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2025.08.31
New Release Digest Part 1
みさと:8月25日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全25作品の中からPart-1をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。まずはGateballers。
金子:今年に入ってからは初めてのリリース。去年が活動開始10周年という区切りの年だったので、今回から新たな旅が始まるという感じなのかなと。「Get back」というタイトルで、セルフライナーノーツの中にも"自分を取り戻すための歌"という言葉があったり、やっぱりまたここから始まるという感じが伝わってくるし、「Get back」なのでThe Beatles、もしくはThe WhoあたりのUKロックから受けた影響をアグレッシブに、ストレートに出していて、新たな始まりを強く感じました。
みさと:"スタート"とか"リスタート"みたいな言葉を使わずに、その印象を私たちに届けてくれるというのも彼らのセンスというか表現力だなあと思いますし、余白があるのに画が見えるロードムービー感。夢と才能を持った男たちの曲という感じがすごくワクワクする一曲でした。
金子:イントロのエンジン音がまさにそれを表してますよね。
みさと:続いて、水野蒼生さん。EPです。
金子:やっぱり水野さんは面白いですね。クラシック音楽をオルタナティブな形で表現していて、先行配信曲はKhamai Leonの尾崎(勇太)くんをフィーチャーした曲だったんですけど、今回の曲は君島(大空)くんをフィーチャー。もちろんクラシックが軸にあるので、ストリングスのアレンジがいいし、水野さん自身が歌っていて、かなりコーラスも使われているので、共演することが多いROTH BART BARONのような声の力を感じさせ、さらにそこにハードロックやヘビーメタルの要素がある君島くんのギターが加わる。クラシックで壮大な曲にギターが入るって、QUEENじゃん、みたいな(笑)。
みさと:あはは(笑)。本当ですね。
金子:途中でツインハモになるところもあって、本当にQUEENみたいになる瞬間があったり、そういう幅の広さも含めて面白かったですね。
みさと:テーマ的に"一言で言えばこれは万人に向けた人生賛歌である"とセルフライナーノーツもいただいてるんですけど、音楽家としてこの人生で何をできるかということと、2人の人間性をすごく開示しているような。やはり声をかける人にもそういったバックグラウンドだけじゃなくて、何を持ってカルチャーに一石を投じていたり、生き方として提示しているのかというところも含めて一緒に作品を作っているような感じがして、今後がとにかく気になる存在ですね。活躍を応援しています。そんなPart-1からどうしましょう。
金子:DURDNの新曲を紹介しようと思います。
みさと:DURDNは(FRIENDSHIP.からのリリースは)初めて。
金子:DURDNはボーカルのBaku、トラックメイカーのSHINTA、トップライナーのyaccoによる3人組。過去には『RADAR:Early Noise 2023』に選出、アニメのEDを担当、yamaとのコラボ、海外でもライブをしたりと、既に色々と実績があります。トップライナーの、いわゆるメロディーを書くyaccoさんがいて、彼女はライブには参加しなかったり、形態も含めて面白い3人組です。今回の曲はシンセポップ、80'sリバイバルの要素があって、これまでの経歴を裏付けるような完成度の高いポップソングになっていました。ボーカルのBakuくんの歌もすごく良くて、彼は韓国出身のシンガーなので、VivaOlaくんともリンクするような声の良さがあったりするのもいいですね。
みさと:それぞれの専門性がしっかりアウトプットされていて、クオリティーの高さが頷けるプロフィールだなあと思いました。全体的な耳心地の良さもあるんですけど、それぞれが秀でているというか。ボーカルもトラックメイクもメロディーも、3人揃うとかけ算のようで面白いなと。「JellyFish」というタイトルで、静かなんだけれども、意思を持って動いているという、対極にありそうなものの象徴になるクラゲをテーマにしたセンスも含めてとっても好きです。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。楓幸枝さんとCwondoさんのコラボレーションシングルです。
金子:楓幸枝さんは毎回プロデューサー、トラックメーカーと組んで曲を作っているわけですけど、今回はNo Busesでも活動しているCwondoくんとの組み合わせ。R&B寄りの曲が多いイメージなので、ちょっと意外な人選ではあったんですけど、今回の曲のテーマが「悪夢」ということで、アブストラクトなトラックと雰囲気がマッチしていてかっこよかったですね。
みさと:悪夢で感じた気持ちはすごく後味悪く残るのに、言語化が難しいじゃないですか。そのダークさがよく表現されていて、素晴らしいですね。続いて、酩酊麻痺。アルバムリリースです。おめでとうございます。
金子:これを機に過去作も振り返ってみたんですけど、本人たちはあんまりアルバム、EP とはっきり分けてないっぽくて。今回は8曲入りなんですけど、去年出している『光』は6曲入りだったり、一つ一つ作品としてリリースしている感じからも、彼女たちの美学が感じられるなと思いました。今回もTHE NOVEMBERSのケンゴマツモトがプロデューサーとして参加していて、幅広い楽曲が収録されているんだけど、「すみか」は他の曲に比べるともう少し穏やかで、ホーリーというか、その静けさの中から確かな意思が伝わってくるような感じがしました。
みさと:コンセプチュアルというか、世界観が1枚通して表現できているタイプのバンドなのかなと思っていて、ボーカルとサウンドの対比がより世界観を色濃くするんだなあと、コントラストを味わいました。そんなPart-2では...もう笑っちゃってるじゃん(笑)。
金子:いや、(そんな前振りされたら)笑うでしょ(笑)。
みさと::そんなPart-2ではCONTRASTZ(コントラスツ)を紹介します!
金子:GLAYのJIROさんとLITEの井澤さんによるツインベースバンド。
みさと:すごい!
金子:JIROさんはTHE PREDATORSとかもやってるから、オルタナやインディーにも造詣が深いというのはなんとなく知ってはいたけど、まさか二人でバンドを始めちゃうとは。びっくりですよね。そして、それがFRIENDSHIP.流通で出るという。
みさと:嬉しいな〜。
金子:二人ともベーシストだからどういう曲になるのかなと思ったけど、幾何学的という言葉がぴったりな曲になっていて。もちろんベースが軸にはなってるんだけど、変拍子、ミニマルというところがありつつ、ピアノやボイスサンプルが絡んで、本当に緻密な配置・構成の曲になっていて。音源の良さもあるけど、これがライブになったらどうなるんだろうとか、色々と想像させられる部分もある最初の一曲でしたね。
みさと:私は勝手ながらこの二人だからこそ、もっとベースが前に出てくるのかなと想像していたら、思っていた以上に他のエッセンスが、幾何学模様的にいろんなものが散りばめられていて、素人の想像の範疇は優に超えて来られて。今後の展開がすごく面白そうだなとか、コラボレーションの余白もあるなと思いましたし、ジャンルにとらわれない、あるいはジャンルでは表現しきれないような活動を、これからも続けていくんだろうなと感じました。インストでありながら、まさにコントラストの妙とでも言うべき、ドラマチックでスリリング、そしてミステリアスなのにロマンチック。さまざまな感情を呼び起こしてくれるような、そんな一曲でした。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。Fayzzがアルバムリリースです。
金子:彼らは中国のインストバンドで、2023年以来となるアルバム。セルフライナーノーツでは、AIをはじめデジタルに侵食される世界でのちょっとした不安感、危機感みたいなものを感じていて、それに対して私たちは私たちのやり方で未来と過去を融合させ、常に目覚め、集中しなければならない、というメッセージを寄せていて。当たり前っちゃ当たり前だけど、日本でも中国でも今の時代に対する、ある種の危機感みたいな目線は共通していて、それをインストという形で表現する。その表現力の豊かさは日本のtoeともリンクする部分があり、やっぱりかっこいいバンドだなと思いました。
みさと:私も仕事でAIを使い始めたんですけど、使ったら使ったで、「これ、私じゃなくても良くない?」というような仕上がりになるんですよね。使いこなす、乗りこなすという意思がすごく必要だなと思っていて。AIを使った方が圧倒的に整ってはいるんですけど、そうじゃなくて、自分自身がいいんだと信じるときにすごく強い覚悟が必要になってくるから、その瞬間にこの曲に背中を押してほしいなと思いました。続いて、PEDRO。
金子:PEDROは9月にミニアルバムのリリースを控え、先行の曲が続々と出ていて、最初の曲はthe telephonesの石毛(輝)くんのサウンドプロデュースだったんですけど、今回の曲はドミコのさかしたひかるくんのサウンドプロデュース。プロデューサーのチョイスからしても、PEDROのちょっとオルタナな感性が見えてきますよね。今回はやっぱりヒカルくんらしいギターのサイケなニュアンスと、自分の心の内を明かしたようなリリックが結びついて、また"らしい"曲になったなと感じました。
みさと:思春期と反抗期とか、「好き」と言った瞬間に「死ぬ」と言いたくなったりとか、言葉や単語の選び方にリアルさがあって、ドミコのヒカルくんとの相性も抜群。この後のミニアルバムがますます楽しみになりました。そんなPart-3からどうしましょう?
金子:Rol3ertの新曲を紹介しようと思います。
みさと:Rol3ertもいいコラボですね。
金子:最近の作品はプロデューサーとの共作が続いていて、前作はMONJOEくんがプロデュースに関わっていたんですけど、今回はThe fin.のYutoくんがプロデュース。
みさと:すごく素敵。
金子:MONJOEくんもYutoくんもFRIENDSHIP.のキュレーターなわけで、まさにFRIENDSHIP.からのリリースだからこそ、という感じがする。
みさと:こういう醍醐味がありますよね。
金子:Rol3ertはまだ10代なわけですけど、30代半ばぐらいのMONJOEくん、Yutoくんがプロデュースするという、世代が変わってきている感をまざまざと感じさせますね。音楽性で言うと、僕は以前からRol3ertの楽曲から1980年代感を感じるみたいな話をしてて、それはRol3ertが1980年代の音楽を直接聴いているからというより、The 1975とか、1980年代の音楽に影響を受けた今の音楽を聴いて、間接的に影響を受けてるところがあると思う。で、The fin.ももともと1980年代感のあるサウンドを鳴らしてたから、やっぱり相性はめちゃめちゃ良くて。とはいえ、「say my name」は1980年代的なシンセサウンドを強く押し出している曲ではなくて、どちらかというと最近のThe fin.っぽい、穏やかな雰囲気の一曲。その分、ボーカルの良さが前面に出ていて、Rol3ertはやっぱりシンガーとして素晴らしいなと感じました。
みさと:英語の耳触りの良さから楽曲にまず引き込まれて、終盤に日本語の歌詞が出てくるんですが...。
金子:いつもちょこっと出てくるのがいいですよね。
みさと:その瞬間にRol3ert自身に引き込まれるんですよ。アーティストとしてのRol3ertの良さと、Rol3ertって一体どんな人なんだろうと知りたくなるような楽曲構成がいいですよね。エバーグリーンな曲をずっとリリースし続けているので、これからも楽しみです。
番組の後半は佐瀬悠輔がゲストで登場!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武の2人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10