2025.05.23
このインタビューは4月24日の「YouTube Live Performance 2025」の後に視聴することができたドキュメンタリー用に収録されたメンバーの個別取材を再編集したもの。後編では濱野と林も同席したカネコのインタビューに加え、2024年から新たにサポートとして参加した宮坂とNAGAHATAをフィーチャーしてお届けする。

今まででいちばん自分のアルバムが作れたって感じがします(カネコ)
―濱野さんはこの2年のカネコさんの変化をどう感じていますか?
濱野:「自分でなんとかしなきゃ」っていうのはすごく感じてました。もちろんこれまでも自分の音楽を作ってたんだけど、前はそこまでサウンドの話とかはしてなかったよね。でも今はそこも見え始めてて、こうしたいっていう行き先が明らかになった。
カネコ:録ってるときにちゃんとヤスさん(濱野泰政)の隣にいて、「最終的にこうしたくて、ここで切ってほしい」みたいなことを言ったり。
濱野:ビジョンがはっきりし始めたし、それを言葉にできるようになった。音楽用語とかはわからなくても、感情表現だったり、それをちゃんと言語化できるようになって、具体的なイメージを言ってくれるようになって。それはやっぱりこの2年の模索の時期があったからで、「自分でなんとかしなきゃ」っていうのがあったと思う。メンバーにも日々いろんなことをちゃんと伝えて、戦って、前だったらみんなに任せてたことも、「いや、ここはこうで」って、ちゃんと自立してるからすごいなと思った。
カネコ:「こうしてほしい」ということを以前より細かく伝えるようになりました。サウンド面は各自で決めたり、みんなで話し合って悩んだりするけど、「歌がこうだから休符はこう」「空気感はこっち」みたいな指揮はとるようにしたり。それらのことが明確に自分の中にもあることが大きな気づきでした。そんなの当たり前のことなのに、前まではなぜかそれが怖くてできなかったんです。でも今回はみんなと話し合って、一生懸命作りました。
濱野:「こうしたい」っていうのは全部主張したし、それに対してみんなも反応してくれたし、そういう作品にはなったよね。
カネコ:それがすごく嬉しかった。

―特に濱野さんと林くんはカネコさんとの付き合いも長いから、理解度も深くなっているでしょうしね。
カネコ:そこはやっぱり言語が近いっていうか。
濱野:そう、言語がね。ドラムのフィルひとつにしても、「こういうタイム感」みたいなのって、なかなか伝わりづらいからね。ちょっとおバカさんなフィル、おバカさんなドラムソロ、こういう跳ね方で、とかはなかなか伝えづらいし。
カネコ:共有したいものが違ったりすると、同じ日本語だとしても、言語が通じないって感じがするけど、でも今回はそういうのも話し合えばちゃんとできたというか。実際録るのはすごい早かったし。
濱野:アレンジや機材を決めるまでは右往左往したけど、決めたら早かったね。
カネコ:2〜3テイクでほぼ全部録れた。みんな何を使うって決めたら、大体早い。「ここはダビングします」とか、共有してなくても、「おそらくギターはそうするんだろうな」みたいなこともなんとなくわかる感じはあった。でもそれって多分私のやりたいことを前よりも伝えてたからだろうなと思う。
濱野:ビジョンが前より全然はっきりしてるから。

―カネコさんの意識は少しずつ変わっていったと思うんですけど、「このタイミングは大きかった」みたいなポイントはありますか?
カネコ:それはやっぱり「ラッキー」と「さびしくない」かな。
濱野:バンドにするっていう意識もすごいでかかったと思う。あそこで多分、彼女は自分の責任みたいなことを、ちゃんとメンバーと共有したいっていう。
カネコ:そうだねえ。
濱野:で、そのためには自分がちゃんとイニシアチブを握らなきゃいけないっていう模索をちゃんとするようになったんじゃないかなって、俺は勝手に思う。だから林くんに対する注文とかもより明確に伝えるように、この2年くらいの間にどんどんなってるけど、でも「バンドっていうのは自由なんだよ」っていう余地をちゃんと残してる。
カネコ:「知らんけど」っていうのもちゃんと伝えるようにはしてる。「ここはこうしてほしい。知らんけどね」みたいな。
濱野:「こんな温度と香りにしてくれたら、あとは好きにやって」っていう。そういうイメージが自分の中でちゃんとできてるんじゃないかなって思った......知らんけど(笑)。
―カネコさんがギターを弾く割合も増えたそうですね。
濱野:今までは歌のバッキングが多かったんだけど、より攻めたね。前はちょっとバカやっちゃえっていうだけだったんだけど、リフをちゃんと弾いたりして。
カネコ:いろいろ解き放たれたら、ギターを弾くのも楽しくなった。「やっちゃおう」っていうか、「やってもいいんだ」って感じかも。
濱野:前はね、「私下手だから、単音弾きとかしないし」みたいな。
カネコ:「無茶振りしないでください」みたいな。
濱野:こっちからすると、「そのへこへこな感じ最高なのに」とか、ずっと林くんと話してたんだけど、実際ギターもめっちゃ上手くなった。
カネコ:いやいやいや、ギターはいざ自分が弾いてみようってなると、やっぱり林くんすごいんだなって、改めて思った。
濱野:でもちゃんと次のステップに行けたから俺はよかったなって思う。言ってもほら、作曲者は一緒じゃない?どうやってもコード進行だったりは似るしさ。でも今回はみんなにアレンジのことも言って、ちゃんと自分たちのものにしたじゃない?
カネコ:いやあ、本当そうだな。今まででいちばん自分のアルバムが作れたって感じがします。もちろん、今までの作品が私を作ってくれたっていうことがありきで、今回はいちばん自分のやりたいことを恥ずかしげもなくやれた感じがする。「恥ずかしい」っていうのが私は人生においてめちゃくちゃでかくて、「恥ずかしい」と「不安」っていうのが人生において...まあ今後もだと思うけど、それが自分の性格の半分以上を占めてて、前までは「間違ってたらどうしよう」みたいなのが大きかったけど...。
濱野:前はそっちの方が絶対強かったもんね。でもこの1年とかで...。
カネコ:音楽においてはもうどうでもいいやってなった。
濱野:だから俺はこの〈愛想がないのはもともと〉が抜群にバシッときちゃった。

―「難しい」もそうかもしれないけど、自分はこれができないとか、これが苦手っていうのをちゃんと自覚した上で、それでもこれはやりたいっていうのが、より強く出るようになった印象を受けます。
濱野:あれは本当に心からの言葉だなと思うから、かっこいいなって思ったんです。ここまでちゃんとさらけ出すっていうのはね。
カネコ:嬉しいです。
濱野:ジョン・レノンかと思っちゃった。
カネコ:やばいじゃん!
―じゃあもう『ジョンの魂』ならぬ『カネコアヤノの魂』ですね(笑)。
カネコ:私は自分がやりたくないこととか嫌いなものをすごく大事にしようと昔から思ってるんです。それが自分の中で整理されてることによって、好きなものもより見えてくるみたいな意味で、嫌いなもの、したくないこと、苦手なことみたいなのは基本的にちゃんと見るようにしてるんですけど、それをよりちゃんと見るようにした2年間だったりしたのかな。それによってやりたいことが明確にわかったり、私が言語化したかったのはこういうことだな、みたいなのがわかった気がします。
カネコさんの歌にはこの人にしかない優しさがある(宮坂)

―カネコさんのサポートをするようになった経緯を教えてください。
宮坂:初めてお会いしたのは2019年の末で、そのとき私は折坂悠太さんのバンドに参加していて。もちろんカネコさんのことは知ってて、音源も聴いてたし、そのときもいろいろお話したんですけど、それからすぐコロナ禍になっちゃったので、その後はなかなか接点がなくて。でも共通の友達は多くて、多分2023年ぐらいに一度お会いしたことがあって、その日「いつか一緒にやりましょうね」と言ってくださって。でもまさか本当に連絡をもらえるとは思ってなかったので、驚きながらもすごく嬉しかったです。
―もともとカネコさんに対してはどんな印象を持ってましたか?
宮坂:2019年の前に1回、2018年にカネコさんと同じフェスに出てたことがありまして、そこで初めてカネコさんのライブを見て、めちゃめちゃ感動して。そのライブがかっこよすぎて、怖いなって思うぐらい、この人を直視しすぎると、この人にやられてしまう、みたいな。僕アイドルとかにハマってしまったら、自分の人生を持ってかれちゃうんじゃないかって気持ちがどこかにあって、それで本当にアイドル文化には触れずにここまで来たんですけど、同じような感じで、カネコさんのことも「これは聴きすぎちゃいけない」って、むしろ思ったぐらいで、そのときは「よかったです」とも言えなくて。殺気がめちゃめちゃすごくて、僕はカネコさんの3つか2つ下ぐらいの、ほぼ同い年なんですけど、同世代でこんな雰囲気ある人いるんだと思ったのが初めてでした。でも心のどこかでは「この人と一緒にやれたら、そんな素敵なことはないな」と思ってましたね。
―これまでのバンドにはパーカッションがいなかったわけですけど、カネコさんからはどんな話があったんですか?
宮坂:言ってもらったこととしては、どんどんロックサウンドになってきて、このままだとよりロックになって、音が大きくなっていく方向に行きそうだけど、そうじゃない方向にも音楽を持っていきたくて、パーカッションが入ったら違うことができるんじゃないかっていう話でした。その後、音源を改めていっぱい聴いてたら、結構宅録っぽい感じが全体的にあるのがいいなと思って、いい意味での思い付きみたいなパーカッションが入ってたり、スタジオにあったタンバリンをその場のノリで誰かが叩いてたり、そういうカネコさんの音楽の根底にある遊びみたいなのをやる人が誰かいるといいんだろうなと思って、まさに自分もそういうふうに音楽に参加できたらいちばんいいなと思ったし、そこにやりがいを感じました。
―実際のアルバムのレコーディングはいかがでしたか?
宮坂:今回のアルバムのデモを聴かせてもらって、もうシンプルにすごく好きだなって。私はアホっぽい音楽が好きなんですよ。同じことしかずっとやってないじゃんみたいな、抑揚が変にない音楽、ずっと声でっかいみたいなのがすごく好きだったりするんですけど、そういう良さもとてもあるというか、バラエティ豊かな曲があるんだけど、どれもいい意味で抜けてるところもある、詰めすぎてない感じみたいなのは、個人的にはすごく好きだなって。なので今までの自分がやってきたことをそのまま当てはめさせてもらうというか、そのままやらせてもらうと自然にハマると思えたので、それはすごくよかったです。

―特に思い出深い一曲を挙げてもらうことはできますか?
宮坂:いちばん好きなのは「難しい」ですね。私はNHK教育(現・NHK Eテレ)をめっちゃ見て育ったんですけど、NHK教育のふざけ感みたいなのがあるなって。『天才てれびくん』の枠内に『アリスSOS』っていう短いアニメがあったんですけど、映像も話の筋もめちゃくちゃだったりするけど、でもなんか面白いみたいな、NHK教育独特の謎の安心感があって、「難しい」はめっちゃそのバイブスを感じて。で、どういうふうにやろうかはすごく迷ったんですけど、エンジニアのヤスさんが「一筆書きみたいにやったら?」っておっしゃってくれて。タンバリンやって、マラカスやって、トライアングルやって、カウベルやって、いろんなことを一個一個やってるんだけど、でも全部やりすぎてはいない。その感じを実際やってみたらなるほどわかるっていう感じだったから、ヤスさんに感謝ですね。録ってるときも、自分が出してる音でみんなゲラゲラ笑ってくれてたので、それも嬉しかったです。
―レコーディングやライブを通じて、カネコさんのパーソナリティについてはどう感じていますか?
宮坂:カネコさんは優しいなってめちゃめちゃ思います。優しくておもろいお姉ちゃん、みたいな感じ(笑)。結構その場を回してくれる感じがあって、どっちかというとボーイズたちが、そんなにめちゃめちゃしゃべる人が今いない感じなので、初めてみんなでしゃべったときに、カネコさんがめっちゃ回してくれて、明石家さんまみたいだなって。
―アヤノ御殿が繰り広げられたと(笑)。
宮坂:そういう意味でもめちゃめちゃありがたいなと思うし、一緒に話してて単純に楽しいなって。それはカネコさんだけでなくてバンドメンバーみんなに対してすごく思います。もうこれだけ人気があって、すでに支持されてる人たちの中に入れてもらうのは初めてといえば初めてなので、そういう意味での緊張はすごくあったんですけど、単純にみんなと話しててストレスが全然ないのが本当にありがたくて、音楽にもすごく集中できてます。
―音楽家としてのカネコさんの魅力に関してはどう感じていますか?
宮坂:見たことないタイプの繊細さもあるし、見たことないタイプの激しさもあるし、その幅に常に驚くし、スタジオでも普通に感動してるんですけど、なんやかんやでものすごく優しい歌だなと思ってて。子守唄みたいな優しさともまた違う、包み込んでくれる優しさみたいなのじゃなくて......自分昔いじめられてた時期もあったんですが、いじめっ子に対して何も言えないときに、「なんか言えよ」って言ってくれる優しさっていうか、そこで自分が変わっていくみたいな、そういう優しさ。すごく抽象的ですけど、それがいろんな形で、大きくも小さくも現れてるっていうか。自分は運良くいろんな素敵な歌を歌う方と一緒にやらせてもらってると思うんですけど、カネコさんの歌にはこの人にしかない優しさがあって、歌っていいなって、改めて思いました。

―宮坂くんに個別で話を聞いたときに、パーカッションを入れることについて、「今バンドとして大きい音の方向に行ってるけど、そうじゃない方向にも行きたい」みたいな話があったって聞いたんですけど、その意図についてもう少し話してもらえますか?
カネコ:単純に新しいドラムを探さなきゃいけなくなって、どうせなら全然違うことをやりたいなっていうのもあったんですけど、前からすごく意識してるのが、「いるのにいない」とか「いないのにいる」みたいなことで、それはリズム隊で特に考えるんです。静かな場面に対して音が小さくなるだけだと、それって本当にいなくなっちゃうっていうか、それだと私がやりたい「いない」ではないというか、「いる」ことによって静かな空気を得られたりもする。そういう幅を表現するときにパーカッションがいたらいいんじゃないかなと思って。「ここは小さくしてください」みたいな部分って、ただ音を小さくすることで成り立ってるわけではないんですよね。
―めちゃめちゃ爆音だけど「いない」っていう表現もあれば、音数少ないんだけど「いる」っていう表現もある。そこの複雑さを出すためには、パーカッションの存在が大事なんじゃないかと。
カネコ:そういう時期があってもいいんじゃないかと思いました。「いないをやる」みたいな。それをやるのはすごく難しいなって思うんですけど、その解決に少しでも近づければいいなと思って、そういう話をしたんだと思います。宮坂くんは景色を表現するのがすごく上手だから、彼にならやってもらえるかもって。実際パーカッションの人を初めてちゃんと呼んで、こんなに変わるんだっていうのは結構びっくりした。
濱野:前まではみんなで頑張ってやってたからね。
カネコ:そう、今まではみんなで一生懸命やったりとかしてたけど、宮坂くんは「こういう感じで」って言うと、それもちゃんとやってくれるし、「じゃあ、これも入れたいです」みたいに言ってくれて、そういうのは初めてだったから。
濱野:「難しい」とか面白かったよね。3トラックぐらいスルーでやったのかな。1トラックでも全然良かったんだけど、「だったらこれも重ねたいです」って。あいつは瞬発力がすごくて、反応が本当に速い。「ラッキー」のドラとかも燃え上がったもんなあ。
カネコ:今回の「ラッキー」めっちゃ気に入ってる。最後ミックスするときに、takuくんが「後ろでヨーって言ってる声が聴こえる」って言い始めて、「めっちゃホラーじゃん!」と思って。
濱野:で、全部のトラックを1個ずつ聴いたら、宮坂くんがパーカッションで「ヨー」みたいな音を出してたんだよね。
カネコ:で、それめっちゃ音上げて、「これホラーだと思わせよう」みたいな。

―「太陽を目指してる」のパーカッションの音もすごいですよね。
濱野:あれは3トラックくらい重ねてて。
カネコ:コンガをめっちゃ歪ませて、音量も最終的にめちゃ上げて、おバカにして。あれいいですよね。違う国の人が急に入ってきた感じ。
濱野:去年からずっとプリプロをやってきたけど、今のメンバーともう1個新たなチャレンジをしたかったからね。
カネコ:宮坂くんの登場はやっぱり相当でかい。
濱野:あいつもおバカさんだからね(笑)。
みんなでひとつの塊になれたら何でもいい(NAGAHATA)
―カネコさんのサポートをすることになった経緯を教えてください。
NAGAHATA :DMBQの増子さんからの紹介です。僕の知り合いの関西のバンドを都内でサポートしたときに増子さんと共演して、連絡先を交換したんですけど、後日「知り合いのバンドがサポートドラムを探してるんだけど」みたいな話をいただいて、蓋を開けてみたらカネコアヤノさんで、「ぜひやらせてください」と。
―カネコアヤノさんの活動についてはどの程度ご存じでしたか?
NAGAHATA :そこまで詳しくは知らなかったんですけど、すごくご活躍されてるのは前から知ってましたし、近くのスーパーでBGMとして流れてるぐらい有名な方なので、その方と一緒にできるのかっていう感じでした。

―takuさんもそうではあるんですけど、SEIさんがこれまで関わってきたNUITOや5kaiのイメージからすると、カネコさんの音楽とは多少のギャップも感じたのですが。
NAGAHATA :そうですよね。これまではいい意味でへんてこなバンドばかりやってて、歌もの系のサポートは初めてだったので、挑戦っていう意味も踏まえて、サポートを受けた感じもあります。
―実際のレコーディングはどんなことが印象的でしたか?
NAGAHATA :カネコさんのバンドはいっせーので、みんなで録るので、そこは結構新鮮だったし、手こずる面もあったりはしたんですけど、その場で学びつつ、みんなの楽しい雰囲気を汲み取りながらやれたかなっていう感じですね。
―別録りだったり、ドラムとベースだけだったり、そういうレコーディングの方が多くて、バンド全員でっていうのはあまり経験のないことだったと。
NAGAHATA :そうですね。人生で初めてのオリジナルバンドで1〜2回やっただけで、あとはもうドラム単体で、クリックを聴きながら録ることしかやってなかったので、ひさしぶりというか、初めてといえば初めてぐらいの感じでした。でもいっせーので録ることのメリットも感じられたし、やりやすい部分もあったし、よかったなと思います。

―アルバムの中で特に思い出深い曲を1曲挙げてもらうことはできますか?
NAGAHATA :2曲でもいいですか? 3曲目の「僕と夕陽」は、僕がサポートしてからの新しい曲なので、そういう意味で愛おしいというか。曲ができた流れも、伊豆スタで、みんなで案を出し合って、すぐ出来上がった曲なので、それもすごく思い出に残ってて、抱きしめたくなるような一曲ですね(笑)。あとは最後の「水の中」は僕がちょっとコーラスを、ひと言なんですけど入れてるので、重役を任せられたっていうか、本当に素朴な一言なんですけど、個人的にはすごく印象に残ってます。
―それはカネコさんから「ちょっとやってみて」みたいなリクエストがあった?
NAGAHATA :あれはベースのtakuさんから「素朴な男子のひと言が欲しい」みたいなリクエストがあって、僕の声がいいっていう話になり、その流れで録りました。まあでもどの曲も自分で叩いたものなので、全部の曲が愛おしいですよね。
―今後このバンドでどんなことをやっていきたいですか?
NAGAHATA :みんなでひとつの塊になれたら何でもいいというか、そこから考えもしなかったバンドになるかもしれない。個人的にああしたいこうしたいとかはそんなにないんですけど、いろいろな挑戦をみんなでしていって、みんなですごい何かになれたらいいなっていうのは思ってます。あとはカネコさんのバンドに携わるようになって、今まであんまり聴いてこなかった音楽をすごく聴くようになったり、コピーしたりするようになって、自分の全然気づかなかった面が知れたりして、そこも挑戦というか。
―いわゆるシンガーソングライター的な音楽をより聴くようになった?
NAGAHATA :というよりは、クラシックロック系の、Led ZeppelinとかThe Beatlesとか、もちろん前から聴いてはいたんですけど、ガッツリのめり込むほど聴いてはなかったので、改めて聴くようになって、すごく勉強になるなって。
―今回のレコーディングで特にインスピレーション源になったアーティストや作品はありますか?
NAGAHATA :なんだろう......「この曲のドラムはあの曲のこんな感じ」とかもあるにはあるんですけど、でもまずは自分の感覚を頼りにしたっていう感じです。あとはみんなで常に風景を共有しながらで、そっちの方が大きいですね。これからみんなの景色がより一致するようになったらどんなことになるんだろうっていうのも楽しみです。
―レコーディングやライブを通じて、カネコさんのパーソナリティについてはどう感じていますか?
NAGAHATA :やっぱこう、男気のある人だなって思ってて。大舞台に立つ人間なんだなっていうのは常に感じますね。普段はおてんばというか、元気な感じで、どの面を切り取っても愛おしい人間性だなと思うんですけど、芯にある男気とか魂の部分を常々感じていて、かっこいいなと思います。

―SEIさんの参加はバンドにどんな影響を与えましたか?
カネコ:セイセイは歌のリズムともすごく合ってるし、takuくんとの相性も良かった。最初にスタジオであわせたときに、「もう最高やん」ってなって。
林:SEIちゃんと最初に合わせたときに、演奏のダイナミクスというか、みんなで一緒に上がっていくところとかも最初から完璧に一緒だったんです。ずっと一緒にやってるかのような演奏を最初からやってくれて。
カネコ:上手なドラマーはたくさんいるけど、「ここをこう上がっていく」みたいなニュアンスはコピーじゃ出せない、空気感が大事だったりして。
林:それが最初から自然だったから、すごいなあと思って。
カネコ:セイセイはドラム大好き人間。本人がドラムみたいな。
―その上でちゃんと周りの演奏や歌も聴けるのは素晴らしいですよね。
カネコ:それは出会いだなって思いました。奇跡的なタイミングで出会った。
濱野:それまでのプリプロがあって、最初はちゃんとコピーしてくれたけど、彼らしさをちゃんと注入したいと思ったから、「好きにやっていいよ」っていうのも言って。
カネコ:セイセイもオリジナリティめっちゃあるもんね。あと歌のリズムと合う。
濱野:歌ってドラムのバックビートの加減次第だからね。
カネコ:本当にそう思う。
濱野:あのタイミングをちゃんとわかってくれることはすごく大事で、彼はわりと天性でやってくれる。たぶんそんなに歌ものはやってないよね?
カネコ:そう、最初に「歌ものとか聴く?」って聞いたら、「普段はそんなに聴かないです」って言ってて、5kaiとかも歌があるとはいえ全然違うから、ハマったのはびっくりしました。そういう出会いがあったタイミングで、このアルバムを作れて良かった。セイセイが来てからトータル2週間ちょいとかで録り切ったから。ひさしぶりにそういうスピード感で、ギュッて録った。
濱野:粗さも含めて、みんなの欲望とやりたいこと、あとは喜びを入れたくて。晩ちゃんのオルガンもそうだけど、そういう奇跡の瞬間も全部ちゃんとぶち込みたいなと思った。しかもセイセイと宮坂くんが入って、すごいフレッシュに、今までやりたかったけどできなかったことも、かゆいところに手が届くようになったし。
カネコ:現状のものが録れたって感じがする。アルバムはそのときの時間の流れが録れたらいいなって思ってるんだけど、本当にちゃんと現状のものが録れたなって感じ。で、ライブして、ツアーして、また変わっていく余白もすごくある。
濱野:アレンジの母体がちゃんとここでできて、また次に進めるよね。
変な人生だなって、最近すごく考えます(カネコ)

―昨年はイギリスや中国でのツアーもあって、今年もすでにイギリスとオーストラリアのツアーが決まっていたりと、昨年以降海外での活動も活発になっています。その背景にはどんな考えがあるのでしょうか?
カネコ:自分たちがやってることが、日本語のままで、どれぐらい音楽として聴いてもらえるのかが気になるのと、すごく小さなライブハウスで、下北沢とか高円寺とか渋谷とかでやってたときみたいな感じで、今自分のことを全く知らない国でやったらどうなるのかな?みたいなのがシンプルに気になってます。
―今の日本だとすでにカネコアヤノのイメージを持っている人たちが見に来る状況だけど、海外だと自分たちのことを知らなくて、その状況が刺激的だし楽しい?
カネコ:そうですね。もともとあんまり大きな会場には興味がなかったんですけど、2021年に武道館を初めてやって、これは最高だって、すごくいいなと思ったんです。でもそれと同時に、「これ以上はいいかも」ってなってしまって、そうなるとキャパという意味では国内ではこれ以上目指す場所がない。じゃあもう一回ゼロベースに戻って、海外で自分がどう見られるかなっていうのがすごく気になって、行くことにしました。
―で、実際に行ってみたら楽しかったと。
カネコ:楽しいですね。楽しいし、すごく課題も見えるし。
濱野:言葉はわからないのに反応するからね。僕らが洋楽を聴いてるのと一緒。
カネコ:でもやっぱり日本語でやりたい。
―それはなぜ?
カネコ:結局自分の母語が日本語なわけじゃないですか。今までのインタビューでも「歌詞は日記を書いてるみたいな感じです」みたいなことを言ってると思うんですけど、自分の気持ちを乗せる上で日本語がいちばん乗るから、日本語で歌ってるだけで、自分は気持ちを込めて歌うけど、それが海外の人にとって音楽として届いたらいいなっていうぐらいにしか考えてない。日本語がいちばん気持ちが乗せやすいし、歌が歌いやすいから、日本語でやるっていう、それだけ。それが言葉が違う人にどう届くのかはわからなくて当たり前だと思うし、音楽として伝わってほしいから、アレンジはちゃんとかっこいいものにして、言葉は日本語でやり続けたい。「英語の方が海外の人に届くから、英語で歌った方がいいよ」みたいな話もよくあるけど、私はそういうふうに知ってほしいわけではないのかもしれないです。ちゃんと自分の言葉が自分の言葉として乗っていて、自分の好きな音が鳴っているものが私の音楽だから、それがそのまま届いたら嬉しいなって思ってます。

―実際に海外でライブをした手応えだったり、新鮮さを感じた部分はいかがですか?
カネコ:最初に海外に行ったときは、全く違う世界の人に向けて音楽をやるんだと思っちゃってた部分がもしかしたらあったのかなって。でも実際に行ってみて、「フラットにめっちゃ人間だわ」みたいなことに気づけたのはすごく大きいと思います。それがあったので、海外に行く選択をしてよかったなと思う。自分たちの好きなことをやって、どう評価されるかって、日本にいても海外にいても別に同じ人間に聴かせているわけだから、そこはフラットでいていいんだっていう気づきを得るための大きな選択だったなと思います。
―もちろん日本との違いとか、その国ならではの部分もきっとあっただろうけど、でも結局は同じ人間じゃん、フラットじゃんっていう、そこの気づきがいちばん大きかった。
カネコ:そういう気づきと、自分がそう願っているという気づきと、みたいな。その考え方を自分の中に入れることができたのは、人生においてすごく特別なことなのかなと思います。しかも音楽で、みたいな。変な人生だなって、最近すごく考えます。若いときは音楽を聴く側だったのに、今は自分が音楽と呼ばれるものを作ってるっていう状況がそもそも結構受けるなって、ふと急に考えたりしますね。でもそういうのって、この2年ぐらいで考えるようになったかも。
―それまではそういう意識もなかった?
カネコ:ただ楽しい、っていう感じから、いろんなことを考えなきゃいけなかったり、客観視しなきゃいけなかったり、選択しなきゃいけない瞬間が増えて、「いやいや、ちょっと待って、私ってそもそもなんで音楽作ってるの?」みたいな。すごく不思議に思うし、同時にめっちゃ感謝っていう感じです。
―それをそのまま質問すると、カネコさんは今なんで音楽を作ってるんだと思いますか?
カネコ:自分のバンドがいちばん好きだからかな。みんなでわあって鳴らして、わあってなるのが楽しい。悩むときももちろんありますけど、「まあなんとかなるでしょう」みたいな考え方もあるし、それでなんとかなってきたし。今回のレコーディングも大変だったけど、すごく楽しかったです。

取材・文:金子厚武
写真提供:1994 Co.,Ltd
RELEASE INFORMATION

kanekoayano「石の糸」
2025年4月25日(金)
Format: Digital
Track:
1. noise
2. 太陽を目指してる
3. 僕と夕陽
4. 日の出
5. ラッキー
6. さびしくない
7. 難しい
8. WALTZ
9. 石と蝶
10. 水の中
試聴はこちら
kanekoayano「石の糸」
2025年5月28日(水)
Format: CD/LP
CD ( 全国流通 )品番:NNFC-14
価格:3,850 円 ( 税込 ) / 3,500 円 ( 税抜 )
LP ( 初回生産限定:全国流通 )品番:NNFS-1012
価格:5,500 円 ( 税込 ) / 5,000 円 ( 税抜 )
仕様:12inch Black Vinyl/ A式ダブルジャケット
※音源DLコードは付属しておりません。
LIVE INFORMATION
kanekoayano Hall Tour 2025 "⽯の⽷"
6月28日(土) 岡⾕鋼機名古屋公会堂open 17:00 / start 18:00
お問い合わせ:お問い合わせ:JAIL HOUSE (052-936-6041)
6月29日(日) ⾦沢市⽂化ホール
open 17:00 / start 18:00
お問い合わせ:FOB金沢 (076-232-2424)
7月3日(木) 広島 JMSアステールプラザ ⼤ホール
open 18:00 / start 19:00
お問い合わせ:YUMEBANCHI 広島 (082-249-3571)
7月4日(金) ⼤阪 オリックス劇場
open 18:00 / start 19:00
お問い合わせ:GREENS (06-6882-1224)
7月20日(日) 京都 KBSホール
open 17:00 / start 18:00
お問い合わせ:GREENS (06-6882-1224)
7月21日(月・祝) 静岡市清⽔⽂化会館(マリナート)⼤ホール
open 17:00 / start 18:00
お問い合わせ:お問い合わせ:JAIL HOUSE (052-936-6041)
8月5日(火) LINE CUBE SHIBUYA
open 18:00 / start 19:00
お問い合わせ:HOT STAFF PROMOTION (050-5211-6077)
8月6日(水) LINE CUBE SHIBUYA
open 18:00 / start 19:00
お問い合わせ:HOT STAFF PROMOTION (050-5211-6077)
8月9日(土) サンポートホール⾼松 ⼤ホール
open 17:00 / start 18:00
お問い合わせ:DUKE ⾼松 (087-822-2520)
8月11日(月・祝) 福岡市⺠ホール ⼤ホール
open 17:00 / start 18:00
お問い合わせ:キョードー⻄日本 (0570-09-2424)
9月3日(水) Kanadevia Hall (TOKYO DOME CITY HALL)
open 18:00 / start 19:00
お問い合わせ:HOT STAFF PROMOTION (050-5211-6077)
9月6日(土) トークネットホール仙台 ⼤ホール
open 17:00 / start 18:00
お問い合わせ:GIP
9月19日(金) 札幌 カナモトホール
open 18:00 / start 19:00
お問い合わせ:WESS
9月28日(日) 沖縄 アイム・ユニバース てだこホール 大ホール
open 17:00 / start 18:00
お問い合わせ:PM AGENCY (098-898-1331)
Ticket:
指定席 6,000円(税込)
※未就学児⼊場不可(⼩学⽣以上チケット必要)
※お1⼈様4枚まで 申し込み可能
【オフィシャル先行予約】
受付方法:抽選
受付期間:4月25日(⾦)0:00〜5月6日(⽕)23:59
受付URL:https://eplus.jp/kanekoayano/
当落発表:5月9日(⾦)13:00〜5月11日(⽇)21:00
LINK
オフィシャルサイト@kanekoayanoinfo
@kanekoayano_info
オフィシャル通販「カネコ商店」