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2024.02.03
藤原さくらと優河によるユニット、Jane Jadeのツアー『We are Jane Jade〜nice to meet tour〜』が1月24日、東京は池袋にある「自由学園明日館 講堂」を皮切りに、大阪の「旧桜宮公会」と福岡の「住吉神社 能楽殿」の3会場で開催された。
先日のインタビューでも本人たちが話してくれたように、Jane Jadeは藤原が自身のラジオ番組『HERE COMES THE MOON』で、優河の楽曲を流したことをきっかけに結成された新ユニットである。キャンプ型音楽メディア『Wild Stock』に二人揃って出演したり、「藤原さくら×優河」名義で音楽フェス『麦ノ秋音楽祭 2023』に出演したりしながらプライベートでも交流を深めてきた彼女たちだが、「Jane Jade」名義でライブを行うのはこれが初めて。通常のライブハウスとは一味違った会場での「お披露」を、一目見ようと連日たくさんのオーディエンスが駆けつけた。
筆者が見たのは、2日あった東京公演のうちの初日。つまりJane Jadeにとってのデビューライブの日だ。「近代建築の三大巨匠」の一人であるフランク・ロイド・ライトの設計により、1921年に建設された幾何学的なデザインが印象的な自由学園明日館。その隣にライトの愛弟子・遠藤新の設計によって1927年に完成した講堂が、本日の会場である。
ライトの思想を受け継ぐシンメトリックな美しい空間。2脚の椅子とマイク、そしてアコースティックギターだけが配置されたシンプルなステージに、Jane Jadeのアーティスト写真でも着用していたお揃いの黒いメッシュニットを身に纏った2人が登場すると、客席から大きな拍手が鳴り響く。藤原がアコギを抱え、まずは「500 Miles」でこの日のライブはスタート。ピーター・ポール&マリーや忌野清志郎によるカヴァーでも知られ、藤原と優河も取り上げたことのあるアメリカのスタンダードナンバーだ。1音1音を確かめるように爪弾く藤原のアコギの上で、二人の声が混じり合った瞬間、会場の空気が揺らいだような気がした。
「私の声を、さくらちゃんの声がホワーンって包み込んでいるような......お布団みたいだなって」
Jane Jadeとして初めて声を合わせた時のことを、先のインタビューで優河はこう表現していた。フラット気味に歌う藤原のブルージーかつスモーキーな歌声と、どこまでも澄み渡る泉のような優河の伸びやかでホーリーな歌声。全く違う特徴を持つ2人の声だが、重なり合うと確かに「ひとつの声」のように聴こえる。「500 Miles」では、セクションごとにユニゾンしたりハモったり、ソロで歌ったりしながらお互いの声の「響き方」を楽しんでいるようにもみえた。
この日のセットリストは、Jane Jade名義のオリジナル曲2曲を軸に、お互いのレパートリーやお気に入り曲のカバーが並ぶ。リレー形式で歌ったのは、藤原が2017年に映画『3⽉のライオン』の主題歌としてカヴァーしたスピッツの名曲「春の歌」。アコギを弾く藤原が、歌う優河に注いでいた温かい眼差しに思わず胸が熱くなる。
エキゾティックかつトロピカルな「夏の窓」は、アルバム『言葉のない夜に』にも収録された優河の曲。藤原がラジオで流し、まさにJane Jade誕生のきっかけとなったこの曲を、二人並んでアコギをかき鳴らし歌う姿は感慨深いものがある。続く「June」も優河の持ち曲だが、同じリズム、同じメロディでも2人のタイム感や譜割の解釈に個性があり、それぞれの歌い方によって時間の流れ方が変わるのが面白い。「わたしのLife」は藤原による屈指のポップチューンだが、入り組んだコード進行の上を舞う抑揚たっぷりのメロディが、優河の声で歌われるのもとても新鮮だった。
ランディ・ニューマンによる映画『トイ・ストーリー』の主題歌「You've Got a Friend in Me」は、〈あなたが辛い時は、共に分かち合おう あなたのためにできないことなんて何もない〉という歌詞が、彼女たちの関係性にぴったりのフォークチューン。大きくブレイクするところで少し照れくさそうに二人が見つめ合い、息を合わせる様子に頬が緩む。
「何せ(Jane Jadeとしての)持ち歌が2曲しかないので......」と藤原が自嘲気味に言っていたが、ここでようやくその「moonlight」と「季節の音」を2曲続けて披露。「まるで古(いにしえ)から伝わるスタンダードナンバーのような、私たちのシグネチャーソング」と藤原が紹介したように、彼女たちのデビュー曲「moonlight」は、いつかどこかで聞いたことがあるようなノスタルジックなナンバーだ。2人のハミングから始まる「季節の音」は、シンプルなコード進行の上で豊かに展開していくメロディが印象的で、2人のオクターブユニゾンが心に染み渡るよう。
ライブ後半は唱歌「故郷」を全編ハモリでカバーしたあと、優河のレパートリーである「sumire」「灯火」を続けて披露。藤原の最新曲「sunshine」を経て本編ラストは、『Wild Stock』や『麦ノ秋音楽祭 2023』でもカバーした、SUPER BUTTER DOGの名曲「サヨナラCOLOR」を情感たっぷりに歌い上げる。鳴り止まぬアンコールに応え、ジョン・デンバーの「Take Me Home, Country Roads」とルイ・アームストロングの「 What a wonderful World」を演奏し、この日のライブを締めくくった。
二人のおしゃべりを盗み聞きしているかのような、ゆるく親密なMCを挟みながらの全15曲。「私たちが初めて声を合わせた時に、『わあ、いいね!』ってなった気持ちを、今日はみなさんと共有できたら嬉しいです」優河がそうMCで言っていたように、まるでJane Jade誕生の瞬間をここにいる全員で立ち会っているような、驚きと高揚感に満たされた一夜だった。
文:黒田隆憲
撮影:廣田達也
オフィシャルサイト
@yugabb
@y_u_g_a
@yuga6733
FRIENDSHIP.
藤原さくら
先日のインタビューでも本人たちが話してくれたように、Jane Jadeは藤原が自身のラジオ番組『HERE COMES THE MOON』で、優河の楽曲を流したことをきっかけに結成された新ユニットである。キャンプ型音楽メディア『Wild Stock』に二人揃って出演したり、「藤原さくら×優河」名義で音楽フェス『麦ノ秋音楽祭 2023』に出演したりしながらプライベートでも交流を深めてきた彼女たちだが、「Jane Jade」名義でライブを行うのはこれが初めて。通常のライブハウスとは一味違った会場での「お披露」を、一目見ようと連日たくさんのオーディエンスが駆けつけた。
筆者が見たのは、2日あった東京公演のうちの初日。つまりJane Jadeにとってのデビューライブの日だ。「近代建築の三大巨匠」の一人であるフランク・ロイド・ライトの設計により、1921年に建設された幾何学的なデザインが印象的な自由学園明日館。その隣にライトの愛弟子・遠藤新の設計によって1927年に完成した講堂が、本日の会場である。
ライトの思想を受け継ぐシンメトリックな美しい空間。2脚の椅子とマイク、そしてアコースティックギターだけが配置されたシンプルなステージに、Jane Jadeのアーティスト写真でも着用していたお揃いの黒いメッシュニットを身に纏った2人が登場すると、客席から大きな拍手が鳴り響く。藤原がアコギを抱え、まずは「500 Miles」でこの日のライブはスタート。ピーター・ポール&マリーや忌野清志郎によるカヴァーでも知られ、藤原と優河も取り上げたことのあるアメリカのスタンダードナンバーだ。1音1音を確かめるように爪弾く藤原のアコギの上で、二人の声が混じり合った瞬間、会場の空気が揺らいだような気がした。
「私の声を、さくらちゃんの声がホワーンって包み込んでいるような......お布団みたいだなって」
Jane Jadeとして初めて声を合わせた時のことを、先のインタビューで優河はこう表現していた。フラット気味に歌う藤原のブルージーかつスモーキーな歌声と、どこまでも澄み渡る泉のような優河の伸びやかでホーリーな歌声。全く違う特徴を持つ2人の声だが、重なり合うと確かに「ひとつの声」のように聴こえる。「500 Miles」では、セクションごとにユニゾンしたりハモったり、ソロで歌ったりしながらお互いの声の「響き方」を楽しんでいるようにもみえた。
この日のセットリストは、Jane Jade名義のオリジナル曲2曲を軸に、お互いのレパートリーやお気に入り曲のカバーが並ぶ。リレー形式で歌ったのは、藤原が2017年に映画『3⽉のライオン』の主題歌としてカヴァーしたスピッツの名曲「春の歌」。アコギを弾く藤原が、歌う優河に注いでいた温かい眼差しに思わず胸が熱くなる。
エキゾティックかつトロピカルな「夏の窓」は、アルバム『言葉のない夜に』にも収録された優河の曲。藤原がラジオで流し、まさにJane Jade誕生のきっかけとなったこの曲を、二人並んでアコギをかき鳴らし歌う姿は感慨深いものがある。続く「June」も優河の持ち曲だが、同じリズム、同じメロディでも2人のタイム感や譜割の解釈に個性があり、それぞれの歌い方によって時間の流れ方が変わるのが面白い。「わたしのLife」は藤原による屈指のポップチューンだが、入り組んだコード進行の上を舞う抑揚たっぷりのメロディが、優河の声で歌われるのもとても新鮮だった。
ランディ・ニューマンによる映画『トイ・ストーリー』の主題歌「You've Got a Friend in Me」は、〈あなたが辛い時は、共に分かち合おう あなたのためにできないことなんて何もない〉という歌詞が、彼女たちの関係性にぴったりのフォークチューン。大きくブレイクするところで少し照れくさそうに二人が見つめ合い、息を合わせる様子に頬が緩む。
「何せ(Jane Jadeとしての)持ち歌が2曲しかないので......」と藤原が自嘲気味に言っていたが、ここでようやくその「moonlight」と「季節の音」を2曲続けて披露。「まるで古(いにしえ)から伝わるスタンダードナンバーのような、私たちのシグネチャーソング」と藤原が紹介したように、彼女たちのデビュー曲「moonlight」は、いつかどこかで聞いたことがあるようなノスタルジックなナンバーだ。2人のハミングから始まる「季節の音」は、シンプルなコード進行の上で豊かに展開していくメロディが印象的で、2人のオクターブユニゾンが心に染み渡るよう。
ライブ後半は唱歌「故郷」を全編ハモリでカバーしたあと、優河のレパートリーである「sumire」「灯火」を続けて披露。藤原の最新曲「sunshine」を経て本編ラストは、『Wild Stock』や『麦ノ秋音楽祭 2023』でもカバーした、SUPER BUTTER DOGの名曲「サヨナラCOLOR」を情感たっぷりに歌い上げる。鳴り止まぬアンコールに応え、ジョン・デンバーの「Take Me Home, Country Roads」とルイ・アームストロングの「 What a wonderful World」を演奏し、この日のライブを締めくくった。
二人のおしゃべりを盗み聞きしているかのような、ゆるく親密なMCを挟みながらの全15曲。「私たちが初めて声を合わせた時に、『わあ、いいね!』ってなった気持ちを、今日はみなさんと共有できたら嬉しいです」優河がそうMCで言っていたように、まるでJane Jade誕生の瞬間をここにいる全員で立ち会っているような、驚きと高揚感に満たされた一夜だった。
文:黒田隆憲
撮影:廣田達也
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優河オフィシャルサイト
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@yuga6733
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藤原さくら