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2025.11.09
New Release Digest Part 1
みさと:11月3日週にフレンドシップからリリースの新譜、全20作品の中からPart-1をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。まずは、むにゃむにゃプラスチック。
金子:今回2曲目のリリースで、前回は「トーキョーディスティニーランド」というタイトルで、女性ボーカルをフィーチャーしてたんですけど、今回は中心人物のろんれのんくんがメインで歌っています。ソングライティングはやはり相対性理論とかを連想させつつ、ジャズっぽい雰囲気に、ゲームミュージックのようなサウンドとダンサブルなビートという組み合わせが面白い。セルフライナーノーツでは、"4つ打ちにしては結構遅めにあえてしていて、このバンドのテクいけどゆるい、みたいなイメージを作れたかなと思っています"とのことで、「確かに!」と思いつつ、でも4つ打ちってこれぐらいの、120ぐらいのBPMの方が踊りやすかったりするので、個人的にはちょうどいいなと感じました。
みさと:4つ打ちの良さというか、ハウスが好きな方にもフィットするし、ジャズな感じと緩めなダンスナンバーということで、間口が広かったイメージがあります。〈少ない僕の給料で君になにか、買ってあげる〉という歌詞で、「バイトバイトくん」というタイトルから想像できるような主人公と、その周りにある現状から生まれる感情までが透けて見えてくるような素晴らしい一曲でした。続いて、CISSE。EPです。
金子:ひさびさのリリースですね。改めて紹介すると、2021年に石川県金沢市で結成されたバンド。メンバー全員が大学在学中の2024年3月に自主レーベルからファーストアルバムをリリースしていて、そこから約1年半ぶりぐらいのリリース。作品紹介で"前作の楽曲の多様さはそのままに、今作はフォーク、パンク色が増した作品となっている"ということで、「なんてみじめなんでしょう!」を聴いてもその感じはすごくあって、やっぱりandymoriとかの影響力がこの世代の中で大きいなと改めて感じたりもしました。歌詞に関しては"混沌とした社会的情勢を悲観しながらも意思を表明する"ということで、青さというか、若いからこその混沌をカラッとポップに表現するという意味では、さっきのむにゃむにゃプラスチック。の「バイトバイトくん」とも...音楽性は全然違うけど、若さゆえの感情表現という意味では、ちょっと通じる部分もある気がしました。
みさと:「バイトバイトくん」は20代前半まで、そこから20代後半になると、この「なんてみじめなんでしょう!」がフィットしてくるのかなと思って、レイヤーな感じで聴かせてもらいました。自分が歳を重ねると、自分の未熟さという意味での青さに気づいてしまうと思うんですけど、何かしたいという葛藤もあったりして、令和の時代にヒットするような一曲だなと思います。さあ、そんなPart-1からどうしましょう。
金子:婦人倶楽部の新曲を紹介しようと思います。
みさと:素晴らしいですね。今回アルバムリリースです。
金子:プロフィールを紹介すると、2014年に新潟県佐渡ヶ島で結成、島に暮らす婦人たちが巻き起こすポップアートをコンセプトに、田舎の山奥からオシャレなライフスタイルを発信していると。メンバーはそこらで働く普通の婦人のため、顔を出しての活動を行っていない。
みさと:いいコンセプト。
金子:セルフライナノーツには、"前作から9年ぶりのセカンドアルバムで、メンバーそれぞれの環境も変わり、子育ても落ち着いてきた今日この頃、そろりそろりと活動を進め、やっとこさでアルバムにまとまりました"と。
みさと:いいなぁ。
金子:「なんじゃそりゃ?」と思う方もいると思うんですけど(笑)。
みさと:あはは(笑)。めっちゃ気になる!
金子:ムッシュレモンという方がプロデュースをしていて、その方は作家やアーティストとして長く活動してきた経歴がある方なので、その経歴を知っていると、この室内学的なアレンジの素晴らしさも納得かなと。そこに佐渡ヶ島をコンセプトにした独自の歌詞の世界も加わって、「トキ!トキ!トキ!」は文字通りトキが題材になってたり、いい意味でのアンバランスさが魅力になっているなと思います。
みさと:アルバムにはチェリストの徳澤青弦さんとか、若き日の君島大空くんなどが関わっていて、(それは)ムッシュレモンの力だったりするかもしれませんね。サウンドにボーカルが溶けていくようなバランス、1音1音逃してはいけないような演奏力が日本トップレベル。すごい聴き応えありました。リード曲の「トキ!トキ!トキ!」はトキにフィーチャーしてる曲なんですけど、トキの目線から佐渡ヶ島を見下ろしてるような気持ちになれる、そんなサウンドスケープで、飛んでるときの気持ちよさとか、優美さがサウンドメイクされてるなと私は捉えました。見守り続けてきたトキへの愛情も感じるような、そんな一曲になっていたかと思います。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。Hibiki Ichiharaさん、EPリリースです。
金子:彼みたいな、トラックメーカーでもあり、自分のパーソナルな心情を歌うシンガーソングライターでもあるって、そんなに多くはいない気がするから、個人的に好きなんですけど、今回のEPに関してはセルフライナーノーツで、"時間の経過そのものを描いています。衝動から始まり、喪失を受け入れ沈黙に沈み、そして余韻の中に溶けていく。それは成長でも再生でもなく、ただ変わりゆくことの記録のようなものです"とのことで。諦念の先で微かな希望を見つけていくような描き方はすごくリアルでいいなと思うし、ナイーブな世界観なんだけど、2分ぐらいでサクッと終わる、ある種の軽さもあったりするのは、トラックメーカーらしい感覚だなと思って、絶妙なバランスで今回も好きでした。
みさと:同感です。セルフライナーノーツを読めば読むほど、そして楽曲を聴けば聴くほど、ご自身の哲学を持っていらっしゃる方だなと思うし、言葉を持っているにも関わらず、トラックメイクの妙というか、語りすぎず、余韻を残しながら一つにまとめて、短い時間でアートとしてクリエイティブしていくというのは、彼のセンスだなと。続いて、POOLSもEPです。
金子: POOLSもやっぱりいいですよね。
みさと:いい!
金子:毎回同じ関西出身のKANA-BOONにも通じるポップセンスを感じます。今回の曲はセルフライナーノーツによると、ちょっとしたヒーローものの曲が欲しいというテンションで書き始めていて、君にたどり着くために平行世界を行き来するヒーローみたいなテーマの曲ということで、本当にアニメのテーマソングになったらヒットしそうなポップさがありますよね。むにゃむにゃプラスチック。でBPMの話をしましたけど、KANA-BOONはBPMを上げた世代のバンドだったりして、それで言うと、POOLSはその中間ぐらいの、ロックバンドらしく気持ちのいいBPM、速すぎず遅すぎずでよかったです。
みさと:今回ヒーローみたいなマルチバースの世界観ということで、言語を超えたタイトルの「♥️」になってるんですけど、それもマルチバースっぽいなと感じるし、サイバーパンク味もあって、ロック好き以外のファン層にも刺さるんじゃないかなと思って聴かせてもらいました。そんなPart-2からどうしましょう?
金子:児玉奈央さんとTHE BED ROOM TAPEのコラボ曲を紹介しようと思います。
みさと:こりゃまた良いコラボでした!
金子:FRIENDSHIP.からのリリースは初めてのお二方なので、簡単にプロフィールを紹介すると、児玉奈央さんは2009年からソロ活動を開始しているシンガーソングライターで、Kan Sanoさんとコラボレーションしていたり、toeの新しいアルバムにも参加していて。僕は先日toeの25周年ライブを観に行ってきたんですけど、児玉奈央さんは本編の最後の方にゲスト出演していて、めちゃめちゃ盛り上がってました。THE BED ROOM TAPEは景山奏さんのソロプロジェクトですけど、彼はNABOWAという20年ぐらいやってるインストバンドのギタリストでもあり、THE BED ROOM TAPEではトラックメイクをやっていて、川谷絵音くんとギタリストのIchika Nitoくんとichikoroというインストバンドもやっていたり、多方面で活躍している方。で、今回の曲はマスタリングがtoeの美濃さんということで、このプロフィールを読み上げるだけでも曲の説明になっちゃいそうですけど(笑)、ジャズやヒップホップを感じさせるトラックと、児玉奈央さんの素晴らしい歌が乗った、素敵なコラボレーションだったなと思います。
みさと:今のお話にあったように、ボーカルがいなくても成り立ってしまうほどの(トラックの)強さがありつつも、歌い回しであったり、少し余韻を持たせた、もったりとした溜めた歌い出しも含めて、児玉奈央さんは素晴らしいシンガーだなと改めて感じました。この二組のコラボならではの一曲が生まれたかと思います。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。wash?はアルバムです。
金子:2023年の結成20周年イヤーを経て、アルバムが完成しました。ご本人のコメントを抜粋して読んでみると、"こんなにもプライベート向き出しでいいのだろうか。でも残念ながらこれが俺。今までの自分の作品で一番好き。ずっと格闘してるアルバム、これは愛のアルバムのつもりなんだ"と。こういった言葉からも、20年のキャリアを経て、こういうアルバムを形にできたというのは、今のバンドの好調さ、充実ぶりがうかがえる感じがするし、今回の「あの子はうそつき」を聴いても、1990年代のオルタナティブロックからの流れを受け継ぐ、このノイジーなサウンドはwash?節だなという感じがして、非常にかっこいいですね。
みさと:「あの子はうそつき」についてコメントをいただいてるんですが、"これはブルース ただのブルース 裏切られて でも憎むことができないってやつ 全人類の課題であり最後の希望のやつ"とのことで、まさに許すことが世界平和への近道だなぁと感じていますし、この世界観はブルースの成り立ちでもあるし、心を剥き出しにしてくれたからこそ、この境地に辿り着いた、そんな一曲だったんじゃないかなと聴かせてもらいました。続いて、ズボンズもアルバムリリースです。
金子:こちらは30周年ということで。
みさと:どちらもおめでとうございます。すごいね。
金子:ちなみに、wash?のアルバムの1曲目が「Rock'n'Roll」で、ズボンズのリード曲は2曲目の「The Last Rock'n'roll Star」。
みさと:いい並びだな(笑)。
金子:ロックンロール対決がここで行われていると(笑)。
みさと:どっちも優勝(笑)。
金子:wash?が1990年代のオルタナ以降だとしたら、ズボンズは1960年代や1970年代からのロックンロールを全て詰め込んだような豊かな音楽性があって、The Rolling Stonesなどの大きな影響源はありつつ、現代的な表現に落とし込んでいて。「The Last Rock'n'roll Star」は中盤からのサイケデリックなジャムに突入していく流れがライブバンドならではの魅力を感じさせたり、かっこいいアルバムでした。
みさと:細分化、多様性の時代だからこそ、カテゴライズされることが多くはなってしまうけど、この曲を聴くと、「ロックだよね!」の一言で集約されるような。いろんなエッセンスがありながらも、「これがロックです」の一言でまとまってしまうような勢いと力強さと30年が乗っかって、すごいですね。この30年のキャリアでしか書けない、歌えない、鳴らせない音ってあるんだなと。そんな勢いを感じた一枚だったと思います。
金子:さらに言うと、リズム隊が新しくなって、フレッシュさも加わってね。
みさと:まだ歩みを止めない、未来の希望が見え隠れしているし、終わりではなく、始まりだけど区切りみたいなところを感じられるんじゃないでしょうか。そんなPart-3からどうしましょう。
金子:saccharinの新曲を紹介しようと思います。
みさと:これまた素晴らしいコラボレーションになってます!
金子:これもある意味すごいロックですよね(笑)。フィーチャリング松重豊。この字面。
みさと:あはは(笑)。強すぎない!?
金子:松重さんといえば『孤独のグルメ』をみなさんご存知だと思うんですけど、saccharinは全国の酒場を行脚するというコンセプトがあるから、一致するものがある気がしますよね。そもそも松重さんは大の音楽好きとしてよく知られていて、saccharinをラジオやテレビで紹介していたところから実際に交流が生まれ、フィーチャリングをオファーしたら快諾をしてくれたと。それがまずすごいですよね。タイトルの「TONGO」は仏教用語で、死生観とか禅、悟りみたいなことが楽曲のテーマになっていて、こういう曲をぜひ松重さんと一緒にやりたかったそうです。二人の個性がぶつかり合っていて、saccharinならではの、ある種のロックな形に仕上がった一曲じゃないかなと思います。
みさと:saccharinを始めた当時は地上波に流れやしない覚悟を持っていたそうですけど、松重さんの影響力でいろんなところで知ってもらう形になったのも、それが人生だなと思わせるというか。自分の想定外のことが生まれるからこそ、新しいコラボレーションが生まれたり、新しい人生の1ページがめくれたり。人生の深みを大切にしてきたであろう二人が交わるべくして交わったなという感じがしました。また、松重さんのパンチの効いた渋さのある声がポイントになっていて、セルフライナーノーツでは、(松重さんを)"もしかしたらラッパーよりラッパーかもしれない言語の達人"と紹介しています。松重さんのヴァースをぜひ聴いていただきましょう。
番組の後半はシェイク ソフィアン(Guiba)がゲストで登場!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武の2人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10




