SENSA

2024.06.12

polly「Hope Hope Hope」──別れと喪失から希望を紡ぐ、新体制pollyによる初のアルバム

polly「Hope Hope Hope」──別れと喪失から希望を紡ぐ、新体制pollyによる初のアルバム

3人組オルタナティブロックバンドpollyによる通算4枚目のアルバム。pollyは2021年4月にメンバー2人が脱退し、残る越雲龍馬(Vo、Gt)と高岩栄紀(Dr)に、かねてよりサポートメンバーを務めていた志水美日(Key、Cho)が翌年加わり3人体制となった。本作は、このメンバーで昨年リリースした5曲入りEP『Heavenly Heavenly』のリマスタリングと、2nd Album『Four For Fourteen』に収録された「Slow Goodbye」の新録バージョンを含む全13曲入り。つまり新体制での初のフルアルバムということになる。

映画『スウィート・ノベンバー』(2001年公開)にインスパイアされた越雲が、自ら経験した「別れ(オリジナルメンバーの脱退も含む)」をそこに投影させながら作り上げた『Heavenly Heavenly』は、〈別れのその先に 始まりの音がする 確かなものだけを抱えて僕らは行く〉と歌う「MORNINGRISE」や、〈"怯えてしまうよ 別れをふと思うと。"〉と、いつか別れを迎えることになるであろう母への思いを綴った「K」など、やはり「喪失感」をテーマにした楽曲が中心となっていた。

今回、新たにレコーディングした「Slow Goodbye」も、〈なぜ僕らは失くしてしまうの 大事なものから順に〉というフレーズから始まるように、越雲はこれまで「別れ」や「喪失感」を創作のモチベーションにしていたことが多かった。特に『Heavenly Heavenly』がたたえるムードには、オリジナルメンバー2人を失った越雲と高岩はもちろん、ほぼ同時期にLILI LIMITの解散とMO MOMAからの脱退を経験した志水の「喪失感」も、多分に影響されているのは間違いないだろう(ちなみに、レコーディングに参加したベースのカミヤマリョウタツも、PELICAN FANCLUBから脱退したばかりだった)。

しかし、そんな『Heavenly Heavenly』の制作を経てレコーディングされた新曲たちは、それとはまた趣を異にしている。特に象徴的なのは、アルバム冒頭を飾るリードトラック「See the light」だろう。例えばシガー・ロスのヨンシーをも彷彿とさせるような、越雲の美しく澄んだハイトーンボイスで歌われる、〈愛をみたい 触れてみたい 幸せさえ霞むほど〉〈もう少しの安心を探し終えた後で 腕いっぱいの愛情をくれたあなたに渡したい〉という歌詞は、「別れ」や「喪失感」を手放し一歩ずつ前へ進もうとする越雲の、祈りのようにさえ聞こえる。高揚感あふれる楽曲の隙間から聴こえる子供達の、まるで生命を謳歌しているようなはしゃぎ声は、さまざまな苦難を乗り越え「新生polly」としてスタートした彼らの歓びを体現しているかのようだ。

「See the light」でpollyは今どんなモードなのかを提示出来たんじゃないかなと思っております。
バイノーラルマイクで近所の環境音を録った音が入っています。 近所の小学校から聞こえる子どもたちの声に僕は毎日励まされてきました。
僕がそれに励まされてきたように "これ以上何も捨てなくていいよ"と手を差し伸べ、励ましてくれる曲になると良いな と思います」
──公式コメントより

〈きこえるよ あなたの声が "別れは終わりじゃないから"〉と歌う「Kikoeru」も、〈幸せは溢れているけど あと少し ... ほんの少しの安心が欲しい〉と希求する「Monologue」も、〈いつか僕は灰へと変わるだろう どうか そんな日が来てしまっても笑って。〉と自らの死生観を綴ったラスト曲「Mei」もやはり、「別れ」や「喪失」の先にある「希望」を求めているように筆者は感じる。本作に『Hope Hope Hope』と言うタイトルをつけたのも頷ける。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやシガー・ロスなどに影響を受け、ボウイング奏法や幾つものアンプを組み合わせて作り上げたギターサウンド、Official髭男dismやPerfumeといったJ-Popに触発されたコード進行や、どこかオリエンタルな響きを持つメロディなど、もはやpollyのシグネチャーとも言える作風はより洗練され、越雲と志水による男女混成ボーカルの響きや、シンセとギターの重奏的なレイヤーなど新体制ならではの「新たな強み」も加わった本作は、彼らにとって現時点での最高傑作といえよう。

文:黒田隆憲



RELEASE INFORMATION

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polly「Hope Hope Hope」
2024年6月12日(水)
Format:Digital
Label:14HOUSE.
品番:14HS-0005

Track:
1.See the light
2.ghost
3.ごめんね
4.Kikoeru
5.MORNINGRISE
6.K
7.Long Goodbye
8.Slow Goodbye(re-recording)
9.Monologue
10.Snow/Sunset
11.kodoku gokko
12.Lily
13.Mei

試聴はこちら

LIVE INFORMATION

polly 4th Album Release Event
polly_4thイベント_1000_20240523.jpg
2024年6月12日(水)
渋谷FS.
OPEN18:30/START19:00
内容:ライブ&トーク&CD即売会
入場無料(要予約)※1ドリンクオーダー制
詳細はhttps://www.polly-jp.net/

polly Release Tour「Hope Hope Hope」
polly_HHH_tourflyer_1000_20240529.jpg
2024年7月16日(火)
新宿Zirco Tokyo
OPEN18:30/START19:00
ゲスト:DOGADOGA
前売 ¥4,500(drink別)
チケット発売中
e+ https://eplus.jp/polly/

2024年8月6日(火)
大阪SOCORE FACTORY

2024年8月8日(木)
福岡OP's

2024年8月23日(金)
名古屋ell.size

polly Release Tour「Hope Hope Hope」 TOUR FINAL ONEMAN
2024年9月27日(金)
大塚Hearts+

(8月9月公演の詳細は後日発表)


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