SENSA

2023.11.01

ULTRA「到底及ばない」──むなしさの闇のなかで灯り続ける、鋭く熱い火種

ULTRA「到底及ばない」──むなしさの闇のなかで灯り続ける、鋭く熱い火種

壺坂恵(acd.、ex.ecosystem)、宮本菜津子(MASS OF THE FERMENTING DREGS)、柳本修平(WOMAN)、杉本昂(TheSpringSummer)という、関西のオルタナシーンで名と音を轟かせてきた面々が集結するに相応しい名前を掲げたバンド「ULTRA」。2020年11月に結成してから、多忙なスケジュールを縫ってライブを重ね、2023年5月10日に1st EP『浮いた欲』をリリース。そして、このたび遂に1stフルアルバム『到底及ばない』を完成させた。EPに収録されていた4曲、さらに先行でリリースされた「flashback」を含む、全8曲がパッケージされた今作は、ため息が出るほど凛とした歌声と、痺れるように刺激的なロックバンドのアンサンブルが、次々と立ち昇ってくる一枚になっている。
オープナーの「flashback」から、癖になるギターリフや、巧みな抜き差しが光るアレンジに、グッと耳を掴まれる。何より壺坂と宮本の女声ツインボーカルのハモり──特にラストの掛け合いは天女の舞いか、はたまた壮絶なバトルか、いずれにせよ惚れ惚れほど強く美しい。さらに、〈間違ってはいないか〉〈間違ってはいないさ〉〈間違ってはいないから〉と、たしかめるように少しずつ変化する歌詞が染み込んでくる「Table」。歪みと重みとスピード感が織り成すグルーヴの波を、壺坂の歌声が華麗に乗りこなす「INU」。聴いた瞬間に頭を揺らしてしまうビート感から、バンドの息が合っていることが伝わってくる「heads」。そして最後の「door」まで聴き終える頃には、EPで感じた、未知のものに出会ったときの雲をつかむようなワクワクが、色づき、形作られていく。
様々なイメージを想起させる壺坂の日本語詞も、さらに研ぎ澄まされているが、あるフレーズに、ULTRAの表現がグッとくる理由を見つけた。〈終わらない不穏の中で僕らは/どうやって生きてけばいい/果てしない空想の中で落ち合おう/透明さを持って〉(「INU」)──もどかしさを隠さずに吐き出し、葛藤しながらも、"自分"として生きる。そのための場所が、音楽の中や、ULTRAの中には在る。これは完全に勝手な解釈だけれど、歌詞だけではなく、高らかに鳴り響く轟音や、彼女ら/彼らの生き様も重ね合わせると、そんなふうに思わずにはいられない。
『到底及ばない』という謎めいたタイトルも、本当の意味は壺坂やメンバー以外は解き明かせないかもしれないけれど、私は、"日々のありとあらゆるむなしさの中で、それでも絶やせない火種みたいなもの"と受け取った。今作を聴いていれば、その火種をあたためて生きていける、そんな気がする。

文:高橋美穂



RELEASE INFORMATION

ULTRA_1st_cover.jpg
ULTRA「到底及ばない」
2023年11月1日(水)
Format:Digital
Label:FLAKE SOUNDS

Track:
1.flashback
2.愛など
3.Knight
4.Table
5.INU
6.泡沫
7.heads
8.door

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