってないところもちゃんと音が鳴ってるというか、そういう感覚も大事にしました。
カネコ:それも『燦々』の頃から話してたけど、今回はよりそうすべき作品だよねって話をした気がする。みんなでそれを超丁寧にやったのが最初のプリプロの2週間だった。
本村:今までだったらその2週間でアレンジを考えながら録っちゃおうってなりそうなもんだけど、プリプロを2週間やって、一旦東京に戻って休んで、それから本チャンっていう、一回俯瞰する期間を設けたから、それでより丁寧に作れた。だから、プリプロの音源もすごくよかったんですけど、あれはあれというか、出来上がったアルバムとは全然違うものだなって、今聴くと思う。
カネコ:『燦々』のときは「プリプロのほうがいいんじゃないか?」みたいな悩みもあったけど、今回それはなかったよね。前はみんな本チャンでハマっちゃって、わかんなくなったりしたけど......今回は「腕の中でしか眠れない猫のように」だけずっと録れなくて、ベーシック録るのに夜の8時くらいまでかかったけど。
本村:それを思い返すと、これまでと違うのって、今までは「録れちゃった」っていう偶然の産物もあったけど、今回は今まで以上に自分たちでちゃんと思い描いたものを具現化することができたのかなって。で、「腕の中でしか眠れない猫のように」に関しては、もともとが偶然性の塊みたいな曲だから、録るのに時間がかかったっていう、そういうことかもしれない。
―今回のアルバムがこれまで以上に丁寧に作られているのは、いつもより時間があったのももちろんだけど、本村くんが「デモが送られてきて、直感的にそう思った」と話してくれたように、楽曲自体がそういうアプローチを必要とするものだったということで、それは2020年の内省的なムードと無関係ではないと思うんですね。ただ、「コロナを意識して作った」ということではなくて、カネコさんの楽曲はもともと生活とか日常の中から生まれるものだったわけで......。
カネコ:そうですね。
―だからこそ、自然と去年の空気感が楽曲に反映されたということだと思うんですけど。
カネコ:コロナでやられてたのは実際そうだけど、それを意識して、「つらい」とか「頑張ろうよ」って歌うのは全部うざいし、気にしないで作ろうって感じではありました。レコーディングを丁寧にやろうと思ったのは、今おっしゃって下さったことももちろんあるとは思うけど......それこそみんな暇だったし、みんなやることがなくて、でもみんな音楽をやってないと死んじゃうから、「みんな、やろう!」って感じが私はあった。「みんな音楽やってないと死んじゃうでしょ?」みたいな。だから、「プリプロ長めに入っちゃいましょう!」「どうせ時間あるんだし、とにかくやろう!」みたいな感じだった。
本村:助かりました!
カネコ:こちらこそ! それは自分もそれを求めてたからで......そこが大きかったかな。
―今の話を聞くと、1曲目に「抱擁」が置かれていることにすごく意味があるように思います。それぞれがよりどころを求めて、不安な中で寄り添っていたこと、そのムードが「抱擁」からは感じられて、それが結果的に聴き手にも希望を感じさせるし、アルバム全体のムードを象徴している気がして。それこそ、すごく丁寧に作られている曲だとも思うし。
カネコ:それならよかったです。曲順はその曲にとって一番いいと思うところに置いただけだから、特別何かを意識してはいないけど、結果的にそうなってるならよかったなって、本当に思います。
必要だったのは「希望」と「救い」
―アレンジはどのように進めて行ったのでしょうか?
林:最初はちょっと暗かったから、明るくしたいねって。
カネコ:重さだけ出ちゃってたよね。今回の曲は全部そういう話をしてて、一歩間違えるとただただ暗い作品になっちゃうから、それは避けよう、希望がある風にしようって、それはすごい話しました。
―これまでの作品と比べると、わかりやすく軽快で明るいっていうタイプの曲はほぼないですもんね。
カネコ:だからこそ、ただ暗いだけにならないようにって、それは「抱擁」でも言ってた。やっぱり、落ちてるだけだったり、陰の気分だけだと、「それって何なの?」って感じが私はしちゃって、「それだとそれで終わりじゃん」って思うから、暗い曲だったとしても、ちょっとでも救いとかがあったらいいなって、それはずっと思ってる。
―たくさんの楽器が曲ごとの様々な風景を描き出していて、特に林くんの使用楽器はエレキギター、12弦ギター、バンジョー、マンドリン、ペダルスティールと多彩ですよね。
林:ペダルスティールを使ったのは今回が初めてで、それこそコロナで外に出れなくてずっと家にいたときに、レコーディングで使えたらいいなと思って、友達から借りてずっと練習して。思ってた以上に難しかったけど、これで曲のイメージが変わったところもあるかもしれない。
本村:だいぶ大空が描けるようになった気がする。空がきれいになった。
林:「窓辺」は最初エレキを使わないで、ペダルスティールとバンジョーだけで曲の世界観を作るぞって意気込んでて、実際プリプロではエレキを入れてなかったんです。でももうちょっと行けるんじゃないかと思って、エレキでサビのアルペジオを入れて。これを録ったときはヤスさんと2人で集中してフレーズを作って、すごく気に入ってます。
―Bobくんは今回のレコーディングでどんなことが印象的でしたか?
Bob:流れ的にはいつもの流れと一緒だったけど......ずっと猫がいたっていう。
本村:それだ! 一番大事なことじゃん!
カネコ:ばんちゃんいなかったらやばかったね。
本村:カネコさんの猫のばんちゃんがプリプロから本番までずっといて、どれだけ録音が煮詰まっても、ロビーに戻るとばんちゃんがいるから、全部ゼロになる。
―じゃあ、今回のレコーディングにおける4人の「よすが」はばんちゃんだったと。
カネコ:そういうことです! もともとは預け先がなくて連れて行っただけだったんですけど、ばんちゃんがいてくれてホントによかった。
ここ数年で強くなった「歌いたい!」の気持ち
―最後の2曲についても聞かせてください。「爛漫」はもともと去年の4月にシングルでリリースされていましたが、アルバムには再録したバージョンが収録されています。アレンジがガラッと変わっているわけではないものの、この1年に対する想いがこの曲に集約されているかのようで、とても印象的な仕上がりでした。
カネコ:うれしい。去年出したやつもすごく気に入ってるけど、アルバムの中にハメたときに、どうしても浮いてる気がしちゃって。だから、「今やりたい「爛漫」をみんなで録り直したいです」って言って、急だったから、レコーディングの日程からはずれた日に録りました。
―歌自体の変化も印象的で、抑えたトーンにすごみが出ているというか、それはアルバム全体を通して思うことでもあり、「爛漫」には特に顕著に表れているなと。
カネコ:コロナになって、歌えてなかったことは大きくて、「歌いたい!」とか「歌うの好き!」っていうのは、この数年で一番気持ち的に大きくなってて。録音よりも後の話ですけど、私コロナに感染しちゃって、その後に歌うことがもっと楽しくなったんです。それは歌えなくなるのが怖くなったっていうのもあると思う。「やっぱり私歌うのが一番好きなんじゃない?」とか「歌えるのありがてえっす」みたいな気持ちの変化はすごく大きいと思います。
―バンドメンバーとして、カネコさんの歌の変化はどう感じていますか?
本村:今までは、ツアーファイナルとか、節目節目で歌の存在感が大きくなっていった印象なんですけど、最近はリハに入るたびにデカくなってて、「どうなっちゃうんだ?」みたいな。世界観がどんどん巨大になってるから、「爛漫」も去年録ったバージョンよりもっと巨大に、広く聴こえるようにしたくて、ベースも前より低い帯域が出るベースを使っていて。歌に引っ張られて、演奏も変わりますね。
―後半に出てくるギターにしてもより「広さ」を感じさせます。
本村:去年録ったのよりダビングのトラック数は減ってるんだよね。
林:でも広がってる。
カネコ:この再録音はめっちゃ気に入ってて、人前で演奏されてこなかったことも大きい気がする。でも......なんでこのとき違う「爛漫」が録れると思ったんだろ?
―それこそライブで繰り返しやって、磨き上げられたわけではないですもんね。
カネコ:でもみんなが悶々としてる中、たぶんこの曲は育ってるはずだと思ったのかな。
―やっぱりこの1年のグチャグチャした想いが集約されてるのかなって。
カネコ:そうですね。そんな気がします。
瞬間の積み重ねで輝くカネコアヤノの音楽
―最後の「追憶」は本村くんとヤスさんと3人で録られていて、親密な仕上がりですね。
カネコ:これを最後に入れようっていうのは曲ができたときに思ってました。コロナでライブができなくなって、なんで歌を作るのかわからなくなっちゃって。そのときいろいろ自分のことを考えたんです。「お客さんのことを考えて」とかって、気づいたらそうなってたけど、私が最初に実家で歌を勝手に作り出したときはお客さん0人だったわけで。なので、一回「この言葉は人を傷つけてしまう」とか全部排除して作って、そういう曲を一番最後に入れようと思ったんです。そもそも自分がやりたくてやってることで、今もそう思ってるけど、その本当の意味をもう一回考えたときに、一回フルシカトで、誰を傷つけようが、自分が悲しくなろうが、18歳とか19歳の頃の気持ちで作ろうって。
―それで「追憶」というタイトルなんですね。
カネコ:音楽以外のことも含めて、私はどうやって日々を過ごしてきたのか、何が楽しくて、どういう人を頼って生きてきたんだっけって、思い出せることは全部思い出して書きました。
―そういう曲がここ数年最も長い時間をともに過ごしているバンドメンバーとともに作ったアルバムの最後に入っているというのは、とても意味があるように思います。
カネコ:今日話してて思ったのは、さっきも言ったように、私は生活の中から曲が生まれてるから、音楽じゃないところでも仲良くできる人じゃないと、一緒に音楽できないかもなって。音楽以外でも会話ができたり、笑える人とじゃないと、音楽できてないかも。
―この3人とは音楽以外でも、生活の中でずっと時間を共有して、ずっと遊び続けていて、だからこそ一緒に音楽ができる。
カネコ:そうなんです! ホントはね、瞬間瞬間で生きたいんですけど、私が瞬間瞬間を生きてこれたのって、周りの人たちがいてくれて、その積み重ねがあったからこその「瞬間」だったんだなって。その瞬間だけ、バーン! 終わり! また明日!じゃない。音楽だけじゃなくて、友達とか、ご飯とか、川とか空とか......わかんないけど(笑)、全部が全部積み重なっての、瞬間! 瞬間! 瞬間! バン! バン! バン! 花火!みたいな感じだったんだなって思いました。だから、そういう全部を大事にしながら、私はこれからもこのままの私でいれたらなって。
取材・文:金子厚武
撮影:馬込将充
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2021年5月12日(水)予定
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※当選者にのみDMもしくはメッセージでご連絡します。DM・メッセージの受信機能を有効にして頂くようお願い致します。
※当選のご連絡から2日以内にお返事がない場合は当選を無効とさせて頂きます。
※選考経過および結果に関するお問い合わせには一切お答えできません。
※プレゼントの当選権利は、当選者本人に限ります。第三者への譲渡・転売・質入などはできません。
RELEASE INFORMATION
カネコアヤノ「よすが」
2021年4月14日(水)
Label: 1994
NNFC-09 / 価格¥3,000(税込)
Track:
1.抱擁
2.孤独と祈り
3.手紙
4.星占いと朝
5.栄えた街の
6.閃きは彼方
7.春の夜へ
8.窓辺
9.腕の中でしか眠れない猫のように
10.爛漫(album ver.)
11.追憶
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LIVE INFORMATION
「カネコアヤノ ワンマンショー 2020春 -大阪公演-」5月1日(土)大阪市中央公会堂
5月2日(日)大阪市中央公会堂
「カネコアヤノ TOUR 2021 "よすが"」
5月27日(木)広島JMSアステールプラザ 大ホール
5月29日(土)福岡市民会館
6月03日(木)札幌市教育文化会館福岡市民会館
6月13日(日)仙台電力ホール
6月26日(土)金沢市文化ホール
6月28日(月)大阪オリックス劇場
6月30日(水)名古屋市公会堂
7月06日(火) LINE CUBE SHIBUYA
7月07日(水) LINE CUBE SHIBUYA
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オフィシャルサイト@kanekoayano
@kanekoayanodayo
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