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2025.09.07
New Release Digest Part 1
みさと:9月1日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全23作品の中からPart-1をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!まずはJumpei Kamiyaさん。
金子:ドラマーの神谷洵平さんのソロプロジェクト。これまではゲストボーカルを招いて、かつ英語詞が基本だったんですけど、今回はご自身で歌って、日本語で作詞をしてると。ソロとして新しい領域に踏み込んでいますね。テーマとしては"夏の終わりの焦燥感、どこかヒリヒリとしたノイジーな思い出、現代社会の温度感、90年代のような、家電のようなサウンドを、ブラウン管テレビに投影するような感覚で楽曲を制作した"と。ちょっとくぐもったようなサウンド感になっていて、この焦燥感、ヒリヒリ感もわかりますよね。神谷さんのソロはルーツ音楽的な部分がありつつ、現代的なサウンドデザインで仕上げてられていて、その部分は変わらない。らしくもあり、でも明確に新しい、新境地な一曲でした。
みさと:派手ではないけど、言葉が持つリズムを感じる歌詞で、さすがドラマーだなあと。プロデューサーであり、ドラマーであり、様々な一流のミュージシャンとやってきたからこそ、この境地に辿り着いてるんだろうなというのが透けて見えるけれども、Jumpei Kamiyaさんの核の部分が伝わってくる新境地の一曲、ぜひ聴いてみてください。続いて、Small Circle of Friends。
金子:アルバムが完成しました。
みさと:おめでとうございます。
金子:約3年半ぶり、13枚目のアルバムです。タイトルが『SLOW』で、セルフライナーノーツによると、この『SLOW』という言葉に込められたのは、"今まで以上にじっくりゆっくり考え考え時間を掛けて作ったアルバムであるということ。今未来に必要なのは、歯止めの利かなくなった欲望のスピードに対してブレーキを掛けること。おおまかに言えばそのふたつです"と。この3年半で世界のいろんなところで混乱が起こっていて、そういう世界を見つめながら作られたアルバムになっていると思います。決して明るいトーンではなくて、少し影のあるトーンではあるんだけど、その中でいかに前を向いて、未来を見つけ出していくかということが描かれていて、聴き手側もじっくり、ゆっくり味わいたくなるような作品だなと思います。
みさと:じっくり、ゆっくり考えて、時間をかけて作ってくださったからこそ、聴き手であるこちらが考える時間を与えてもらっているような楽曲の構成でした。言葉一つ一つをゆっくり丁寧に置いていっている感じがあって、一つの単語も取りこぼさないように伝えてくれている、そんな大作になっているかと思います。そんなPart-1からどうしましょう?
金子:LITEの新曲を紹介しようと思います。
みさと:これまたいいコラボですね!
金子:LITEは今年の10月に約6年ぶりのアメリカツアーが決定していて、アメリカツアーを一緒に回るCovetというバンドのYvette Youngとコラボレーションした1曲。Yvette Youngは女性のギタリストで、タッピングを駆使したテクニカルなプレイが話題を呼んだ方で、水中スピカの千愛さんは多分影響を受けているんじゃないかな。ギターの絡みはLITEの代名詞なわけですけど、さらにもう一人ギターが加わって、プレイとしても、サウンドとしても、いろんな要素が1曲の中に込められていて、さすがの仕上がりになっています。
みさと:アメリカツアーで演奏すると思うと行きたくなっちゃいますよね〜。LITEの良さとYvette Youngの魅力、それぞれが際立ちながらコラボレーションすると、日本にいながらにして、西海岸の風、夕日を思わせてくれるような楽曲作りができちゃうんだなあ。これはこの2組にしかできないことだし、答え合わせにアメリカツアーに行かれるファンの方たち、羨ましくてたまりません!私たちはまず日本で聴いてみましょう。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。まずははじめましてさん、epice(エピス)。
金子:epiceは東京を拠点に活動する5人組のオーセンティック・ジャズ・バンド。メンバーの中にはGENTLE FOREST JAZZ BANDのメンバーも含まれているので、後半のゲストコーナーに出てくる佐瀬悠輔さんの先輩方も所属していると言えるかな。音楽的には「オーセンティック・ジャズ」と書いてある通り、まさにという感じ。佐瀬さんもそうですけど、今はジャズと一言で言っても、ヒップホップとか、R&Bとか、クロスオーバーしたサウンドのジャズをやっている人の方がむしろ多かったりするから、こういうオーセンティックなジャズは逆に新鮮ですね。やっぱり深夜の時間帯にも合うし、改めてオーセンティックなジャズもいいなと思いました。
みさと:懐の広さと温もりの伝え方がこのボーカル力から伝わってきますね。しかも彼女、ドラマーでボーカルもやっている。画としても、すごく楽しめそうなバンドになっていて、ライブも結構コンスタントに決まっているので、おそらくオーセンティックなジャズを生音で楽しみたいファンの方がついているんだろうなと。ぜひライブに足を運んでみたいですね。続いて、miidaがリリースです!
金子:miidaは10月にアルバムが出ることが発表されていて、そこからの先行シングル。バンド体制になってからは初のアルバムになるわけですけど、先行で配信されているシングルを聴くたびに、どんどんバンドになっていっているような気がして。
みさと:本当、同感です。
金子:今回もバンドのアンサンブルがかっこいい曲になっていて、さらにタイトルが「Adventure」というのも、バンドという新しい冒険に踏み出している今のmiidaのモードが表れていると思うし、とはいえ、ただ衝動とか無邪気な感じではなく、今のmiidaらしいクールさもちゃんと備わっている。"今"の表現という感じがすごくしましたね。
みさと:バンド体制の前はボーカルにエフェクトをかけたり、ちょっとベッドルーム感があったように感じてたんですけど、今回はボーカルが全面に出ている楽曲だなと思っていて。"かけっこで全力で走れない自分に気づいたときに、「つまんな」と思ったのがきっかけで作り始めた曲"とセルフライナーをいただいているんですけど、 これだけストレートにボーカルを全面に出せるのって後ろに仲間がいて、バンドだからこそできるんだろうなと思いながら、新しいmiida、マスダミズキちゃんの挑戦、「Adventure」を聴かせてせてもらいました。 そんなPart-2からどうしましょう?
金子:Geloomyの新曲を紹介しようと思います。
みさと:EPです!
金子:ちょっと前に、ポッドキャストでGeloomyのライブを観た話をしましたけど、いいタイミングでEPが届いて。
みさと:本当ですね。
金子:コメントによると、今回の作品は、"真っ直ぐ進めない時代に、無理に整わなくてもいいというメッセージ。曖昧さや矛盾をそのまま美学として肯定するような、アンチ秩序/ポスト真実的サウンドスケープ。『macaroni & cheese』は、混沌と構築のあいだで鳴る、意識のミールミュージックである"と。
みさと:面白いなあ。
金子:メンバーの名前が小腸、肝臓、肺、腎臓で、歌詞は結構サウンド重視な感じで、英語と日本語が混ざっていたり、どこまで本気で、どこまでおもしろでやっているのか読めないところもあるんだけど、でもこのコメントの感じはサウンドからも伝わってきました。「The Mint Robbery」はかなりサウンドで遊んでて、声にもかなり加工が施されていて、アシッドな感じもあったり。まさにこの"混沌と構築のあいだ"をちゃんとサウンドでも体現しているので、今回のコメントは結構本気な感じがしましたね。
みさと:過去作のタイトルが『Saladbowl』だったり、いつも食べ物をモチーフにして。
金子:ミールミュージックですからね。
みさと:"どこから入ってもいいんだよ、僕たちにたどり着く理由は何でもいいんだよ"というような懐の広さも感じるなと思っていて、大人の余裕と攻めのバランス、広い意味でのブラックミュージックの良さが詰まっているなと思います。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。國がアルバムリリースです。
金子:活動開始から5年で初のフルアルバム。オルタナなかっこよさが詰まった作品になっていて、タイトルが『Kids Return』ですけど、"子供の頃の純粋さを失わないでいたいという思いは全曲に通底するテーマであり、荒削りさと無邪気さ、鋭さと優しさが同居したアルバムに仕上がっています"というこのコメントもまさにという感じがしました。タイトル曲の「Kids Return」は最後の曲になっていて、タイトル自体、北野武の映画を連想する人が多いかと思うんですけど、アルバム全体を聴くと、まさにエンディングの一曲という位置づけになっている印象で、その感じもよかったですね。
みさと:オルタナなサウンドをやっているバンドは新しい刺激に対して柔軟で、変化を恐れない印象があったんですけど、それでも根幹を大切にしたいという、このタイトルを付けた國の美学を感じるし、曲順も含め、いろんな音の変遷はあるけれども、最後に鳴らしたいのが「Kids Return」。一つのパッケージとして素晴らしいなと感じています。5年の集大成、味わっていただきたいですね。続いて、阿部芙蓉美さん。
金子:今回はカバー曲ですね。
みさと:いいカバーですね〜。
金子:Joni Mitchellの名曲、「Both Sides Now」。似合いますよね。
みさと:似合う〜。
金子:オリジナルは1960年代の曲なんですけど、Lana Del Reyとかにも通じる感覚がありました。Lana Del ReyもJoni Mitchellをすごくリスペクトしていて、カバーとかもしてるんですよ。Lana Del Reyと阿部さんは同年代だったりするので、そこにもリンクを感じました。ただ古いだけじゃなく、ちゃんと時代性もある、その感じも含めて良かったですね。
みさと:阿部芙蓉美さんの声でカバーされると、どんな時代も超えてしまいそうな。唯一無二なんて言葉はもう使い古された言葉かもしれないですけど、やっぱり彼女にはこの言葉がぴったりだなと。オリジナル楽曲で感動はするのはもちろんのこと、カバーでもこんなに感動を与えられる表現力ともともとの声の素晴らしさが詰まってましたね。そんなPart-3からはどうしましょう。
金子:Nolzyの新曲を紹介しようと思います。
みさと:Nolzyくん!出戻りと言っていいの(笑)?
金子:出戻りって表現はどうなんだろうな(笑)。
みさと:ウェルカムバック(笑)?おかえり?
金子:もともとアツキタケトモという名前で活動していて、その名義ではFRIENDSHIP.からもリリースしてたんですけど、その後に他からリリースするようになって、昨年からはNolzyという名前で活動中。Room"H"も担当しているから距離感的には近くて、ちょっと前にNolzyとFirst Love is Never Returnedが一緒にイベントをやったんですけど、SENSAで対談をやらせてもらったり、常に近いところにいた感じがするので、「待ってたよ」ぐらいの感じですね。
みさと:そうそう!
金子:新曲はNolzy節全開の一曲で、「OK ALL」をカタカナにして、「オケオーール!」。「アメトーーク!」的なね(笑)、こういうワードセンスもやっぱり面白いし、オマージュをたっぷり詰め込んだディスコファンクな音楽性も面白くて、1990年代のJ-POPと2020年代の音楽を横断するようなNolzyらしさも詰まっていました。歌詞は結構パンクで、今に対する苛立ち、どうでもいいことばっかの現代に対する苛立ちをぶつけつつ、でもちゃんと背中を押すような一曲にもなっていて、そこも含めて非常にNolzyらしい曲でしたね。
みさと:彼の良さが詰め込まれている一曲だなと思っていて、サウンドだけじゃなくて、歌詞からもすごいオマージュが感じられましたね。「でも幸せならOKです!」というネットミーム的な一言もNolzyくんらしいなと思うし、キャッチーな単語とそれにハマるメロとか、どうでもいいって結局はどうでも良くないから、それに対してどうでもいいと言い聞かせたりだとか、忘れられないというしがらみを含んだ一言だと思うんですよね。悶々とした気持ちを吹き飛ばしてくれるような、Nolzyくんの根底にあるファンクの気持ちよさ、勢いの良さも詰まっていて、素晴らしい曲で帰ってきてくれて嬉しいです。
番組の後半は佐瀬悠輔がゲストで登場!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武の2人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10