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2024.06.09
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!Shōtaro Aoyama・aoihr・Kotoko Tanakaほか全20作品 -2024.6.8-
New Release Digest Part 1
みさと:6月3日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全20作品の中から、まずはPart-1の6作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。まず、EMERALD FOURがアルバムです。
金子:EMERALD FOURは京都を拠点に活動する足立大輔を中心とした音楽グループで、ひさびさのアルバムなんですけど、タイトルが『魔境にて』ということで、精神の魔境をテーマにしたアルバムだと。「ノスタルジックで浮遊感のあるサウンドはそのままに、厭世的で憂鬱なムードが全体に立ち込めるモノクロなサウンドに仕上がった」ということで、確かに全体的にはノスタルジックで、ドリーミーな感じもあり、歌謡曲からのJ-POPみたいなポップさもあり、ほんのりサイケ感もありという、いいアルバムでしたね。
みさと:ボーカルのぱるかさんの声と歌唱方法がすごく印象的で、サウンドがサイケでも可愛くなっちゃうのがいいですよね。そのキュートサイケな雰囲気がジャケットにも落とし込まれていて、「これがEMERALD FOUR流の精神と時の部屋か」みたいな、「ここが魔境か」という入り口に入った感じがする、素晴らしいアルバムです。
金子:キュートな感じと魔境感、憂鬱な雰囲気、そのいい意味でのアンバランスさも魅力ですよね。
みさと:ですね。続いて、DOGADOGA!
金子:6月に入ったので、ちょっと夏が見えてきて、その前には梅雨があったりもしますけど、というわけで「夏の支度」という曲が届きました。彼らはパンキッシュなイメージがありましたけど、今回の曲はもっとレイドバックしたトロピカルな感じで、でもこの感じも含めてやっぱりThe Clashとかが彼らのモチーフにはあるのかなって感じがしますね。スティールパン、パーカッション、サックス、フルートとか、いろんな楽器が使われていて、サウンド面でも面白い楽曲でした。
みさと:夏の恋への憧れ、期待に向けて支度をする、けれどもそれは実現しないであろうと読み取れる歌詞になってまして、ジャケットもお部屋にワンピースがかかっているので、このワンピースの持ち主である女性がいると思われるんだけど、壁には水着のお姉さんのカレンダーが貼ってあって、グラスは机の上に一つだけ。妙に殺風景なお部屋なので、ワンピースの持ち主はそこにはいないのかなと想像もできるし、もしくはこの部屋で夏の支度をしていると考えると、"よし、7月のカレンダーをかけた。冷たいグラスに冷たい飲み物を入れて一つ置いてみた。彼女が欲しいな。ワンピースをかけてみた。だけど自分と相手の女の子は部屋にいない"というふうにも読み取れるし、こういう余白のあるアートワークは聴き手に考察を促すような、すごくワクワクさせるものだなと改めて感じて、期待と現実が入り混じった「夏の支度」をワクワクさせる作品だなと思いました。そんな中、Part-1どうしましょう。
金子:Shōtaro Aoyamaの新曲を紹介しようと思います。
みさと:かっこよかったです。
金子:どんぐりずをフィーチャリングに迎えての楽曲で、この2組のコラボレーションは今回が3作目。過去にはNAGAN SERVERとどんぐりずの曲をShōtaro Aoyamaがリミックスしてたりとか。
みさと:SERVERくんもかっこいいですもんね。
金子:さらには、その3組プラスHIMIで1曲出していて、今回はShōtaro Aoyamaとどんぐりずの2組でのコラボレーション。2000年代後半に生まれたダンス・エレクトロとヒップホップの融合がテーマということで、「確かに」という感じはして。例えば、Basement Jaxx感もあった気がするし、個人的にはAlter Egoの「Rocker」というエレクトロ時代のアンセムがあって、ちょっとブリーピーな感じがその曲にも通じる感じがして、あの時代を思い起こさせつつ、でもそれがちゃんと今に着地してる、めちゃかっこいい曲だなと思いました。
みさと:過去の2作での手応えをすごく感じてるんだなっていうのも見えてきたし、お互いの信頼と自信と、これまでの個人的な活動に対する絶対的王者感というか、そういったものも見えるなっていうのと、お互いの手の内を知った上で必殺技を出してくるような、これフェスでやられたら共演者ちょっと泣かせちゃうような、すごいパーティーロックチューンで、お客さんごっそり持ってくだろうなっていうのが見えてきますよね。
金子:どんぐりずはHelsinki Lambda Clubともコラボしてたりして、本当に至るところに出没してますけど、でもどれもかっこよくて、さすがですね。
みさと:アーティストコメントでも、"ライブではこの曲が会場の沸点を一気に上げるので、とても頼りになる楽曲です"という一文をいただいてるので、今年の夏はこの曲で遊びたいですね。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさんです、雪国。
金子:2023年結成、2003年生まれの3人で東京を中心に活動するバンドによるファーストアルバムで全15曲入り。
みさと:15曲も入ってるアルバムってひさしぶりな気もする。
金子:最近は少ないか多いかって感じですけど、初めてのアルバムでたっぷり15曲、「自分探しのようなアルバムだった」というコメントもあったりします。音楽的な背景としては、日本のオルタナティブ・ロックと、UK・USインディを背景に持ちつつ、みたいなことも書いてあって、実際UK・USインディも背景にあるんだろうけど、表面的に伝わってくるのはすごく日本らしいバンドだなっていう印象で。雪国というバンド名からしてそうだし、リードトラックが「東京」で、このタイトルの名曲がたくさんあるっていうのはもちろん本人たちも知ってた上で、「自分たちの『東京』はこれだ」というのを出してきたと思うし、この繊細なアルペジオと抒情的なメロディーはやっぱり日本のバンドだなという感じがすごくしました。
みさと:「リファレンスやコンセプトを設定して、それに沿って曲を作り・アレンジしていくという工程は取らなかったけど、UK寄りのまとまりのあるバンドサウンドにできたと思う」とコメントもいただいてまして、こういった客観性を持ち合わせてるのも強みの一つだなと思ったのと、あとはやはり名曲がたくさんある「東京」に対して言葉が紡げたことと、低体温な感じではあるんだけど、そこで勝負ができるすごく情熱のあるバンド、というのも見えてきて、彼らがこの"雪国"として勝負をしたい、という意気込みも感じるようなアルバムになってると思います。続いて、sucolaがEPリリースです。
金子:sucolaは新曲が出るたびにコンスタントに紹介してきて、いい感じでずっと来ていて、それがまとまってEPになりました。これまでも紹介してきたように、SZAだったり、今の海外のトレンドをちゃんと押さえていて、ローファイで軽いんだけど、でもしっかり聴くとめちゃめちゃ作り込まれてる、そのサウンドがかっこいいし、今回EPのタイトルが『KIBI』で、そういうサウンドだからこそ心の機微も細やかに感じられて、ぴったりなタイトルだと思いました。
みさと:感情の細かな動きだったり、言葉から誘導される"何か"に辿りつけるっていうのも素晴らしいんですけど、それを厚武さんおっしゃるようにサウンドだけで表現ができるのは、sucolaがsucolaである理由、この2人がポップスデュオとして一緒にsucolaをやってる理由なんだなっていうのも見えてくる、素晴らしいEPでした。
金子:ちなみに、FRIENDSHIP.からもリリースしてるTsudio Studioさんが"すこらすこ"ってツイートしてて。
みさと:好きなんや。
金子:で、yopecoさんもそれを気に入って、"すこらすこ"を流行らせたいって。
みさと:ハッシュタグみたいにしたいんだね。
金子:なので、この番組からもsucola好きな人は"すこらすこ"って呟いてほしいなって。
みさと:いいですね。sucolaはローマ字で、"すこ"はひらがなですか?
金子:全部ひらがなで、"すこらすこ"。
みさと:文字面も可愛いですね。聴いてらっしゃるみなさんも「#すこらすこ」と呟いてみてください。さあそんな中、ご紹介するのはどうしましょう?
金子:aoihrの新曲を紹介しようと思います。
みさと:よかったです、aoihr。
金子:aoihrはアベシュンスケによる音楽プロジェクトで、ひさびさのリリースなんですけど、今回は天国をテーマに制作していて、"コードの塊で疾走するシューゲイズ/ノイズロック的なアプローチをクワイアや適度なサンプリングで俗っぽくないバランスに落とし込みました"と。
みさと:まさにだわ。
金子:本人がどこまで意識してるのか......でもきっと意識してると思うんですけど、SUPERCARの「White Surf style 5.」という曲があって、そのオマージュ的な側面がすごくある気がするんですよね。「TOKYO SURF」というタイトルもそうだし、サウンド的にもあの曲をよりロックにアプローチしたイメージがあって。ちょっと前にYAJICO GIRLの新曲を紹介したときに、バンドがダンスミュージックを落とし込むというと、前にはサカナクションがいたよねって話をしましたけど、さらにそこから辿ると、その前にはSUPERCARがいて、「White Surf style 5.」はSUPERCARがロックバンド的なところからエレクトロ的な方向に寄っていったタイミングの曲で、今回はそれをもう一回ロックに引き戻したというか、そんな感じもして。YAJICO GIRLの四方くんもSUPERCARのファンだったりしますけど、今回の曲を聴いて、aoihrのオリジナリティと、SUPERCARってやっぱり偉大だったなっていうことと、両方感じましたね。
みさと:リバーブの量が最大出力じゃない?って思うぐらい、天国のサウンドメイクってやっぱりこうなるよな、という納得なところと、聴いてる側も浮いてきちゃうというか、そのままどこまでも連れてってもらえるような、そんな気持ちにさせてもらえたのと、それに対になるようにロックサウンド、バンドサウンドが地に足ついてます、という形でしっかり鳴ってたのも、これがaoihrのオリジナリティなんだな、と感じたところでもあるし、イントロとブレイクにカセットテープの停止ボタンを押したような演出があったじゃないですか。あれがもうこれ以上前に進めない時間軸にも聴こえたし、それを振り切って疾走感とともにそれでも前に進む、というエンディングに向かっていく構成もグッときました。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。Hiroka Cambridgeさん、ちょっとおひさしぶりですね。
金子:1年ぶりぐらいのリリースですけど、初めてのEPが完成。6名のトラックメーカーと制作した6曲入りで、多彩なトラックと多彩なラップ、シンガーとしての歌が詰め込まれた作品になってました。リードが「I Still.」という曲で、トラックはsummawhereが作ってるんですけど、ハーフテンポのリズムとジャージーな5つ打ちが1曲の中に入っていて、それを多彩に乗りこなしていくボーカルのセンスはさすがのものがありましたね。
みさと:私今週リリースの作品でジャケットがいいなと思う作品がいくつかあったんですけど、Hiroka CambridgeさんのEPもすごく好きで、広すぎる青すぎる空と、どこまでも続く水平線にポツンと青年の背中が本当に小さく映っている、この1枚のジャケットが現実と希望を表しているなあと感じて、〈失敗は挑戦の先の延長線上 ピリオドじゃないカンマで続き Continue to be まだ終わらせない〉というリリックがはまるような大きすぎる世界とちっぽけな自分、でも光が射して希望いっぱいっていう、このEPを背負って気合入れてます、と想像できるアートワークで、青いな、キラキラ!っていう、すごくいいジャケットになってました。
金子:『Go with the Flow.』というこのタイトルにも合ってますよね。
みさと:いいですね。続いて、Episode。
金子:Episodeもひさしぶりで、リリースは2年弱ぶりですね。彼らは結構キャリアがある人たちなので、ゆっくり自分たちのペースで歩みを進めてる印象もありますけど、今回は抑制がテーマになっていて、これまでと比べて過剰な展開や音色を極力廃したことで、かえって曲が持つ繊細さや抒情性を引き立たせることができました、と。確かに、という感じはすごくして、個人的にはこのあとゲストで出てくれる6 mabとも通じるものがあると感じました。Episodeも3人なんだけど、あんまり楽器に縛られてなくて、自由に曲作りをしている感じがあって、6 mabの方がビートミュージック寄りみたいな違いはあるんだけど、ミニマルに仕上げていて、ちゃんとメロディアスでもあるという、この感じは共通点を感じたし、すごくかっこいいなと思いました。
みさと:〈さみしくなりたくないのにな かなしくなりたくないのにな〉という、このまどろっこしい歌詞に深く共感させられたんですよね。こういう頭や心の中では使う、思ったことのある言葉って歌詞にぴったりなんだな、という発見もあったし、そういう美意識は6 mabにも通じるところがあるかもしれませんね。
金子:どちらにも寄り切らないというか、その曖昧さの中にこそ本質があるんじゃないかって感じがしますよね。
みさと:そんなPart-3からご紹介するのはどうしましょうか?
金子:Kotoko Tanakaの新曲を紹介しようと思います。これかっこよかったですね。 Kotoko Tanakaさんもかなりひさしぶりで、2年弱ぶりぐらいのリリースなんですけど、初めてのアルバムが完成しました。ロック的なアプローチの曲もあれば、シンセを使ったアプローチの曲もあるんだけど、全体的にはすごくソリッドで、前も話した気がするんだけど、アシッドフォーク的な雰囲気とポストパンク的なかっこよさが両立していて、さらにはサイケな感じもある。サポートしているのがギターのRiki Hidaka、ドラムがGreat 3の白根賢一で、Riki Hidakaは踊ってばかりの国の下津くんとかGateballersの濱野夏椰くんと一緒にバンドやってたり、betcover!!のサポートをしてたり、そういう繋がりもあるので、彼らに通じるサイケな雰囲気も持ってるし、その中心にいるKotoko Tanakaの声の存在感も素晴らしかったし、これはめちゃめちゃいいアルバムでしたね。
みさと:私The Beatlesが『ホワイトアルバム』を作った、インドのリシケシュに行ったことがあるんですけど、あのときの香りを感じます。「洞窟の中で炙り出された輪郭をどう捉えて、外に出た時の感覚を覚えておきたい」というコメントもいただいてるんですけど、その感覚を音にするとこういう感じなんだなっていう共通点といいますか、単純に使ってる音が似てるとか、そういうところだけではなくて、彼女の、音楽に対しての、新しいオリジナリティと、インディペンデントな、確固としたKotoko Tanakaはこうです、という、だけどまだ伸びしろ、余白ありますという部分も見せてくれるような、すごくアーティスト性のあるアルバムで、本当に聴き応えがありましたね。
金子:そのインド的な精神世界はそれこそ下津くんとか濱野夏椰くんとも通じる部分な気がするし、インドじゃないけどトルコの民族楽器を使ってレコーディングした曲もあったりとか、そういうエキゾチシズムみたいなものもスパイスとして入っているので、そこにも注目かなと思います。
後半は福岡のバンド 6 mabがゲスト出演!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武、そしてFRIENDSHIP.のキュレーターの平大助の3人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10