2022年に結成され、東京と大阪を拠点に活動する6人組の通算1枚目。「This Hotel」1曲を除き全編インストゥルメンタルナンバーで構成されている本作は、プロフィールによれば「特に深い意図はなく、所謂スタジオが苦手だから」という理由でタオル工場にてレコーディングを行ない、エンジニアリングからミキシングまでを全て自分たちで行なったという。
例えば冒頭を飾る楽曲「Room for Six 」は、流麗なギターのアルペジオとスウィングするリズム隊に導かれ、ひなびたメロトロンがノスタルジックな主旋律を奏でる。かと思えば続く「The Reverse Trip」は、その名の通り時空を超えて様々な場所へとトリップするようなエキゾティックなナンバーだ。
「Staying」をはじめ、多くの曲でシミズが奏でるトランペットのメロディは、かつて矢嶋と桂が在籍していた3人組バンドcesco（チェスコ）が内包していたポップセンスを引き継いでいるようにも思える。
その一方で「Flatmate Behind」や「False Alarm」のように、椅子の軋む音や機械の作動音と思しきノイズを積極的に取り込んだアヴァンギャルドなミュジークコンクレートにも挑戦しているから一筋縄ではいかない。
アルバム全体が一つの楽曲になるような構成を考えたというだけあり、最初から最後まで聴いていると具象から抽象へと思考が移動しているような、あるいは深い瞑想から戻ってきたような不思議な気分を味わえる。
ライブも積極的に行っているようだが、即興性や偶然性を重視しているところからも、おそらく音源をそのまま再現することはないのだろう。ちなみに本作をリリース後には、映像ディレクター清水啓吾とともにその全編を映像化することも予定しており（テーマは「都市という自然の中に暮らす人間」）、今後も作品をリリースするたび表現の幅や形態を自在に変化させていくのではないだろうか。そんなCluteから、しばらく目が離せない。

文：黒田隆憲

RELEASE INFORMATION

Clute「Loomie」
2023年11月1日（水）
Format：Digital
Label：Clute Sound

Track：
1．Room for Six
2．The Reverse Trip
3．Staying
4．Flatmate Behind
5．This Hotel
6．Train II
7．False Alarm
8．RfS (Is Screwed)

試聴はこちら

LINK

@clutesound
@clute_sound
Official YouTube Channel
bandcamp