INTERVIEW

2026.04.06

フジロック出演も決定した「んoon」が、ポップにダンサブルに強化された『Zoo』までの道のりを語る

フジロック出演も決定した「んoon」が、ポップにダンサブルに強化された『Zoo』までの道のりを語る

結成以来、数年間はEPやシングルを連続リリースしていた「んoon」。5曲程度のEPは実験性を発揮しやすいのだろうが、そのアンサンブルが目指すのは洒脱なソウルを経由したコラージュのようなものかと思っていた。だから、初のフルアルバム『FIRST LOVE』を経たあとのライブを見て、フロア全体を巻き込んでいく流れの作り方、何より体を直接揺さぶってくる出音のパワーにずいぶん驚いたものだ。さらには、前作から一年足らずで届くセカンドアルバム『Zoo』がむちゃくちゃポップかつダンサブルになっているのはどういうことか。イメージと違う、のではなく、これはもう、んoonというバンドの認識を改めなければいけないタイミングかもしれない。夏にはフジロック出演も決定している彼ら。インタビューで飛び出してきた「モッシュ」の言葉も、あながち冗談ではないのだった。

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ポップを偽装するのは上手くなったかもしれない

─昨年にライブを見て、思ったよりフィジカルに刺さるバンドなんだって驚いたんです。改めてんoonを知りたくなりました。


積島直人(Ba):ありがとうございます。

─以前SENSAに掲載されたインタビューには「自分たちの音楽はMerzbowや灰野敬二と同じ延長線上にある」という積島さんの発言があるんです。今もこの気持ちは同じですか。


積島:えーと......わりといつも口から出任せばかり言っちゃうので(笑)。はい、そうです!という側面もありつつ少し気後れしていますね。


─文字どおり、んoonはノイズである、という意識ですか?


積島:そうですね。振れ幅は増やしたい。綺麗な音からつんざくような音まで。

JC(Vo):もともと、このふたり(積島とウエス)はノイズバンドやっていて、まぁ出自には全然あると思う。で、彼(江頭)はショパンを敬愛してるのでちょっとわかんないですけど(笑)、私もうるさい曲はすごく好きで。自分たちの音楽がどのジャンルに当てはまるかわからないですけど、(ノイズが)好き、という気持ちを持っているところはありますね。

ウエスユウコ(Harp):私もそうですね。自分たちの無知とか経験の浅さもありますけど、もともと「こうすべき」みたいなものがまったくなくて。やったことがないこともやってみる。それはノイズでワケわかんないことをやっていた時の精神性に近いのかなと思います。

江頭健作(Key):僕もそうですね。ジャンルへのこだわりはなくて。メンバーと知り合う前までは、ノイズとか「......なんじゃそら?」って感じでしたけど。今は食わず嫌いとか聴かず嫌いもなくなったと思います。

─根幹は変わらない。となると、今回のアルバムがすごくポップになっているのは、どういう理由だと考えればいいんでしょうか。


積島:うーん、結果ポップになったと思ってはいるんですけど、でも順番が逆で。着地点を決めないで作っているので。

ウエス:ファーストアルバムの『FIRST LOVE』って、今までやれてなかったこと、やりたいことを詰め込んでガチャガチャになったんですよ。みんなの多動性を全部詰め込んだような。それが終わって、一回ひと息つこうと。ひと息ついて深呼吸する曲も作りたいし、メロディとかリフを作るのも、楽になるというか、素直になったなと思うところはありましたね、今回。それがポップさに聴こえる可能性もあるのかなって。「こんなシンプルでも、もしかしたらいいのかもしれない」みたいな。

積島:うん。ポップを偽装するのは上手くなったかもしれない。

─偽装(笑)。偽なんですか。


積島:メンタリティは基本変わってないし、よくよく見れば聴けば変なところはそこかしこにあったりするんです。でも全体のミックスで馴染みがよくなったと思います。なんかアラが取れる、角が取れるというか。

JC:あと統一感と流れはすごく意識したかな。それぞれ曲が見てる情景は違うんですけど、最初から終わりまでひとつ繋がるような流れは意識して。

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─改めて聞くと、んoonの曲作りって、どこから始まってどう着地するものなんですか。


積島:あんまり着地したことはほぼないんですけど(笑)。始まりもバラバラですね。コードの展開だけピアノで持ってくるパターンがあったり、ほぼDAWで打ち込んだものを持ってくる人がいたり、自分の手癖のリフを持ってきたり、鼻歌を持ってきたり。いつも違ってますね。

─きっかけさえあればカタチは問わない。


ウエス:そうです。鼻歌ファーストで進む時もあるし、ベースのリフファーストの時もあるし。

JC:原型が残ってないこと多いよね。毎回被せてく感じ。

ウエス:被せて、また引きちぎって。

積島:もともと、当て書きみたいに各パートのフレーズを誰も作ってこないから。余白はあるんですよ。みんなに投げるし、返ってきたものは本人が思ってたものと違うものになる。そこでどんどん回していく。

JC:完璧に曲を作り込んで「このパートをやってください」っていうことにあまり興味がなくて。たぶんそれぞれの「何出してくるかな?」を面白がってるところがある。「いいじゃん」も「むかつく」も含めて(笑)。

─当然、時間はかかるしストレスも出てきますよね。


積島:いや、僕リーダーなんですけど、この3人はリードされるとストレス溜まるタイプだと思いますね(笑)。「これ弾け、これやれ、これ歌え」って言われるの、みんな嫌なんじゃないかな?

ウエス:リーダーも、ただの渾名ですからね(笑)。

積島:作曲に関しては、たぶん個人の頭のなかで完結するものが面白くないと思ってるのかもしれない。結局、出されたものに「いやいや、これはダサい」「これはこうでしょ」ってやっていくうちに、誰の手からも離れていくから。

江頭:そこは確かに。

ウエス:私、昔一回失敗したことがあって。全部のパートを打ち込んで、みんなに「これ弾いて」って言ってたら、江頭さんが「......減点方式が嫌だから辞める」ってバンドから去っていったことが(一同笑)。そういうのはもうやめようと思いました。もっと余白がないと。

JC:このプロセスに面白味を感じてるのは、私たちのMVを作ってくださってる谷口暁彦さんの存在もそうで。毎回ノー・ディレクションで楽曲だけ渡して「何が出るかな?」状態でワクワクしながらMVを見るんですね。「全然思ってたんとちゃう!笑える!」みたいな。そのフィードバックがすごく面白くて。他人の感覚を通じてどう解釈されるのか。

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ノイズやってた時は「合わせない、ノレない、踊れない」の美学もあった

─「HEBITORA」のMV、すごかったです。なんでウサギ?っていう疑問から始まって。


積島:俺らもわかんない(笑)。

JC:ヘビでもトラでもない(笑)。でもなんか泣けるんですよね、毎回。


─MVは不気味なファンタジーを経由しつつ、最後にウサギたちがワーッと踊り出すじゃないですか。このアルバムを象徴している気がしたんです。気持ち悪いんだけど、幸せで、かつ踊れる。


JC:踊れるか。ノレるか。けっこう口癖のように言ってたかも。ウエスはすっごい独特のリズム感を持っていて。

ウエス:うん。私は毎回、踊りながら作ってるつもりなんです。

積島:そういう音も好きだからね。あんまり脳みそ使わない、耳から神経系にそのまま行っちゃうような解放の音楽。

─「SEE YA」はそういう曲です。ダンスミュージックだし、歌詞も含めてものすごく解放的。


ウエス:これも踊りながら作りました。

JC:前のアルバムの「Forest」、ACE COOLに(フィーチャリングで)入ってもらった曲の、ちょっと親戚みたいなタイプだと思うんです。「速くてうるさくて踊れる曲がほしい」ってところから始まって「ドラムンベースは入れたいね」って話をしてて。ドラムンに限らず、ハードコアテクノとかガバも、もともと好きで。

積島:やる、やらないじゃなくてね。ただ普通に好き。


─んoonの曲として、こんなピュアに踊れるものは珍しくないですか。


積島:そこは大人になったんじゃない? どの曲にもいろんなエッセンスを混ぜて、ひっかけを作ろうとしてたけど。曲によってはちゃんと振り切ってやる。ヒネたやつはヒネるけど。曲ごとにTPOをわきまえられるようになった。

JC:着想はめちゃシンプルだしね。「うるさくて踊れる、速いやつがいい」「ちょっとしっとりしたもの入れたい」「めちゃくちゃにやってみたい」とか。ほんとIQの低そうな、言葉のコンセプトだけがあって。

積島:そうね。コンテクストに対する批評性とか、そういうの全然ないと思う。

─踊るって、ライブに着地する話だと思うんです。人前で鳴らして、みんなが反応してワーッと踊り出す。そういうイメージもありました?


ウエス:あります。

JC:いつかモッシュを起こしたい。

江頭:そうそうそう。

─んoonでモッシュ。いいですね。


JC:確かにライブに対する感覚って活動を続ける中ですごく変わってきて。EP時代とか、おもろい音が出ればよし、曲としてまとまればよし、って感覚だったのが、見てもらう機会が増えていって。共演の幅もありがたいことに広がって。やっぱりあの空気、味わえる解放感は、私たちも気持ちがいいし。もちろん「お客様のために」みたいな話とは違うんですけど、その瞬間を味わいたいと思うと、踊れるかどうかっていうのはすごく大事なテーマになってきて。自分たちもそれぞれライブとか行くんですけど、おもろくなかったらすぐ出てきちゃう。ノレるかノレないかって大事ですよね。

積島:何周かして変わったよね。それこそノイズやってた時は「合わせない、ノレない、踊れない」の美学もあったりしたんですよ。でも振り切って普通にやってみたらそれが面白かったりする。あとライブを続けていくと、ポジティヴな意味で「全然音源と違うね」って言われることも増えていって。「音源は軽く聴こえてたけど、ライブはもっとバキバキだ」とか。そういう意見には我々も反応するし「じゃあもっとバキバキ行きましょうか」っていう。

ウエス:2nd EPの『Body』に「Summer Child」って曲があるんですよ。4つ打ちっぽい感じの。それをライブでやっていく中でJCが「ダァーンス」って言い始めてから、なんか吹っ切れた感じもあるのかな?

積島:カタルシス、みたいな部分ね。ライブのパフォーマンスとして。音源はもう手は入れられないんだけど、その後ライブで曲自体が育っていって。そういう快楽のフィードバックはあるかなと思います。

JC:昔は自分たちが目指してる音像とできあがった音源の受け止められ方に乖離を感じる時期もあったりして。EPいっぱい出してた時代って、シティポップ、フワフワ系みたいに言われることが多くて。気にしてはいなかったですけど、なんだかな、とは思っていて。やっぱり太くて重いビートが欲しいとか、コンプめっちゃかけたい、みたいな気持ちがどんどん溜まっていって。そこのギャップが埋まってきた感じはあるかなと思ってますね。

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─このアルバムのあとにフジロック決定って、すごく綺麗な流れです。ほんとにモッシュ起きないかなと思うし。


江頭:起こしたい(笑)。

JC:(フロアを二分割するポーズを作り)これやりたい。

─ウォール・オブ・デス(笑)。書いておきます。


JC:言ったら叶うかもしれない(笑)。

アルバムをループしてたら一生戻れなくなる、みたいなところもある

─あともうひとつ、踊れる気持ちよさと同じくらい、このアルバムは歌ものとしての強度が強いです。


JC:あぁ。シンプルになったのかな? なんか素直でした、今回は。

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─驚いたのは「HITSUJI」。懐メロ歌謡曲と言ってもいいような曲で。


江頭:もともと作った時のアイディアとしては、しっとりアンコールでできそうな曲を作りたいな、っていうところで。それを僕がウエスさんに渡して、そこにウエスさんが音色をつけて。で、JCからは「夕方のアニメの再放送のエンディング」みたいな話が出てきて。ノスタルジックというか、みんな近いところを見ていた気がしますね。

JC:すごくダサくしたくて。ビートで使う音とかも808のプリセットに近い。

ウエス:ダサいフィルインから始まって。それをさらに、VHSが歪んでる感じ、音程が歪んでいく感じにしていったら、ちょっとヴェイパーウェイブみたいになってきて。「これ、どんどんやっちまおう」ってことになり(笑)。

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─「HITSUJI」と「Vapored HITSUJI」はセットで遊んでますね。


積島:うん。でもノスタルジックなこと言ってるんだけど、本当の原点は存在しなかった、みたいなオチってあるじゃないですか。

─どういうことですか?


積島:たとえば、朝に女の子が食パン咥えて走ってる、角で誰かにぶつかるっていう、漫画のネタとしてもよくあるけど。あれ、ほんとは存在しないらしいんですよ。元ネタになってるのは少女漫画のはずなのに、あのシーンが直接描写されてるものはないっていう。

ウエス:見たことあるよ?

積島:あるでしょ? でも「あれ(の元ネタ)何?」って言われたら出てこなくない?

JC:え、『(美少女戦士)セーラームーン』じゃないの?

─たぶん『セーラームーン』より昔じゃないですか?


積島:だから、どっか捏造されたノスタルジー。だからアニメの再放送とか、そういうワードが出てきた時も俺は面白いなと思ってた。何々っぽい、っていうのがいろいろ混ざってはいるんだけど、ド直球の元ネタはなくて。

─捏造のノスタルジーって、腑に落ちますね。聴くたびに懐かしくなるんだけど、でもそんな記憶、実は自分の中になかったりする。


積島:そう。この曲って10年後ぐらいに聴いたら、すごくよくわかんなくてさらに面白くなるだろうなって。サカナクションの「忘れられないの」のMVとか、出た当時もレトロな意匠を凝らして話題になったじゃないですか。あれから数年経って、当時を知らない人が見て「昔の画質だねぇ」って、本当に昔のものだと思ってるわけですよ。偽装じゃなくて。だから、5年とか10年経った時によけい「これはいつの時代のバンドなんだろう?」っていう効果を持つのかなと思って。

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─時空間を歪めたい、みたいな意識はありますか。


一同:おおー!

江頭:すごい。

─......なんか、変なこと言いました?


積島:この人(JC)の渾名なんですよ。(「尾藤イサオ」のイントネーションで)時空ゆが美(笑)。

JC:時間を守れないから(笑)。

積島:本人は守ってるつもりなんだろうけど、なんか時空が歪んでるとしか言いようがない。

ウエス:でも『Zoo』っていうアルパムのコンセプトとしてもね、時空が歪む、みたいな話はしてた。

江頭:SFチックな話とかね。

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─このアルバム、決して長くないし、わりとすぐ終わるんだけど、でも延々と聴き返したくなる。繰り返し聴いてると時間がわからなくなる感覚もあって。そこも不思議でした。


JC:最後のミックスが終わって、みんな一列に並んで聴いたんです。聴き終わった時は全員にハテナが浮かんだんですね。しばらく言葉がでなかった。

ウエス:「なんだったんだろう、今の?」みたいな。

─それはネガティヴな反応ではなく?


JC:全体像がまったくわからないままミックスと録音を繰り返してたから。「これに向かって走ってたのか!」っていう驚きと疲労があって。「思ってたんとちゃう」の、めっちゃいい状態だと思う。そのハテナを翻訳すると。

江頭:うん。アルバムを通して聴くと映画を一本見たような。でもそれがギュッと短い時間に詰まってる。

ウエス:目を瞑って周りを見ずに走り抜けたら、まったく知らない凄まじい景色が広がってた。すごいところまで来たなと思いましたね。

積島:あと、円環構造は確かに意識していて、最初と最後が繋がってる。アルバムをループしてたら一生戻れなくなる、みたいなところもあると思いますよ。だからこれ、ファーストアルバムの延長上とか拡張版ではなく、まったく違うものになってますね。ほんと、テーマとか共通認識があるとしたら、ひとりの脳みそでは完結しない感じ。それが詰め込めた感じはするし、こういう結果になったのは面白いなと思いますね。

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取材・文:石井恵梨子
撮影:宮下夏子

RELEASE INFORMATION

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んoon「Zoo」
2026年4月1日(水)
Format: Digital
Label:FRIENDSHIP.

Track:
1. CALLING
2. MAR
3. SEE YA
4. IO
5. HITSUJI
6. HEBITORA
7. CACTUS
8. Vapored HITSUJI
9. OTODO

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LIVE INFORMATION

Zoo Fantástica(ズーファンタスティカ)
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名古屋公演
・日程:2026年6月11日(木)
・会場:名古屋 CLUB QUATTRO
・開場 18:00 / 開演 19:00

大阪公演
・日程:2026年6月12日(金)
・会場:梅田 CLUB QUATTRO
・開場 18:00 / 開演 19:00

東京公演
・日程:2026年6月24日(水)
・会場:LIQUIDROOM
・開場 18:00 / 開演 19:00

チケット情報
・券種:スタンディング
・前売料金:¥4,500(税込)
・ドリンク代:別途必要
・枚数制限:お一人様4枚まで
・発券形態:紙・電子チケット併用
・未就学児入場不可(小学生以上チケット必要)

[発売スケジュール]
・オフィシャル3次先行(先着):2026年4月1日(水)10:00 ~ 4月15日(水)23:59
・先行チケットリンク: https://w.pia.jp/t/hoon-tokyo/
・一般発売:2026年4月25日(土)10:00 ~

[クレジット・企画詳細]
・主催:SMASH
・企画/制作:んoon、SMASH、FLAKE RECORDS
・協力:JAILHOUSE、SMASH WEST

LINK
オフィシャルサイト
@hoon_jp
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