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2020.12.30
Vol.1は、12月23日(水)にリリースした4ヶ月連続配信シングル第1弾「Birthday」。
ケーキにそびえ立つ五本の蝋燭が、早く増えたらいいのにと望んでいた瞬間を思い出していた。気づけばもうすぐ二十二歳になる。ビルや車とか、騒がしい人たちに溺れた表情のまま、落ち着きのない視線をシンクに落とす。
「もうじき一度家に帰らなきゃなぁ」
珈琲を淹れる支度をする自分の手が、突然知らない誰かのものに思えた。
おれは歳を重ねる度に、誰かに誕生日を祝われることの有難みや喜びが、昔より薄れてしまっているような気がする。ひどく悲しい人になってしまったかもしれない。しかし実際に贈り物を貰ったり、言葉を受け取ったら何となく嬉しくて、笑顔を浮かべたくなる。ただそれは真っ直ぐな喜びだけではなく、奇妙な感情が見え隠れするようなものだ。
火にかけた淋しさはぐつぐつと煮立ち、鍋のふたを踊らせている。二十二年前の今ごろ、母親はおれを産み、それから間もなく父親は癌で逝去した。絶対的な悲しみを乗り越えて、はちきれそうな喜びで、何度も母はおれを祝ってきたのだろうか。蛇口に反射して見えるおれの顔は不格好で、弱々しくなっていた。三日月のように細くなった目から涙が垂れ落ちる。頬に一筋の熱を感じ、それはやがて乾いた唇を濡らした。
滲んで二重になったドリッパーをかく拌させながら、漠然と母に会いたいと思っていた。曇り空の間を縫って、柔らかそうな光がリビングを照らしている。もうすっかり冷え込んだ師走の風はカーテンを突き抜けた。苦味のある炎を吹き消すように、或いは東京のうるさい空気といっしょに。
この曲はクラシカルなメロディや叙情的なコードワーク、高度で自然な転調や、核となるリズム隊のアンサンブル、すべてにおいてギリギリの地点で成り立っていると思います。シューゲイザーやサイケ、ゴシックやプログレ等の様々なスタイルから着想を得たアプローチが混ざり、ユレニワの新境地に繋がっていると感じます。
おれは今作を、抽象的ではあるけれども、神秘や美を象徴するようなサウンドにしたかったなと。「圧倒的な温もり」を持たせたかったと思うんです。1A前半や落ちサビに鳴っている滑らかな鍵盤の素朴さ、大サビやGtソロの壮大な世界。このギャップはそう感じさせるキーポイントに思います。
また個人的には、Gtソロのセクションに後ろで響いている「カルト宗教なコーラス」が中々いい味を出していると感じます。Gtソロ後半のフレーズはアコギの音色に加え、"Chorus"と"FUZZ"の掛かったリードが入り込んでくるので、やっぱりひとつ違う世界に変わるような感じがします。それを如何に自然に聴かせるかという点で、あのコーラスラインと、そこに掛かる存在感のあるリバーブは一枚噛んでますね。
そして何より好きなセクションは、Introです。歪みの重厚感やキメなど...どこか洋楽感を覚える要素も散りばめられています。豪快な音圧と演奏、その割に緻密なフレージング、ど頭からピークを突き破るようなサウンドです。Intro後半からはアコギのメインフレーズに加え、奥の方でピッチが不安定なベルが鳴っていて、妙に気持ち良くて(それとも、気持ち悪くて?)癖になる。1Aの淋しさを確と引き立てる凶暴性です。
建築的な部分と感覚的な部分、その駆け引きが何より難しい楽曲でした。
頭の固い楽曲にはしたくないし、衝動で完成させるような楽曲でもない。どうしてもギリギリの地点で成り立たせなくちゃならなかった訳です。
おれは完成しきった美しさより、不安定な美しさにこそ魅力を感じます、人間らしいその様に。
ユレニワ
Vo/Gt シロナカムラ
PROFILE
ユレニワ
千葉県にて結成のフォーピースバンド。衝動がむき出しになった生々しいライブパフォーマンスと、Vo/Gtのシロナカムラによる文学的かつ鮮烈な歌詞、そしてロック/オルタナを中心に据えながら、確かな音楽的素養に裏打ちされた楽曲が持ち味。
2018年12月にMASH A&R主催 「MASH FIGHT! vol.7」にてグランプリを受賞。
音楽のジャンルに縛られる事無く、その時感じたことを音にしている。「尖り系」でも「あのバンドの二番煎じ」でもない。心のどこかでラブアンドピースを願いながら、あの子の涙に揺れながら、音楽活動に日々邁進中。
いつでも今がベストでいたい。
RELEASE INFORMATION
ユレニワ 「Birthday」
2020年12月23日(水)
Format: Digital
Label: MASH A&R
Track:
1. Birthday
視聴はこちら
LIVE INFORMATION
ユレニワ presents 『JURENIWA IS WORLD TOUR』
チケット料金:対バン公演 ¥3000(税込/ドリンク代別途要)
ワンマン公演¥3500(税込/ドリンク代別途要)
<対バン公演>
3月19日(金)千葉LOOK
open 18:30 / start 19:00
3月24日(水)福岡Queblick
open 18:30 / start 19:00
3月25日(木)岡山PEPPERLAND
open 18:30 / start 19:00
3月27日(土)大阪CLAPPER
open 17:30 / start 18:00
3月28日(日)名古屋HUCK FINN
open 17:30 / start 18:00
<ワンマン公演>
4月11日(日)新宿Marble *ツアーファイナル
open 18:00 / start 18:30
チケット情報
12月26日(土) AM10:00~ e+のみで受け付け開始
受付URL : https://eplus.jp/sf/word/0000094433
LINK
オフィシャルサイト@JURENIWA
Official YouTube Channel