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2021.04.16

ユレニワ、全国ツアー『JURENIWA IS WORLD TOUR』今のユレニワのすべてが詰まったファイナルワンマン公演

ユレニワ、全国ツアー『JURENIWA IS WORLD TOUR』今のユレニワのすべてが詰まったファイナルワンマン公演

ユレニワが全国6箇所を回る自主企画ツアー『JURENIWA IS WORLD TOUR』を開催した。3月19日(金)の千葉LOOK公演を皮切りに、福岡、岡山、大阪、名古屋、東京を巡った今ツアーは、初日からの5公演はゲストバンドを呼び、ファイナルの新宿Marble公演はワンマンライブとなった。本レポートでは、実に全21曲を披露し、ボリューム満点となったファイナル公演の様子をお届けする。

定刻18:30を少し回った頃、オレンジの照明が差し込むステージにRENJU(Dr/Cho.)、種谷佳輝(Gt/Cho.)、宮下レジナルド(Ba/Cho.)、シロナカムラ(Vo/Gt)が順番に登場した。定位置に着き静かに楽器を担ぐと、一曲目にミドルテンポの"チョコレート"を鳴らす。
シンプルな照明の元、温かいサウンドで柔らかにライブが始まった。そして小気味の良いRENJUのビートに乗せて「よろしく!」とシロが叫ぶと、そのまま"Hello Glow"が届けられ、宮下とRENJUが遊び心ある変幻自在なリズムを目を合わせて奏でる。そこに種谷のポップなギターリフが心地よく絡み観客を揺らした後、間髪入れずに始まった"Lilac"ではシロが笑みを浮かべて、身振り手振りをしながら楽しそうに、伸びやかに歌を届けていった。RENJUが一人一人の顔を見ながら楽しそうに叩くアウトロが終わり次の曲へ移るかと思いきや、テンポアップしたアウトロが続く。
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ライブならではの即興的かつユニークなアレンジに、フロアからは歓声の代わりに熱い拍手が送られた。そしてシロが顔をしかめたり笑顔を浮かべたりと良い表情を魅せながら歌った"缶詰"では、後半の歌詞部分に合わせて即興的に「例えば、音楽が廃れてしまって、どうにもこうにもならなくて、元気が出ない、心が寂しいそんな時に、俺の歌を聴かせたい!」とセンセーショナルな叫びをあげた直後に《一人にしないで/ずっとずっと》とサビに突入すると、オーディエンスの拳が一気にあがる。フロアの中には、涙を拭く人の姿もあった。力を振り絞って歌った《誰かに届くようにこの声で叫ぶよ》という歌詞の通り、シロの声は確実にオーディエンスの心に届いていた。
情熱的なステージに序盤からグッと胸が熱くなったが、そんな余韻に浸る暇もなく、すぐさま繋いだノリの良い"革命児"が、一瞬にしてフロアの雰囲気をガラリと変えた。ユレニワの多彩なパフォーマンスに、終始フロアは手を挙げたり体を揺らしたりと、声は出せなくても充分すぎるほど盛り上がりを見せる。種谷はそんな観客フロアの様子を笑顔で見渡した。続けざまにキャッチーな"遺書"のイントロが鳴ると、待ってましたと言わんばかりに1音目からフロアが楽しそうに跳ねた。ポップな曲調とは相反する《神も仏も殺してやる》というフレーズ。後半の《さよならが、この人生さ》という箇所のなかなかインパクトのある転調。そんな一癖も二癖もあるこの楽曲がファンの間にしっかり浸透して素晴らしい一体感を創り上げている景色に、ユレニワ・ワールドの魅力を感じた。
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6曲を勢いよく駆け抜けたところで、シロが「来てくれてありがとう。満員御礼、感謝ですね。」とソールドアウトの喜びを告げる。「自分の肉眼で皆の顔を見られてることが本当に幸せだなって思うし、逆に俺も元気だよっていう姿を見せられて凄く幸せだなと思ってます。皆元気そうで良かった!」と、有観客でツアーを回れた幸せと感謝の気持ちを終始笑顔で伝えると、複雑なベースラインが映える"焦熱"を披露。この楽曲は独特で少し怖さすら感じさせるMusic Videoの世界観が印象的だが、ライブで聴くとむしろフロア全体が多幸感に包まれたような雰囲気で、一つの楽曲がもつ様々な表情に改めてユレニワというバンドの奥深さを感じた。そして種谷がギターを歪ませ、RENJUが存在感のあるビートを刻み、"Cherie"を痛快にかき鳴らすと、アグレッシブなロックナンバー、"だらしないね"をプレイ。だんだんと変わる暗く赤い照明が不穏な空気感を醸し出し、シロはステージに転がりこむように激しくギターを弾く。耳をつんざくような種谷のギターが痛烈に響き、重厚感のあるドラムが響く。
楽曲が終わり、「ありがとう」と一言、少ししてから脱力したようにシロは口を開いた。
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「これは俺の意見なんだけど、歌に乗せる想いみたいなものはその時々で変わるんです。例えばこの歌(次の曲)も例外ではなくて。昔、恋人が苦しそうで、それがこの歌を書いた始まりなんだけど。」天を仰ぎながら、言葉を慎重に探すように、そして遠くの誰かに語りかけるように、シロは話した。「あの時体験した寂しさを俺はこうやって芸術にすることができたし、その芸術で誰かを支えられてるかもしれないと思ってる。」

「今はあのアパートの一室から、新しいアルバムを作ってツアーをして。ファイナルの真っ最中なんだ。少しはかっこよくなったかな。優しい歌を歌いたいなって思って、今日はステージで歌ってる。」そう言い放ったあと、ふと視線を落とし「照れちゃうね。」と一言。そして今にも泣きそうな表情で、"アパート"を歌い始める。
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シロの言葉の通り、優しく、心から零れたような声だ...と思った次の瞬間には、痛烈な叫びを轟かせた。囁きと叫びを瞬時に切り替えるような彼の圧倒的な表現力に、息を飲むように観入るフロア。そして、そんな衝動的な曲とは対極な"Bianca"を続いて美しく真っ直ぐに鳴らすと、" fusée 101"を挟んで種谷が弾くシンセサイザーと青い照明が宇宙空間のようなスケール感を醸し出す"まぼろしの夜に"へ続いた。アウトロでストロボの照明が激しく点滅する中で、力を出し切るように叫ぶシロの姿が、ただただ美しかった。
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そして序盤のゆったりとしたリズム進行から一気にサビで加速し、フロアのボルテージを一気に上げる、ライブでの人気曲"バージン輿論"へ。衝動的に歌うシロ、思わず立ち上がるほどダイナミックなドラミングを披露するRENJU、何度も高く跳びながら弾く宮下、エモーショナルにギターを掻き鳴らす種谷。各々が全てを出し切るようなパフォーマンスにオーディエンスの拳も力強く上がる。「このライブが終わったら俺は死ぬかもしんねえけど、それでもかまわねえ!俺は売れてえんだよ!金のためなんかじゃねえ!俺がさぁ!お前らを連れてってやるよ!」シロは曲中に、泣き叫ぶように、でも一切目を逸らせなくなるほど真っ直ぐで嘘偽りのない瞳で想いを放った。
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人間臭くて愛おしい姿が観客の心を揺らし、すぐさまRENJUの「かかってこいよ!」という叫びから"PLAY"が始まる。隙がなく一秒たりとも目が離せない展開だ。"PLAY"はベースとドラムのグルーヴが非常に心地よく、そこに乗るギターリフもインパクトがあってリリックの載せ方も遊び心がありつつも気持ちいい。そして、後ろから差し込むオレンジの光がライブの終わりが近づく切ない空気感を醸し、大きいビートがフロアを揺らす"重罪"を鳴らし終えると、RENJUが「皆さんこんにちは!楽しんでますでしょうか?」と改めて挨拶をした。ワンマンライヴならではの緊張感や醍醐味を語ると「ライブでは初披露の新曲をやりたいと思います」とシロの言葉で奏でられたのは"あばよ、ビューティー"。この曲はユレニワの公式YouTubeで作曲途中の様子をドキュメンタリー仕立てで公開していたこともあって、初披露とは言えどファンの中には既に愛着が湧いている人も多いだろう間奏では種谷がシンセサイザーでスパイスを加え、曲の後半には和洋折衷様々な色んな音が混ざり合う独特なフレーズが盛り込まれ、彼ららしく一癖も二癖もある楽曲だ。しかもアウトロは照明もガラッと妖艶に変わり、原曲とは違うロックなフレーズがセッション的に展開される。YouTubeで聴いていた音源と比べると、あまりにも格好よくなっていて驚いた。

「あと2曲で終わります。」とシロが惜しむように言うと「このツアーを通して、ライブって楽しいなって再認識しました。」と屈託のない笑顔でツアーを振り返った。そして「幸せにしてくれてありがとう。良い顔してるよ、お詫びにさ...」とピースフルな締めになったかと思ったその時、「馬鹿にしてやろうかー!」と叫んで空気をひっくり返し、バンド初期からの人気曲"馬鹿"を痛烈に鳴らした。宮下と種谷が前に出てきて掻き鳴らし、最高の盛り上がりを見せる。本編ラストに『ピースの報せ』でも最後曲を担っている"阿呆"を勢いよく鳴らした。最高潮のフロアと呼応するようにシロが歌い切ると、曲終わりには枯れた声で目一杯「俺は!君が!好きだ!」と愛を叫び、ステージを去っていった。
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その後もアンコールを求める拍手が鳴りやまないフロア。そこに、一番に登場したRENJUが「ありがとう、アンコールやって大丈夫でしょうか!」と問いかけると、盛大な拍手が送られた。そしてメンバーがステージに揃うと、改めてツアーを振り返っての話が繰り広げられる。地方の名産を美味しく味わった話や、宿泊時の思い出など、全国ツアーらしい(RENJUの言葉を借りるなら「愛おしすぎてちょっとエモい」)話が微笑ましかった。

そんなMCを経て鳴らされた"Neverland"は、4人の真ん中で音が鳴っているような心地よいグルーヴに、少し力感のあるシロの歌声が乗っかる。そしてラストを飾った"Birthday"へ。音源よりも歪んだギターの音色が勢いよく駆け抜けたあと、ふと力がぬけたようにAメロが素朴に歌われていき、叙情的なコードワークや転調が絶妙なバランスで奏でられていく。どこか美しさも含んでいる不穏な音がゆったり続いていくアウトロで、フロアの一人ひとりを見ながら最後の瞬間を噛み締めるようなシロ。そして完全に音が消えると「ありがとうございました。また会いましょう。」とライブは締めくくられた。

...と、思いきやステージを去りかけたメンバーがハッとした顔をして戻ってきたのだ。なんだなんだと、客席の注目を集めたのち、嬉しい告知をした。
なんと、今年の6月から『毎月8日、定期単独公演【エロス(仮)】の開催』が決定したそうだ。タイトルの(仮)よろしく決まりたてほやほやの嬉しいお知らせに、観客からも喜びと驚きが混じった反応が見受けられた。

次から次へと様々な楽曲を多彩なアプローチで展開していったこの日のワンマンライブは、コロナ禍で減ったライブの穴やブランクも感じさせないほど、彼らのタフさと共に改めて彼らの音楽の幅の広さや探究心が心に真っ直ぐ響くライブだった。今のユレニワの全てが凝縮されていた。だからこそ今後、毎月の定期公演でどんどんブラッシュアップされると思うとユレニワのこれからが楽しみで仕方ない。今後の躍進に乞うご期待だ。

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文章:髙橋夏央
写真:マチダナア

SET LIST
01.チョコレート
02.Hello Glow
03.Lilac
04.缶詰
05.革命児
06.遺書
07.焦熱
08.Cherie
09.だらしないね
10.アパート
11.Bianca
12. fusée 101
13.まぼろしの夜に
14.バージン輿論
15.PLAY
16.重罪
17.あばよ、ビューティー
18.馬鹿
19.阿呆

En1.Neverland
En2.Birthday

LINK
オフィシャルサイト
@JURENIWA




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