SENSA

2020.12.23

Keishi Tanaka、立ち止まることなく進んだ2020年と最新ミニアルバム「AVENUE」に込めた想い。

Keishi Tanaka、立ち止まることなく進んだ2020年と最新ミニアルバム「AVENUE」に込めた想い。

2012年からソロ活動をスタートさせ、毎年コンスタントにリリースやライブを行ってきたKeishi Tanaka。だが、2020年は新型コロナウィルスの流行でライブやツアーの延期が余儀なくされた。そんな中でも配信限定シングルのリリースや、音楽仲間と共にSNSで公開制作された楽曲「Baby, Stay Home」への参加、ラジオDJの中島ヒロトと一緒にnote内でのラジオ番組のスタートや音源販売、そして12月には約1年半ぶりのミニアルバム「AVENUE」のリリースなど、立ち止まることなく進んだ1年だった。今回は2020年の活動を振り返りつつ、最新作「AVENUE」の制作や楽曲について下北沢にある「お酒と洋風ごはん おむかい」にてインタビューを行った。


─2020年は、本当にコロナ禍で予期せぬ事態になって、Keishiさんにとっても予定も大きく変わってしまったと思いますが。


本当ですね。コロナ禍を実感しはじめたのは、2月中旬ぐらいから。ライブハウスの自粛みたいな声が聞こえてきて、実際に影響が出たのは、3月7日に予定していたライヴが最初に中止になって。その頃にはすでにいくつか他にも中止の連絡が来ていて。

─ただ、当初は世の中の風潮も、1~2カ月ぐらい耐えれば、また普通に戻るかも?っていう楽観的な感じもありましたよね。


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そうですよね。でも、3本くらいライヴの予定が飛んだ時に、もしかしたらこの先ずっとライヴができないかもしれないって、すごく不安になったんですよね。3月初頭の頃は、一番気持ちが沈んでたかもしれない。僕は普段から、あまり不安な感情を外に出す方ではないんですけど、SNSにそういう想いをちょっとだけ綴った事があって。その投稿に、今までと違うコメントが入ってきて。それで目が醒めたところはあって。早めにスイッチを切り替えられたのは大きかったかもしれないですね。

─実際、自粛期間中はどんなふうに過ごしていたんですか?


Kan Sanoくんとコラボして制作した「The Smoke Is You」というシングルが、4月15日にリリースされることがもともと決まっていたので、それに関してやることが4月に入ってからも結構あったんですよね。それにも救われました。あと同じ時期に「Baby, Stay Home」っていう、同世代のミュージシャンと一緒にSNS上で音楽を作って、それをライヴハウス支援に当てるっていう動きが一瞬で盛り上がったんです。「The Smoke Is You」と「Baby, Stay Home」の2曲によって、自分の心が保てたところはありましたね。



─何かしらやることがあったおかげで、気持ちをやり過ごせたところもあった、と。


その経験から、自分が何か動くことが大事なのかなって思えるようになったんです。僕の周りには、サポートしてくれるミュージシャンやスタッフもいるし、なんでもいいから動いてみようって思って。だけど、大きなことはできないし、何をすればいいかと思って、noteにアカウントを開設して、そこで音源をアップする"ホームレコーディング"という試みをはじめてみたんです。

─側からみると、Keishiさんは自粛期間中もあまり止まっている印象が受けなかったですね。


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それ、よく言われるんですけど、自分の中ではあまり頑張ってた感じはなくて。どちらかというと、普段とはあまり変わらない考え方ではあって......たまたま、それがライヴじゃなかっただけというか。ライヴの中身に意識を集中して時間を使ってた割合を、それ以外の部分に使ったから、そう見えたんだろうな思います。だから、あまり無理してる感じはなくて。
あと取材とかでも「どこからそのモチベーションが来てるんですか?」って言われたりするけど、それはある意味で誤解で。このご時世でモチベーションが高いはずもなく......それなりに悩みもしたし、いろいろあったし。気持ちを切り替えるために何か欲していたし、それはある意味で何でもよかったんです。

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─可能性があるものは何でも試してみて、それをとにかく形にしていった、と。


そうですね。小さな楽しみを探していたというか。だから、なんでもよかったんですよ。自分とまわりの仲間や、お客さんがちょっと面白がってくれればいいかな、ぐらいの。それぐらいしかやることがなかったし。でも本当、たまたまそこにリリース予定があったとか、noteでやれることが見つかっただけの話で。もちろん出来ないんだったら、無理して絞り出さなくてもいいとも思ってたんです。実際その時期、僕のモチベーション自体も高かったわけでは決してなかったですからね。ずっとライヴ活動をモチベーションにして生きてきた人間ですから、何かのきっかけが欲しかった。

─たしかに今までは、ライヴ活動を中心にやってきて、その合間に制作期間があって。新たに作品をリリースしたら、それをライヴで広げていくことが目的でしたからね。


コロナ禍ではじめた動きが、それまで続けてきた活動の代わりになるとは思わないけど、すべてを諦める訳にはいかなかったし。その中で何ができるか。小さいことが多くて、今までやろうとは思えなかったことも、やろうと思えたんです。たとえば、自分でラジオを配信してみるとか。それは今もnoteで継続中なんですけど......そういうのも、これまでの活動を続ける中では思いつかなかったことだし。そのラジオ自体も、無理をしないっていうのもテーマなんです。どれぐらい気楽にやれるか。インスタライヴとかもそうですけど、あまり作り込まずにやろうと。あと、外でライヴしてみたら面白いんじゃないかって思いついて。僕はアウトドア雑誌で連載してたりもするので、お客さんと一緒に山登りして、下りてきてからライヴをやるっていう。今までそんなの考えたことなかったけど、今年はそれぐらいあってもいいんじゃないかなって。みんな楽しみが少なくなった中で、一緒に楽しめることを作ろうとするのも当然かなと。

─その山登りライヴは実際やったんですか?


やりました(笑)。自分がやってる"ROOMS"っていう小規模の会場でアコースティック形式のライヴの野外ヴァージョンとして、"ROOMS GARDEN"と名付けて。朝の8時ぐらいから上りはじめて、3時間ぐらいかけて行って帰ってこれる感じの、ちょうどいい山を選んで。山から降りてきて、僕はリハをして、みんなには昼ごはんや街歩きとか自由行動してもらって。14時ぐらいから、アウトドアショップの屋上で弾き語りのライヴをやって。最後の曲ぐらいで、ちょうど集中力が切れるっていう(笑)。

─めちゃくちゃ楽しそう!(笑)。


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そのツアーも6本ぐらいしか出来なかったけど、夏ぐらいに思いついて。お客さんが我慢せずに観られる方法ないかなって考えて、野外であまり大きな規模じゃなくて。イベント自体も中止になる可能性があるし、お客さんも体調が悪かったらすぐキャンセルできるような形にしといて。結局、全会場とも野外で出来たんですけど。すごくやって良かったと思うし、お客さんも外であることで、ちょっとコロナのことも忘れられた感じもあったし、また来年もやってもいいかなと。やってもいいし、やらなくてもいいし、配信にしてもそうですけど、ひとつ手段を持っているっていうのはいいことだと思うんです。コロナ以降のこの状況を最悪だって思ってたけど、この春ぐらいから「最悪だ」っていうこともやめてて。もっと最悪なこと経験した人もいるだろうし、「最悪だ」って半年間言い続けるのも、なんか違うかなって。でも、別に使命感みたいなのはなくて、自分のためにやることが大事で。そういう意味では、今も音楽を続けられてるっていうことは、自分の心の持ちようがうまくいってるのかなって思います。

─さて、ここからは新作ミニ・アルバム『AVENUE』について聞いていければと思います。リード曲となった「Where You Know」は、サンプリングをもとにして作られた作品だそうですね。


この一年で作ってきた曲がいくつかあって、それを2020年中になんか出したいなと思ったんですね。次の年に持ち越したくないなっていうか、この気分を出しておいたほうが、来年また動けるかなって。それも自分の心を作るための、一つの方法かなと決めて。で、新曲をもう一曲作ろうと思って。だけどライヴもツアーも組めない中で、これまでとは異なるモチベーションが必要で、だったら今までとは違った作り方をしようと。作ろうと思ったのが夏ぐらいで、レコーディングも出来る状況ではあったんですけど、スタジオに8人とか集めてやるっていう気分に、まだ自分がなれなくて。なので、トラックを作って歌うという方法を思いついて。さらにサンプリングだけで音楽を作るっていうのを、このタイミングでやってみようと。そこでMop of HeadのGeorgeに声をかけたんです。



─具体的にどのような作業を進めていったんですか?


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サンプリングといっても、たとえばアヴァランチーズみたいに、過去のレコードや素材からの引用でコラージュしていく、というやり方ではなくて。時間もあるし、サンプリングする元の音源から作れないかなと思ったんです。架空の曲のフレーズを作って、それをチョップして組み立てていくような。Georgeに相談したら、彼も面白がってくれて。それが何に役立っているかといえば、僕の遊びの部分みたいなね。それが新しいものを生み出すというよりは、僕が制作する一つのきっかけとして必要だっただけで。そこで曲作りに対するモチベーションは一つクリアして。
Georgeとは、サンプリングだけど、今っぽくならないようにはしたいねって話していて。90年代や00年代の、例えるならカニエ・ウエストみたいな、ちょっと古い感じがいいかなって思ったんです。

─ずっと同じループで起伏が少なく進んでいくのではなくて、わかりやすいフックやサビも対比として入ってるようなね。


そういうことをGeorgeとあれこれ会話しながら作っていく作業は、すごく楽しかったですね。狙った感じがあまりないというか。トラックメイカーが得意とする、欲しい音を作ってみて、それが違ったら変えていくっていうやり方が新鮮でしたね。

あと今回は、リリースする目的自体もいつもとちょっと違っていて。それを持ってツアーを回ったりして作品を広めたり、新しい表現を切り拓くという考えもなくて。正直、自分の中でも喰らってる部分もあったし、新しい人に対してそこまでメッセージを打ち出す心の余裕は無かったから。ただ、自分のことを好きでいてくれてる人や、今まで出会ってきたり、これまで応援してくれてきた人に向けて、今の状況に対するメッセージを伝えるだけでも今回はいいかなって思ってて。歌詞にしても、これまで使ってきた言葉を使ってみるとか、そんなに遠いところに感じないようにとか、そういうのも心がけて。

─言ってみれば、そこも過去の自分からのサンプリングでもある。


そうですね。自分自身も、こんなに立ち止まったことなかったし、今までのことを振り返る意味ではいい時間でもあったかなとも思うから。歌詞の中に、"Sweet and Still"っていう、Riddim Saunterの代表曲が入ってたりとか。それも遊びみたいなもんなんですけど、そういうことでも喜んでくれる人がいたらいいなって。自分も含めて、そういう一年だったし。そういえば、自粛期間中に、意識的にではないんですけど、Riddim Saunterの過去のライヴ映像を観ることがあって。そんなのも今年ならではだなって思いますね。

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─ソロになってから、Riddim Saunterのライヴ映像を観ることなんてなかったんじゃないですか?


いやぁ、観ることはないですね(笑)。観ようと思う理由がないんで。だけど、ステイホームで暇つぶしに観た、みたいなのもあって。そういうエッセンスも「Where You Know」にちょっとだけ入ってたりしてます。

─今まで聴いてくれた人や、応援してくれてきた人たちと、繋がる部分や共有できる部分を振り返るメッセージというか、Keishiさんからのお便りみたいな感覚はありますね。


そうですね。夏ぐらいに作っていた時点で、歌詞がコロナ禍や今年のことに引っ張られることはわかってたから。じゃあ、思いきり引っ張られてやろうみたいな心境になってて。どうせ引っ張られるなら、一番言いたくて言えなかった言葉を書こうと思って。それは自分だけじゃなく、世の中的にみんな何を我慢してたか考えた時に、「会いに行く」とか「行くよ」とか「来てよ」とか、それぐらいのことが一旦ゼロになった訳じゃないですか? 少しずつ戻っては来てるけど、まだ不完全で。いつかは絶対にそういう言葉が言えるようになりたいっていう願いまでを書いてる。歌詞自体も時系列になってて、聴いた人それぞれの状況や考え方もあるから、その人がどのへんにいるかを想像しながら書いていきました。

この曲のテーマはそういうところにあるんですけど、じゃあそれを抜けた先に自分には何があるのか考えようと思って、どういう世界に行きたがってるのか。それが一年前に書いた「One Love」って曲なんですね。

─「One Love (AVENUE Version)」はバンド編成でのアレンジで新たにレコーディングされています。


2019年に『BREATH』ってアルバムを出して、そのリリースツアーを回って感じた、自分の居場所をテーマに歌った曲なんです。1年前にピアノ弾き語りヴァージョンでリリースして、2020年はバンドアレンジでやっていこうというヴィジョンがあった。その幕開けとして4月28日に予定していたワンマンで発表しようと考えていたんですが、ライヴが中止になって。1年前からワクワクしながら計画してたことができなくなり......。じゃあ、このまま出来ないならバンドでレコーディングしちゃおう、と。ツアーで全国を回っていた時の感覚や、その場所に、自分は戻りたがってる。それを1曲目、2曲目の繋がりで表現したかった。そこまで決めた後に『AVENUE』ってタイトルをつけました。これから向かう道のりとか、一度は立ち止まったことも含めて、今自分がどういう通り(Avenue)に立ってるのか。それが、この作品自体のテーマになったと思います。



─この曲はもとより、アルバム全体的に印象もそうですが、今まで以上に寄り添うような感覚が滲んでくるというか。


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そういう感情はあったかもしれないですね。コロナのこともあって、遠い未来とか想像できなくなったんですよね。今も出来てないし。距離感としても、すごく自分の近くのことしか出来なかったし。でも、それしかないかなって思ってて。みんなそれぞれ自分の家族とか、大切な人のことにとりあえず思いやりをもって。それが場所によって変わっていくと思うんです。ライヴハウスでいえば、隣にいる人や、同じ場所で時間を共有している人たちがそういう存在になったりする。場所や日によって変わるけど、近くにいる人をまずは思いやろう。それしか想像できなかった自分もいるし、人によってはもっと遠くのことまで考えてる人っていると思うけど、それは人それぞれが持ってる余裕だったり、立場によって変わってくるとは思うんですけど。自分の中の余裕はこれぐらい。寄り添うことしか出来ませんけど......っていう。だけど、これを2020年内に作れたことで、少しモチベーションは上がってきてて。みんなにとっても、そういうものになればいいなって思うんです。

─「Where You Know」や「One Love (AVENUE Version)」を筆頭に印象に残ったのは、コーラスの存在感。ゴスペルやソウルからの影響を感じるコーラスアレンジが、救いや祈りを表現しているように感じたんです。


ここ数年、自分の中のモードでもあって。もちろん、完全にゴスペル音楽に振り切りたい訳ではないんですが。だけど、希望や光も欲しいなと思っていたし、コーラスがその効果的なアクセントになるかなと。あとはやっぱり、Achicoさんっていう、コーラスを長くやっている人が身近にいて、彼女に今回も歌ってもらおうというのが最初からあったから。そこも想像して曲作りができたのもあります。Achicoさんは、もともとドゥーワップ出身で、コーラスグループみたいなのが根底にあるんですよね。Ropesとかでは違う歌い方をしているけど、歌の表現の幅が広いんですよね。ヴォーカリストとしても素晴らしいけど、コーラスとしても素晴らしくて。曲のテーマを聴いてから声の出し方も考えてくれる。僕にとってはすごくやりやすいコーラスですね。
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─今回収録されてる曲は制作方法が全部バラバラですけど、コーラスによって一貫したカラーが生まれてますよね。


声ってやっぱり重要で。たとえば僕が全部歌ってるだけでも、一つのシーンみたいなものが見えてくる。それは3rd Album「What's A Trunk?」を作った時にテーマにしていて。その作品も、結構いろんな人にアレンジしたものだけど、その幹みたいなものが声だという。今回も、それに近いかもしれないですね。



─あと、聴いていて感じたのは、Keishiさんの声が、以前よりも逞しくなっているというか。どっしりした印象に聴こえました。


あ、そうですか? なんだろう年齢かな?
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─それか、あちこちの山を登っている間に鍛えられたのか。


知らない間にね(笑)。でも、いいことではありますよね。

─3曲目の「The Smoke Is You」はKan Sanoさんとの共同作業で、2020年4月に配信シングルとしてリリースされました。


制作時期は2月~3月ぐらいだったので、自粛前ではあったので、なんとか間に合ったんですけど。だけど、2020年春からのこの状況を生きてこられた、重要な曲ではあって。内容こそ、そんなに関係がないけど、歌詞の冒頭に出てくる"散々なニュース 繰り返す腑に落ちないワード/崩れたバランス 息を吐き また始めるダンス"ってフレーズは、歌詞がちょうど3月初頭ぐらいに作っていて、おやって感覚はあったんですよね。こんなに長く続くとは思ってなかったけど、なんか世の中続きそうだなって。1行目と2行目を、今の時代のことをメモったんですよ。そこからわーっと書けて。すごいタイミングで出来たけど、コロナから制作しようってはじまった曲じゃないから。

─この曲がミニアルバムの真ん中にあることで、その前後の曲の時代性に意味が出てくる。


2曲目の「One Love (AVENUE Version)」から、曲の並びが時系列になっていて。最後の「揺れる葉 feat.oysm」からまた1曲目の「Where You Know」に戻る。そのループが、自分の一年を表してる。

─Kan Sanoさんとの制作はいかがでしたか?


他の人に作曲を頼むのが初めてだったんです。でも、やるからにはあまり自分の意見を入れない方がいいなって思ったので、好きにやって欲しいっていう旨を伝えて。シングルとしてリリースするから、トラックなんだけど生音は意識して欲しいとか。打ち合わせでそれぐらいのことを話して。後日談として、僕が「初めて他の人に頼む」っていうのを言いすぎて、結構プレッシャーはあったって言われたんですけど(笑)。だけど、Kanちゃんから曲のデモが来て、そこに歌詞をのせて返して。そこからいいね、いいね、ぐらいのキャッチボールぐらいで終わって、あとはレコーディング当日に......って感じで、制作自体はスムーズに進みましたね。

─二人とも世代が近いし、お互いにブラック・ミュージックからの影響も強く受けていたりと、共通言語も多かったでしょうしね。


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そうかもしれないですね。自分にとってはすごくいい時間だったし、次に役立つ部分もたくさんあって。彼はグルーヴを効かせるために、考えて引き算してるなって。僕はどちらかというと、いろんな音を入れすぎちゃうタイプで。最近は意識的に引き算するようにしているけど、それでもKanちゃんの音を聴くと、やっぱりまだ多いなって思う。

それこそ、Kan Sanoって今はいろんなところで名前を見るけど、一緒に作業してみてすごく附に落ちるっていうか。本当に素晴らしいミュージシャンだなって思いました。

─そのミニマルなグルーヴが効いた曲の前後に、大人数のバンド編成の曲があるのも面白い構成で。


4曲目の「Fallin' Down」は、もともと自粛中のホームレコーディングで作った曲なんです。みんなからデータをもらって。それぞれの環境で録音したものだから、結構音が悪いパートもあるんだけど、それもそれで面白いかなって。それはnoteで公開したんですが、今回あらためてバンドでスタジオに揃って録音したんです。アレンジはほとんど変えてないけど、ベースとドラムが顔を揃えて演奏した時点でグルーヴも変わるし、聴かせたいものが出てきたことによって、音がシンプルになっていったんですね。ホーンセクションもいるし、派手になりそうだけどそうならなかったんですよね。それは自分の中で面白かったですね。

この曲が生まれた背景はちょっといろいろあって。"ミュージシャン・イン・レジデンス 豊岡"っていう取り組みの中で、高校生と何かを作り上げるテーマがあって。3月に行われる予定だったライヴに高校生を招待することになって、卒業シーズンだから卒業をテーマにした曲を作ってみたんです。だけど、それが無観客ライヴに変わったから、高校生も来なくなって。だから、この曲をそこで披露するのもやめたんです。お蔵入りになりそうだったけど、終わりと始まりみたいなテーマがコロナ禍で感じたことと、ちょっと重なってきましたね。

─そしてラストを飾るのは、美しく静かな一曲「揺れる葉 feat. oysm」。


この曲は、元Regaのギタリストで、今回取材場所にさせてもらってる「お酒と洋風ごはん おむかい」の店長でもある四本晶が在籍しているインストバンド、oysm(オヤスミ)の「HA」という曲を元にしているんです。このインスト曲に新たに歌詞とメロディーをつけたのが、「揺れる葉 feat. oysm」です。

oysmの最新作『oyasumi_03 - EP』リリース!視聴はこちら





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─この曲は、どういうきっかけで生まれた曲なんでしょう?


6月に予定していたツアーを中止にするっていう発表をしなくちゃならないときに、それと一緒にいいニュースも出したいなって思ったんです。発表まで一週間ぐらいしか時間がなかったけど、それを思いついて。不安な時間が続いてるし、よく眠れる曲を作れないかなってことで、そういえば身近にoysmってバンドがいたな、と。それこそサブスクにのせるのも間に合わないスピード感だったけど、自分で発表できるプラットホームを持っていたから出来たっていうのもありますね。

元の楽曲の良さを活かすために、曲をチョップしたりするのもやめて、いかにこの構成のまま歌をのせられるか。演奏の合間を縫ってメロディーを作っていくって、普通にはない作業だったけど面白かったですね。インストバンド特有のテンションコードとかが入ってくるんですよね。普通ならメロディーをのせにくいんだけど、二番では基本のメロディーに休符を入れることで、ちょっとザワつくようなメロディーラインになっていったりして。そこに引っ張られて、歌詞もできていって。風が静かな日でも、嵐が吹く日でも心が乱れることがある、だけど焦らず過ごしていこうっていう。そんな歌になりました。

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─5曲それぞれの世界はあるけど、この時代や状況、そしてKeishiさんが考えていることとつながる部分や重なる部分があって。さらに俯瞰して、このアルバム全体を見つめ直すと、また新たに見えてくるものがあるような気がします。そして、この作品の発売日である12月23日には、ほぼ1年ぶりのワンマンライヴ"AVENUE RELEASE PARTY"が開催されます。


バンドセットでは今年の1月以来で、コロナ以降で有観客でやるのは初なんです。その間に弾き語りライヴはやってきたけど、自分の考えもあって、バンドセットで無理してやることはないとも思って。だけど、夏前ぐらいに年末にバンドでの有観客ライヴをやろうってことになり。やるなら、その日を区切りに違う展開をメッセージとして打ち出したいので、最初は配信もやらないつもりだったんです。だけど、また状況も変わってきたし、あとは来たくても来れない人もたくさんいる訳で。なので、考え方も変えて。配信もして、アーカイヴも残して、それが終わったあたりで、アルバムの表現を拡張するような紙の作品(『A SONG FOR YOU Vol.04 [AVENUE]』)も見られるようになったりと。とにかくワンマンも一本しか出来ないので、長く楽しめるものにしたいと思ってます。本当はもちろん、ツアー出来たらよかったですけどね。

─そこから2021年に向けての道筋も見えてくるかもしれないし。


まあ、長く付き合っていく感じだと思うんで。とにかく、焦らずに音楽を伝えられていけたらいいなと思ってます。


取材・文:宮内健
撮影:ヤオタケシ

取材場所:お酒と洋風ごはん おむかい
〒155-0031 東京都世田谷区9 北沢2丁目9−22−1F Eiko下北ビル
営業時間 OPEN 16:00/LAST ORDER 22:00
@omukaitokyo



RELEASE INFORMATION

1『AVENUE』ジャケ写_re.jpg
Keishi Tanaka Mini Album 「AVENUE」
2020年12月23日(水)
KCRC010/価格:¥2,000

Track
1. Where You Know
2. One Love (AVENUE Version)
3. The Smoke Is You
4. Fallin' Down
5. 揺れる葉 feat. oysm

視聴はこちら


「A SONG FOR YOU Vol.04 [AVENUE]」
2020年12月23日(水)
KCRC011/価格:¥1,500

詳細:
A2サイズ オリジナルポスター / 12月23日(水) 渋谷公演のライヴ映像ストリーミング視聴URL (映像は1/1から配信スタート予定) / ブックレット / ステッカー1種類封入
※オフィシャルウェブショップ、ライブ会場限定販売


LIVE INFORMATION

Keishi Tanaka presents [AVENUE RELEASE PARTY]
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2020年12月23日(水)
渋谷 WWW X
※バンドセットでの出演となります
OPEN 19:00 / START 20:00
ADV 4,000yen / DOOR 4,500yen (1ドリンク代別途)

-LIVE-
Keishi Tanaka

Vocal: Keishi Tanaka
Drums: Junpei Komiyama
Bass: Keito Taguchi (LUCKY TAPES)
Guitar: Akira Yotsumoto (oysm)
Synthesizer: Kazuhiro Bessho (Gentle Forest Jazz Band)
Tenor Saxophone: CrossYou (RIDDIMATES)
Trumpet: Chan Keng (videobrother / The SKAMOTTS)
Chorus: Achico (Ropes)

Guest: Kan Sano

<配信チケット>
PIA LIVE STREAMチケット受付URL:https://w.pia.jp/t/avenue-release-party/
アーカイブ期間 : 12/30 23:59まで

・通常チケット ¥2,500
チケット販売期間 : 12/9 12:00 ~ 12/30 21:00

・サポートチケット ¥3,500
チケット販売期間 : 12/9 12:00 ~ 12/30 21:00
※サポートチケットは、配信チケットとプラス1000円の投げ銭がセットになっているチケットです。
※通常チケットと配信内容の違いはございません。

・Mini Album『AVENUE』付きチケット ¥5,200 (配信チケット¥2,500、CD代金¥2,200、送料¥500)
チケット販売期間 : 12/9 12:00 ~ 12/17 23:59
※Mini Album『AVENUE』CD付きチケットは、12/23に主催者からCDをお届けします。
※通常チケットと配信内容の違いはございません。
※CDに関するお問い合わせは以下メールアドレスまでお願いいたします。
お問い合わせメールアドレス : kcticketinfo@gmail.com

チケット一般発売中!
チケットぴあ / ローソンチケット / e+ / LINE TICKET
※全て電子チケットのみの取り扱い

INFO:SMASH 03-3444-6751


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オフィシャルサイト
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