SENSA

2021.05.20

音楽愛を語る、FM福岡のラジオ番組「Room"H"」MC:森山公稀(odol)  -2021.05.19-

音楽愛を語る、FM福岡のラジオ番組「Room"H"」MC:森山公稀(odol) -2021.05.19-

FM福岡で毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"203号室(毎週水曜日の26:00~26:55)"では、音楽番組「Room "H"」をオンエア。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、LAMP IN TERRENの松本大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、本音で(Honestly)、真心を込めて(Hearty)、気楽に(Homey) 音楽愛を語る。彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。
今週のMCは、odolの森山公稀が担当。SENSAでは、オンエア内容を一部レポート!
(聴き逃した方やもう一度聴きたい方は、radiko タイムフリーをご利用下さい。)

A_o「BLUE SOULS」紹介@リビングルーム
(森山)FM福岡からodolの森山公稀がお送りしている「Room "H"」。ここからは@リビングルームです。
最近ですね、少し話題となったCMがあるのをみなさんご存知ですか?ポカリスエットのCMがSNSだったりで、話題になっていたかと思うんですけども。皆さんはもう見ましたでしょうか?


ポカリスエットのCMに、A_oというアーティストの「BLUE SOULS」という曲が使われているんです。A_oっていうのは、この後どうなっていくのかとか、ちょっとまだ全貌は明らかではないのですが、BiSHのアイナ・ジ・エンドさんと、ROTH BART BARONの三船さんによるユニット、お二人の名義です。最初は正体不明という感じでCMがオンエアされていましたが、でも見た瞬間ですね、「あ、アイナさんだ」って思いましたよね。もうそれだけ記名性のある素晴らしい歌声なんですけども、音楽も本当に大好きだったので、是非この曲を@リビングルームの一曲目にお届けしたいなと思います。



本当にアイナさんの表現力の幅広さには新曲を聴く度に驚かされるし、メロディだったり、歌い回しにはかなり「三船さん節」が聴かれるんですけども、それを自分のものとして歌っている、自分の音楽にして歌ってしまうという、そういう力が本当にアイナさんは素晴らしい方なんだなといつも思いますね。三船さんの音楽もですね、本当に良くて、ROTH BART BARONは実はodolと関わってくれているスタッフだったり、サポートのミュージシャンだったりが、ちょっとかぶっていたりして色んな話を聞いたりしています。尊敬するアーティストでもあり、いつかご一緒したいなとずっと思っているところです。そんなお二人の一曲をお送りしました。


自身の取り組み「Ambient Log」について@レコーディングルーム
@レコーディングルームと題しまして、毎週一曲、自作の曲を皆さんに聴いていただこうかなという時間でございます。個人的になのですが、僕はAmbient Logという取り組みを行っておりまして、本日はその中の音楽を流したいなと思います。僕は自分のInstagramアカウントで、Ambient Logと名付けて、不定期で音楽のようなものを投稿していたりするんです。これがどういうコンセプトでどういうつもりでやっているのかと言いますと、正直どういうつもりもなくて、気が向いたときに、その日の気分とかその日の思ったままを日記のような感じで作って、ただそれをアップするということなんです。


普段、odolで活動したりするときには、リリースするために曲を書くとか、ライブをするために曲を作るとか、あとはソロでも誰かにお願いされて書き下ろすとか、何か目的やどこに着地するのかっていうものがあって音楽を作ることがほとんどなんです。そんな中で、「ただ音楽を作る」みたいな、そういう場があってもいいのかなと、ちょうど一年前ぐらいに思って始めてみた取り組みです。
この曲たちは本当にただアップしたらそれだけなんですよね。それがまたInstagramという1分間の動画で、そういう短い尺なのもまた僕としては良くて、それで何かを伝えたいとかそういうことも一切なく、その日辿り着いた音を公開してみるという、そんな取り組みでございます。

音楽のようだったり、まだ音楽にもなってなさそうな音でしかないような感じだったりするんですけど、その辺りも特に何も決めずに、そのとき辿り着いた形でいいなということにしております。
最近はあんまり更新できていなかったので、ご紹介しといてあれなんですけども、不定期でまたこれからも更新していくつもりですので、よかったら僕のInstagramアカウントをフォローしてみていただければなと思います。機材の映像と共にアップロードしておりますので、そういう興味がある方ももしかしたら面白いかもしれないですね。
ということで@レコーディングルームでした。来週はどんな宅録音源が公開されるかお楽しみにしていてください。

1621412353971_roomh.jpg

新居の作業スペース



"アンビエントミュージック"とは@ベッドルーム
ここからは「Room "H"」の住人が、それぞれの偏愛ソングをご紹介したいというコーナーになっております、@ベッドルームのコーナーです。
先ほど@レコーディングルームの中でAmbient Logの話をしましたが、そんな流れから、今日はアンビエントミュージックの最重要曲の一つとも言えるかもしれない、そんな曲をご紹介したいなと思っております。
アンビエントミュージックという概念は、イギリスのブライアン・イーノという、ある一人のアーティストが1978年に提唱して生まれたものなんですね。例えばロックやジャズみたいに大きなシーンの流れの中で発展しながら生まれたというのとは違って、ブライアン・イーノという人がアンビエントミュージックと名付けた、それがアンビエントミュージックの始まりなんです。1978年にそれが提唱されるのですが、その1978年の3年前にリリースされた、アンビエントミュージック前夜みたいな曲がありまして、今日はそれをご紹介したいなと思います。



お送りしているのはブライアン・イーノで「ディスクリート・ミュージック」です。この曲は全部で31分ぐらい収録されているのですが、先ほども言ったように、この曲はアンビエントミュージックというものの原点みたいな作品なんですね。皆さんはこれを聴いてどう感じましたか。どういう風に聴こえましたか。
もう現在ではアンビエントミュージックが生まれて40年以上経ちますので、今ある多くの音楽に、このアンビエントの影響っていうのは色濃く反映されていて、色んなところでこのアンビエントというコンセプトに様々な形で触れているとは思います。
だから今この曲を聴いたとしても、どこが新しい概念だったのかっていうことが、なかなか分かりづらいのかなぁと思います。
なのでとても簡単にですが、イーノが提唱したアンビエントミュージックというのは、どういうところがすごかったのか、何が新しかったのかっていうのをざっくりとご紹介したいなと思います。

何がすごかったのかっていうのをですね、本当に簡単に言いますと、それまでの音楽に当然あったと思われていた、いくつかのものがないっていうことがアンビエントミュージックの特徴なんですね。
何がないのかっていうのは僕なりの言葉で三つ紹介すると、一つ目は「構成がない」ということで、二つ目は「表現がない」ということで、最後が「正しい聴き方がない」。
当然、音楽にはあるだろうって思われていた要素がないものなんですね、このアンビエントミュージックというものは。

少しだけ詳しく紹介すると、一つ目の「構成がない」って言ったのは、例えば、始まりとか終わりというものがなくて、すごく永続的な音楽で、この曲も31分収録されてはいますが、それは当時のLP盤なのか、何かの物理的な制約で31分っていうことなだけで、本当はもっともっと長いマスターテープから切り出してきた一部分なんですね。
そういう風に明確な始まりとか終わりは元々なくて、さらには方向性もないんですね。前に進んでる感じがなく、どこかに向かっているものでもなくその場に停滞してるような音楽だったかと思います。そして展開、いわゆるAメロBメロやヴァースコーラスみたいな構成なども無く、構造が掴めない、発展していかない音楽でもあるんですね。クライマックスだったり盛り上がりどころだったり、そういうのは徹底的にない音楽になっています。それが一つ目の「構成がない」っていう特徴ですね。

二つ目の「表現がない」っていうところも面白いところで、普段イメージされる音楽の大部分は、表現としての音楽、つまり意味とか物語みたいなものを想定して、そういう全体の一つの意味に向けて音楽を作られているということがほとんどなわけですよね。いつも皆さんが聴いている音楽の多くはそういう風に作られていて、作り手が今のこういう気持ちを表現したいと思って、この音を・このメロディーを選ぶとか、歌詞を作るとかもそうですけど、そういう風に何かの表現としての音楽というのはイメージしやすいですよね。
それに対してこの「ディスクリート・ミュージック」はどう作られているのかというと、システムと素材という二つの要素を使ってある意味機械的に作られています。難しい話になってくるので、今回はちょっと割愛しますけど、簡単に言うと、音が鳴るルールみたいなシステムをデザインするのと、そのシステムにどういう素材となる音を入力するのかっていう、その二つだけを決めて、あとは自動的に音楽が作られていくんですね。
31分間の一つ一つの音を配置して作っているのではなくて、ある音が鳴った何秒後にその音がもう一度鳴る、みたいなシステムを作って、そのシステムに則ってうまく動作するように何かの音を入れるという、そういう形で作られているので、これはブライアン・イーノ自身もリスナーとしてこの曲を聴いていると言いますか、エゴみたいなものをなるべく排除しようとしているんではないでしょうか。
そういう意味で「表現がない」っていうところがアンビエントミュージックの二つ目の特徴になるのかなと思います。

最後に「正しい聴き方がない」と言いましたけども、ブライアン・イーノのアイデアは、じっくりと聴かないこと、つまり聴き流すことが想定されていたんですね。基本的に音楽は聴いてもらうことを想定していますよね。例えば僕たちodolが曲を作ってるときも、なるべくたくさんの人にできれば深く聴いてほしいなっていうのは、ミュージシャンとしての願いとしてあるわけです。
ただ、このアンビエントミュージックには、深く聴き入らない、流れてはいるんだけどそれに耳を傾けないことが、音楽の在り方として想定されているんです。それと同時に深く聴き入る、じっくりと耳を傾けるっていうことにも耐えうる品質というか、それに耐えうる深みも想定しているというのが、後のBGMを発明したとも言えるエリック・サティと比較した時のイーノの独自性なんです。
普通は「こういう風に聴いてほしい」っていう、どう感じてほしいか、どう受け取ってほしいかっていうことではなくて、例えば、プレイヤーだったら「このフレーズがかっこよくできたから、このフレーズ気づいてほしいなぁ」みたいな、どこかで無意識的にもエゴが働いたり。例えば、歌詞を書く人だったら、「ここパンチライン載せられたな」みたいな、そういう気持ちがあったりすると思うんです。そういう「聴いてほしいな」みたいなものを意識的に排除して、聴いても聴かなくてもいいっていうことも、この音楽の特徴の一つだと言えると思います。

そして、これらの特徴自体をブライアン・イーノは「環境」、「アンビエンス」と名付けまして、そういう特徴を持った音楽だからアンビエントミュージックということになっているわけです。
その「アンビエンス」っていうのは、「雰囲気であり、あるいは人を取り巻いている影響力である。いわばそれは周囲の空気に付与された微かな色彩である」ということをブライアン・イーノは言っていて、詩人のようなんですけども、でもなんとなく分かると思うんですよね。この音が流れている空間にはやっぱりそれ独自の雰囲気があるだろうし、この音があるかないかでは、僕たちの生活とか行動に対してそれなりの影響力を持つと思うんです。そういう微かな色彩みたいなものを作ろうとした音楽、ということですね。

1621412349310_roomh.jpg
ということで、アンビエントミュージックについて長々と話してみたんですけど、まあアンビエントミュージックというのは、この作品やブライアン・イーノを中心に、これ以前にもこれ以降にも脈々とした歴史がありまして、この一つのポイントで全てを説明できるようなものではもちろんないんですけど、今日はアンビエントミュージックの起源みたいな、最初のコンセプトみたいなものを紹介させていただきました。もし興味があったら、今日の話は桝矢令明さんの文章などに詳しく説明されているので、是非調べてみてください。
日本のアーティストは、アンビエントが結構得意なのではと感じておりまして、本当に素晴らしい方がたくさんいますので、そういうのも含めて、是非また改めてアンビエントミュージック特集回みたいなものできたら嬉しいなと、そんな風に思っております。


5月19日(水) オンエア楽曲
odol「未来」
A_o「BLUE SOULS」
安藤裕子「のうぜんかつら(リプライズ)」
小田和正「言葉にできない」
Brian Eno「Discreet Music」
odol「小さなことをひとつ」

番組へのメッセージをお待ちしています。
Twitter #fmfukuoka #roomh をつけてツイートしてください。MC3人ともマメにメッセージをチェックしています。レポート記事の感想やリクエストなどもありましたら、#SENSA もつけてツイートしてください!


RADIO INFORMATION

FM 福岡「Room "H"」
放送時間:毎週水曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)


番組MC
Yuji_Kurokawa_yourness.jpg
黒川侑司(ユアネス Vo.&Gt.)
福岡で結成された4人組ロックバンド。感情の揺れが溢れ出し琴線に触れる声と表現力を併せ持つヴォーカルに、変拍子を織り交ぜる複雑なバンドアンサンブルとドラマティックなアレンジで、
詞世界を含め一つの物語を織りなすような楽曲を展開。
重厚な音の渦の中でもしっかり歌を聴かせることのできるLIVEパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2021年4月21日にFRIENDSHIP.より新曲「Alles Liebe」を配信リリース。
オフィシャルサイト @yourness_on @yourness_kuro

LIT_matsumoto_solo_B.jpg
松本大(LAMP IN TERREN Vo.&Gt.)
2006年に長崎県で結成。バンド名「LAMP IN TERREN」には「この世の微かな光」という意味が込められている。松本の描く人の内面を綴った歌詞と圧倒的な歌声、そしてその声を4人で鳴らす。聴く者の日常に彩りを与え、その背中を押す音楽を奏でる集団である。
2020年10月14日にアルバム「FRAGILE」をリリース。
オフィシャルサイト @lampinterren @pgt79 / @lampinterren

odol_moriyama_201904.jpg
森山公稀(odol Piano&Synth.)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に2014年東京にて結成した5人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。
2021年6月9日に、NEW ALBUM「はためき」をリリース。
オフィシャルサイト @odol_jpn @KokiMoriyama


LINK
FM福岡「Room "H"」

気になるタグをCHECK!