2023.02.27
マネージャーってどんな仕事?THE ORAL CIGARETTES・Saucy Dog・KANA -BOONなど10組近くを担当する柳井貢の仕事密着とQ&Aで徹底解説!
アーティストのライブ現場やメディアで時折名前が出てくる"マネージャー"。英語で言うマネージャー(manager)は部門管理者や責任者のことを意味しますが、アーティスト・マネージャーは少し役割が異なっているように思えます。具体的には何をしているのでしょう。「スケジュールの管理」「アーティストの付き人」「アーティストを売り込む人」?そんな疑問、ありませんか?今回SENSAではアーティストの"マネージャー"のお仕事に密着!KANA -BOON、THE ORAL CIGARETTES、Saucy Dogなどを担当しているHIP LAND MUSIC/MASH A&Rの柳井貢さんにご協力いただきました!
アーティスト・マネージャと呼ばれる人たちにも会社やチーム、規模の大小によって役割分担があったり、現場マネージャーやチーフマネージャーなど、個別の名称があったりもします。2社をまたいで10組ほどのアーティストを10名以上のスタッフと連携をとり、責任者として、チーフマネージャーとして、それぞれのアーティストに関わる柳井さんのある日の行動を追ってみました。
そのメインの議題の前に、マネージャーチームがメンバーと共有したいことや課題などを話し合う時間を取ります。細かいことであってもバンドの名前で表に出ることは、メンバーにも共有することが大事であり、ひとつひとつの物事について話をして一緒に決めていくことで、メンバーから信頼される存在になっていきます。今回はYouTubeの活用が議題に挙がりましたが、メンバーの意見も吸い上げながらジャッジをしていきます。
続いて、メインテーマであるライブの演出について。メンバーが考えているセットリストの提案を受け、「FREDERHYTHM TOUR2022-2023」の最後の2本となる大きなホール会場での演出内容などについて話し合いました。柳井さん自身の考えを伝えつつ、メンバーそれぞれの意見を確認していきます。ライブハウス、Zeppそしてホールへ...と大きく会場のキャパシティが広がることで、今回のライブで伝えたいことは何か、どういうライブをお客さんに観せたいか、リリースするアルバムをどうツアーに落とし込めばいいか?など、演出の話をしながら、フレデリックの今のモードも把握していきます。話は、メンバーだけではなく、現場マネージャーの意見を交えながら進んでいきました。
メンバーから、ステージの装飾などのイメージの共有もあり、それに対して他のアーティストが過去に行った演出や、新たに考えているアイデアを実現するための方法についてなど、コストの部分にも触れながら説明していきます。打ち合わせは2時間弱続き、多くの意見が飛び交い合いました。
まもなく開催される「FREDERHYTHM HALL 2023」ホール公演、一体どんな内容になっているか、ぜひ現地で体感してください!
撮影:SENSA編集部
"マネージャー"は基本、裏方としての役割が中心ですが、柳井さんは稀に"マネージャー"として取材を依頼されることがあります。手掛けているアーティストの売り方、曲のヒットの方法、何がヒット曲の生まれるキーポイントだったのかなど、いちばんアーティストを近い場所で見ていて、アーティストと行動を共にする機会の多いマネージャーに話を聞くことで、ヒットの裏側を探ることを目的とするような取材です。
今回受けたのはYouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」が手掛けるプラットフォーム「THE FIRST TIMES」さんによる企画、「スタッフが語るヤバイ曲」。
今回は"ヤバい曲"としてSaucy Dogの「シンデレラボーイ」をセレクトしていただき、インタビューは楽曲の背景にフォーカスするという内容でした。インタビューは、「THE FIRST TIMES」スタッフと柳井さんの対談形式で進んでいきました。
Saucy Dogのメンバーとの関わり方や、Saucy Dogというアーティストの見せ方、今回フォーカスされた「シンデレラボーイ」含め彼らの楽曲の制作について、そしてその楽曲をより多くの人に聴いてもらうために考えていること、などなど、とても興味深いインタビューとなりました。フレデリックとの打ち合わせでは統括マネージャーとしての言葉が多かった柳井さんですが、こちらの取材では、統括であっても現場を見ているひとりのマネージャーとして、アーティストとどう向き合っているのかが垣間見えました。
是非、こちらのインタビューもご覧ください。
スタッフが語るヤバイ曲
https://www.thefirsttimes.jp/special/yabai/0003/
撮影:RYO SATO
Q.マネジメントをする上で大事にしていることは?
A.基本的には嘘をつかない・取り繕わないがいちばん大事なことかな、多分。結構いろいろなところで言っていますけど。
Q.それぞれのアーティストの現場で、気をつけていることはなんですか?
A.基本的には、僕が現場で何か作業をするってほぼなく、むしろ僕より他のマネージャーさんが最前線でメンバーのスケジュールとかメンタルケアをやってくれているので、僕は万が一のときに動く人みたいな感じです。なるべく空気を汚さないように、メンバーとライブスタッフとレコード会社の関係者とかの様子を見ながら、基本的には楽屋で作業したり打ち合わせしたりしています。
Q.マネージャーに求められることはなんですか?
A.アーティストの求めていることをなるべく会話して理解したり察知したりしながら、自分の得意なことをしっかり活かしつつ、苦手な事はしっかりアウトソーシングするみたいな、そんな感じかな。あとは、できることは自信を持って判断する。その判断に不安がある場合は、経験値が足りないということなので、そういった案件に関しては抱えずに大至急先輩なり、上司なり、知り合いのマネージャーなりに経験談を聞いたり、アドバイスを求める。
マネージャーは総合職だと思うんですよね。もちろんまんべんなく何でもできたほうがいいと思うんですけど、僕も結構、バランスいい五角形タイプではないというか。音楽の知識はもう全然たいしたことないんで、どっちか言うとビジュアルとかステージとかのクリエイティブで力を発揮しつつ。あと情報整理能力は多少あるほうだと思うので、今後のプランニングを整理したり、イベントにしてもリリースにしても、ここがいちばん伝えるべきポイントだよねとか、そういうことに基づいて、戦略を整理していったりしています。
Q.どういったスケジュール感で動いていますか?
A.基本的には、外せないライブの現場のスケジュールが1〜2ヶ月前には決まってきて、それ以外は目安として週一とか隔週で1回、各チームの定例の打ち合わせがあるので、空いてるところでスケジュールを調整します。だいたい平日は打ち合わせが5、6本あって。僕の場合はGoogleカレンダーを自分の部署内のメンバーに共有していて。そのカレンダーが、プライベートも書き込んでいる、僕のマスターのスケジュールになっています。それを踏まえて僕のスケジュールを欲しい人が空いているところを見て投げ込んでくるっていう感じで、気づいたら1週間だいたい埋まっていますね。
Q.アーティストにどこまで求めていますか?(技術や音楽性)
A.ありのままでいいんじゃないですかね。でも、求めていることがあるとしたら、自分が描いている人生及びその人生における音楽活動の占める割合を、なるべく正確に把握した上で、そこに自分が投下する時間を適切に考えていて欲しいと思っています。
Q.新曲やデモを聞いた時は、いつもどんな気持ちですか?
A.語弊があるかもしれませんが、僕、実は8割方デモは聴かないです。口を出さないから。もちろんタイアップなどの案件で、聴くことを求められた場合は聴くんですけど、基本的に音楽に関しては、作りたいように作ればいいと思っているので、デモ段階で必ず聴かせて欲しいというふうには思っていないです。聴いて欲しいんだったら送ってきてって感じで、何かしらのタイミングで聴くことにはなるんですけど、そこでどういう気持ちになるか...「頑張ってるな」って感じですかね。でも、僕にとっては、カッコいいかどうかなどの主観は後回しなので。どちらかと言うと「そういうモードなんだな」っていうのを楽曲から感じて、それが正解なのかどうかを確認する作業をしている感じかな、しなかったりもするけども。オーラルとか聴いたら、それが一発でわかる。「今そういうことやりたいんですね、わかりました。じゃライブはこういう感じにしたほうがいいだろうし、グラフィックはこういうふうにしたほうがいいだろう」みたいなことが想像つくので。プランニングとかの出発点として受け止めるっていう感じですかね。だから、「武道館行きたいんです!」「この曲は勝負曲で、パワープレイ狙いにいきたいです」って聴かされて、これで大丈夫かな、みたいに思うこともあります。
Q.以前の「RUSH BALL マネージャー対談」記事で、アーティスト発信のイベントのお話の時にAIR JAMについて触れられていましたが、どういったところに惹かれましたか?
A.僕、当時は大阪にいて、ベイサイドジェニーという会場があって、そこでKEMURIとかハイスタがやっていて。バンドはメロコア、スカコアとかで、スケーター、ストリートファッションとの文脈を感じていて。高校3年生の終わりとか大学生くらいの時にその辺を出入りしている友達とか先輩連中は、やっぱ楽しそうに見えたし、かっこよく見えたし。ハイスタが海外ツアーとかで撮ってる映像とかも、すごくかっこよかったし。あれ何なんでしょうね。ネクタイ締めないスタイルのいちばん自由そうな形に憧れを感じたような気がしますね。あと、いい大学出なくても堂々と楽しそうにカッコいいことやっている雰囲気が、キラキラ、まぶしく見えたような気がします。
Q.最近気になるエンタメは?
A.NFTとAIクリエイティブ系は気になっていますけど、まぁでも様子見てるって感じですかね。
2.5次元とかVTuberとか、映画『ONE PIECE FILM RED』のウタちゃんとか、結構いろんなことが世の中で起こっていますけど、自分の読みというか感覚では、もうこの今の情報流通形態において、日本にしてもそうだし、世界にしてもそうだし、みんなが知っていてみんなが好きみたいな、そういうものは多分出てこなさそうだなと思っているので。だから新しい技術を使っていたりするものや、新しいスキームとかは、新しいビジネスモデルだから注目しておかなきゃなと思っていますが、その手法性としてのエンタメの振り幅は、全部を追いかけるのは無理だなと諦めています。だからスタッフにK-POP好きな人がいたら、その人から教えてもらったりとか、アニメ文脈好きな子がいたら教えてもらったりとか。自分でその辺は無理しようとは思っていないので、最近注目するエンタメも『ONE PIECE FILM RED』の大ヒットとか、そんなありきたりな感じになるかな。中田(敦彦)さんの500万人登録など、年末のYouTuberの登録者数、何百万人合戦みたいなのは、それはそれで見守っていましたけど、一種のファンビジネスの形だなぁと思いました。
Q.これからマネージャーをしたいという人に向けてメッセージをお願いします。
A.マネージャーを目指すということが何を指しているのかをちょっと疑いつつですが、でも「えいやー!」って飛び込んできてもらえるといいのかなと思います。
マネージャーを目指す、及びマネージャーってなんだろうみたいな、マネージャーというものの明確な形、明確な仕事があるとは思わずに、だけどアーティストとの仕事とか音楽に携わる仕事とかに興味があるなら飛び込んでみて、あまり型や肩書きにとらわれずに得意なことを活かしてほしい、って感じですかね。
最近すごく思うのが、「勉強したい」とか「勉強になりました」って多く言われすぎると、少しだけ冷めちゃうんですよね。学校じゃないし、って思っちゃうんですよ。勉強はここまでしてきたんじゃないの?っていう気がするから。もちろん勉強はいつ何時も勉強なんですけど、やっぱりギャラというか対価をもらって仕事する以上は、勉強が先か、持っている力を提供するか、どっちが先かで言ったら、持っている力を提供する方が先なんじゃないって気がするので。この話はマネージャーに限らずですよね。だからちゃんと自分の力を信じれば、それでいいと思うんですよ。あとよく若い人たちから「迷惑かけちゃうと思いますが、よろしくお願いします」みたいに言われるんですけど、僕としては、迷惑はいくらでもかけられてもよくて。迷惑をかけないように頑張ったとしても、何も生み出さなかったからゼロじゃんって思うから。むしろ迷惑かけてもいいから、自分がやってみようと思うことにどんどんチャレンジしてもらいたいなっていうのが、僕が思っていることではありますかね。
柳井 貢
1981年生まれ 大阪・堺市出身。HIP LAND MUSIC CORPORATIONの執行役員及びMASH A&Rの副社長として、bonobos、DENIMS、アツキタケトモ、Keishi Tanaka、THE ORAL CIGARETTES、フレデリック、Saucy Dog、ユレニワ、Enfantsのマネジメントを主に担当。
@gift871
アーティスト・マネージャと呼ばれる人たちにも会社やチーム、規模の大小によって役割分担があったり、現場マネージャーやチーフマネージャーなど、個別の名称があったりもします。2社をまたいで10組ほどのアーティストを10名以上のスタッフと連携をとり、責任者として、チーフマネージャーとして、それぞれのアーティストに関わる柳井さんのある日の行動を追ってみました。
アーティストとの打ち合わせ
まず、フレデリックとの打ち合わせ。フレデリック・チームを束ねる柳井さんが参加したのは、メンバー全員と現場マネージャーチームが集まる打ち合わせです。今回、集合した主な目的は、3月開催の大阪・東京でのホール・ライブのセットリストの草案作りや、それに基づいた演出内容について話し合うため。メンバーとスタッフが同じ方向を見て、共通のゴールに向かって走り出すための大事な打ち合わせになります。そのメインの議題の前に、マネージャーチームがメンバーと共有したいことや課題などを話し合う時間を取ります。細かいことであってもバンドの名前で表に出ることは、メンバーにも共有することが大事であり、ひとつひとつの物事について話をして一緒に決めていくことで、メンバーから信頼される存在になっていきます。今回はYouTubeの活用が議題に挙がりましたが、メンバーの意見も吸い上げながらジャッジをしていきます。
続いて、メインテーマであるライブの演出について。メンバーが考えているセットリストの提案を受け、「FREDERHYTHM TOUR2022-2023」の最後の2本となる大きなホール会場での演出内容などについて話し合いました。柳井さん自身の考えを伝えつつ、メンバーそれぞれの意見を確認していきます。ライブハウス、Zeppそしてホールへ...と大きく会場のキャパシティが広がることで、今回のライブで伝えたいことは何か、どういうライブをお客さんに観せたいか、リリースするアルバムをどうツアーに落とし込めばいいか?など、演出の話をしながら、フレデリックの今のモードも把握していきます。話は、メンバーだけではなく、現場マネージャーの意見を交えながら進んでいきました。
※公演前のためホワイトボードの内容はぼかしています
メンバーから、ステージの装飾などのイメージの共有もあり、それに対して他のアーティストが過去に行った演出や、新たに考えているアイデアを実現するための方法についてなど、コストの部分にも触れながら説明していきます。打ち合わせは2時間弱続き、多くの意見が飛び交い合いました。
まもなく開催される「FREDERHYTHM HALL 2023」ホール公演、一体どんな内容になっているか、ぜひ現地で体感してください!
※公演前のためホワイトボードの内容はぼかしています
撮影:SENSA編集部
"スタッフが語る"インタビュー
"マネージャー"は基本、裏方としての役割が中心ですが、柳井さんは稀に"マネージャー"として取材を依頼されることがあります。手掛けているアーティストの売り方、曲のヒットの方法、何がヒット曲の生まれるキーポイントだったのかなど、いちばんアーティストを近い場所で見ていて、アーティストと行動を共にする機会の多いマネージャーに話を聞くことで、ヒットの裏側を探ることを目的とするような取材です。
今回受けたのはYouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」が手掛けるプラットフォーム「THE FIRST TIMES」さんによる企画、「スタッフが語るヤバイ曲」。
今回は"ヤバい曲"としてSaucy Dogの「シンデレラボーイ」をセレクトしていただき、インタビューは楽曲の背景にフォーカスするという内容でした。インタビューは、「THE FIRST TIMES」スタッフと柳井さんの対談形式で進んでいきました。
Saucy Dogのメンバーとの関わり方や、Saucy Dogというアーティストの見せ方、今回フォーカスされた「シンデレラボーイ」含め彼らの楽曲の制作について、そしてその楽曲をより多くの人に聴いてもらうために考えていること、などなど、とても興味深いインタビューとなりました。フレデリックとの打ち合わせでは統括マネージャーとしての言葉が多かった柳井さんですが、こちらの取材では、統括であっても現場を見ているひとりのマネージャーとして、アーティストとどう向き合っているのかが垣間見えました。
是非、こちらのインタビューもご覧ください。
スタッフが語るヤバイ曲
https://www.thefirsttimes.jp/special/yabai/0003/
撮影:RYO SATO
柳井さんにQ&A!
Q.マネジメントをする上で大事にしていることは?
A.基本的には嘘をつかない・取り繕わないがいちばん大事なことかな、多分。結構いろいろなところで言っていますけど。
Q.それぞれのアーティストの現場で、気をつけていることはなんですか?
A.基本的には、僕が現場で何か作業をするってほぼなく、むしろ僕より他のマネージャーさんが最前線でメンバーのスケジュールとかメンタルケアをやってくれているので、僕は万が一のときに動く人みたいな感じです。なるべく空気を汚さないように、メンバーとライブスタッフとレコード会社の関係者とかの様子を見ながら、基本的には楽屋で作業したり打ち合わせしたりしています。
Q.マネージャーに求められることはなんですか?
A.アーティストの求めていることをなるべく会話して理解したり察知したりしながら、自分の得意なことをしっかり活かしつつ、苦手な事はしっかりアウトソーシングするみたいな、そんな感じかな。あとは、できることは自信を持って判断する。その判断に不安がある場合は、経験値が足りないということなので、そういった案件に関しては抱えずに大至急先輩なり、上司なり、知り合いのマネージャーなりに経験談を聞いたり、アドバイスを求める。
マネージャーは総合職だと思うんですよね。もちろんまんべんなく何でもできたほうがいいと思うんですけど、僕も結構、バランスいい五角形タイプではないというか。音楽の知識はもう全然たいしたことないんで、どっちか言うとビジュアルとかステージとかのクリエイティブで力を発揮しつつ。あと情報整理能力は多少あるほうだと思うので、今後のプランニングを整理したり、イベントにしてもリリースにしても、ここがいちばん伝えるべきポイントだよねとか、そういうことに基づいて、戦略を整理していったりしています。
Q.どういったスケジュール感で動いていますか?
A.基本的には、外せないライブの現場のスケジュールが1〜2ヶ月前には決まってきて、それ以外は目安として週一とか隔週で1回、各チームの定例の打ち合わせがあるので、空いてるところでスケジュールを調整します。だいたい平日は打ち合わせが5、6本あって。僕の場合はGoogleカレンダーを自分の部署内のメンバーに共有していて。そのカレンダーが、プライベートも書き込んでいる、僕のマスターのスケジュールになっています。それを踏まえて僕のスケジュールを欲しい人が空いているところを見て投げ込んでくるっていう感じで、気づいたら1週間だいたい埋まっていますね。
Q.アーティストにどこまで求めていますか?(技術や音楽性)
A.ありのままでいいんじゃないですかね。でも、求めていることがあるとしたら、自分が描いている人生及びその人生における音楽活動の占める割合を、なるべく正確に把握した上で、そこに自分が投下する時間を適切に考えていて欲しいと思っています。
Q.新曲やデモを聞いた時は、いつもどんな気持ちですか?
A.語弊があるかもしれませんが、僕、実は8割方デモは聴かないです。口を出さないから。もちろんタイアップなどの案件で、聴くことを求められた場合は聴くんですけど、基本的に音楽に関しては、作りたいように作ればいいと思っているので、デモ段階で必ず聴かせて欲しいというふうには思っていないです。聴いて欲しいんだったら送ってきてって感じで、何かしらのタイミングで聴くことにはなるんですけど、そこでどういう気持ちになるか...「頑張ってるな」って感じですかね。でも、僕にとっては、カッコいいかどうかなどの主観は後回しなので。どちらかと言うと「そういうモードなんだな」っていうのを楽曲から感じて、それが正解なのかどうかを確認する作業をしている感じかな、しなかったりもするけども。オーラルとか聴いたら、それが一発でわかる。「今そういうことやりたいんですね、わかりました。じゃライブはこういう感じにしたほうがいいだろうし、グラフィックはこういうふうにしたほうがいいだろう」みたいなことが想像つくので。プランニングとかの出発点として受け止めるっていう感じですかね。だから、「武道館行きたいんです!」「この曲は勝負曲で、パワープレイ狙いにいきたいです」って聴かされて、これで大丈夫かな、みたいに思うこともあります。
Q.以前の「RUSH BALL マネージャー対談」記事で、アーティスト発信のイベントのお話の時にAIR JAMについて触れられていましたが、どういったところに惹かれましたか?
A.僕、当時は大阪にいて、ベイサイドジェニーという会場があって、そこでKEMURIとかハイスタがやっていて。バンドはメロコア、スカコアとかで、スケーター、ストリートファッションとの文脈を感じていて。高校3年生の終わりとか大学生くらいの時にその辺を出入りしている友達とか先輩連中は、やっぱ楽しそうに見えたし、かっこよく見えたし。ハイスタが海外ツアーとかで撮ってる映像とかも、すごくかっこよかったし。あれ何なんでしょうね。ネクタイ締めないスタイルのいちばん自由そうな形に憧れを感じたような気がしますね。あと、いい大学出なくても堂々と楽しそうにカッコいいことやっている雰囲気が、キラキラ、まぶしく見えたような気がします。
Q.最近気になるエンタメは?
A.NFTとAIクリエイティブ系は気になっていますけど、まぁでも様子見てるって感じですかね。
2.5次元とかVTuberとか、映画『ONE PIECE FILM RED』のウタちゃんとか、結構いろんなことが世の中で起こっていますけど、自分の読みというか感覚では、もうこの今の情報流通形態において、日本にしてもそうだし、世界にしてもそうだし、みんなが知っていてみんなが好きみたいな、そういうものは多分出てこなさそうだなと思っているので。だから新しい技術を使っていたりするものや、新しいスキームとかは、新しいビジネスモデルだから注目しておかなきゃなと思っていますが、その手法性としてのエンタメの振り幅は、全部を追いかけるのは無理だなと諦めています。だからスタッフにK-POP好きな人がいたら、その人から教えてもらったりとか、アニメ文脈好きな子がいたら教えてもらったりとか。自分でその辺は無理しようとは思っていないので、最近注目するエンタメも『ONE PIECE FILM RED』の大ヒットとか、そんなありきたりな感じになるかな。中田(敦彦)さんの500万人登録など、年末のYouTuberの登録者数、何百万人合戦みたいなのは、それはそれで見守っていましたけど、一種のファンビジネスの形だなぁと思いました。
Q.これからマネージャーをしたいという人に向けてメッセージをお願いします。
A.マネージャーを目指すということが何を指しているのかをちょっと疑いつつですが、でも「えいやー!」って飛び込んできてもらえるといいのかなと思います。
マネージャーを目指す、及びマネージャーってなんだろうみたいな、マネージャーというものの明確な形、明確な仕事があるとは思わずに、だけどアーティストとの仕事とか音楽に携わる仕事とかに興味があるなら飛び込んでみて、あまり型や肩書きにとらわれずに得意なことを活かしてほしい、って感じですかね。
最近すごく思うのが、「勉強したい」とか「勉強になりました」って多く言われすぎると、少しだけ冷めちゃうんですよね。学校じゃないし、って思っちゃうんですよ。勉強はここまでしてきたんじゃないの?っていう気がするから。もちろん勉強はいつ何時も勉強なんですけど、やっぱりギャラというか対価をもらって仕事する以上は、勉強が先か、持っている力を提供するか、どっちが先かで言ったら、持っている力を提供する方が先なんじゃないって気がするので。この話はマネージャーに限らずですよね。だからちゃんと自分の力を信じれば、それでいいと思うんですよ。あとよく若い人たちから「迷惑かけちゃうと思いますが、よろしくお願いします」みたいに言われるんですけど、僕としては、迷惑はいくらでもかけられてもよくて。迷惑をかけないように頑張ったとしても、何も生み出さなかったからゼロじゃんって思うから。むしろ迷惑かけてもいいから、自分がやってみようと思うことにどんどんチャレンジしてもらいたいなっていうのが、僕が思っていることではありますかね。
PROFILE
柳井 貢
1981年生まれ 大阪・堺市出身。HIP LAND MUSIC CORPORATIONの執行役員及びMASH A&Rの副社長として、bonobos、DENIMS、アツキタケトモ、Keishi Tanaka、THE ORAL CIGARETTES、フレデリック、Saucy Dog、ユレニワ、Enfantsのマネジメントを主に担当。
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