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2023.11.05
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!Sen Morimoto・アロワナレコード・Cluteほか全21作品 -2023.11.04-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:10月30日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全21作品の中からPart-1、7作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。厚武さん、ついにULTRAがアルバムのリリースですね。待ってました、おめでとうございます。
金子:おめでとうございます。リリースのスタートが去年の11月なので、そこからの1年の集大成とも言えるし、もっと言えばもともと活動を開始したのが2020年の11月だから、3年間の集大成と言ってもいいような。
みさと:11月は記念の月なんですね。
金子:既発曲も入っていて、ULTRAらしい、この2人のボーカル、そしてこの4人のオルタナサウンドが炸裂してますね。
みさと:本当、何かもう言うことができない、言葉を並べるのもおこがましくなってしまうぐらい。アルバムタイトル『到底及ばない』ですけど、きっとこれは4人からした謙遜の気持ちであったりとか、何か目指したいものに対しての気持ちが詰まってると思うんですが、聴いてるこっちが"もうあなたたちには到底及びませんよ"と思いたくなるような、そんな作品ですよね。
金子:僕もそう思いました。やっぱり言葉のチョイスがいつも面白くて、この『到底及ばない』って主観的に受け取るか客観的に受け取るかで印象が変わって、自信満々とも取れるし謙遜とも取れますよね。この力強いサウンドでそのどっちでもない感じ、裏表を行ったり来たりするような感情を表してるのは、ULTRAのかっこよさだなと改めて感じました。
みさと:そして、ちょっとおひさしぶりなんですが秀吉です。
金子:FRIENDSHIP.からは2年以上ぶりのリリースですね。でもその間にも色々と活動してて、去年には過去曲のリテイクをしたアルバムを発表して、地元の高崎の芸術劇場で自身最大規模のワンマンライブをソールドアウトで成功させたりもしていて。
みさと:お忙しかったんですね。
金子:精力的に活動をして、今年からまた新たなモードが始まってるっていうことなのかなと思うんですけど、今回の曲はかなりストレートな3ピースのアンサンブルって感じで。曲によっては色んな上モノを加えたりとか、秀吉くんの歌を生かしたもうちょっとソウルっぽいニュアンスの曲もあったりするけど、この曲はかなりロックで、ULTRAとかマスドレにも通じるような攻撃的なサウンドになっていて。1周してまた新たに、フレッシュにスタートしてる今のモードなのかな、という感じがしました。
みさと:改めて、表現力のあるボーカリストですよね。
金子:いいんですよねえ、秀吉くん。
みさと:普通にいいですよね。"普通に"って言葉の使い方難しいけど、そう言いたくなっちゃう。
金子:秀吉だからこその、高い基準での"普通に"いい。
みさと:そうそうそう、そういうこと。そして、めちゃめちゃ良いアーティスト、他にもいましたね。
金子:Sen Morimotoさんをかけましょう。
みさと:もう、何という芸術なんでしょうか?素晴らしかったです。
金子:こちらもアルバムがついにリリースということで。
みさと:おめでとうございます。
金子:この人も曲を紹介する度に、かっこいいかっこいいってずっと言ってきましたけど、もともとSen Morimotoさんはジャズを由来にしてるところがあり、エレガントな印象もあって、今回の曲を聴くとホーンのアレンジとかはやっぱりエレガントさを感じたりもするんですけど、この曲(「Pressure On The Pulse」)は後半から結構ビートが強かったりして、わりと激しめのロック寄りなサウンドが、アルバム全体としては強まっている印象で。解説を読んでみると、いち音楽家としてツアーで世界を回ったり、アメリカの中を回ったりする中で感じたこと、どちらかと言うとあんまり良くない面、資本主義の行き過ぎた側面だったり、ミュージシャンとして活動する中でもスターシステムみたいなものがあって、それの善し悪しを感じたり、そういう中で色々思うことがあったと。アルバムのタイトルにもなっている「Diagnosis」という曲は、ボブ・マーリーの曲がインスピレーション源になったともコメントしていて、このアルバムはSen Morimotoさんなりのレベルミュージックというか、そういうところが曲のアグレッシブさにも表れてるのかなっていうのが個人的な感想です。
みさと:もう全く一緒で、どの曲もすごく内省的。「Pressure On The Pulse」に関してもイントロは穏やかなんだけど、だんだんドラムとサックスの激しさというか、旋風が巻き起こるような展開になっていたり、他の曲に関しても、幼少期日本に住んでいたお家の木をイメージしながら作ったとか、すごく内省的な物語が紡がれてるんだなっていうのと、彼の言葉をご紹介すると"『Diagnosis』のどの曲も本質的にはレンズをひっくり返す試みです。私たちが住んでいるシステムに虫眼鏡をかざしていく"と、そういう言葉を発言されてるんですけど、まさにこの自分が引っかかってしまう、どうしても見過ごせないことにこういったサウンドで呼応するっていうのは、確かに激しくもなるよなっていう納得の作品でした。
金子:"Diagnosis"って日本語に訳すと診断書とか診断結果という意味で、まさにそうやって虫眼鏡で社会を見つめた、その診断結果をこのアルバムとして作ったんでしょうね。
みさと:ぜひアルバム全曲聴いて欲しいですね。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさん、いらっしゃいます。JAZZLETTERです。
金子:ジャズ・ドラマーでラッパーとしても活動する橋詰大智さんによるジャズ・プロジェクト。ミュージシャンだけじゃなくてカメラマン、映像クリエイター、デザイナーらも参加し、楽曲やライブによってメンバーが変わる形で活動するという、コレクティブ的な編成ということですね。1人の中心人物がいて、いろんな人が集まってっていう成り立ちだったり、音楽性も含めて、ちょっとパジャ海を連想したりもしましたが、よりジャズというところにこだわりを見せつつ、でも単なるジャズじゃないっていうところにもこだわりを持つ、そんな印象を受けました。
みさと:ジャズ界隈ではロバート・グラスパー以降という時代の区切り方をしますけど、それからの時代ってジャズよりも他ジャンルに対してフォーカスが当たりがちだったのかなって思うんですが、JAZZLETTERに関してはあくまでもジャズという立ち位置がすごく見えていて、だけど他のエッセンスもあるんだよっていう、自分たちが何をしたいのか、棲み分けというか立ち位置がとても見える人たちなんだなっていうのを感じました。
金子:このコレクティブ形式のまま進んでいくのか、パジャ海みたいに、はたまた固定メンバーのバンドに発展するのか。この先がどうなるか楽しみですね。
みさと:そしてアルバムリリースになったのがAyane Yamazakiさん、リリースおめでとうございます。
金子:Ayane Yamazakiさんもコンスタントにリリースしてますよね。ちょっと前にセルフカバーの作品も出していて、それは最近のエレクトロポップ寄りの作風というよりも、昔のよりシンガーソングライター的だった頃のニュアンスが強かったですけど、今回もその延長線上にあるというか。近年のエレクトロポップのニュアンスもあるんだけど、よりシンガーソングライター的、歌がすごく聴こえる印象で、特にこの曲(「人間やめても」)は"人間やめた"っていう、ちょっとSFチックな世界観と、彼女がもともと持っているウィスパー強めな歌い方から、相対性理論を思い出したりもして。これまで海外人気の文脈で語られることが多かったけど、国内のポップスっていうところでも、より認知を広げられる1枚になるんじゃないかっていう気がしました。
みさと:特にこの「人間やめても」に関しては、生き辛さを抱えてる人に説教臭くもなく、共感してるよってアピールするわけでもなくて、とにかく自分視点、自分の目線での日記がつらつらと続いている感じが、この曲に共感できる人にとっては一番フィットする形なのかなと思っていて。自分から見た世界が誰かとリンクするだけで生きていけるじゃないですか。すごくいい世界観というか、歌詞の構成の仕方だなと感じています。さあ、そんなPart-2からどうしましょう。
金子:アロワナレコードをかけようと思います。
みさと:こちらはミニアルバムリリースということになります。リリースおめでとうございます。
金子:まあ、ええ歌がいっぱい入ってましたねえ(笑)。
みさと:あはは。困っちゃうのよ、今週。アルバムとかミニアルバムとか、全部良い曲で。
金子:ボリューミーなのが多いですよね。
みさと:みんな良かったし。
金子:アロワナレコード、演奏ももちろん良いんだけど、やっぱり歌がすごく印象的で。特にこの曲(「巡る季節に身を任せ」)はセルフライナーノーツも届いてて、ある街中で見た子供と母親の光景から"子供の成長に嬉しくも寂しくもなる親の気持ちが少し分かった気がした。子と親の関係性は深いところで一生変わらないと感じた。そこから派生して、生まれ故郷、親友たち、父や母、かつて亡くなった友人、そういった自分を形成してきた人たちとの思い出や未来を考えて全6曲を制作した"と。
みさと:やっぱり人は一人では生きていけないといいますか、自分のルーツを紐解いたときに、嫌なことだったり、気になる出来事があったとしても、結局それで自分が形成されてたっていうところに戻ったり、そこからまた温かい気持ちになったりとか、寒い日にホットミルクを飲んで、その喉の通り道を感じるじゃないですか。じわーっと温かくなっていく、そんなアルバムだったなと思って。
金子:確かに音が激しいわけじゃないけれど、内側からジンワリと温まっていく感じのアルバムでしたね。この曲の歌詞から『幸せを願えるように』っていう、他者への思いを馳せる言葉がアルバムタイトルにもなっていて、今のみさとさんの話の通り、一人では生きてられないっていうところがアルバムの根底にはある気がしますね。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。厚武さん、日向文さんがすごく良かったんですけど。
金子:良かったですね。おひさしぶりですね。
みさと:1年4ヶ月振りです。
金子:日向文さん、中国で人気が出てきてて、今年の夏は中国ツアーにも行ってて。
みさと:そうでしたか、グローバルにお忙しかったのですね。FRIENDSHIP.から今、アジアに羽ばたいているミュージシャンとっても多いですね。
金子:日向さんもまさにそうで、そういうライブ活動もありながら、リリースとしては1年空いて、曲自体パワーアップしていて。これまで歌メインで、トラックもわりと歌に寄り添うような感じの、そんなにリズムが強くないものが多かった印象ですけど、今回かなりアップデートされていて、彼女の持つ抑えの利いたエモーションみたいなものが歌だけじゃなくてトラックの音像からも伝わってきて、より解像度が上がった感じがすごくしました。
みさと:そうか、今作ですごく表現力がパワーアップしてると思ったんですけど、そのトラックが見せる妙みたいなのもありそうですね。歌い出しの2行がすごく印象的で、"埃が舞うからじっとしてよ 爪に入り込んだ土が取れないんだ "。この2行だけでもこの「化石」のように風化していく、その場に埋まり続けてしまうっていう、その心情が表現されていて、一気に最初の2行で世界に引き込んでくれる、ストーリーテラー感というか、パワーアップですね。素晴らしい。そして、はじめましてさんもいらっしゃいます。kinoeです。
金子:こちらは今年の5月に結成されたばかりで、ボーカルのmioさんとベースのyarimizu shoyaさんの2人組。yarimizuさんは元suya suya junctionなんですけど、新たなプロジェクトをスタートさせていると。やっぱりsuya suya junctionだったり、omeme tentenとかともリンクするような、ちょっとオルタナ感のあるバンドサウンドになっていて、でもmioさんのボーカルがすごく印象的なので、kinoeならではの個性というものを最初の曲からちゃんと見せてくれてるなって感じはしました。
みさと:タイトルが「夜の帰り道」なんですけど、イントロが23秒あって、今どき長い方じゃないですか。その帰り道の長さに聴こえてくる。
金子:なるほど。
みさと:というか、そのイントロのフレーズがこの4分の中にも合間に入ってくるので、4分通してずっと帰り道を歩いてるんだなって思わせてくれるような、そんな構成だなと思えてきました。
金子:ちなみにmioさんのSNSを覗いたら、Galileo Galileiが好きらしく、カバーもあげてたんですけど、日向文さんはGalileo Galileiのサポートでコーラスをやってるから、この並びを見て、おっと思いました。
みさと:きっと話が合うでしょうね(笑)。さあ、そんなPart-3からお送りするのはどうしましょう。
金子:Cluteをかけようと思います。
みさと:タオル工場に勤務をされてる方たちですか(笑)?
金子:タオル工場に勤務はしてないと思うけど、タオル工場に足しげく足を運んでる方たちですよね(笑)。Cluteもアルバムがついに完成ということで、リリースおめでとうございます。元cescoというのはこれまでも紹介したと思うんですけど、改めて資料を見せてもらったら、メンバーはMURAバんく。に関わってたり、Qoodowに関わってたり、FRIENDSHIP.繋がりが多いみたいで、"ようこそ"というか、もともと縁が深かったんだなっていうのもありつつ、最初に話にも上がったように、今回の作品で面白いのはタオル工場をレコーディングスタジオにして作っちゃったっていうところで。Vlogが彼らのYouTubeチャンネルで上がってて、レコーディングの模様も見れて、なぜそこを選んだのかっていうところは具体的には言及されてないんだけど、でも本当に全部DIYで、自分たちで楽器や機材も全部運び込んで、録音していて、空間の鳴りを生かした、特にやっぱりドラムが印象的で。自分たちのことを「テクスチュラル・ロックバンド」って言ってるだけあって、音の質感をすごく大事にして、ジャンル的には本当に雑多な、色んな曲調があるんだけど、この質感が彼ららしさなんだろうなっていうのをすごく感じる作品でしたね。
みさと:この場所で録音したとは思えないぐらい、緻密なんですよね。すごく繊細で、だけどアグレッシブにセッションとかも得意とするメンバーだと思うので、その自由さとかグルーヴっていうのももちろん感じるんですけど、でもやっぱりビシッと決めてくる感じは、これはやっぱりツバメスタジオの君島さんのマスタリングっていうところが生きてくるんでしょうかね。
金子:空間の鳴りを生かした生々しい音像もありつつ、曲によってはポストプロダクションも施されていて、ダブっぽい展開になる曲があったり、シンセとかそういう要素が入ってる曲もあったり、ただ珍しいところで生々しく録りました、というだけではないんですよね。独自の環境で録音したものを、より生かす形で楽曲に落とし込んでいるのが彼らのクレバーなところだと感じますね。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武 1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。 @a2take / @a2take3 奥宮みさと ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。 @_M1110_ / @11misato10 Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar) 神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。 The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。 オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin