2022.09.26
「RUSH BALL 2022」出演バンドのマネージャー対談!コロナ禍以降のイベント、フェスの裏側やリアルとは?
夏の大型イベントシーズンへの臨み方は、今年でやっと通常に近い形に戻ったかな
飯室:本日はよろしくお願いします。柳井さんは04 Limited SazabysのTシャツを着ていらっしゃいますね。
柳井:(笑)。
佐々木:スミマセン、今からTHE ORAL CIGARETTESの物販行ってTシャツを買ってきてもいいですか(笑)?
柳井:今、お客さんが並んでいるので、取材を優先してもらっていいですか?(笑)
佐々木:そうですか...。
柳井:裏から(笑)ご用意させていただきます。
佐々木:ありがとうございます(笑)。
飯室:それは柳井さんの私物ですか?
柳井:私物です!04 Limited SazabysにSaucy DogのBIGCATの対バンに出てもらったとき、先行物販が開く前に「1枚だけ譲ってもらってもいいですか...?」と言って購入させていただきました。
佐々木:こういうところが大事ですよ、やっぱり。
飯室:担当するバンドの規模が大きくなられてもそういうポリシーは変わっていない、さすがの柳井さんと佐々木さんですけど。ひとまず今年の夏はライブやフェス、イベントの状況がずいぶん前進したと思います。佐々木さんはどう感じていますか?
佐々木:むちゃくちゃ嬉しいですね。ようやくな感じがします。04 Limited Sazabysが出演するフェスは、ほぼ全部、会場に行っているのですが、何よりもお客さんが楽しむマインドになっているように見えるというのが一番嬉しいかもしれません。肌感で言いますと、後ろめたさというのも半分以上はなくなった気がします。
飯室:バンドのメンバーさんはどんなふうに感じていますか?
佐々木:もちろんメンバーも同じような気持ちです。単純にライブに臨む姿勢も、過去の2年間に関しては余計な邪念が入ってきて、それに対してどう戦っていくのかというのが課題でした。「みんなで前に進もう!声は出せないけど、今できることで楽しもう!」というマインドだったじゃないですか?そのマインドセットも越えた気がしていて。ここからは回復ムードに持っていけるんじゃないかなという気持ちでは現状います。もちろんイベントによってガイドラインや考え方は異なるので、それに対してどうアジャストするのかというのも、結構メンバーと協議しています。今日も全然違いますし、サマソニでも違いましたし、ロッキンも違いますし、そういったところに対しての臨み方というのはセットリストのミーティングのときに話しています。
飯室:柳井さんやTHE ORAL CIGARETTESチームもそういう感じですか?だんだんできることが増えてきて、その都度フェスのガイドラインによってメンバーと話して、方向性を決める感じでしょうか?
柳井:そうですね。夏フェスという括りが適正かわかりませんけど、いわゆる夏の大型イベントシーズンへの臨み方は、今年でやっと通常に近い形に戻ったかなと感じています。プロモーションの考え方や出演料の交渉具合とかも含めて(笑)。
一同:(笑)。
柳井:あとは物販の納品数とか。その辺のリスクヘッジの方が過去2年大きかったので、そこが変わってきています。
飯室:なるほど。かなりリアルな話ですね(笑)。
佐々木:いや、ガチですよ。物販の納品数とかは本当にそうかもしれない。
柳井:通販が生命線だったので。通常だと夏フェスに向けてグッズの数を販売見込みの120%くらい製作して、「秋口に通販で全部捌けばいいかな」という考え方なんですけど、コロナ禍で夏フェスがなくなるというリスクが生まれてから、通販ベースで製作して、イベントもあればそこに少し持っていくという感じになりました。もちろん事務所によって考え方は違うと思いますが。あと今年は既製ボディーの在庫がめちゃくちゃなくなりました。
佐々木:それは世界情勢的にもそうでした。
柳井:そうそう。
佐々木:送料のコストとかも含めると、結構グッズは取り合いですね。「あそこ買われた...」とか(笑)。なので売れるのが早いボディーは半年前から押さえますね。
飯室:もうボディー押さえ合戦なんですね。
柳井:そうですね。あとはアーティストによりけりですけど、ボディーから作っている会社もあるから、その場合は工場のライン押さえですね。
飯室:なるほど!いまレクチャーを受けている気がします(笑)。
一同:(笑)。
飯室:面白いな〜。そういった意味でも今年の夏は少し前進している感じですね。
佐々木:そうですね。結構生々しい話になるのですが、そのグッズ云々を売らなきゃいけない理由が、やはりアーティストは食べていかないといけないんですよね。(グッズからの)ロイヤリティをあげていくことが生命線でもあるんですよね。それを2年断たれてしまった。その2年の間、メンバーがどういう状況になったかはご想像の通りなのですが、それも踏まえて「今年は働くぞ〜!」というマインドです(笑)。
柳井:(笑)。
佐々木:裏テーマではありますけど。純粋に音楽を届けたい、ロックシーンを復興させたいというところがありつつも、そこはまず大前提として、グッズをどのくらい作って、どのくらい売上を出すのかなど、そういうところはかなり現実的に考えています。
こういう時代だからこそ横の繋がりはすごく大事
飯室:そういう情報共有みたいなことは、他社でありながらマネージャーさん同士でされたりするんですか?
柳井:タイミングがあえばそういうことをしています。困ったら聞いたりとか。「最近どうしてるの?」とか聞いたりしています。
飯室:なるほど。こういう時代だからこそ横の繋がりはすごく大事ですよね。
佐々木:特に柳井さんとは仲も良いですし、話をすることはあります。出演料についてとか。
柳井:出演料に関しては(佐々木さんは)優しいタイプですので(笑)。
佐々木:(笑)。実際(04 Limited Sazabysのライブやフェスに、担当バンドが)出演していただいたりすることもあるので。
柳井:僕は相手に合わせて話し方や交渉のスタンスを変えるんですよね。
佐々木:柳井さんもすごく優しい人なんですよ。なんですけど厳しい人です(笑)。
一同:(笑)。
柳井:違う違う(笑)。アーティストが主催のイベントやフェスは、ほとんど出演料の交渉はしないですね。持ちつ持たれつまくりなので。
佐々木:僕はこの業界に入って初めて「こんなにギャラ高くていいの...?」という電話をもらいました(笑)。
柳井:(笑)。あとタイプで分けるとすると、RUSH BALLみたいにイベンターさん主催のもの、あとメディア主催のイベント。その二つのカテゴリーに関してはある程度出演料を主張することもあります。もちろんプロモーションの観点もあるので、理解をいただける範囲内ではありますが、出演者とイベント主催者がそれぞれ尊重し合える、気持ちよく長く付き合えるように、たくさんの要素を含んで話し合うべきだと思っています。地味に物販の手数料とかも関係してきますしね。(笑)
飯室:なるほど。一種フェスの特徴といいますか、そういうのがアーティストによってありますね。
佐々木:おそらく事務所によってもスタンスが全然違うと思います。僕は柳井さんの考えとかなり近いんですが、要は先方が提示してくれた金額って、そのアーティストの価値を測るものさしなんですよね。そのものさしを僕は逆に突きつけられているものだと思っています。その提示されたものさしに対して、明らかに違うなというのがあれば、もちろん交渉しますし、あとは単純に収支が成り立っていない時とかも交渉するのですが、基本的には言われた金額で受け入れるようにはしています。
飯室:なるほど。
柳井:そもそもコロナがなくてもフェスは過渡期を迎え始めていたじゃないですか?どのイベントに行っても同じようなラインナップで、イベント側もブッキングで違いを出すというよりかは、ホスピタリティーとしての在り方や、レジャーとしてどうあるかみたいに考えていると感じていたんですよね。その中でコロナがぶつかってきて、一回休戦状態になったのだけど、それが少しずつ復活してきて、いまフェス同士もそこの戦いが再開し始めている中で、どこに投資するのかがとても面白くなってきているなと思っています。結構行くイベントごとにステージの演出のスペックに差があるとも感じています。
佐々木:全然違いますよね。
飯室:そうなんですね。
柳井:今年はこの2年の回収も含めて利益を取りに行ったんだなというイベントもあれば、ここで利益よりも投資して演出面で他所より差をつけようとしているという経営判断ベースのものが見えてくるので結構面白いです。
佐々木:面白いですよね。それが結構あからさまなんですよね。「ここまでエグいことするの?」とかもあったりして、それでがっかりすることもあれば、頑張っているなと感じるイベントもあります。
飯室:ひょっとして、それはお客さんもうっすら気づくレベルだったりしますか?
柳井:そうですね。言語化できなくても記憶に残っているはずです。
飯室:空気感としてあるんですよね。
柳井:やはり誰が出ていても、例えば僕ら世代だと初めてフジロックのGREEN STAGEのあの光景を見たときの高揚感とか、非日常感があるじゃないですか?あれが屋内フェスだとしてもどんな場所であったとしても、「お祭りにきたぞ」という体感を与えられている方が強いだろうなと思ってしまいますね。
飯室:なるほど。
佐々木:非日常ですからね。
飯室:まさに。それをお客さんに与えるのはもちろんだけど、出演していただくアーティストのみなさんにも記憶として持って帰ってもらうということですよね。
佐々木:そうですね。なんならとてもシビアかもしれません。例えばケータリングの内容一つとってもそこにツッコミが入りますからね(笑)。
柳井:(笑)。
RUSH BALLはストイックにライブハウスシーンを盛り上げるための、その年一のお祭り
飯室:それでいうと、まさにRUSH BALLのお話をしたいなと思うのですが、全国津々浦々で、THE ORAL CIGARETTESも04 Limited Sazabysも出ていないフェスがないんじゃないかというくらいたくさん出てきた中で、RUSH BALLはどういうフェスだと思いますか?
柳井:それでいいますと、おそらくスタンスは変わっていないと思います。RUSH BALLは、まとめられてプロモーションするときに"夏フェス"と呼ばれるのを拒んではいないと思うのですが、おそらく自分たちからは"フェス"とは言っていなくて。ライブハウスのイベントの延長線上にあるものとプロデューサーはスタンスを持っていると思います。だから
ステージも2つにとどめていて、結構わかりやすくメインのステージと、ATMCというこれからの若手が出演するステージというその範囲にとどめている。関西でもイベントが増えたので、その中でストイックにライブハウスシーンを盛り上げるための、その年一のお祭りという感覚なのではないかと思います。
飯室:まさしくですね。佐々木さんはどうですか?
佐々木:個人的には柳井さんと同じ意見で、ライブハウスの延長線上にいるイベンターさんがしっかりイメージされた、若手と中堅、大物のバランスが上手く組み合わさったイベントだなと感じています。そういうところはもちろん理解しているのですが、04 Limited Sazabysに関して言うと、実は今年、出演が2年目なんですよ。これ言っていいのかわからないですが、RUSH BALLはGREENSさんの主催のイベントで、関西のGREENSさんが担当するアーティストさんであったりとか、そのアーティストさんが今後羽ばたくためのきっかけとなると思っています。ですが我々04 Limited Sazabysのイベント会社はキョードー大阪なんですよ。キョードーのアーティストが出るというのは正直あまりないと思います。メンバーも、もともとプライベートで遊びに行っていたイベントで。
飯室:そうですよね!
佐々木:「いつかは出たいよね」という話だったんですけど、「ごめんね、ちょっとうちキョードーさんなので...」というので、関西の他のイベントには出させていただいていたのですが、RUSH BALLだけずっと出れなくて。ただこのコロナ禍を経て、やっぱ関西のイベンターさんのしがらみを抜きにして、界隈をしっかり盛り上げなきゃいけないというプロデューサー力竹さんの認識もあったと思うんですよね。そこに対してどういうロックバンドが必要か、どのシーンのどういうロックバンドが、このイベントを構成する一員でいてほしいかとなったときに、04 Limited Sazabysが必要だと思っていただけたと思うんですよ。それがすごく嬉しかったです。
飯室:今年の2日間のラインナップを見て、それをすごく感じるんですよね。GREENSのプロデューサーの力竹さんが「今年の2022年のRUSH BALLをもって、一歩進んでみようぜ」というために、必要な人たちに集まってもらったラインナップという感じがします。
佐々木:そうなんですよ。そのロックシーンを進めるための気合いみたいなのがすごく感じられます。
飯室:そうですよね。RUSH BALLは主催者側のGREENSが、あるいは力竹さんがしっかりアーティストの背中を押して、みんなステージに出ていくみたいなイメージがあります。
佐々木:やっぱりイベントにおけるプロデューサーって一番メッセージを発信しなくてはいけない立場で、そこに対して勇気をもって前に進んでいる、メッセージを発信し続けているという意味で、他にはないイベントなのではないのかなと思います。
柳井:前段としてせっかくの裏方のインタビューなので言わせていただきますと、さっき言いましたメディア主体のイベント、アーティスト主体のもの、イベンター主催のものと大きく3つに分けたとして、イベンターさんって各地域にいていろんなアーティストを応援してコンサート業務をやられている中で、いくつか競合しています。例えば北海道のフェスで言ったらJOIN ALIVEなのかRISING SUNなのかみたいなところであったり、大阪で言ったらRUSH BALLなのかジャイガなのかOTODAMAなのかっていう。それぞれイベンターさんの主催ものですが、やはり担当しているアーティストをしっかりイベントでもプロモーションするという側面がある中で、どれくらい自社の担当アーティストをブッキングするのか、他社のアーティストもブッキングするのかというのも一つ問われるところといいますか。
飯室:それは地域性とかもありますもんね。もともと凌ぎ合っている感じは、ライブハウスでも結構ありますよね。
柳井:もともとAというイベンターで働いていた人が、Bというイベント会社を作って、その2社が競合しているストーリーもあったりするんですよ。その独立するタイミングで、その人についていくアーティストもいれば、もとの会社に残ったりするアーティストもいたりとか、そういう社会性を抜きにしては語れないというのはあります。ただ対お客さんで言うと、やっぱりある程度そこがシャッフルされていた方がいいんですよね。
佐々木:言ってしまえばお客さんは裏側を知らなかったりしますからね。大人のエゴだったりするところもあるから。そういうのが散見されていて、「そういうことしちゃうのか...」とかあったりしますけどね。
柳井:どちらも面白い感じはするけどね。もちろんそこまで興味がない人は、さらっとアウトプットされるものをそのまま楽しんでもらえたらいいなと思います。でも「なんでこのイベントにはこのアーティスト出ないんだろう?」とかというのは、実は理由がないわけでもないじゃないですか。
佐々木:でも、うちは関西のイベント全部出たんですよ。
柳井:すごい!
佐々木:OTODAMA、ジャイガ、RUSH BALL、イナズマも出るし。京都大作戦はゲスト参加ですが。
柳井:サマソニの大阪も出てなかったっけ?
佐々木:サマソニも出ましたね。なので関西のイベンターの大型フェスにほとんど出たんですよ。
柳井:すごいですね。
佐々木:あとHEY-SMITHの主催のOSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVALにも出ます。
飯室:そう考えると04 Limited Sazabysの存在感はすごいですね。
佐々木:キョードーの方から「(こういうことはあまり)ないことですよ」と言ってはもらえましたね。だからクロスオーバーし始めたんだなという印象はあります。
ハブに上手くなれているからこそ全国津々浦々呼んでいただけているのかな
飯室:04 Limited SazabysもTHE ORAL CIGARETTESもそうですけど、自分たちでもフェスを作って行っている側でもあるじゃないですか?大人の事情もあるでしょうけど、その垣根を越えたり、もっと気持ちでアーティスト同士が繋がったりとか、呼び合ったりとかしていますよね。
佐々木:先ほど柳井さんがおっしゃっていたイベンターさん主催のフェスはどうしてもしがらみがあったりするので、逆に越えたいんですよね。なので「そことそこを混ぜ合わせたい」みたいなところもあって、イベンターさんに「絶対にこのアーティストを見せたい」とか、そこも実は裏テーマであったりするんですよね。
飯室:たしかに04 Limited Sazabysは発信していっている側だなと感じています。新しいスキームを作りたいんだというのも感じます。
佐々木:YON FESはこのフェスならではにしたいと思っています。ぶっちゃけて言うとそこもエゴではあるのですが、やはりフェスシーンはブッキングが固まって、みんなで巡業している感覚がありました。それこそ柳井さんと会う時に「次どこ?」と聞いて、「あ、次も同じだね」という会話をしていたりとか。それはそれですごく楽しかったんですけど、フェスシーズンを盛り上げているバンドイメージでいくと、ある一定のフェス黄金世代的な層があったとして、それがそのまま持ち上がっている印象があったんですよ。別のゾーンの部分がぽっかり空いてしまっているんですよね。そこはしっかりここで繋げるようなブッキングをメンバーとも意識しています。
飯室:いい話ですね。
柳井:あとシンプルに(出演バンドの)メンバーさん含めて楽しんでいるんだろうなと感じています。いわゆるメロディックパンク系譜にプラスして少し歌モノのバンドというところで商品棚に置かれることが多いバンドが出演しているのかと思いますが、やはり音楽性の幅も広いですし、SPECIAL OTHERSを呼んでいたりとか、実際メンバーさんのリスナーとしての音楽の興味もしっかりと反映されていて、自分たち主催で地元でやるからこそ、ファンともそういうのを一緒に体験できる場を楽しんでいるんだろうなという意味でも、とてもいいイベントだなと思いました。
飯室:オーディエンスにも伝わりますからね。しっかり気持ちがあって成り立っているモノなんだなと感じました。Hi-STANDARDに憧れた世代ですから(笑)。目指すのはAIR JAMなんですよね。
佐々木:本当にそうです!ぶっちゃけ僕もAIR JAM世代なので。そういうのをメンバーと体験できているのはありがたいです。AIR JAMって言ってしまえばカルチャーじゃないですか?
飯室:わかります。
佐々木:そのカルチャーを作れるといいますか。04 Limited Sazabysはハブになれるバンドなんですよね。ギターロックもラウドもパンクも、ポップスもいけるみたいな。
飯室:なんならアイドルもいけますよね。
佐々木:そうですね。そういったところのハブに上手くなれているからこそ全国津々浦々呼んでいただけているのかなと感じています。
飯室:なるほど。THE ORAL CIGARETTESも2019年に泉大津で野外フェスを実施して、また今年さいたまスーパーアリーナでやりますよね?
柳井:一つ、そのPARASITE DEJAVUについて話しておきたいのですが、まずPARASITE DEJAVUがフェスなのかどうかの定義はいいんですけど。
佐々木:すごくいいイベントだった。
柳井:あれを2019年に大阪の泉大津で開催して、「これは毎年は絶対しんどうそうだな」と思って。
佐々木:ヒイヒイ言っていたよね。
柳井:とにかく大変だというのもあるし、果たして自分たちのPARASITE DEJAVUは、1箇所の固定の場所で毎年フェスティバルっぽいものをやるという、そういうカルチャーなのか否かみたいなところで言うと、たぶんTHE ORAL CIGARETTESの拓也の思想はちょっと違っていて。
佐々木:僕もそういう理解でいました。
柳井:もし毎年同じ場所で開催すると、それがある種ルーティンワークになるじゃないですか?ブッキングはさておいて、運営面などがルーティンにハマっていくことが、他のクリエイティブへの制限にもなると思った、みたいな話をしていました。それで、いろんな文脈があって、今年はさいたまスーパーアリーナでやることになりました。でも、別の場所でやるんだったら、毎年同じところでやったほうが楽かも...とも思ってはいます(笑)。
一同:(笑)。
佐々木:毎回オペレーションが変わってくるもんね。
飯室:でも、僕はそれをさっきTHE ORAL CIGARETTESのあきらから聞いて、「すごい素敵じゃん」と思いました。自主企画が毎年キャラバンするという。でも、素敵だとは思ったけど、その本音も実は聞きたかったんですよ。
柳井:そのトライアルの面白さでもあるのですが、やっぱり会場や地域の住民の方々の考え方も関わってくるし、そういう意味で言ったら地域の自治体や行政も関わってくるから。毎年同じ場所でやるとなると、いい意味で関係値が積み上がっていくので、ゼロイチではない部分も出てくるんですよね。そうなんですけど、来年どうなるかはまだお知らせしていないですが、場所を変えてやっていくというのは、面白さと共に、労力がすごいなと改めて実感しています(笑)。
飯室:それはそうですよね...。
佐々木:傍から見ていてそれは思っていて、PARASITE DEJAVUが他と何が違うのかというと、アーティスト主催のイベントではあるものの、それよりも僕は、アーティストのクリエイティブの場所という印象がありました。それこそ装飾もそうですし、ジングルなどもクリエイティブで、拓也くんのアウトプットなんですよね。それを昇華した上でのイベント運営なので、俺だったらゲロ吐いていると思う(笑)。
飯室:(笑)。ゲロなのか、血なのか...。
佐々木:柳井さんはゲロ吐いてるだろうなと...。
柳井:演出はもちろん自信もあるし、あえて自分たちでも言っていこうと思うけど、ステージスペックであったり、演出面の話も出ましたが、やっぱり提供したいものが日常感ではないものなので、プランが激しいんですよ(笑)。
佐々木:ステージに大きいモチーフがあって、それが吊るされていて。僕だったら却下するかも(笑)。
飯室:だってそこら中のトラスにいろんな装飾がありましたよね。これ誰が飾ったの?と思いましたよ。
柳井:たぶんアーティストに見せたくない演出としては結構トップクラスだよね(笑)。
佐々木:うちのメンバーもやりたくなっちゃうじゃんと思ったり(笑)。やろうと思えばできるんですね、みたいになるから(笑)。
柳井:そういう部分で言うと、おそらく他のイベントとは完全に違うビジネスモデルでプランニングしているので、いわゆるチケット代だけの収支ではなかったりとか。コロナで加速はしましたが、例えば、券種をしっかりと分けて、いい席は高い値段とか、通販で事前受け取りでサービス価値を高めるけど、その分少しお金をいただきますとか。そういうのをいろいろと試行錯誤しながらやっています。
飯室:面白いですね。やはりお二方とも自主でフェスやイベントをやられているから、すごくいろんな目線があって面白いです。これからどうなるのか楽しみにしています。
柳井:でも、あれだよね、夏フェスの同じ日とか前後かぶって、現地の居酒屋で飲めるとかが一番楽しいですよね。
佐々木:それが一番いい!
飯室:本当にそういうの楽しいですよね。地方で「最近どうなの?」みたいな会話を飲みながら話すのもいいですよね。
佐々木:僕がフェスに来る理由の5〜6割強がその理由です。
飯室:僕もそうですね。人に会いにいくようにしているというか、顔が見たいという理由で行っていますね。
佐々木:もちろんライブの内容を精査したりとか、セットリストやお客さんの反応であったりとか、物販に行くというのは大前提なのですが、他のチームがどういう戦い方をしてくるのか、しているのかというのを、顔を見たら温度感とかわかるので、それもなんとなく見に行きます。
飯室:なるほど。フェスはそういう交流の場でもありますからね。
佐々木:GENが言っていたんですけど、このコロナ禍でこういう状況下になって、2021年くらいからイベントやフェスが再開されるようになったのですが、本当に象徴的だったのが、例えばフェスに行った時に食券もらってお弁当をもらいに行って、楽屋では黙食ですと言われて食べて帰るというのがどうしても解せないと。これはフェスじゃないと。もちろんその事情は理解できるのですが、2022年になってようやく俺たちのフェスが帰ってきたという感覚があります。たしかに、お客さんには昨年と何も変わり映えはないことなのかもしれませんが、やっているこちら側からすると、ライブをして、さっと帰っていくというスタイルでは、フェスに参加している感覚はあまりなかったですね。
飯室:なるほど、そうですよね。
柳井:コミュニケーションが取れるようになったのが大きいですよね。
飯室:嬉しいことに今年の景色は「RUSH BALLだ、やっと帰ってきた」と感じましたね。
佐々木:素晴らしいことですね。
取材・文:飯室大吾
撮影:宇都宮勝
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